- 著者
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新納 宏昭
- 出版者
- 日本臨床免疫学会
- 雑誌
- 日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.5, pp.412-420, 2015 (Released:2016-01-04)
- 参考文献数
- 50
- 被引用文献数
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関節リウマチをはじめとした自己免疫疾患の病態におけるB細胞の重要性は,近年のB細胞標的療法の臨床効果によって再認識された.ただここで着目すべき点として,B細胞は,抗体産生のみならず,抗原提示,共刺激,サイトカイン産生などといった抗体非依存性の多彩なエフェクター機能を営んでいることが判明した.また,エフェクターB細胞とは異なった制御性B細胞の存在も近年明らかとなり,自己免疫疾患の病態におけるB細胞の役割は,我々が予想していた以上にきわめて複雑なものと思われる.自己反応性B細胞は,分化過程での複数のメカニズムを介して自己寛容となるが,それが破綻してエフェクター機能を発動することにより自己免疫疾患は発症する.ヒトB細胞には表面マーカーに基づいて複数のサブセットが存在するが,本疾患では特定のサブセット中にエフェクターB細胞が豊富に存在する.自己免疫疾患に対して様々なB細胞標的療法が開発されつつあるが,リスクベネフィットを考慮すると,無差別的な殺B細胞療法ではなく,エフェクターB細胞に対する選択的制御療法が今後の治療戦略として期待される.