著者
石井 佳世子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.1-8, 2007-09-20
被引用文献数
1

小児がん発症後5年以上を経過し、社会生活を送っている青年後期の小児がん経験者をもつ母親20名を対象とし、母親の子どもへの関わりとその関わりの意味を明らかにするため、質的記述的研究を行った。その結果、母親は〔子どもへの基本的な思い〕、〔母親として責任のある子どもへの思い〕、〔豊かな人生を送って欲しい〕という3つの【母親としての願い】を持っていた。この願いは、【体験を無駄にしたくない】という病気体験の捉え方、【やっぱり病気を忘れられない】という病気そのものの捉え方、【将来のある子ども】という子どもの捉え方によって、常に揺れ動いていた。また母親は、【母親としての願い】を持ちながら、【子どもを守る】という関わりを行い、これはこの先も子どもを守り続けたい<終わりのない見守り>という意味を持つと考えられた。さらに母親は、子どもへの関わりを通して、【変わっていく自分】を感じ、子どもの病気を自らの体験として意味づけていた。
著者
栗原 武美子
出版者
お茶の水地理学会
雑誌
お茶の水地理 (ISSN:02888726)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.126-126, 1993-05-15
著者
小川 賢治
出版者
滋賀文化短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

この研究において以下の点が明らかにされた。1.叙勲授与は天皇の神聖な意思によるものであり、その証明書である勲記は天皇の権威と切り離せない。それは、勲記における天皇自身の署名、「天祐ヲ保有シ万世一系ノ帝祚ヲ践タル」という修飾語の使用などに現れている。しかし他面、国家そのものが勲章の権威の源泉でもあり、こう解釈する場合には天皇の存在は不要となる。2.勲章制度の本質とも言える差別性は、勲記の様式にも現れている。上位の勲章の勲記には天皇の署名と璽があるのに対し、下位の勲記からはそれは省略されている。また、勲章授与の方式も、天皇親授・太政大臣伝達・賞勲事務局長官伝達、に区別され、参列者・式次第などに明確な格差が設けられている。3.明治時代を例に取れば、叙勲の一般的傾向としては、ア.多くが軍人に与えられている。イ.残りもほとんど官吏であり、民間人の叙勲者は極めて少ない。ウ.金鵄勲章受章の条件とされる「武功抜群」とは、現実には「戦死」を意味する場合が多い。4.軍人の叙勲を見れば、勲等は、爵位の有無・種類、階級の高低、軍における地位の上下、また、金鵄勲章の等級、などに、対応している。5.勲章の授与権者である天皇は、自らに仕える皇室関係者に手厚く勲章を与える。その対象は、皇太子等の教育掛に始まり、侍医、侍従、女官、天皇紀編纂者、宮殿設計者などに亙る。
著者
Loh YinHuei 原 隆浩 塚本 昌彦 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.203, pp.61-66, 1999-07-23

近年, 無線通信技術の急速な発展により, 移動体計算環境が普及しつつある。移動体計算環境では, 無線の通信範囲の制限や移動体の省電力などのために, サイト間の断線が頻繁に発生する。断線した複数のサイトにおいて, 同一データの複製を更新するトランザクションが同時に実行されると, そのデータの一貫性が損なわれてしまう。そこで本稿では, サイトの断線時に, トランザクションの発生確率とホスト間の断線時間により, データベースの更新制御法をトークン手法と楽観手法のいずれかから動的に選択する手法を提案する。トークン手法では, 断線時に, トランザクションの実行権利を唯一のサイトに与えることで複製間の一貫性を保証する。一方, 楽観手法では, 複数の断線したサイトで同時にトランザクションを実行でき, 再接続時に更新操作の衝突を検出すれば, 一部のトランザクションをロールバックする。
著者
渡辺 俊和
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.1145-1151, 2008-03-25

本論文では,ダルマキールティがディグナーガによるasapaksaの定義に変更を加えた過程,およびその原因を考察した.ディグナーガはasapaksaを「sapaksaの(1)abhavaであり,(2)anyaでも(3)viruddhaでもない」と定義する.彼は(2)と(3)とが認められない理由について「(2)の場合にはたとえ同類のものであっても他の属性を持つがゆえに異類となってしまうし,(3)の場合には同類と異類とは別の,第三の領域が生じてしまう」という問題を挙げている.これに対してダルマキールティは(1)から(3)全てを認めている.彼はPramanaviniscaya第3章で,彼のアポーハ論の特徴的な点である「話者の意図」という視点を導入することにより,(2)も(3)もasapaksaの否定辞の意味として理解され得る,とする.彼が(2)と(3)を認めたのは,ウッディヨータカラによる「非存在は拠り所とはならない」という反論に答えるためでもあったと考えられる.また彼は(2)の場合に起こる問題について,その否定辞がanyaを意味している'abrahmana'という語を例に説明する.彼は「バラモンはバラモン性以外の属性とも結びついているが,世間一般では'abrahmana'と言われることはない」というように,言語慣習の点から解決を導いている.更に(3)の場合については,<共存不可能性>と<相互否定>という二つのvirodhaの定義を用いることによって解決され得る.つまり,問題となっている(3)viruddhaを,後者の意味で理解すれば第三の領域は起こり得ないのである.このようにして(2)と(3)の問題点は解決されるのであるが,ダルマキールティは自身の見解とディグナーガのそれとをはっきりとは会通させていない.この点はアルチャタ・ダルモーッタラなどの注釈者の課題として残された.
著者
増田 辰良
出版者
北海学園大学
雑誌
北海学園大学法学研究 (ISSN:03857255)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.625-659, 2004-12-31

航空法の改正によって、新千歳-羽田線に新規参入した北海道国際航空(ADO)は同路線における競争(rivalry)を促進した。例えば、ADOの参入後、ハーフィンダール指数は下がっており、同路線の競争が促進されたことがわかる。ADOは運賃の値下げと値上げの両面においてプライス・リーダーシップを発揮していた。運賃の値下げに既存大手航空会社が追随するときには交叉弾力性も大きく、競争関係は強まっていた。一方、ADOの値上げに追随しないときには弾力性も小さく、競争関係は弱まっていた。ADOの経営破綻から得る教訓として、新規参入者を育成し、成長を期待するのであれば参入前後の支援(とりわけ経営指導)と航空市場の公益性という視点を加味して既存企業の価格設定行動を規制する必要があったと思われる。
著者
渡辺 千賀恵
出版者
岐阜工業高等専門学校
雑誌
岐阜工業高等専門学校紀要 (ISSN:03864332)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.13-24, 1987-03-20

The railway enterprise is supported mainly by the fare income. The amount of this income can be increased through the following two ways: (a) increasing the number of passengers, (b) raising the fare. But we can not think that these are independent of each other. The rough raising may drive away the passengers from train to other modes. It is important for reducing the deficit to find how to increase the income without decreasing the number of the passengers. So in this paper, the influence of raising fare on the passengers is analyzed by means of the statistical data since 1950.
著者
関根 達郎 佐藤 治雄
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.241-248, 1992-12-10
被引用文献数
24

Bark stripped from tree trunks and butts by Sika deer, Cervus nippon TEMMINCK, was surveyed in twelve 20×20m^2 plots within 3 forest types on Mt. Odaigahara, Nara Prefecture, Japan. About 90% of Picea jezoensis (SIEB. et ZUCC.) CARRIERE var. hondoensis (MAYR) REHDER and 57% of Abies homolepis SIEB. et ZUCC. trees were barked while deciduous broad-leaved trees such as Fagus crenata BLUME and Quercus mongolica FISCHER ex TURCZ. var. grosseserrata (Bl.) REHDER et WILSON were not barked. The percentages of barked trees in 5 Picea jezoensis var. hondoensis-Sasa nipponica MAKINO et SHIBATA plots on the eastern part of the mountain (1550-1600 m in alt.) were 57% whereas they were 49% in 3 Fagus crenata-Sasa nipponica plots (1450-1550 m) and 17% in 4 Fagus crenata-Sasamorpha borealis (HACK.) NAKAI plots (1300-1450 m) on the western part of the mountain. These percentages appeard to be closely correlated with the intensity of the habitat utilization by Sika deer, assessed by the grazing intensity on Sasa and Sasamorpha leaves and fecal pellet density.