著者
能代 透
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100096, 2014 (Released:2014-03-31)

I はじめに 本研究はフランスのZUS(都市優先対策地区)空間の政策を批判的に論じるものである。 フランスの都市郊外での移民系若者と治安部隊との衝突とが「フランスのZUS政策」と深くかかわっている。 その底流に、ムスリム移民と向き合う「ポストコロニアリズム」と国民不可分性(単一性)を憲法に掲げる「共和制国民国家」と、それを揺るがせ多文化主義を促す「EU統合」の動きがあり、その狭間で「トリレンマ(矛盾)」を抱えるフランス共和国のリアリティを都市空間の側面から研究した。II フランス郊外(バンリュー) 郊外(バンリュー)はその特徴により言葉以上に特別の意味をもつ。 かつての城壁都市の周辺地帯に位置しており、フランス特有の経緯による都市構造を形成している。第二次大戦後の復興期の労働者用に1950年代後半から、グラン・アンサンブル計画で郊外に低家賃社会住宅(HLM)の高層住宅団地(通称シテ)群が均衡都市郊外に政策で大量建設された。しかし、交通網、商店街、企業誘致などの街づくりが伴わなかったため都心部(旧城壁内)から隔離され、シテは低所得者層が集住するようになった。 さらに1980年代から脱工業化で、工場閉鎖、大量失業者、産業空洞化が始まり、次第にマグレブ系労働移民者階級が集住する空間となり、年を経て多様性を失い、ホスト社会の差別とセグリゲーションを受けるマグレブ移民二世が集住し、イスラム教義に基づくコングリゲーション(防衛・互助・文化維持・抵抗)が進行し、ジハード(ムスリムの防衛戦)に向かうマグマが増殖する空間となった。 ヨーロッパ最大のムスリム居住国である現在のフランスにおいて、それは「共和制理念とイスラム教義」の観念の対立となり、都市の「危険な均衡」をもたらせている。III 監視・防諜の装置としてのZUS 1995年、アルジェリア系「武装イスラム集団」が関与したとされる爆弾テロが、リヨンやパリで続発していた。 フランスに「同化」していたはずの移民二世が、この組織に加わっていたことが分かり、フランス社会に大きな衝撃を与えた。 マグレブ移民が集住する「郊外」は、イスラム過激派の温床とされ、フランス政府は1996年に都市再活性化協定法で国家権力が自治体との契約統治を超えて、各都市で直接介入できる特定区(ZUS)を郊外(バンリュー)のシテを重点的に指定した。ZUSは表向きには貧困地区対策であるが、監視・防諜装置として誕生し機能した。 そのことは入手したにフランス諜報研究センター(CF2R)の2005年9月付報告書で明らかにされた。1)        それによると、「フランス国内の630カ所の郊外地区(ZUS)の180万人の住民が、移民としての出自の文化や社会と強く結び付き、イスラム過激派が郊外の若者たちの組織化が進み、フランス社会に分裂の危機をもたらす危険性が高まっている」との報告がフランスの防諜機関である中央情報局(RG)から内務省に上がっていた。 これはZUSをムスリムの監視と防諜の装置としていた「証拠」である。 2005年10月、パリ郊外のクリシー・ス・ボアの団地で移民系少年と警官に衝突事件が発生した。 その後にボスケ地区のモスクで抗議集会中のムスリムたちに治安部隊が催涙弾を打ち込んだため、衝突が一気に拡大した。 彼らの精神と結束の拠り所であるモスクへの攻撃を彼らが許すことはなく、権力の治安部隊との衝突がフランス全土に広がった。 IV おわりに 現在のフランスは、約500万人のムスリムが暮らしているが、彼らの「外に見える行為」を実践するイスラム信仰は、フランス共和国の世俗主義の観念になじまない。 移民二世・三世の重層的な空間への帰属意識がアイデンティティの不安定化を招き、フランスで生まれた移民子孫たちが差別を受ける中でイスラムに覚醒していく。 政府がその実態を把握しようとしてもフランスの国民不可分性の理念から一部集団への表立った調査ができず、中央情報局による防諜活動を必要とした。取り上げたZUSは日本でも差別・貧困・荒廃の社会問題として注目されることが多く研究も多いが、本研究ではそのZUSに関する政策・制度をフランス均衡都市の地理学的構造に着目して研究した。  注1)   Centre Francais de Recherche sur le Renseignment、Eric Denécé LE DÉVELOPPEMENT DE L’ISALAM FONDAMENTALISTE EN FRANCE, ASPECT SÉCURITAIRES, ÉCONOMIQUES ET SOCIAUX  Rapport de recherché No.1 Septembre 2005, P7-9 「LA MONTÉE EN PUISSANCE DE L’ISLAM RADICAL DANS LES BANLIEUES FRANCAISES、
著者
佐野 知巳 春本 道子 島津 貴之 伊与田 義智 井上 享
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌E(センサ・マイクロマシン部門誌) (ISSN:13418939)
巻号頁・発行日
vol.130, no.8, pp.373-377, 2010-08-01 (Released:2010-08-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

The ultra compact optical RGB multiplexer for a pocket projector that size is 8.8(W)×6.0(D)×4.0(H)(mm) was developed by the micro-molding processing. The RGB multiplexer was constructed by the optical filter and three lenses for each RGB laser diode in the molding packaging. The interface of the optical filter and the resin was not existed an air gap by optimizations of molding conditions. We were successfully projected onto a screen using the RGB multiplexer.
著者
高橋 和仁 高坂 槙治 星谷 清春 矢野 耕也 西内 典明 矢野 宏
出版者
一般社団法人 品質工学会
雑誌
品質工学 (ISSN:2189633X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.24-30, 2000-02-01 (Released:2016-06-10)
参考文献数
6

When developing machining processes, it is necessary to select the optimum machining conditions (such as tool conditions, cutting speed or feeding speed), as well as select an efficient machine and process to be used. Quality engineering methodology recommends evaluating the performance of machining milling or drilling processes by directly or indirectly observing the energy consumption. In this study, the evaluation of machining a stainless steel part was made by measuring the total power consumption of the main motor. However, the gain was not very reproducible. Therefore, the variation of the energy consumed during idling time was included in evaluation. The results showed a good reproducibility of gain. Under the optimum conditions, the dimensions after machining were uniform and the surface roughness was also improved.
著者
中森 俊宏 北川 さゆり
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.25-36, 2009 (Released:2016-01-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1

大豆は,日本人にとってなくてはならない食材であり,タンパク質,レシチン,オリゴ糖,イソフラボンなどに富む優れた機能性は,今や世界の人々の健康や食生活に大きく寄与しようとしている。調整大豆ペプチドは大豆タンパク質の優れたアミノ酸バランスを有し吸収性に優れた素材である。この特徴を生かした栄養ドリンクなどが開発されており,少し前には健康情報テレビ番組によりブームとなった。一方,最近市場が拡大している新ジャンルと呼ばれる酒類の原材料表示をみると大豆ペプチドと表示されたものがあり,アルコール発酵を円滑に行うための素材としても注目されている。本稿では,大豆ペプチドの製法から,その物理学的特性,栄養学的特性,発酵食品への利用について解説していただいた。
著者
原田 圭 廣安 知之 日和 悟
出版者
進化計算学会
雑誌
進化計算学会論文誌 (ISSN:21857385)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.75-85, 2018 (Released:2018-10-10)
参考文献数
26

MOEA/D decomposes a multiobjective optimization problem into a set of single objective subproblems. When there are a few differences in difficulty of each objective function, it can obtain widely-spread and uniformly-distributed solutions. However, in real-world problems, the complexities of the objective functions are often heterogeneous. In this case, each subproblem of the MOEA/D has different difficulty so that the spread and uniformity of the population is deteriorated because the search direction in the objective space tends to be biased into the feasible region which is easily explored. To overcome this issue, an adaptive weight assignment strategy for MOEA/D is proposed in this paper. In the proposed method, the subproblems are divided into some groups and the convergence speed is estimated for each group and utilized as the metric of the difficulty of the subproblems. Moreover, the weight vectors of easy subproblem groups are modified to bias their search into the subproblem group with higher difficulty. Our proposed method is validated on the region-of-interests determination problem in brain network analysis whose objective functions have heterogeneous difficulties. The experimental results showed that our method worked better than the conventional weight assignment strategy in MOEA/D.
著者
浜地 歩 植村 慎吾 仲地 邦博 高木 昌興
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.S27-S33, 2017 (Released:2017-10-19)
参考文献数
21

2015年から2017年にかけて,宮古諸島でオオジュウイチとオニカッコウを記録した.オニカッコウは複数羽での長期滞在が確認されたことから,繁殖の可能性も考えられる.国内におけるこの2種の記録は増加傾向にあり,今後分布を拡大させる可能性がある.
著者
北 洋輔 田中 真理 菊池 武剋
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.163-174, 2008-09-30 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1 2

発達障害に対する正しい認識と適切な支援を導くために、広汎性発達障害児と注意欠陥多動性障害児を中心にして、発達障害児の非行行動発生にかかわる要因について研究動向を整理し、問題点と今後の改善点を指摘した。先行研究からは、個体の障害特性に密接にかかわる非行行動の危険因子と障害を取り巻く環境の危険因子が指摘された。だが、危険因子に着目した取り組みは、非行行動にかかわって発達障害児本人と親・関係者に対する支援を進める際の社会的意義を十分に達成できない問題点がある。その改善点として、非行行動の保護因子の導入と発達障害児の内面世界への着目が挙げられた。
著者
岡部 光伸
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.185-196, 1994-03-31 (Released:2017-08-31)

室町時代に日光山寂光寺の僧、覚源によって「釘抜念仏」が始められ寂光寺が念仏道場として発展すると共に日光修驗者によって「釘念仏」が諸国に伝えられた。釘念仏とは死者は生前の業により地獄に落ちると、体に四十九本の釘を打ちこまれ、その打たれる時の苦るしみからのがれる為に釘を抜くのであるが、釘一本抜くのに念仏一万遍を唱え、合計四十九万遍念仏を唱えるのである。この様な釘念仏は日光より全国各地に相承され上総の国にも今現在釘念仏として二つの地域で葬儀終了後、初七日の行事として行なわれており、日光寂光寺と上総の二地域の三地点に伝えられておる念仏について比較してみようとするものである。
著者
岡崎 千聖 逢沢 峰昭 森嶋 佳織 福沢 朋子 大久保 達弘
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.116-123, 2018-08-01 (Released:2018-10-01)
参考文献数
56

群馬県では県北部のみなかみ町において2010年に初めてナラ枯れが発生した。このような飛び地的被害を起こしたカシノナガキクイムシ個体群の由来について,隣接県から近年自然または人為的に移入した,遠方から人為的に移入した,在来由来の三つの仮説が考えられた。もし,移入個体群であれば遺伝的多様性の低下や遺伝的に遠い系統がみられると予想される。本研究ではこれらの仮説を遺伝解析に基づいて検証した。みなかみ町およびナラ枯れの起きている近隣6県において,カシノナガキクイムシ試料を採集し,核リボソームDNA,ミトコンドリアDNAおよび核マイクロサテライト(SSR)を用いて遺伝解析を行った。核リボソームDNAおよび核SSRの遺伝構造解析の結果,群馬個体群は福島や新潟と同じ日本海型の北東日本タイプに属したことから,南西日本から人為的に移入したものではないと考えられた。また,ミトコンドリアDNAと核SSRを用いて各個体群の遺伝的多様性を調べた結果,群馬個体群の遺伝的多様性は低くはなく,他個体群と違いはなかった。よって,群馬個体群は近年の移入由来ではなく,在来由来と考えられた。
著者
浅野 直生 正井 克俊 杉浦 裕太 杉本 麻樹
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.197-206, 2018 (Released:2018-09-30)
参考文献数
29

Facial performance capture is used for animation production that projects a performer's facial expression to a computer graphics model. Retro-reflective markers and cameras are widely used for the performance capture. To capture expressions, we need to place the markers on the performer's face and calibrate the intrinsic and extrinsic parameters of the cameras in advance. However, the tracmeasurable space is limited to the calibrated area. In this paper, we propose a system to capture facial performance using a smart eyewear with photo reflective sensors and machine learning technique.
著者
中丸 智貴 合原 一幸 奥 牧人
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.261-264, 2016-05-01 (Released:2016-05-30)
参考文献数
10

近年ディープニューラルネットワークが多くの成果とともに再注目され, ディープラーニングに関する研究が改めて活発になっている. 特に多層ニューラルネットワークでは 学習に誤差逆伝播法が用いられるが, この手法は初期パラメータに非常に影響を受けやすいことも知られている. 本研究ではまずReLU (Rectified Linear Unit) を用いた 多層ニューラルネットワークにおいてXavier Initialization の改善を行った. さらに高次元数のニューラルネットワークについてもXavier Initialization の修正を行った.
著者
宇津 徳治
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.435-448, 1975-12-10 (Released:2010-03-11)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

About 400 shallow earthquakes in central Japan occurring during 1967-1974 have been relocated using data supplied by the Japan Meteorological Agency and several university seismic stations. About 4200 P-residuals are obtained in the relocation. The residual is approximately normally distributed with a mean of 0.0sec and a standard deviation of 0.59sec. Therefore, the probability that a residual exceeds 0.4sec is 0.25. If the actual travel-time for paths crossing the focal region of an impending earthquake is increased by 0.4sec, the probability that an observed residual for one of these paths exceeds 0.4sec will be 0.50. Let R denotes the ratio of the number of paths with residuals larger than 0.4sec to the total number of the paths crossing a certain region. The R-values for the focal regions of the central Gifu earthquake of 1969 (M=6.6), the Izu-hanto-oki earthquake of 1974 (M=6.9), and other 24 earthquakes of smaller magnitudes during some time-intervals before the occurrence of them have been determined to be about 0.5 or more. These values suggest the decrease in P-velocity before the earthquakes. A map has been made showing the distribution of R-values in 204 areas of 0.2°×0.2° in central Japan. Significantly high R-values are found in the areas containing the focal regions of the above-mentioned two earthquakes in the maps covering certain periods before the earthquakes. However, there are many other areas of high R-values, which are not connected with the occurrence of large earthquakes until now. Most of these areas may correspond to inherent low-velocity regions in the crust.
著者
佐野 雅己
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.793-797, 1995-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
11

地震現象などに見られるように,破壊は,通常不規則で一旦起こるとその挙動は予測できない現象と思われている.しかし,適当な実験系を作ることにより亀裂の進展がほぼ完全に制御できるだけでなく,条件を変化させると自発的に,直線亀裂,振動亀裂,カオス的亀裂,分岐亀裂へと順次転移していく現象が明らかになった.ここでは,その現象の普遍性と非線形動力学の関係について説明し,多数の亀裂が相互作用する時に現われる周期亀裂パターンと岩石破壊の関係,さらに複雑な破壊パターンに対する今後の課題などについて述べる.