著者
海野 敏 影浦 峡 戸田 愼一
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-17, 2012-03-31 (Released:2017-04-30)

本稿の目的は,戦後日本における印刷メディア受容量変化の数量的分析である。分析には,販売ルート経由の図書,雑誌,新聞の受容量,図書館ルート経由の受容量,経済動向の5変数からなるモデルを用いた。具体的には,国民1人当たりの図書,雑誌の実売部数,新聞の発行部数,公共図書館の館外貸出数と,実質経済成長率を分析した。この5つの時系列データに対し,同時変化関係の指標として相関係数を求め,先行遅行関係の指標としてグレンジャー因果性検定を行った。分析の結果,以下の結論が得られた。第1に,販売ルート経由の受容量と経済動向とのあいだに正の相関,図書館ルート経由の受容量と経済動向とのあいだに負の相関がある。第2に,図書の販売ルート経由の受容量は図書館ルートに先行している。第3に,販売ルート経由の受容量は相互に正の相関があり,図書,雑誌,新聞の順に変動している。図書と雑誌の関係については詳細な分析を加えた。
著者
岡田 仁志
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.440-443, 2014-04-15

分散型の仮想通貨が相次いで登場し,インターネットの資金の流れを変えている.P2P技術を使ったビットコインなどの分散型仮想通貨は,これまでの電子マネーと全く異なり,発行主体が存在しない.このため,主体を規制する従来型の手法では適切なレギュレーションを及ぼすことができない.国境を超えて流通する分散型仮想通貨は,インターネット社会や現実の世界にどのような影響を及ぼすのか.分散型仮想通貨の構想を発表した原著論文を読み解きながら,その将来性と課題を考察する.そして,ビットコインなどの仮想通貨が原著論文の構想とは乖離している様子を確認したうえで,我が国における制度設計のためのヒントを探る.
著者
高橋 清
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.67-71, 2010-03

本研究は、2008年3月に行われたJBLプレイオフ・ファイナルの4試合を対象とし,バスケットボールの試合においてリバウンドの獲得本数が試合の勝敗にどのような影響を及ぼすのかを,オフェンスリバウンド,ディフェンスリバウンドについてそれぞれ比較し,分析を試みたものである。その結果,オフェンスリバウンドは獲得本数の優劣が,試合の勝敗に直接関係するのではなく,獲得したオフェンスリバウンドを得点に結びつけた割合が高値の試合において,試合の勝敗に多大な影響を及ぼすことが認められた。ディフェンスリバウンドにおいては,両チームのインサイドでプレイする選手にリバウンドにおける技術の優れた選手が存在し,自チームのディフェンスリバウンドを確実に獲得した結果,ディフェンスリバウンドの重要性は再認識することができたが,獲得本数による優位差は認められず,試合の勝敗に及ぼす要因に至らなかった。
著者
荒谷 邦雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、様々な食性を示すコガネムシ上科を対象に、形態やDNAを用いて各群の間の系統関係を明らかにし、得られた系統情報に様々な餌食物の資源的特性を加味することで、本上科の食性進化の史的概観を探ることを試みた。コガネムシ上科の各分類群の系統解析に関しては、まず、クワガタムシ科について、幼虫形態および16SリボソームRNA遺伝子を用いて世界の全亜科、アジア産のほぼ全属間の系統関係を明らかにした。また、分類学的に混乱が多いDorcus属に関してはRAPD法やCOI遺伝子による解析も行い、属内の詳細な系統関係も明らかにすることができた。16SリボソームRNA遺伝子を用いてクロツヤムシ科に関しては世界の全亜科間、コガネムシ科に関しては全世界のカブトムシ亜科の主な属間の系統解析を行った。さらにコガネムシ上科全体に関しては、16SリボソームRNA遺伝子を用いてクワガタムシ科、クロツヤムシ科、コガネムシ科、センチコガネ科、コブスジコガネ科、アカマダラセンチコガネ科、アツバコガネ科の科間の系統関係を明らかにし、後翅脈等の構造に基づいて構築されていた従来のコガネムシ上科の系統関係との比較を行った。得られた系統関係に基づき、クワガタムシ科をはじめとする食材性の群における褐色、白色、軟の各腐朽型への選好性の進化が主に幼虫の木材構成高分子に対する消化能力の獲得と深く関わっていることを明らかにした。さらに腐植物食性のテナガコガネ等や好白蟻性の群に関しては、高窒素含有量を求めて食材性のものから二次的に移行した可能性が高いことを示唆した。これは腐植物食性が原始的な食性であるとする従来の見解を大きく改めさせるものである。さらに食性とも深く関わる亜社会性の起源に関しても議論すると共に、亜社会性のクロツヤムシ科では食性の違いが前肢や体の厚み等の形態変化をもたらしていることをも明らかにした。
著者
香川 靖雄 岩本 禎彦 蒲池 桂子 田中 明 川端 輝江 中山 一大
出版者
女子栄養大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

目的:健康維持に不可欠なEPA,DHAの摂取量が殆どない菜食者の中で、Δ5脂肪酸不飽和化酵素の遺伝子多型rs174547のC型ではALAからのEPA,DHA合成能が低いためその健康状態を研究した。結果:DHA摂取量0gの純菜食者+乳菜食者の血清と赤血球脂肪酸はTT型に比べてALAはC/CC型で増加し、血清EPA,DHAは減少し、ω3指数(赤血球EPA+DHA)は3.2に減少していたがAAの減少も著明であった。純菜食+乳菜食の健康状態は国民健康・栄養調査の一般日本人の健康度を上回り多型間に差が無かった。健康度はEPA/AA比の増加とDHA保持能増加で低いDHA摂取量を補償すると推定した。
著者
上出 吉則 辰己 丈夫 村上 祐子
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.39, pp.239-246, 2017-08-10

小学校でのプログラミング教育の実施に向けた有識者会議の提言では,「プログラミングへの興味を持ってもらうことが重要」 「既存の教科の中で実施」 などの提言が見られる.我々は,プログラミングを有志の生徒がおこない,同年代の生徒の創作した Scratch プログラム教材を中学校の数学の授業で活かす試みをおこなった.「図形の回転移動」 の単元での図形の移動概念の理解を目標とした.さらに,本研究では数学の授業としての情意面での効果を定量的に検証する試みをおこなった.Scratch プログラムの使用前と使用後の自己評価のデータの平均値を算出し F - 検定および t - 検定をおこなった.その結果,数学教育として通常の方法に比べて Scratch プログラムの効果があることがわかった.記述式回答においても,プログラミングへの興味 ・ 関心を示す生徒が増加した.これらのことより,算数数学教育においては,プログラミングを学ぶことや活用することで,教科書では不可能な数学的概念の深い理解が得られ,結果としてプログラミングへの興味 ・ 関心を持てることがわかった.
著者
田勢 長一郎
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.264-271, 2005 (Released:2005-05-27)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

麻酔科医にとり挿管困難症例は避けては通れない重大な問題である. 挿管困難症に対しては種々の方法が考案されているが, このなかで気管支ファイバースコープ (BF) をガイドにして気管挿管を行う方法は, 使用法に慣れれば合併症が少なく, 短時間ででき, 最も成功率が高い. 経口あるいは経鼻挿管が可能なすべての挿管困難症例に適応があると思われる. BFによる気管挿管は安全かつ確実な方法であるため, 麻酔を専門とするすべての医師にとり必須の技術であり, 熟練していなければならない.
著者
新井 隆介 大窪 久美子
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.142-147, 2014
被引用文献数
1

岩手県では半自然草原群落が急速に減少しているため,本研究では残存する群落と過去の群落の種構成を比較することにより,半自然草原群落の適切な保全策について検討することを目的とした。その結果,残存する群落はススキ優占型MsI型とMsII型,シバ優占型ZjI型とZjII型の4 群落に分類された。過去に記録されたススキ群落は,本研究におけるシバ優占型の出現種と一部共通していた。過去のススキ群落の管理条件から,この群落の成立には春季の火入れと秋季の刈取り管理が重要であったと考えられた。さらに残存する群落では遷移進行が確認され,その保全には刈った草木を群落外に搬出する管理条件の改善が急務であると考えられた。
著者
山田 あすか 大谷 優 倉斗 綾子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.77, no.672, pp.309-318, 2012-02-29 (Released:2012-03-07)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

This paper aimed to examine the calculation method and the standard for area necessary for after-school children's day-care center. It was shown that the examination only depending on the evaluation by staff resulted in an indefinite outcome, and the indicator focused on kinds of children's plays was effective. Moreover, multiple foundations of the calculation were found, and the process of calculating the standard for necessary area based on the combination of these foundations was suggested.
著者
加藤 詩乃
出版者
書学書道史学会
雑誌
書学書道史研究 (ISSN:18832784)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.24, pp.15-28,119-118, 2014 (Released:2015-04-11)

The manuscript of the Rōko shiiki 聾瞽指歸 attributed to Kūkai 空海 (Kōbō Daishi 弘法大師) dates from the start of the Heian period. In this article I focus on its formal characteristics and reexamine the advancement of the Japanization of Chinese calligraphic techniques in the history of Japanese calligraphy.  The Rōko shiiki is characterized by changes in the size of characters depending on the flow of the narrative and the overall spatial composition and by the use of diverse calligraphic techniques to correlate the characters with surrounding characters. Each of the individual elements has its origin in Chinese calligraphy, but because they have been selected by the calligrapher for the purpose of calligraphic expression and have been structured on the basis of his own interpretation, one can detect an individuality that differs from that of China. In particular, a key to understanding the method of structuring the paper is the "variation and harmony" that are considered to have become established by the time of the Nara period in the history of Japanese calligraphy.  Among the Shōsōin 正倉院 documents there are examples in which "variation and harmony" have been employed in the size, placing, and slant of characters. It is to be surmised that the writing styles of immigrant monks and Japanese monks who had studied in China, both groups of whom transmitted the traditional calligraphic style of Wang Xizhi 王羲之, were consulted when developing this sense of composition. In documents of the Nara period, the act of writing by making distinctive use of space and taking into account relationships with nearby characters, based on traditions going back to Wang Xizhi, manifested in a structuring of sheets of paper that displayed "variation and harmony."  Consequently, the expression of "variation and harmony" in the Rōko shiiki can be understood as a distinctive feature of "Japanization" that emerged as Chinese calligraphic techniques took root during the Nara period. In the eighth century, when understanding of Chinese calligraphy was inadequate, people were seeking to master calligraphic styles in this manner. As a result, the interpretations and aesthetic sense of people of the Nara period came to be reflected in calligraphy and brought about advancing Japanization in the history of Japanese calligraphy.