著者
矢田 勉
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度も、昨年度以前に引き続き、近世文学研究書の原本調査作業を行った。国文学研究資料館や東京大学付属図書館等において、昨年度までの調査の遺漏を補う作業を継続するとともに、加えて新たに亀田鵬斎・清水浜臣・高橋残夢の三人の文学研究にかかわる著作に就いては特に集中的な調査を行った(高橋残夢については、岡山県立図書館・京都大学付属図書館を中心に調査を行った)。その結果、特に高橋残夢の文学研究に就いては、音義説との関連から、あらためて国語意識史・文学研究史の上に正確に定位する必要があること、特にこれまでの定家仮名遣い派と歴史的仮名遣い派の二派の対立軸から捉えられてきた近世の仮名遣い研究史のあり方について、「音義仮名遣い」とでも言うべき領域を加えて、より多角的に記述しなおす必要があるという知見を得た。その問題については現在論文の準備中である。また、これまでに得られた近世の文学研究に関する基礎的データは、随筆等の非研究書における文字に関する記述の集積も含めて、データーベース化を進めており、公開を目指して今後、整備を継続する予定である。更に、文字に関する思索が研究の形式を採る以前の時代の文字意識史に関する研究も継続的に行い、今年度は、近年、文字研究市場で特別な位置を与えられてきた藤原定家の文字意識について、その書き残した書記資料から実証的に再検討した論として「定家の表記再考」を、また、更に平安時代におけるより一般的な文字意識のあり方を文字教育の実態という方面から検討した論として「平安後・末期における初歩的な書字教育のあり方について」を、それぞれ公にすることを得た。
著者
伏尾 光平 守田 了
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.524, pp.107-112, 2004-12-10

スケート中継映像から競技者の動きを推定することを目的とする.一般に競技者は4.5分程度め規程演技とフリー演技を行い,選手の競技を評価する,その際テレビのスケート中継映像は人の動きをとらえ続ける.カメラは複数存在し,カメラを切替えながらテレビ映像を作成する.一般に1つのカメラはパンチルトズームを自由に可動することにより映像を作成する.このようにして作成された中継映像のみから競技者の動きを復元する.特に本研究ではカメラに複数の位置を与え,そのカメラ位置を切り替えた上で競技者の動きを復元し,復元された動きがなめらかになるカメラの位置とカメラの切替えを競合学習を用いて推定する.近年スボーツの分野で科学的分析に基づく競技のサポートが注目されている.本研究により競技者および監督者が復元された動きから.修正点を探るために使用したり,競技運営者が競技結果を保存するために使用できる.実際にシミュレーション用の中継画像から競技者の動きを推定し,提案手法の有効性を示す.
著者
山本 逸郎 古川 由美子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.96, pp.27-40, 2006-09
被引用文献数
1

高校物理において等加速度直線運動を調べる実験の一つとして,斜面を転がる球の加速度を導出する実験が設定されている。また,斜面を転がる球の運動を利用した実験は,小学校および中学校における≡哩科実験にも現れる。本研究では,アルミレールとプラスチックレール,鉄球とプラスチック球を組み合わせて,料面を転がる球の加速度の角度依存性を測定した。球は始めすべらずに転がるが,ある角度を境に転がりながらすべりだす。得られた実験結果を詳しく解析し,斜面を転がる球の運動を考察した。
著者
日置 真世
出版者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター = Research and Clinical Center for Child Development, Faculty of Education, Hokkaido University
雑誌
子ども発達臨床研究 (ISSN:18821707)
巻号頁・発行日
no.3, pp.45-53, 2009

今日の日本社会は少子高齢化、核家族化、過疎化、経済の不安定、地域における人間関係の希薄化など暮らしを取り巻く環境の著しい変化の中でさまざまな生活課題が生じている。一方では、それら生活課題を支えるべく公共システムである年金や医療保険、各福祉制度をはじめとした社会保障制度は転換期を迎え不安定であり、雇用を取り巻く状況も厳しさを増し、多くの地方自治体が財政困難を抱えるなど、人々の暮らしを支える社会システムが大きく揺らいでいる。そうしたなか地域においては、大勢の困難や生きづらさを抱える子どもや若者たちとその家族は、複雑・深刻な課題にぶつかり、既存の制度で支え切れない実態があり、現実では当事者や限られた実践者の我慢と努力に依存するような厳しい状況に陥っている。本論は具体的な支援実践の蓄積から、そうした生活課題を抱えた子どもや若者とその家族を身近な生活の場である地域で支えることの意義と支援においては何が重要でどんな思想や方法論が必要なのかを探り、今後、地域における支援体制の充実を願って、ささやかな提言を試みるものである。