著者
山本 鎔子
出版者
Japanese Society of Microbial Ecology / The Japanese Society of Soil Microbiology
雑誌
Bulletin of Japanese Society of Microbial Ecology(日本微生物生態学会報) (ISSN:09117830)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.77-88, 1988-03-31 (Released:2009-10-05)
参考文献数
50
被引用文献数
3 6

Seasonal distribution patterns of agents which lyse cyanobacteria in lakes and rivers were studied. Higher numbers were detected in a warmer and more polluted. It is possile that cyanobacter development is controlled by these agents. The characteristics of various agents including protozoa, fungi, bacteria and viruses also were discussed.
著者
青木 武信 アオキ タケノブ Takenobu AOKI
出版者
総合研究大学院大学
巻号頁・発行日
2001-03-23

本研究の目的はインドネシアの大衆芸能、クトプラ(kethoprak)について、現地調査から得られたデータをもとに、その公演形態、公演内容、および芸人と彼らの社会生活について民族誌的記述を行い、1990年代半ば、スハルト政権最末期のインドネシアにおけるクトプラについて考察するものである。事例としてはジョクジャカルタを中心に活発な公演活動を行っているクトプラ劇団、ペーエス・バユ(PS Bayu)をとりあげる。 クトプラはインドネシア、中部ジャワの大衆芸能であり、笑いとアクションを中心としたドタバタ喜劇である。クトプラは中部ジャワー帯で人気が高く、ジョクジャカルタを中心に各地で公演が行われているが、最近ではテレビでの放映も行われている。 クトプラで演じられる物語の主要なテーマは女性、領土、財物の奪い合いである。クトプラの人気を支えているのは、人々の情動に直に訴えかける通俗性である。この通俗性は自身の欲望に忠実な登場人物の姿に由来する。つまり、クトプラでは誰もが少ながらず持ってはいるが、日常的には抑圧されている欲望が舞台の上で鮮明に提示されるのである。そのために、観客は深い共感をもって観劇を楽しむことになる。 クトプラのもうひとつの特徴は、必ずしも単純ではない物語の筋を簡略化し、格闘シーンや笑いのシーンを適宜挿入しながら、柔軟に舞台を構成してゆくやり方にある。クトプラの芸人たちは、公演地における観客の嗜好を考慮し、かつ観客の反応をみながら、公演内容を臨機応変に組み立ててゆく。格闘シーンは舞台の進行にアクセントをっけ、弛緩した観客の注意を舞台に引き戻す効果をもっている。また、クトプラは笑いのシーンをふんだんに挿入することで、深刻さをさけ、観客に気晴らしの娯楽を提供している。理想と現実との垂離に日常的に直面し、緊張を強いられている観客は、笑いのシーンで、このズレを提示されて、それを笑うのである。 このように、人々の心に潜む欲望を的確にとらえて表現する技術や、観客の舞台に対する反応を鋭敏に感じとり、舞台を柔軟に構成してゆく技術にたけていることが人気クトプラ芸人の条件となっている。こうした能力は彼らの豊富な社会経験に由来する。クトプラの公演が行われる地理的範囲は広く、公演をおこなう機会も多様である。そのために、芸人たちはジョクジャカルタを中心に、中部ジャワの各地を訪れ、さまざまな人々と接触し、見聞を広め、広範な人的なネットワークを構築する。これらのことがクトプラ芸人の演技者や演出者としての能力を培っているのである。 こうした能力は舞台の外でもきわめて重要な役割を果たしている。このことを示す端的な例はペーエス゜バユの座長であるギトとガテイである。彼らは舞台の上で卑猥で低劣なジョークを連発し、ドタバタ喜劇を演じる。だが、舞台の外では強い倫理観を持った好人物とみなされている。こうした舞台の上でのパフォーマンスと非常にかけ離れた人物像は舞台外での芸人の「演技」から作られるところが大きい。彼らは、人に何を期待され、何が求められているかを鋭敏に感じとり、それを舞台の外においても自身の「演技」に生かしているのである。 そして実際に、ギトとガティは地域社会において名士やリーダーとしての役割を期待され、そうした期待にこたえている。また、ガティは集落長という公職についている。ギトとガティが居を構えている集落にすむ村人の大多数はあまり裕福とはいえない農民である。彼らは、何らかの事情で、まとまった額の現金を必要とする場合、ギトやガティのもとを訪れることが多い。あるときは、手持ちの装飾品などを質草にして現金を借り、またあるときは、所有する農地や水田を彼らに買ってもらう。これに加え、集落が共同で使用する水場の新設や整備、共同墓地の拡張、道路の舗装、青年団の活動などに際しても、ギトとガティは経済的援助を求められる。 こうした期待と要求に応えることは、とかくマイナスのイメージを付与されがちな芸人という存在が地域社会で生活していく上で、必要に迫られて行っている戦術ともいえる。たしかに、仮設の小屋掛けでおこなう巡回公演を中心とするクリリガンと呼ばれるクトプラ劇団の芸人の生活は、売春まがいの行為をおこなう等の理由から、ジャワ人の一般的倫理観から大きくずれている。そうしたこともあり、ギトとガティは自己の社会的イメージを大変重視している。それは人気クトプラ劇団のリーダーであり、ジャワ芸能界の人気者にして重鎮、かつ温厚で、人当たりのよい人物というイメージである。彼らはジャワ社会における期待されている人物像を舞台の外で演じているといってよい。 以上のように、ギトとガティがになう役割と彼らの行為を見てくると、彼らは地域社会(村)とその外にあるジャワ社会を結びつけ、情報、金銭、人的コネクションを地域社会にもちこむ存在だということである。ジャワ社会でトコ・マシャラ力(tokoh masyarakat)と呼ばれる地域社会における名士あるいはリーダー的存在にはさまざまな種類の人物がいる。それは篤農家であったり、宗教的指導者であったり、富裕な商人であったりする。ギトとガティはこうした多様なトコ・マシャラカの一例なのである。 ギトとガティは政治的、宗教的に特定の勢力と深く関係することなく、中立的な立場を保持してきた。そうすることが多方面からの公演依頼を可能にすると判断したためである。だが、クトプラ芸人のなかには公演依頼を増やすために、積極的に特定の政治団体、特にスハルト政権下の与党、ゴルカル党に参加し、活動を行う者もいた。ギトとガティの場合にもいえることだが、芸人たちは生き残りをかけて、ときには利用できるものは何でも利用するしたたかさを顕わにする。そのとき、芸人は豊富な経験に裏打ちされた彼ら独特の「嗅覚」あるいは現実的感覚を大いに働かせているのである。こうした生々しい現実的感覚をもつからこそ、クトプラ芸人はジャワ社会の変化に巧みに適応しながら、クトプラの人気を長きにわたり保持しつづけることができたのだと考えられる。 そして、1990年代、テレビの普及と並行してジャワ社会は大きく変化してきている。ペーエス・バユの公演活動から、こうした変化へ適応していく様子を窺うことができる。公演は儀礼的な要素が小さくなり、娯楽としての要素が中心となってきた。公演機会も村清めのようなジャワ固有の信仰に基づくものは少なく、インドネシアの独立記念日を祝う催しやムスリムが断食月明けを祝うサワラン儀礼が多くなっている。公演日の選択にあたっても、ジャワ暦よりも土日を優先するようになっている。舞台の内容も笑いとアクションの要素を強調する傾向にあり、漫才のみの公演も増えている。公演機会や公演内容はよりいっそう世俗化し、インドネシア化しつつある。その一方でテレビを通じてクトプラはジャワ王朝時代劇としてイメージを鮮明にしている。また、ムスリムにとって聖なる月である断食月と儀礼には適さないとされているジャワ暦のポソ月は、公演機会として現在でも避けられている。このように完全に世俗化し、ジャワ的なものがインドネシア的なものに置き換わってしまっているわけではない。1990年代の現代インドネシアにおいて、ジャワとインドネシアの間でクトプラ芸人は巧みに両者の要素を取り入れ、使い分け、生き残ろうと努めている。
著者
中山 泰一 中野 由章 角田 博保 久野 靖 鈴木 貢 和田 勉 萩谷 昌己 筧 捷彦 Yasuichi Nakayama Yoshiaki Nakano Hiroyasu Kakuda Yasushi Kuno Mitsugu Suzuki Tsutomu Wada Masami Hagiya Katsuhiko Kakehi
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌.教育とコンピュータ = IPSJ transactions. TCE
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.41-51, 2017-06-14 (Released:2017-06-14)

高等学校情報科の教科担任の現状を明らかにするため,都道府県教育委員会における臨時免許状の授与と,免許外教科担任の許可の状況を調査した.情報科では,臨時免許状や免許外教科担任が他の教科に比べて突出して多用されていることが明らかになった.本論文では,その調査結果を報告するとともに,わが国の情報教育の取り組みについて述べる.
著者
張 永祺 石井 健一
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.4_47-4_59, 2012 (Released:2012-06-22)
参考文献数
23

中国で最も使われているマイクロブログの新浪微博の発言を分析対象とし、Twitterの日本語利用者の発言と比較しながら、中国のマイクロブログの情報伝播過程の特徴を明らかにした。分析には、「昆布の噂」に関する発言と無作為に抽出した発言の二種類のデータを用いた。結果によると、マイクロブログにおいて日本人の方がフォローの相互性が高く、個人間のやりとりに使う傾向がみられるのに対して、中国ではリツイートの利用率が高く、リツイート回数も日本より多い。また、中国ではマイクロブログにおいて情報が影響力の高い人から低い人へと伝わる。このため、中国では人気のある発言がリツイートによって短時間で多くの人に伝達される。一方、日本では、情報は水平的に伝わる傾向がある。ロジスティック回帰分析の結果では、中国のマイクロブログにおいて画像があることと個人体験的な内容ではないことがリツイートを有意に促進していた。
著者
嶋津 拓
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.150, pp.56-70, 2011

<p> この20年ほどの間に,言語教育の世界において,「言語政策」と言われるものが注目を集めるようになってきた。その背景には,単一言語主義や単一言語状態を是認する考え方への反発,さらには,そのような考え方を追認するような新自由主義的発想への異議申立があるものと考えることができるのだが,言語政策が注目を集めるようになったのと並行して,「言語政策研究」というディシプリンも認知されるようになってきた。本稿では,かかる言語政策研究について,なかでも日本語教育に関連する言語政策研究について,その現状を概観する。また,将来的な課題について考えてみたい。</p>

4 0 0 0 頼朝の挙兵

著者
五味文彦 本郷和人編
出版者
吉川弘文館
巻号頁・発行日
2007
著者
林 知己夫
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.6-10, 1986-03-31 (Released:2017-06-17)

コンピュータを教育の場に持ちこむ問題を考える場合、二つにことが考えられる。一つは教育に関する情報処理(データベースを含む)のためにコンピュータを活用することであり、もう一つは、初中等教育の段階でコンピュータ教育を実際に行う場合である。前者は当然用いるべきであるが、後者に対しては慎重に考察する必要がある。なぜならば、コンピュータ教育そのものが、望ましい科学的精神の発達に悪影響を与える可能性があるからである。従って、コンピュータ教育のあり方を研究する前に、コンピュータ教育の与える影響の研究が先行すべきで、これを踏まえた上で、コンピュータ教育の諸問題を研究するのが望ましいという主旨が論じられている。
著者
岡田 敦志 上村 譲史 目良 和也 黒澤 義明 竹澤 寿幸
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

近年,表情,音響的特徴,発話文字列の情報を総合して発話者の感情推定を行う手法が提案されている.しかし,「半笑いで褒める」のように各情報源からの推定結果が食い違うことが意味を持つ状況も存在する.このような状況を捉えるため,本研究では表情,音響的特徴,発話文字列からの感情推定を並列かつリアルタイムに行うシステムを構築した.本稿では提案システムの構成および各感情推定処理の評価結果について述べる.
著者
西森 秀稔
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.716-722, 2014-06-15

量子アニーリングは,組合せ最適化問題を量子効果を利用して解くための汎用の解法である.シミュレーテッド・アニーリングにおける熱ゆらぎによる状態探索を量子ゆらぎで置き換えたものであり,シミュレーテッド・アニーリングに比べて一定の効率向上が見られることが知られている.カナダのベンチャー企業D-Wave社が開発してすでに発売・稼働しているD-Wave Oneおよびその後継機種D-WaveTwoは量子アニーリングをハードウェアレベルで実現した装置であり,初の商用量子計算機というキャッチフレーズにより注目を集めている.本稿では,量子アニーリングの基礎理論を概説したあと,D-WaveTwoがそれをどうやってハード的に実現しているか,実際に量子力学に従って動作しているのか,本当に速いのか,今後の注目点はどこにあるのかなどについて現時点での知見を紹介する.
著者
菅井 勝雄
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.16-22, 1987-06-30 (Released:2017-06-17)
参考文献数
9

今日、情報化社会の進も中で、コンピュータが学校教育に入り、それとともに授業が変ろうとしている。そこで、本稿では、心理学における「行動的モデル」から「認知的モデル」への科学のパラダイム変換によって、これまでの伝統的な「教師→学習者伝達モデル」から、新たな「学習環境モデル」への授業モデルの移行が、理論的な観点から検討される。あわせて、情報技術と理論モデルとの密接な関係が示される。
著者
岩野 和生 高島 洋典
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.826-834, 2015-02-01 (Released:2015-02-01)
被引用文献数
2 3

サイバーフィジカルシステムとモノのインターネットについて解説する。両者は似た概念であり,物理世界とサイバー世界を融合することに特徴がある。それらの概念と,効果などについて述べ,技術課題として,アーキテクチャーとセキュリティーについて詳述する。アーキテクチャーとしては,情報,システムなどのレベルでの検討が必要である。また,サイバー世界に比べて,物理世界が直接的に脅威にさらされるため,より注意が必要である。さらに,社会システムとして長期間にわたって利用されることも考慮しなければならない。最後に,国内外における技術開発動向について述べる。
著者
腐食コスト調査委員会
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.490-512, 2001-11-15 (Released:2011-12-15)
参考文献数
10
被引用文献数
15 38

The first report on the cost of corrosion in Japan had been published at 1977. The report estimated that the corrosion loss in Japan which did not include indirect loss was 1-2 percent of Gross National Product (GNP) at that time. Since then, almost two decades have been passed and the industrial structure has drastically changed. Corresponding to this situation, the committee on the cost of corrosion in Japan was organized at 1999 jointly by Japan Society of Corrosion Engineering (JSCE) and Japan Association of Corrosion Control (JACC). The project was funded by the National Research Institute for Metals (NRIM) in the program of the Ultra-Steels (STX-21) Project. Cost of corrosion at 1997 was estimated by the Uhlig method and the Hoar method. The estimated cost was compared with the past data which was estimated at 1974 by the same Uhlig and Hoar method. In addition to the above estimation, the preliminary analysis by the Input/Output method is performed for estimating the total cost of corrosion including the direct and indirect cost. The overall cost estimated by the Uhlig and Hoar method at 1997 was found to be 3, 938 billion yen and 5, 258 billion yen, respectively, which is equivalent to 0.77% and 1.02% to GNP of Japan. The total cost including the direct and indirect cost, which is estimated preliminary by the Input/Output analysis, is likely to be more than 2 times larger than the direct cost estimated by the Uhlig method.
著者
上野 龍之
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.533-544, 2016-09-30 (Released:2016-11-08)
参考文献数
26

The Tsumaya pyroclastic flow deposit is one of the main units of the Aira pyroclastic eruption, which produced the Aira caldera in Southern Kyushu, Japan, 30,000 years ago. The Tsumaya deposit overlies the main plinian unit, the Osumi pumice fall deposit, and is covered by the large-volume pyroclastic flow unit, the Ito pyroclastic flow deposit. The Tsumaya deposit consists of massive facies associated with smaller volume of stratified facies. The total eruption mass is 2.8×1013 kg (estimated by the crystal method), of which approximately 48 % was elutriated to a co-ignimbrite ash fall. The upper part of the Osumi pumice fall deposit is intercalated with the stratified facies of the Tsumaya pyroclastic flow deposit, indicating that the Tsumaya eruption began during the final phase of the Osumi eruption. The Tarumizu pyroclastic flow and the Osumi pumice fall were produced from the same vent in the southern part of the caldera. The Tsumaya pyroclastic flow deposit has been considered to be the same stratigraphic unit as the Tarumizu deposit;however, the two deposits have contrasting origins and different contents of lithic fragments, indicating they were erupted from different vents. Lateral variations in the altitudes of the depositional surface of the Tsumaya deposit indicate that the Tsumaya pyroclastic flow was erupted from the northeastern part of the Aira caldera.
著者
村上 友章 MURAKAMI Tomoaki
出版者
三重大学教養教育機構
雑誌
三重大学教養教育機構研究紀要 = BULLETIN OF THE COLLEGE OF LIBERAL ARTS AND SCIENCES MIE UNIVERSITY
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-20, 2017-03-31

本稿は、明治末期に三重県に存在した近代的水産缶詰会社の先駆けたる東洋水産株式会社(以下、東洋水産)の興亡の全容を詳らかにし、その歴史的意義を再検討した。殖産興業の中でも缶詰産業の発展は他の諸産業に遅れをとっていた。だが日露戦争以後、中央(牧朴真・農商務省水産局長)・地方(石原圓吉・三重海産組合代表)の両方から軍需缶詰工場を輸出向鰮いわし油漬缶詰製造工場に転換する着想が芽生え、それが、両者の対立を経つつも妥協に転じて東洋水産設立に至る。だが鰮の不漁、輸出不振が続くや、大株主が離反し、同社は再編を余儀なくされる。加えて一九〇七年不況がこれに追い打ちをかけ、海外市場はおろか国内市場でも同社の水産缶詰は売れず、結果として同社は軍需缶詰工場へと再び回帰せざるをえなかった。こうした中、東洋水産の経営を支えたのが、農商務省から技師として派遣された高碕達之助であった。高碕は中央の最新技術を地方にもたらすと同時に、地方の窮状を中央に訴えるユニークな役割を果していく。また、同社が軍需缶詰工場に転換するや、その責任者(技師長)として経営再建に尽力した。だが刃折れ矢尽きた高碕は渡米を決断、石原もこれを快諾した結果、東洋水産は事実上の解散を迎えるに至った。このように東洋水産は時代の徒花に終わった。だが、その遺産は少なからぬ地方の人々の生活を支えたと同時に、後の日本缶詰産業発展のために不可欠な経験となった。This paper examines the rise and fall of Toyo Suisan Kaisha (the Oriental Marine Products Co.) in Mie prefecture from 1906 to 1914. The Toyo Suisan Kaisha was one of Japan's fi rst modern Sardine-canning companies and it was promoted by the Meiji government. Previous work leaves many points unclear about this historically important company. Using primary documents and neglected materials (e.g., Ise Shimbun), I show the actual condition of the company's business and consider its historical implications. To present of an authentic picture of Toyo Suisan Kaisha, I focus on the relationship between the national government and local actors (Mie prefecture and local businesspeople), emphasizing the role of Takasaki Tatsunosuke who, as an engineer, held a mediating position between the two. The historic legacy of Toyo Suisan Kaisha is due to Takasaki. He established Japan's fi rst modern can-manufacturing company and modernized the entirety of Japan's canning industry.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.611, pp.50-52, 2015-03-09

常磐道の整備当初の予定から2カ月前倒しとなる3月1日に開通した常磐道常磐富岡インターチェンジ(IC)−浪江IC間。東日本高速道路会社いわき工事事務所の真壁正宏は、現場をピンクに染め上げて完成を急いだ。 きれいに折りたたまれて、ずらりと棚に並んだピン…
著者
Jeannette M. Wing 翻訳:中島 秀之
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.584-587, 2015-05-15

このエッセイはコンピュータ科学者だけではなく,すべての人が学び,そして使いたいと考えるに違いない一般的な態度とスキルに関するものである.