著者
ヨンテル トーマス ストックホルム大学 経済史・国際関係学科 / Stockholm University Graduate School of International Studies
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.20-05, 2020-07

本稿のねらいは第一に、スウェーデンがなぜ、核兵器開発計画を始動させ、莫大な投資を何年も続けたのちに同計画を棚上げしたかを説明することである 。二つ目の、より重要なねらいは、核開発逆転を決める過程で、スウェーデン政府が、核拡散を防止する国際的な法的枠組みを作り出すことに、いかに多くの政治的エネルギーを注いだかを概説することである。スウェーデンは、1950 年代には核開発計画を持っていた。それは、核兵器開発と、原子力発電の双方の目標を、追求しようとするものであった。しかし、1960 年代終盤になると、核兵器の持つ意味が、全く変わってしまい、その結果としてスウェーデンの外交目標も、大きく転換することになった。1970 年までにスウェーデンがNPT を署名、批准したことは、理論上も実際上も、安全保障の概念が大きく変化し、核兵器が防衛と抑止の手段として見られていた状況から、国際安全保障とスウェーデンの国家としての生存への脅威として認識される状態に変化したことを示していた。The purpose of this paper is twofold. The first aim is to explain why Sweden embarked on a nuclear weapon program and why it was shelved after many years of heavy investments. The second, and even more important, aim is to outline the nuclear reversal process in which the Swedish government invested much political will into creating an international legal framework for preventing the spread of nuclear weapons. In the 1950s, Sweden had a national nuclear weapons development program. This program aimed to combine the double objectives of nuclear weapons acquirement and civilian nuclear power production. But by late 1960s, the meaning of the nuclear weapons had changed drastically, and the foreign policy objectives of Sweden changed accordingly. The signing and later the ratification of the NPT in 1970 by the Swedish government meant both in theory and practice that the concept of security had undergone a significant change, from a situation where nuclear weapons where seen as tools for protection and deterrence to circumstances that considered them as threats to international security and Sweden’s own survival as a nation.
著者
山下 宏
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.9-16, 2014-10-31

将棋の歴代名人の強さを勝敗の結果と棋譜の内容から推定する。勝敗の結果から計算された2種類のレーティングは、どちらもこの20年間、羽生が最強のプレイヤであることを示した。またプロ、アマの合計6,500棋譜を将棋プログラム、Bonanza、GPSFishで解析した結果、羽生名人は大山15世名人よりレーティングで約230点上らしいことが分かった。同時に20棋譜程度で、すべての将棋プレイヤの棋力を推定できることを示した。
著者
林 俊郎 蒲生 恵美
雑誌
目白大学総合科学研究 = Mejiro journal of social and natural sciences (ISSN:1349709X)
巻号頁・発行日
vol.(1), pp.45-56, 2005

「ダイオキシン法」制定の起爆剤ともなったテレビ朝日「ニュースステーション」の特集を巡る「ダイオキシン訴訟」について検証した。この訴訟は、特集番組によって野菜栽培農家の名誉が傷つけられ野菜価格が暴落したとして所沢の農家376名がテレビ朝日と野菜のダイオキシン濃度を公表した株式会社環境総合研究所の所長を告訴したものである。 ところが、この放送で公表された野菜の分析最高値とされたものは、野菜ではなく加工食品の煎茶であった。そのためこの報道に不適切な点があったとして郵政大臣がテレビ朝日に注意勧告を行った。ところが、裁判ではある資料が証拠として採用され、一・二審は農家側の敗訴となった。証拠資料とは、摂南大学の宮田研究室が分析したという「所沢産白菜の分析結果」である。一・二審の裁判官は、この分析値が特集番組で公表された最高値に近似していたことから、報道内容は真実であると審判した。 ところが、三審の最高裁は「視聴者は、ほうれん草をメインとする所沢産の葉っぱ物に煎茶が含まれるとは通常考えない」、また証拠資料として採用された白菜については「氏素性の定かでない、わずか一検体の白菜の分析結果をもってそれが真実であるとした原審は、明らかな法令の違反がある」として、本件を原審に差し戻す判決を行った。農家側の実質的逆転勝訴となった。 最高裁は宮田研究室が提出した証拠資料に対して重大な疑念を表明した訳である。しかし、審理は専ら証拠資料の氏素性に集中したが、この特集番組の構成そのものにも審理を尽くすべき点があった。ここでは、なぜ、一・二審と三審で180度異なった判決が下されたのか、その背景も含めてこの裁判の問題点を明らかにした。
著者
広田 憲一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, 1971-03-15
著者
内田 力
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.195-213, 2018-11-30

日本中世史家の網野善彦(生没年一九二八~二〇〇四年)は、一九七〇年代ごろから新しい歴史学の潮流(「社会史」)の代表的人物として注目されるようになり、のちに「網野史学」・「網野史観」と称される独自の歴史研究のスタイルを打ち立てた人物である。かれの歴史観は、とくに大衆文化の実作者への影響が大きく、映画監督の宮崎駿や小説家の隆慶一郎、北方謙三の作品にその影響がみられる。
著者
長尾 英彦
雑誌
中京法学
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.47-70, 2015-07-01
著者
赤石 仁 中野 光臣
雑誌
研究報告知能システム(ICS) (ISSN:2188885X)
巻号頁・発行日
vol.2018-ICS-191, no.9, pp.1-4, 2018-03-19

利他的行動を生み出す機構の一つとして間接互恵性が知られている.この間接互恵性のゲーム理論的モデルとして,ドネーションゲームが広く用いられてきた.本研究では,性別が間接互恵性へ与える影響を,実際の人間によって行われるドネーションゲームを用いて検討する.実験では,まず,学生男女 10 名で実際にゲームを行い,その結果から,間接互恵性における性別による判断の偏りを推定する.その結果,男性から女性に対して利他的行動が行われる基準は低く,逆に女性から男性に対しての基準は高くなる傾向が示された.
著者
窪 誠
雑誌
大阪産業大学経済論集 = Osaka Sangyo University journal of economics (ISSN:13451448)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-27, 2016-10

Since Japan's ratification of the International Covenant of Civil and Political Rights in 1979, the Japanese government has submitted six state reports explaining the human rights situation in Japan. On all occasions the United Nations Human Rights Committee questioned the concept of "public welfare" contained in the Japanese Constitution, suggesting it allowed for a general restriction on human rights in the Constitution. This article clarifies the different viewpoints between the Japanese government and the UNHR Committee as they are found through an analysis of the state reports and the dialogue held between the two parties.
著者
柴田 博仁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1204-1213, 2009-03-15

本稿は,ディスプレイ構成の違いが業務にもたらす影響を定量的に測定することを狙いとするものである.知的財産管理業務を行う8人の被験者を対象に,17インチのシングルディスプレイ環境(Small条件)から,24インチの大画面ディスプレイ環境(Large条件),あるいは2つの17インチディスプレイを並置する多画面ディスプレイ環境(Dual条件)へと移行した前後で,およそ2週間ずつ実業務でのウィンドウ操作ログを取得した.ディスプレイ構成の違いによる業務効率化の程度は,ウィンドウ操作に要する時間の総和でとらえることができるという考えに基づき,ウィンドウの切替え,移動,サイズ変更というウィンドウ操作に要する時間を条件間で比較した.結果として,Small条件では,コンピュータ操作を行っている時間のうち8.5%をウィンドウ操作に費やしていることが分かった.これは,現状のウィンドウシステムにおける改善の必要性を示唆するものである.さらに,Small条件に対して,Large条件ではウィンドウ操作のコスト削減は見られなかったが,Dual条件では13.5%のコスト削減が見られた.これは,ウィンドウ操作に要するコストという観点から,大画面ディスプレイに対する多画面ディスプレイの優位性を示すものである.