著者
熊澤 輝一 木村 道徳 鎌谷 かおる 岩見 麻子 坂下 靖子 原田 将
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-10-21

本研究では、地域の将来設計において、環境共生社会とそこに至るストーリーを共同構築する手法を導入し、オントロジー工学の技術を援用しながら共同構築する新たな手法を開発することを目的とした。その結果、第一に、現地調査と伝統食材、古写真、未来年表のWSを通して、それぞれの環境共生に向けた地域のパタンを得た。第二に、環境・サステイナビリティ領域のオントロジーの拡充とともに、地域ストーリーの因果論理を記述するためのツールを開発した。第三に、地域のパタン同士をオントロジーを介して連携させて個別ストーリーを統合する手法を検証し、地域のパタンを作成して物語ることによる共同構築手法として提示した。
著者
秋永 一枝 兼築 清恵 佐藤 栄作 上野 和昭 鈴木 豊
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1 すでに刊行した『日本語アクセント史総合資料 索引篇』(秋永一枝ほか編 1997.2東京堂出版、以下『索引篇』)所載のアクセント史データを分析して、その基礎的・応用的研究を行い、これを公表した。(1)『索引篇』に掲載した資料の書誌、アクセント史資料としての価値、ならびにその利用方法などについて研究し、公表した。(秋永・上野・坂本・佐藤・鈴木編『同 研究篇』1998.2東京堂出版、以下『研究篇』)(2)『索引篇』所載のデータを整理し、名詞・動詞・形容詞について、それぞれアクセントの歴史的変化を類別し、これを「早稲田語類」と名付けて『研究篇』に公表した。また、「早稲田語類」を、従来の「金田-語類」と比較対照して一覧し、テキストデータとして公表した。(坂本・秋永・上野・佐藤・鈴木編『「早稲田語類」「金田-語類」対照資料』フロッピーディスク付き1998.10アクセント史資料研究会)(3)同じく『索引篇』所載データから複合名詞のアクセントデータを抽出し、そのアクセント型や語構成との関係などについて考察した。その成果の一部は『研究篇』に掲載したが、今後も継続的に研究する。2 京阪式アクセントを中心とする現代諸方言アクセントの研究は、上記「早稲田語類」の類別にも生かされているが、とくに京浜アクセントおよび東京アクセントについては、二種類の資料を公表した。(1)『楳垣京都アクセント基本語資料-東京弁アクセント付き-』フロッピーディスク付き(秋永一枝編1998.10アクセント史資料研究会)(2)『池田要 京都・大阪アクセント資料 五十音順索引』(上野・秋永・坂本・佐藤・鈴木編2000.2同)3 索引が未だ刊行されていないアクセント史資料について、その基礎的研究と索引の編纂とを行った。索引の刊行には至らなかったが、それぞれの文献についての基礎的研究はほぼ整い、近く索引も刊行する予定である。
著者
秋永 一枝 兼築 清恵(坂本 清恵) 佐藤 栄作 上野 和昭 鈴木 豊
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1、以下の諸索引を作成、刊行してアクセント史資料データを増補した。(1)医心方 声点付和訓索引(秋永一枝・坂本清恵・佐藤栄作編2001.8)(2)日本書紀 人皇巻諸本 声点付語彙索引(鈴木豊編2003.3)(3)高松宮本・林羅山書入本和名類聚抄 声点付和訓索引(佐藤栄作編2000.12)(4)平家正節 声譜付語彙索引上・下(上野和昭編2000.12/2001.12)(5)金田一春彦調査京都アクセント転記本(楳垣実京都アクセント記入)(秋永一枝編2001.9)2、『池田要 京都・大阪アクセント資料 五十音順索引』(2000.3アクセント史資料研究会)のデータベースを利用して品詞別に整理し、近現代京都アクセントの諸資料と比較しながら検討した。その結果「池田要 京都・大阪アクセントの注記について-名詞3拍までを中心に-」(坂本清恵)、「複合名詞からみた池田アクセント」(佐藤栄作)、「『池田要 京都・大阪アクセント資料』所載の用言のアクセント」(上野和昭)、「東京アクセントとの比較」(秋永一枝)などの成果を得た。3、方言アクセントの調査研究は京都・東京(秋永)、伊吹島(佐藤)などで実施した。その成果は、『新明解日本語アクセント辞典』(秋永一枝編2001.3)をはじめ、秋永(2002)「東京語の発音とゆれ」・佐藤(2002)「アクセント型の許容からみる伊吹島アクセントの3式-伊吹島と観音寺の中学生の比較-」などの論文に報告された。4、伝統芸能とアクセント史との関係についても坂本(2001a)「胡麻章の機能-近松浄瑠璃譜本の場合」(2001b)「声の伝承-復曲時には何が伝承されるのか-」(2001c)「文字の呪性-仮名遣いという呪縛-」(2002a)「「語り」と「謡い」-義太夫節のアクセントから探る-」(2002b)「近代語の発音-謡曲伝承音との関係-」などの研究報告があった。
著者
秋永 一枝 上野 和昭 坂本 清恵 田中 ゆかり 松永 修一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究は、秋永が行なった調査【東京旧市内(旧15区)を生育地とする話者の】録音資料をアーカイブ化し、汎く利用できる言語資料の作成も大きな目標の一つであった。劣化の危険性があった200本近い様々なメディアに記録された音声資料はすべてデジタル化しCD-ROMとハードディスクに保存を完了した。平成15(2003)年度には、アーカイブ化のテスト版をWeb形式で作成し国語学会において発表した。これは文字化資料の一部に付した「音声資料(アクセント、母音の無声化,訛音など)」「音響分析資料(音声波形・ピッチ曲線・スペクトログラム)」、「語義等解説資料」、「発音者生育地」が表示できるよう作成した。平成16(2004)年度は、(1)東京語音声の文字化(2)音韻情報・音声的情報の付加、(3)音声データの正規化とセグメントといった作業を中心に研究を進めた。(1)では、東京弁音声のデジタル化データを元に35名分の文字化を完成した。(2)では、秋永によるアクセントの聞き取り、無声化・ガ行鼻音化などの音声的特徴の情報記述を進めた。次に、これらの情報を(1)の文字化データに付加する作業を行なった。文節のセグメント・記号の付加作業が終了した後、HTML化、PDFファイル化を行なった。生育地が下町である話者を中心に12名分のデータ、約600ページ分の資料を完成させ、資料との音声リンクを行なった。平成17年度(最終年度)では文字化資料を中心とした報告書を作成。本資料はCD-ROMも同時に完成させ、公開可能な状態にすることができた。
著者
秋永 一枝 兼築 清恵 上野 和昭
出版者
早稲田大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

「アクセント史資料索引」として、昭和58年度に秋永一枝編『言語国訛竹柏園旧蔵本影印ならびに声譜索引』(第1号)、昭和59年度に上野和昭編『御巫本日本書紀私記声点付和訓索引』(第2号)、秋永一枝編『永治二年本古今和歌集声点住記資料ならびに声点付語彙索引』『顕昭 後拾遺抄注・顕昭 散木集注声点注記資料ならびに声点付語彙索引』(合綴、第3号)にひき続いて、昭和60年度『古語拾遺声点付語彙索引』『乾元本日本書記所引日本紀私記声点付語彙索引』(合綴、第4号)を秋永の指導のもとに鈴木豊が編纂・刊行・昭和61年度、『近松世話物浄瑠璃胡麻章付語彙索引体言篇』(第5号)を共同研究者兼築が編纂・刊行した。また、上記資料刊行とともにそれぞれ資料の調査に伴う問題点や研究を以下のように発表した。秋永は「「やまとうた」と「やまとうり」」・「古今集声点本における形容詞のアクセント」の古今集声点本に関する論考2篇を発表した。共同研究者上野は平曲譜本に関する論考を、兼築は義太夫節正本に反映したアクセントについての論考を発表した。(裏面記入の論文)以上の史的資料の研究と同時に、アクセント史解明に不可欠の日本諸方言アクセントの調査の一環として、秋永が、四国、瀬戸内海島嶼の調査を、上野が、高松、徳島、京都、大阪の、兼築が大阪の調査を行った。うち、秋永が「愛媛県魚島における老年層のアクセント」「魚島アクセントの変遷」を発表した。また、池田要氏調査の京都、大阪アクセント資料を『日本国語大辞典』記載の京都アクセント注記と同じ形に直し、50音順に並べる作業を、研究分担者全員と、鈴木豊,佐藤栄作で行い、刊行の準備とした。
著者
秋永 一枝 兼築 清恵 鈴木 豊 佐藤 栄作 上野 和昭 金井 英雄
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

未発表資料索引の刊行作業は、「アクセント史資料索引」として、昭和62年度に秋永一枝・後藤祥子編『袖中抄声点付語彙索引』(6号)、鈴木豊編『日本書紀神代巻諸本声点付語彙索引』(7号)、昭和63年度に坂本清恵編『近松世話物浄瑠璃胡麻章付語彙索引』(8号)、金井英雄編『補忘記語彙篇博士付和語索引』(9号)を編纂、刊行した。また、上記資料刊行とともに、研究分担の資料調査に伴う問題点や研究を発表した。秋永は、「袖中抄」「古今集」の声点とアクセントに関する論考を4篇発表。上野は「平曲譜本」の記譜とアクセントに関する論考を2篇。坂本は「近松浄瑠璃本」の記譜とアクセント、義太夫節のアクセントに関する論考を4篇発表。鈴木は「日本書紀私記」「古語拾遺」の声点に関する論考をそれぞれ発表した。(裏面記載の論文)また、これまでに発表してきたアクセント史索引を総合的にコンピュ-タで検索できるよう「国語声調史資料索引集成」の編纂作業を行ってきた。これまでにコンピュ-タ入力を終了し、今後資料の追加や校正作業を進め、多くの人に利用の便を計るよう研究作業を続ける予定である。以上の史的アクセントの研究と同時に、アクセント史解明に不可欠な日本諸方言アクセントの調査と位置付けに関する研究を行った。昭和63年度に佐藤栄作編『アクセント史関係方言資料』として、テ-プ2巻と活字資料集を刊行した。また、佐藤が高松アクセントについての論考を発表した。以上のように、文献からのアクセント史解明の研究と、方言からのアクセント史解明へのアプロ-チを進め、成果をあげることができた。
著者
高根 雄也
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本で最も暑い街として知られている多治見の高温に及ぼす風上側の地面状態の影響を調査した。多治見が高温の日には、西寄りの山越え気流が頻繁に卓越していることを予め確認後、この風が高温に寄与するメカニズムに関する仮説:風上地表面からの非断熱加熱を伴うフェーンを検証した。その結果、本仮説を実証する結果を得た。すなわち、風上側の地面状態が風下側の高温に大きな影響を及ぼしていることを確認した。また、気流が都市域を通過する時や、日射が大きくかつ土壌が乾燥している日に、風上地面状態の影響が特に大きくなることが分かった。以上の結果は、風上の土地利用の改変が今後風下都市の熱環境に影響を及ぼすことを示唆している。
著者
澁谷 和幹
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の運動神経細胞死の原因の一つとして、運動神経の過剰興奮性が考えられている。ALS運動神経細胞死と過剰興奮性の関係を支持する所見として、以下の報告を行った。運動神経興奮性増大を示唆する筋痙攣とALS進行速度の関係を報告した。脱力の発症前から筋痙攣のある患者の方が、ALS進行速度が速かった。また、ALS皮質運動野の興奮性増大は、病期の進行と共に顕著となることを報告した。更に神経興奮性制御と細胞死の関連を検討するため、Naチャネル阻害薬であるラコサミドを用いてALS患者を対象とした臨床試験を実施した。
著者
東原 亜希子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

妊娠後期の妊婦および非妊婦女性を対象に、無煙棒灸実施前後にサーモグラフィーと血流計を用い下肢の温度変化を測定し、循環動態を客観的データとして収集し分析した。結果、灸を実施した経穴である至陰と大腿部の体温、血流が増加する傾向にあること、灸実施後の体温の経時的変化はおよそ20分までは上昇傾向であることが示された。実行可能性として実装においては、脱落者はおらずデータ全て解析可能であった。実用性において有害事象はなかった。受容性に関しては、「研究に参加してよかったか」の質問に対し、全員が参加してよかったと回答した。無煙棒灸による熱刺激量測定の実験プロトコールの実行可能性は確保された。
著者
保科 斉生
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

1989年に提唱された衛生仮説では、衛生的な生活環境が整うにつれて、アレルギー疾患が増加すると説明しています。近年、日本では炎症性腸疾患を患う方が増加傾向にあり、生活の質の低下、免疫抑制療法による弊害等が問題となっています。欧米では豚の寄生虫である豚鞭虫にわざと感染し、腸管免疫の暴走を抑えるという方法がこれまでにいくつかの研究で実施され、安全性の確認と、一部の研究ではその有用性が報告されています。本研究では、これまで評価の対象となっていなかった日本人の炎症性腸疾患患者さんやその他の自己免疫疾患を対象に、この療法の安全性・有効性を評価します。
著者
横山 茂之 関根 俊一 伊藤 拓宏 藤井 佳史 関根 俊一 伊藤 拓宏 藤井 佳史
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

遺伝子発現の根幹である転写および翻訳においてそれぞれ中核的な役割を担うRNAポリメラーゼおよびリボソームについて、転写・翻訳の構造基盤を解明すべく構造生物学研究を行った。原核生物のRNAポリメラーゼやリボソームを中心に形成される巨大複合体の構造解析を行うとともに、真核生物の転写・翻訳関連因子の調製法の確立および構造解析を行った。
著者
関根 俊一
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

巨大なタンパク質複合体であるRNAポリメラーゼは、そのコンフォメーションを多様に変化させながら転写を遂行する。その実体を明らかにするために、CPX法を開発してRNAポリメラーゼの構造状態の解析を行うことにより、主な転写機能とRNAPの構造状態との相関関係を確立した。また、転写開始・伸長中にRNAP が形成するいくつかの複合体の結晶構造解析を行い、転写エラーの校正や外来因子による転写制御のメカニズムを明らかにした。
著者
伊藤 芳久 須川 晃資 小菅 康弘
出版者
日本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

Prostaglandin E2 (PGE2)は、様々な生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たす脂質メディエーターである。私達は、PGE2がPGE2受容体EP2サブタイプの活性化を介して、マウス運動ニューロン由来で未分化のNSC-34細胞の神経突起伸長を促進し、細胞増殖を抑制することを見出した。また、ALS発症直後のモデルマウスの運動ニューロンではEP2発現が増加すること、ニューロン様に分化したNSC-34細胞のEP2発現はPGE2処置により上昇することを明らかにし、運動ニューロンにおけるPGE2誘発性のEP2発現増加がALSにおけるニューロン変性に関与することを示した。
著者
奥 裕介
出版者
岩手医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

癌遺伝子産物YAP/TAZの機能を阻害する化合物として、フルバスタチン、ダサチニブ、パゾパニブを同定した。これらは、Hippo経路を活性化し、YAP/TAZの核移行を阻害した。乳がんと大腸がん細胞株におけるこれらの薬剤に対する感受性は、YAP/TAZの依存性とよく相関していた。これら3種の医薬品のコンビネーションによって、効率よくMDA-MB-231乳がん細胞の増殖を抑制することができた。更に、これら3つの薬剤は、古典的な抗癌剤との併用により相乗的にMDA-MB-231細胞株の増殖を抑制した。以上の結果は、これらの薬剤がYAP/TAZ依存性の乳がんに対して有効であることを示唆している。
著者
長谷川 信
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究の課題は、国内の商社活動に対して国際カルテルが与えた影響を大倉商事(大倉組)の事例を中心に明らかにすることである。ドイツAEG社は1900年代以降、拡大しつつある日本の電気機械市場への進出を図った。その際、AEGの輸入代理店として市場拡大に取り組んだのが大倉組であった。しかし、1910年代に入ってから、大倉組はそれ自身では解決できない商社活動への制約を受けた。それは、アメリカGE社とAEGの間で結ばれた国際協定に端を発していた。1903年のGE・AEG協定そのものは日本市場を対象としていなかったが、GEは1909年に芝浦製作所と提携し、日本市場における芝浦の排他的権利を認めた。そして、GはAEGと大倉組に対して、芝浦の排他的権利を尊重するよう要求した。GEの要求を受け入れることは、大倉組がAEG製品の輸入販売業務を続けられないことを意味しており、大倉組はこの要求をそのまま受け入れることは出来なかった。最終的には、GEとAEG・大倉組との間で話し合いが行なわれ、大倉組はAEG製品の輸入業務を続けることが出来た。けれども、大倉組・AEGの日本市場における活動には制約が課せられた。具体的には、タ-ビンに関して1913年に芝浦とAEGの間で協定が締結され、(1)GE・芝浦は日本における専売権をAEGに与え、AEGは製造販売権を芝浦に与える、(2)AEGは日本で販売した製品の特許使用料、コミッションを芝浦に支払う、(3)過去4年間の実績に基づいて両者の販売比率を定めることになった。1910年代に入って、GEは、国際協定および特許協定を利用して、自己のテリトリ-を拡大する戦略を採ったと考えられる。そして、このGEの企業戦略によって、大倉組(大倉商事)の商社活動とAEGの日本における事業展開は制約を受けることになった。
著者
笹川 尚紀
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

『古事記』によると、第8代の天皇・孝元と第9代の天皇・開化の后妃として穂積氏出自とされる女性が確認される。孝元は穂積臣等の祖である内色許男命(ウツシコヲノミコト)の妹・内許売命(ウツシコメノミコト)との間に開化を儲ける。また、内色許男命の女・伊迦賀色許売命(イカガシコメノミコト)と婚姻関係を結んでいる。そして、開化は庶母である伊迦賀色許売命を娶って第10代の天皇・崇神を得ている。一方、『日本書紀』に眼を移すと、孝元は穂積臣の遠祖である欝色雄命の妹・欝色謎命との間に開化を儲けたとみえ、『古事記』と合致する。ところが、孝元の妃となった後、開化の后となって崇神を儲けたとされる伊香色謎命は、穂積氏と同祖関係にある物部氏の遠祖・大綜麻杵(オホヘソキ)の女と記されており、『古事記』の系譜とは明らかに食い違っている。平安時代前期に成立した『新撰姓氏録』、および『先代旧事本紀』巻第五「天孫本紀」から、穂積氏・物部氏の氏族系譜が押さえられ、これらと比較検討したところ、『日本書紀』にみえる大綜麻杵は、『古事記』崇神段などにみえる美和(三輪)の地名起源譚をもとに物部氏によって造作されたものと想定される。さらに、これまであまり取り上げられることのなかった「因幡国伊福部臣古志」に記される系譜に着目した結果、『日本書紀』よりも『古事記』の系譜の方がより古くに成立したものと推断される。それでは、先の系譜が『古事記』編纂の素材である「帝紀」にいつごろ定着したかであるが、種々の史料を分析した結果、舒明朝の修史事業の際がもっとも穏当ではないかと考える。『日本書紀』と比べると、『古事記』では大化前代に勢力を誇った物部氏の系譜・伝承が極端に少ない。かような背景としては、舒明と対立関係にあった蘇我蝦夷の母が物部守屋の妹であり、このことが『古事記』の素材である「帝紀」および「旧辞」に物部氏の系譜・伝承を採録する障碍となったと推察される。
著者
渡邉 富夫
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

うなずきや身振りなどの身体的引き込みをロボットやCGキャラクタのメディアに導入することで一体感が実感できる身体的コミュニケーション技術と、メディアの場にはたらきかけることで場を盛り上げる身体性メディア場の生成・制御技術に基づいて、発話音声からコミュニケーションの引き込み動作を自動生成する【音声駆動型身体的引き込み技術】、身体動作に連動して直接動作する【身体連動型身体的引き込み技術】、タイピングからコミュニケーションの引き込み動作を自動生成する【タイピング駆動型身体的引き込み技術】を開発し、感情移入インタフェースの基盤を構築した。
著者
高橋 大介
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,PCクラスタにおける高速フーリエ変換(fast Fourier transform,以下FFT)の並列アルゴリズムの実現および評価が挙げられる。近年,PCクラスタの普及に伴い,並列FFTアルゴリズムが様々な研究者によって提案されており,ライブラリとなっているものも多い。ところが、これらの並列FFTアルゴリズムはデータ数がN=2^pのように,2のべき乗で表される場合についてのものが多い。そこで本研究では,PCクラスタにおいてデータ数がN=2^p3^q5^rの場合について多次元の並列FFTアルゴリズムの実現および評価を行った。PCクラスタでは,一つのノードがSMP構成になっている場合があり,この場合にはPCクラスタが共有メモリ型並列計算機と分散メモリ型並列計算機の両方のアーキテクチャの特性を兼ね備えたものになるが,それぞれのアーキテクチャにおいて最適な並列FFTアルゴリズムは異なるために,本研究では異なるアーキテクチャについてそれぞれ並列FFTアルゴリズムを実現し,評価を行った。そして,これらの並列FFTアルゴリズムを実際にPCクラスタ上に実現し,今までの逐次FFTアルゴリズムに対する性能向上率を評価した。さらに,並列FFTアルゴリズムでは,各プロセッサ内におけるFFTの計算量をできるだけ削減する必要があるが,より演算量の少ないFFTアルゴリズムについても研究を行った。また,平成15年度に行った研究成果を,国際会議等で発表すると共に,それらの内容をまとめて学術雑誌等で論文を発表した。
著者
亀岡 淳一
出版者
東北医科薬科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

学会等の議論の場で日本人の質問が少ないことはしばしば指摘されるが、質問力の体系的な教育はほとんど試みられていない。そこで我々は、質問力育成のために3段階による教育手法の開発を計画した。まず、学内授業で考えついた質問を全て書き出させ提出させ、質問を考えながら聞く習慣をつけた。次に、「重要性」「独自性」「レトリック」「ミクロかマクロか」「ベネフィットの及ぶ範囲(質問者、聴衆、発表者)の5項目による質問評価表を作成し、3学会で信頼性・妥当性を確認した。最後に、希望する学生を学会に参加させ、指導医と一緒に聞かせ質問を評価させ事後ワークショップを実施した。これらの教育は質問力向上に有用と考えられた。
著者
山口 悦子 村尾 仁 糸井 利幸 森本 玄 種田 憲一朗 森口 ゆたか 由井 武人 村上 聡 北村 英之
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

今日、患者安全では、事故から学び改善する態度を、組織的に奨励すべきであることが強調されているが、そのような態度や文化を醸成するために効果的な教育は確立された方法が少ない。事故からの学びを継続的な改善活動へと発展させる「学習する組織」作りには、職員の主体性や創造性の育成も要求される。そこで本研究は、職員が協働的・主体的・創造的に患者安全の課題に取り組む態度や能力を培う学習支援の一つとして、芸術の患者安全教育への応用可能性を探索した。また、芸術的手法を応用した教育プログラムを研究に参加した施設が協力して開発・実施し、これらの芸術を応用した教育プログラムが安全文化に及ぼす影響や効果について検討した。