著者
日高 和美
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、文部科学省が平成30年度に教職課程設置大学に対して実施した「再課程認定」が各大学に与えた影響を明らかにすることを目的としている。具体的には、再課程認定前後の教職課程の科目の変化、担当者の専門性、事務職員の対応等を明らかにすることを通して、本改革が目指す「教職課程の質保証」と「各大学の自律性・独自性」がどのように実現しているのかを明らかにする。本研究を通して、政策の成果の検証の他に、教職課程担当者に求められる資質・能力が解明され、研究者養成機関と教職課程担当者を繋ぐ人材育成プログラムの基礎的・基盤的研究の構築に寄与できると考えている。
著者
中村 貴子
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

【目的】ANKK1はSerine, threonine kinase domainを持ちDRD2遺伝子に作用し特にANKK1-rs4938012はアルコール他の依存症と関連する有力なSNPであるとの報告がある。日本においてもアルコールや薬物耐性および依存症(麻薬およびCaffeine)は大きな社会問題になっているがまだその研究は多くない。ANKK1周辺遺伝子は多くの塩基置換部位を持ち総合的ハプロタイプ解析を行う必要がある。今回は各疾患群とのCase control研究を行うとともに人種による遺伝子頻度の差異についてSSCP法とTaqMan法を用い分析を行った。【試料】日本、中国、モンゴル、ミャンマー、南米コロンビア、アメリカ、フランス、アイボリーコースト、カメルーンの一般集団DNAおよび国立久里浜アルコール研究所より提供のアルコール依存症患者DNA、筑波大学麻酔科より提供されたDNA(サンプルは筑波大学倫理委員会承認済み)【方法】ALFexpressを使用したSSCP法およびABI-7500 RT-PCR機を使用したSNP解析法【結果】1.ANKK1, Exon1, Exon2を中心とした領域:rs4938012,含む6箇所の塩基置換部位をSSCP法で分析しハプロタイプ解析を行ったこれらの領域においてそれぞれの人種に特徴的なハプロタイプを検出した。アメリカの論文にてアルコール依存症をはじめとする各種依存体質と強い相関を持つとされる塩基置換箇所はこの研究においてアフリカ黒人のサンプルに多くみられることがわかった。日本人コントロールとアルコール症患者との間には有意差は認められなかったことからアメリカにおける依存症患者の人種の問題を含んでいるかまたは別の領域による差異の可能性も示された。2.ANKK1, Exon5~Exon8 : rs1800497はこれまで多くの精神疾患との関連遺伝子と指摘されてきたがまた反証の見解も多い。今回は今までのSSCP解析とともに初めてABI社のTaqMan Probeを使ったSNP解析を行いその精度を比較検証した。両者はそのSNP領域近傍の別のSNPの有無により使い分ける必要がある。今回アルコール依存症群と一般群との間に5%以下の有意差が認められた。Exon6のrs4938016の一般とアルコール症群において遺伝子頻度では有意差は認められないがアルコール症はヘテロが多く遺伝子タイプでは1%以下の有意差があった。ANKK1の5'末端のPromoter領域にはCpGアイランドが存在する。このことと今までの結果からPromoter領域の発現抑制が関与することも考えられ、現在その領域のメチル化Primerをこの研究費により作製しDNAのバイサルファイト処理を行いメチル化解析を進めている。
著者
松本 マスミ
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究では植物の生物学的特徴とヒトの認識の間の「ずれ」が言語表現にも反映していることを、生物学的見地を導入しながら、英語の植物表現を用いて明らかにする。生成文法の枠組みで、植物を記述する動詞である「園芸動詞」などを含む英語表現について、統語的・意味的・形態論的に分析し、反語彙主義に立脚した三層分裂動詞句構造の精緻化と展開を行う。生物学、植物学、生物言語学の知見を取り入れることによって、言語をより広い視野により研究することができ、新しい生物言語学の分野を開拓することができる。同時に、本研究の成果により「無生物主語」の新しい説明方法が可能となり、英語教育に貢献することができる。
著者
小深田 祐子
出版者
熊本学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究の主目的は、意味・語用論的な観点から、日英語の所有構文および関連構文に見られる定性効果に焦点をあて、所有の概念と名詞句の意味的性質とがどのような関係にあるのか、その根底に潜む意味的要因を見極めることである。具体的には、以下の3点に重点を置き、原理的説明を試みる。1) 英語の所有構文および獲得動詞を含む構文の定性効果と名詞句の意味機能との関係の解明2) 名詞句の意味機能が密接に関わる構文のうち、とりわけ所有の概念と一見関係しないような他の言語現象(日本語のコピュラ文など)との比較検討をおこなう。3) 名詞句の意味機能の観点から、日英語の普遍的な特徴および個別的な差異を明らかにする
著者
大島 義和 宮地 朝子 佐野 真一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

名詞述語文は,一般に「aとbは同一である」または「aはAに包摂される」という関係をあらわす(例:「平塚らいてうは {『青鞜』の創刊者 / 作家} だ」)が,その一方で,「ユミはウナギだ (= ユミはウナギを注文した,ユミはウナギの専門家だ,等)」「ヒロシはスーツだった (= ヒロシはスーツを着ていた)」「ナオミは東京に行く予定だ (= ナオミには東京に行く予定がある)」といった,非典型的な意味を持つ有標的な名詞述語文も存在する。本研究では,このような有標的名詞述語文の分類と,形式意味論,歴史言語学,対照言語学,語彙論といった諸観点からの分析に取り組む。
著者
勝又 隆
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、古代日本語において述部に連体形が含まれるなどして名詞と共通する特徴を持つ文(名詞性述語文)について、それぞれの構文が互いにどのように影響し合い、上代から中古、中世にかけて変遷したのかを記述・考察し、「述語」や「構文」の変化が起こる原理の一端に迫ることを目的とする。その過程で、構文的特徴や文意味・文機能等の観点から分析し、古代語の文終止体系におけるこれらの構文の位置づけを明らかにする。また、名詞性という基準によって各構文の変化を質的に捉えることにより、「述語」や「構文」の変化が起こる原理の一端を明らかにすることに貢献することを目指す。
著者
宮本 直人 竹田 正樹 森 敏 宮本 明 畠山 望 三浦 隆治 森本 達郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

スキー競技において,ワックスおよびストラクチャは勝敗を決める最重要要素である.本研究では,ワックスおよびストラクチャの摩擦係数を推定するための高精度GPS装置を開発した.摩擦係数の推定はエネルギー保存の法則を用いた.本手法により,摩擦係数が0.001の精度で計測できることを確認した.スキーの滑走性能は雪面状態や気象条件に大きく依存する.競技コースの雪面状態および気象条件とワックスおよびストラクチャの摩擦係数を関連付けてデータベース化した.これにより,スキー競技における最適なワックスおよびストラクチャを選定するための基礎を構築した.
著者
SAFFEN DAVID
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本研究でわれわれは、PC12細胞の亜株であり神経成長因子(NGF)によりすばやく分化するPC12D細胞を用いて、神経成長因子(NGF)やムスカリン受容体アゴニストであるカルバコールとオキソトレモリンの刺激によって、zif268のmRNAが迅速に発現することを明らかにした。PKCをダウンレギュレートするホルボールジアセテート(PDA)を刺激の一日前に作用させると、ムスカリン受容体のアゴニストによるzif268の発現が完全に抑えられた。一方でNGFによる発現は、同じ処理により部分的にしか抑えられなかった。またNGFによる発現の誘導は、蛋白キナーゼの阻害剤であるK252a(100nM)やスタウロスポリン(10nM)によって阻害された。この結果により、NGFによる発現誘導にはチロシンキナーゼであるp140-trkA NGF受容体の活性化が必須であることが示唆された。カルバコールやオキソトレモリンによる発現の誘導には、細胞外カルシウムの流入が必要であり、これはLタイプのカルシウムチャネルの阻害剤であるニフェジピンにより阻害されないチャネルを介していることがわかった。以上の結果から、NGFとムスカリンアゴニストのzif268発現誘導は、少なくとも部分的には独立した経路を介していることが示唆された。われわれはまた、zif268のDNA結合部位を、マルトース結合蛋白との融合ペプチドとして大腸菌で発現させた。この蛋白はアフィニティークロマトグラフィーで回収でき、zif268の認識するDNAの配列に特異的かつ高親和性に結合した。今後この融合蛋白を用いて、転写因子zif268によって制御されている遺伝子を同定する予定である。
著者
森田 明理 前田 晃
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

大規模分子疫学的調査:人種差による環境因子(喫煙、紫外線、大気汚染)に対する皮膚老化の差違(ドイツ・デュッセルドルフ大学環境医学研究所との共同研究)-JAGE project(JAGE=Study of extrinsic skin ageing of Japanese and German women)の疫学調査をすすめ、解析をすすめた。ドイツ人では早期にしわができやすく、日本人ではしみができやすいこと、しみに関しては大気汚染との関連が統計上明らかとなった。また、喫煙としわの関係が明らかとなった。JAGE2として、都市と郡部での皮膚老化に対する違いを検討する予定である。また、喫煙者のTH17が末梢血中に多いことが明らかとなり、乾癬、掌蹠膿疱症でTH17が末梢血中で上昇していることが明らかとなり、タバコ煙抽出液でTh17が誘導されることが明らかとなった。さらに、タバコの煙には3800以上の成分があるともいわれ、水溶性以外に水不溶性の成分が含まれる。その中には、Aryl hydrocarbon receptor(AhR)のシグナル伝達経路を活性化するものが含まれていることが推定されている。タバコ煙抽出液の水不溶性成分とAhRの関係を分析するために、ヘキサンに溶解するタバコの煙抽出液(ヘキサン抽出液)を作成し、培養人繊維芽細胞を使用した。ヘキサン抽出液は、AhRのシグナル伝達経路であることを示すチトクロームP1B1(CYP1B1)発現を有意に上昇させ、また有意にMMP-1発現誘導した。また、AhRノックダウンした細胞では、タバコ煙抽出液の添加で、MMP-1の上昇はなく、AhR経路の活性化によってMMP-1表現を誘導することを明らかとなった。このことは、タバコ煙がAhR経路を活性化することを示しただけでなく、AhR経路が、環境因子による皮膚老化に関与することを示唆するものである。
著者
沼知 寿美子 佐藤 光源
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

メタンフェタミン(MAP)やアンフェタミン(AMP)などの覚せい剤を長期反復投与した際に観察される逆耐性現象(以下逆耐性と略)は,その出現様式,行動内容の変化及び抗精神病薬への反応性の類似から覚せい剤神経病の発症と再発の生物学的機序に関する研究モデルとされている.逆耐性に最も直接的に関連した神経化学的な変化は逆耐性形成動物に覚せい剤を再投与した際のドパミン(DA)作動性神経終末からのDAの過剰放出である.低用量の覚せい剤はドパミントランスポーター(DAT)に作用してDAを細胞外へ輸送する(交換拡散モデル:FischerとCho.1979)と考えられており,最近DATの発現を阻止したマウスでは上記のDA過剰放出や逆耐性が形成されないことが確認された(Girosら,1996)ことから逆耐性形成時にはDATのDA放出機構に何らかの異常が生じている可能性が示唆されている.そこで今回我々はMAP逆耐性形成後断薬7日目の,1.ラット脳線条体を用いてDATに特異的なリガンドである〔^<125>I〕RTI 55の結合実験を行い,逆耐性に伴うDATの変化を検討し,2.定常状態での^<11>C-MAPの脳内動態の変化について検討した.非線形最小二乗法による解析の結果,DATへの〔^<125>I〕RTI 55の特異結合は高親和性,低親和性部位の2つが存在した.解離恒数(Xd)に関しては両群に有意な差は認められなかったが,逆耐性群では高親和性部位の最大結合数(Bmax)が対照群に比較して有意に増加していた(p<0.05,t-test)).しかし,^<11>C-MAPの脳内動態は線条体,側坐核/嗅結節,小脳のいずれの部位でも両群に有意な差は認められなかった.最近,コカイン誘導体で標識されるDATの高親和性部位はDAT機能を反映することが報告されており,今回の結果はMAP逆耐性に伴って少なくとも断薬7日目にはDATの高親和性部位のBmaxが増加し,再投与の際のDA過剰放出の一部に関与することを示唆すものであるが,薬物動態の変化はある特定の神経細胞の変化のみでは説明が困難であると考察した.
著者
仁平 典宏
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本課題の目的は、日本の市民社会組織の「ビジネスライク化」と呼ばれる変化に焦点を当てて、そのメカニズムや諸帰結を明らかにすることである。本年度は、企業や助成団体への聞き取り調査については、コロナウイルスの感染拡大のために調査を断られるなど、十分に進まなかった。その代わりに、市民社会に関する言説分析を進めた。具体的には「NPO」に関する新聞記事のコーパスを用い、計量テキスト分析を行った。ビジネスライク化の仮説では、それらの言葉の強い連関を持つ言葉群が、政治・運動的なものから、経営・事業的なものへと、経年的に変化することが想定されているが、その妥当性をDictionary-based approachとCorrelational approachを併用しつつ検証した。分析の結果、仮説通りのトレンドが見いだされた。具体的には、1990年代から2010年代後半までの間に「運動」「政治」「市民」とコード化される記事は減少したが、「経営」に関する記事の割合は変わらなかった。また経営に関連して「不正」の関係する記事の割合は増加していた。このような変化がNPOに対する人々の不信感につながっている可能性について、計量データの二次分析によって、明らかにした。その知見の一端はNPO学会のシンポジウムで報告した他、論文にまとめ、NPO学会の学会誌である『ノンプロフィット・レビュー』に査読を経て掲載されることになった。その他、前年に実施した「首都圏の市民活動団体に関する調査」の分析結果をNPO学会で報告した。さらに、東日本大震災の市民活動の経年変化に関する分析を日本社会学会で発表し、その知見が収録された共著書が出版された。オリンピックのビジネス化にボランティアが動員されるプロセスの分析を行った論文が収録された共著書も刊行された。
著者
雨宮 薫
出版者
国立研究開発法人情報通信研究機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、訓練による運動習熟が時を経てどのように保存され、適応されていくのかを検討することにある。そのために、まず普段使用することのない運動学習を訓練させ、その後のブランク後にどのように獲得した技能が思い起こされるか、また思い起こされる技能は、最初の技能獲得時の運動技能レベルにどれほどよるのかを検討することを念頭に、初期の運動学習を設定した。この実験では、被験者に普段使用することのない左手の薬指と小指を自己最速スピードで交互に動かす訓練を繰り返し行ってもらった。技能レベルを操作する目的で、自主的に訓練をするグループ、そして受動的にロボットにより介助され訓練をするグループを設けた。通常、受動的な訓練は効果が限定的であることが知られているが、自分の能力を超えたスピードを経験する訓練効果については未だ効果が検証されていない。そこで、自己能力を上回るスピードで受動訓練をうけるSuper passiveトレーニンググループ、自己能力レベルと同じスピードで受動訓練をうけるSelf passiveトレーニンググループを設けることで、技能レベルが操作できるかを検討した。さらに、受動訓練が下方方向にも影響を与えるかを検討するために、自己能力レベルを下回るLow passiveトレーニンググループを設けた。結果、Super passive群は、自主的に訓練するグループの半分の訓練試行数で同等レベルの訓練効果を得ることがわかった。また、Self passive群やLow passive群の訓練効果より訓練効果が高く、受動訓練の直後にパフォーマンスが高くなる傾向が見られた。以上のことは、受動的にうける訓練内容により、パフォーマンスが通常訓練より促進される方向にも、抑制する方向にも影響することを示している。こうして得られた技能差や学習の相違を元に、次はブランクをへての学習の蓄積について検討する。
著者
池田 秀敏 吉本 高志
出版者
東北大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

民族進化の歴史と家族性モヤモヤ病の地誌的分布とに共通項があるか否がを明らかにすることを研究目的とした。民族の進化の跡を追跡する手段として、ミトコンドリアDNAの塩基変化を比較検討を行なった。これは、ミトコンドリアDNAが、主に母系遺伝をするがために、母系のルーツを探ることができるためである。また、Y染色体の染色体多型を用いて、父系系譜よりルーツを探った。家族性モヤモヤ病患者58名(男性16名、女性42名)と、モヤモヤ病がないと判断された健康人60名を対象とした。Y染色体の解析は、DYS287(YAP)locusと、DYS19locusとを行った。この解析結果から、父系には、大きく2つのルーツからの流れがあることが判明し、コントール集団と比べ、集積性があることが判明した。また、ミトコンドリアD-ループ領域のhypervariable region IIの(MT3)の検討を行った。ヌクレオチドは、Cambridge Reference Sequence(CRS)の93-110番及び、326-307番に相応している。家族性モヤモヤ病患者群では、MT3の塩基配列の違いがら見て10個のハプロタイプが存在したのみであったが、コントロール群では、30個のハプロタイプが見られた。また、平均塩基置換数を見ると、家族性モヤモヤ病群とコントロール群とでは、有意差が見られた(P<0.0001)。以上から、家族性モヤモヤ病には、ルーツがあり、モンゴロイドの移動進化とともに地球上に分布したと考えれた。
著者
森山 茂徳
出版者
独協大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究は1910年の朝鮮総督府設置から1945年の植民地統治終焉までの36年間において、朝鮮における言論機関の果した役割を政治的観点から明らかにしようとするものであった。言論機関を(1)邦字紙、(2)韓字(ハングル)紙とに分けて、研究の結果得られた知見を記すこととする。 (1)邦字紙-発行邦字紙数は時期によって異なるが40種以上にのぼり、その果した役割も多様である。第1に総督府機関新聞とされる『京城日報』の果した役割は特筆されるが、これについては「現地新聞と総督政治-『京城日報』について-」という論文を成果として発表し、同紙の人的構成、経営面の特性、論調の変遷、総督府との関係などについて詳細な分析を試みた。同紙は時期によりその性格を異にし、総督政治との緊張・対立をはらんだ時期と純然たる御用紙的役割を果した時期とに分けられ、とくに緊張期に生彩のある紙面を構成したこと、朝鮮人記者の重要なリクルート源であったことなどを明らかにした。第2に他の邦字紙は概ね日本人の朝鮮進出と朝鮮人独立運動の弾圧とを主張し、『京城日報』よりも尖鋭的な時期もあったが、時代が下るにつれて『京城日報』の独占体制構築の前にその下請的役割に甘んじてゆくことを明かにした。 (2)韓字(ハングル)紙-1920年代「文化政治」の開始により発行が許可され、朝鮮人の言論表明・政治表明・政治参加の機会の増大をもたらすチャネルとなったが、総督政治に対する支持調達よりも要求・抵抗の性格を多くもち時として弾圧を蒙った。しかし1930年代に発行部数の増加とともに商業化し、この中から民族的伝統を守りつつ総督政治に一定の支持・合意を与える部分も現われた。この中から戦後韓国の言論界、政界を担う人々が養成された(尖鋭化した部分は弾圧された)。この意味で言論は政治参加と主張穏健化、民族的伝統維持の主要な担い手としての役割を果した。これらの点については第2の論文で成果を発表する予定である。
著者
齋須 直人
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

採用年度2年目は採用1年目から開始した帰一派旧教徒の思想家コンスタンチン・ゴールボフとドストエフスキーとの関係についての研究を継続した。成果は、2019年4月のロシア思想史研究会で報告し、ロシア思想史の専門家の参加者たちから有益なフィードバックを得た。また、それをもとにさらに研究を進め、11月にロシアのサンクトペテルブルグで行われたドストエフスキー学会「ドストエフスキーと世界文化」で発表した。これらをまとめ上げ、博士論文の最後の章とした。12月から3月にかけて博士課程入学時からの成果をロシア語でまとめ上げ、2014年11月から2017年10月まで留学していたゲルツェン名称ロシア国立教育大学博士課程ロシア文学科に、2020年3月に学位論文(タイトルは『1860年代末から1870年代初頭のドストエフスキーの作品における導き手像:ザドンスクのチーホン、コンスタンチン・ゴールボフ』)として提出した。学位論文のテーマと並行して、現在のロシアの学校教育科目である「文学」において、ドストエフスキーがどのように教えられているかについても研究を行った。今に至るまで「文学」の教科書の多くでソ連時代のイデオロギーに沿った歪められたドストエフスキー理解がそのまま残っていること、ドストエフスキーの宗教面についての説明が少ないことなどが指摘されているが、近年のロシアのキリスト教的テーマでのドストエフスキー研究の隆盛との乖離があり、興味深い現象となっている。この研究は6月に東京大学で行われた第10回スラブ・ユーラシア研究東アジア大会で、申請者が組織した二つの共同パネルのうちの一つで発表した。この成果は論文としてまとめ、ドストエフスキー研究の論集(現在、出版のための手続き中)に寄稿した。
著者
Donald・C Wood
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

I have made considerable progress over the last two years. The core project of my research - the translation of Yoshida Saburo's 1938 book - is nearly complete. About 75% of it has been typed, and about the same percentage of the illustrations have been prepared (including the original photographs). However, because it is an extremely complex document - illuminating the life and community of a small-scale subsistence farmer and his family through a sequence of daily entries spanning the period from March of 1935 to March of the following year - there is still much work to do. During the final year, more typing will be done, and the final work on the illustrations and proofreading and editorial adjusting will be completed. Also during the final year, a publisher will be sought for the English language version.