著者
西村 公宏
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.431-436, 1997-03-28
被引用文献数
1 1

明治期,大正前期における東京帝国大学本郷キャンパスの外構については,下記の2点が指摘できる。1.明治前期においては,既存庭園の改修が主体であり,営繕掛西郷元善や内科教授ベルツ等が関係しているが,ケヤキ並木等,複数の庭園を並木で結ぶ手法も見られる。2.明治後期,大正前期では,外構の継承と拡充がなされているが,これらは,浜尾新,本多静六等により進められ,学生が学業に親しめる環境がイメーシされている。特にクスノキ並木(1903)やイチョウ並木(1906)は,東京帝国大学における造園学の成立期に実現した造園事例としても位置付けられる。
著者
藤本 武
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.21-43, 2007

人類共有の財産とみなされてきた世界各地の多様な作物は、今日地域の文化資源や世界の遺伝資源と認識され、保護が模索されるとともに、そのアクセスと利益配分をめぐって国際的な議論がかわされつつある。ただ、そうした多様な作物がもっとも豊富にみられるのは周辺地域の諸社会であり、文化人類学からの貢献が期待される。本論が分析するのも、アフリカのなかで例外的に長い国家の歴史をもつエチオピアにあって、その西南部という十九世紀末に国家体制に編入され、今日数多くの民族集団が分布する周辺地域における一少数民族の事例である。従来の研究では、各民族集団における固有の生態条件や文化的慣習との関連でその多様性が考察されることが多かった。しかし時間・空間的な範囲を広げて検討した本論の分析からは、今日の民族集団の枠組み自体が自明なものでなく、国家体制に組み込まれる以前、人びとは境界をこえて活発に移動をくりかえしてきており、むしろそうした広範な移動・交流によって今日の多様な作物・品種の基礎が築かれていたことが示唆された。また自給自足的だった経済は国家編入を契機に変化し、二十世紀に外部供出用の余剰生産を企図した穀物栽培が拡大するなかでその品種への関心は低下し、一部の穀物品種はすでに失われ、あるいは現在消失の危機に直面している。その一方、果樹や香辛料、野菜などの副次的な作物が外部から次々ともたらされ、庭畑に積極的に植えられることで全体の作物の種類は増えてきている。つまり、近年の作物の多様性の動態は一様ではない。ただ、いずれも社会のあり方と密接にかかわって変化するものであることを示している。今後作物資源の保護を模索する際は、民族集団などの単位で閉じた静態的なモデルにもとづいて構想するのでなく、より広い範囲を対象に人びとどうしのつながりや交流を促していく動態的なモデルにしたがって構想していくことが望まれる。
著者
倉爪 真一郎
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.33, pp.26-30, 2007-03

ミシェル・フーコー晩年の倫理思想が,終末期医療における患者-家族-医療従事者関係の構築という課題にどう答え得るか,これが本稿の主題である。そして2つの可能性が導き出された。第一に,自己決定権(自律)と死(固有性)の関係は,死(真理)に到達するために主体をどう変化させるか,という倫理の問題として議論され得るということである。第二に,医療従事者への信頼と患者の死(固有性)を尊重するという贈与-感謝関係は,言葉を通しての倫理的関係として議論され得るということである。
著者
和田 一実
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.19, no.12, pp.12_18-12_25, 2014-12-01 (Released:2015-04-03)
参考文献数
14
著者
寺尾 保 恩田 哲也 有賀 誠司
出版者
東海大学
雑誌
東海大学スポーツ医科学雑誌 (ISSN:09153659)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-27, 2000

The purpose of this study is to elucidate the energy metabolism in a simulation of the fifth section of the Hakone Ekiden(disrance of 20.7km)using a runner-motion-response-type treadmill in a laboratory. Five male runners aged 20.2±.6 years were asked to run at their desired speds on a programmable treadmill whose"slope-setting"was changed automatically every fifty meters. The runners watched a video of the acrual course during this experiment. We found a significant correlation between the slope every fifty meters and the mean step length(r=-0.695)and step frequency(r=0.646). The mean values of oxygen uptake and respiratory exchange ratio of the five runners were 59.83±5.42(range 56.35-62.55)ml/kg/min and 0.99±0.05(range 0.97-1.01), respectively. The total energy expenditure and energy expenditure deduced from carbohydrates and lipids in this fifth section were 1632±58 kcal, 1502±120 kcal, and 130±96 kcal, respectively. In the case of an upward slope, we observed a significant correlation between energy expenditure(kcal/kg)for the five runners and mean step length(r=-0.942), mean step frequency(r=0.918), and running time(r=0.982). These results indicate that about 90% of the total energy used in the fifth section is supplied by the carbohydrate component and showed the high intersity of exercise during this section. In conclusion, our results for the upward slope showed that good long-distance runners use a longer step length, and thereby save energy and thus realize an improved running economy.
著者
田中 瑞季 梅崎 修
出版者
法政大学地域研究センター
雑誌
地域イノベーション (ISSN:18833934)
巻号頁・発行日
no.5, pp.9-20, 2012

本稿では、地域におけるソーシャルキャピタルの蓄積を多様な喫茶店の役割に焦点を当てて分析した。地域における人が集まる場所を分析したソーシャルキャピタル研究はあるが、一地域のほぼ全ての場所を網羅的に分析した研究は少ない。本稿では、喫茶店という交流を生む場所を調査分析した。分析結果として明らかになったのは、以下の4 点である。(1)神楽坂における喫茶店は、常連客との一歩踏み込んだ交流を生み出し、紹介などによって人的つながりを広げていることがわかった。(2)喫茶店には、大きく分けると、喫茶サービスに特化した「喫茶店タイプ」、大規模チェーン店に多い、顧客がコーヒーを運ぶ「セルフタイプ」、喫茶以外の目的を持つ「多目的カフェ」がある。「多目的カフェ」は地元以外の観光客が多いが、「喫茶店タイプ」と「セルフタイプ」は常連客が多いことがわかった。(3)店舗タイプ別に顧客の特徴を分析し、「喫茶店タイプ」と「セルフタイプ」の違いを明らかにした。すなわち、前者は、1 人客が集まり、交流しながらソーシャルキャピタルを「構築する場」であるのに対して、後者は、知り合いがその関係を「強化する場」であると解釈できる。(4)さらに本稿では、喫茶店の座席構成を分析した。「セルフタイプ」は、総席数が多い大型店舗であり、テーブル席と個人席は多いが、カウンター席はないという特徴がある。その一方で、喫茶店タイプはカウンター席が多いという特徴を持っていることを確認した。この違いは、常連率と座席構成の相関関係を分析した結果とも整合的である。「セルフタイプ」のように総席数が多く、「喫茶店タイプ」のようにカウンター席割合が増えれば常連が増えるので、ソーシャルキャピタルが強化され、構築されるには、それに適した場が選択されていると解釈できる。This paper analyzed the accumulation of social capital in Kagurazaka by focusing on the various roles of a coffee shop. The investigation elucidated the following points: (1) At the coffee shop in Kagurazaka, after an initial introduction, regular customers exchanged words and maintained human relationships. (2) For the purpose of this study, we classified coffee shops into three types: ① "Coffee shop type" serving only tea and coffee; ② "Self-service type," as are many large-scale franchises; and ③ "Multiple-purpose cafe" that provides other services along with those provided by the coffee shop type. It was clarified that although multiple-purpose cafes are visited by many tourists, coffee shop types and self-service types tend to demonstrate customer loyalty. (3) The coffee shop type is frequented by individuals and groups, developing social capital, whereas in self-service types, the existing social capital is strengthened. (4) Further, the seating arrangement in the coffee shops was analyzed. The self-service type is generally a large-sized store that has many seats to accommodate its large customer base. Seating arrangements are segregated per requirement; there were many table–chair arrangements, individual seating, and counter seats. For instance, a coffee shop type has many counter seats. The difference in social capital among the three store types complies with the difference in the correlation between the rate of a frequenter and seat composition. Thus, this study suggests that an increase in total number of seats, similar to the self-service type, and a higher number of counter seats, such as in the coffee shop type, increases the rate of regular customers.
著者
比賀照夫監修
出版者
TOSS出版
巻号頁・発行日
1996
著者
山本 政人
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.98, no.7, pp.53-59, 1999-07-01
著者
濱田浩一郎著
出版者
新人物往来社
巻号頁・発行日
2009
著者
前迫 ゆり
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学人間環境論集 (ISSN:13472135)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.79-96, 2010-03

世界文化遺産であり,国の特別天然記念物にも指定されている春日山原始林において,哺乳類と鳥類の多様性と森林利用に関する基礎情報を得るため,2007年10月から2008年9月までの1年間,10台の自動撮影装置によって,小型〜中大型哺乳類相および鳥類相の調査を実施した。その結果,9種の小型〜中大型哺乳類と5種の鳥類が確認された。撮影頻度が高い順に,哺乳類ではニホンジカ,イノシシ,タヌキ,テン,チョウセンイタチ,アカネズミ,ムササビ,アナグマそしてニホンノウサギが記録された。なかでも1位のニホンジカの撮影頻度の割合はきわめて高い値(83.5%)を示し,ついでイノシシ(7.2%)の順であった。国内外来種であるナギを含む群落ではシカの撮影頻度が低い傾向がみられた。鳥類では,シジュウカラ,ルリビタキ,ヒヨドリ,ヤマガラ,フクロウなどが撮影された。1478カメラ日(延べカメラ稼働日数)に撮影された資料から,照葉樹林が冬期においても哺乳類と鳥類の重要な生息場所として機能しており,哺乳類や鳥類の多様性は,森林の林冠状態や人間の干渉度などによって変動することが示唆された。
著者
松原 幹 阿部 知暁
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.305-311, 1999 (Released:2009-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1
著者
福田 喜一郎
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.19, pp.45-49, 2012-03-31

Zu unserer Uberraschung behauptet Kant,dass das Bestreben des Atheisten, seine sittlich rechtschaffe Eigenschaft zubewahren, begrenzt sei. Aber diese Behauptung von der moralischen Begrenzung des Atheisten steht beileibe nicht im Widerspruch zum Grundsatz der Willensautonomie bei Kant. Er fuhrt dabei seine Unterscheidung des moralischen Actus vom religiosen Habitus ins Feld, um solchen moralischen Nihilismus zu vermeiden. Er versucht zugleich weiterhin, der amoralischen Welt als Natur eine neue praktische Bedeutung beizulegen, was ,, das hochste Gut" oder das Dasein Gottes betrifft. Es ist m. E. die reflektierende Urteilskraft, die diese Bedeutung entdeckt und das Vertrauen zu dieser Welt gewinnt. In diesem Sinne kann Kant als der eigentliche Verfechter der Idee des Gnadenreichs von Leibnitz bezeichnet werden.