著者
Sachie Kanada Kazuhisa Tsuboki Izuru Takayabu
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.57-63, 2020 (Released:2020-04-09)
参考文献数
31
被引用文献数
9

To understand the impacts of global warming on tropical cyclones (TCs) in midlatitude regions, dynamical downscaling experiments were performed using a 4-km-mesh regional model with a one-dimensional slab ocean model. Around 100 downscaling experiments for midlatitude TCs that traveled over the sea east of Japan were forced by large-ensemble climate change simulations of both current and warming climates. Mean central pressure and radius of maximum wind speed of simulated current-climate TCs increased as the TCs moved northward into a baroclinic environment with decreasing sea surface temperature (SST). In the warming-climate simulations, the mean central pressure of TCs in the analysis regions decreased from 958 hPa to 948 hPa: 12% of the warming-climate TCs were of an unusual central pressure lower than 925 hPa. In the warming climate, atmospheric conditions were strongly stabilized, however, the warming-climate TCs could develope, because the storms developed taller and stronger eyewall updrafts owing to higher SSTs and larger amounts of near-surface water vapor. When mean SST and near-surface water vapor were significantly higher and baroclinicity was significantly smaller, unusual intense TCs with extreme wind speeds and large amounts of precipitation around a small eye, could develop in midlatitude regions, retaining the axisymetric TC structures.
著者
小垣 匡史 伊佐 常紀 村田 峻輔 坪井 大和 奥村 真帆 松田 直佳 河原田 里果 内田 一彰 中塚 清将 堀邉 佳奈 小野 玲
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.5-12, 2020-03-31 (Released:2020-04-10)
参考文献数
28

目的:本研究の目的は,9~12歳の児童において日常的な外遊びと遂行機能の各項目(作業記憶, 認知柔軟性,抑制機能)の関連を性別で層別して調査することとした。方法:神戸市内の公立小学校2校に通う小学4年生から6年生314名を対象とした。作業記憶はDigit Span Test(DST),認知柔軟性はTrail Making Test(TMT),抑制機能はStroop testを用いて測定した。外遊びは自記式質問紙を用いてその頻度を測定し,週3日以上外遊びを行う児童を外遊び高頻度群,週3日未満外遊びを行う児童を外遊び低頻度群とした。児童期における外遊びの特性は性別で異なるため,解析は性別で層別して実施した。統計解析は,目的変数を遂行機能の各項目,説明変数を外遊びの頻度とし,学年で調整した回帰分析を実施後,交絡因子を学年,body mass index(BMI),身体活動量とした強制投入法による重回帰分析を実施した。結果:男児は女児と比べて身体活動量および外遊びの頻度が有意に高かった。男児において外遊びの頻度と遂行機能に有意な関連は認められなかったが,女児において外遊びの頻度と認知柔軟性にのみ有意な関連が認められた[偏回帰係数(B)=−8.90, 95%信頼区間:−16.97,−0.82]。交絡因子の調整後も女児において外遊びの頻度と認知柔軟性は有意な関連を示 した[B=−10.76(−19.42,−2.10]。結論:児童期後期において,女児の外遊びの頻度が認知柔軟性と有意に関連することを初めて示した。本研究は,特に外遊びが少ない女児において,遂行機能の一部と関連が示された外遊びが重要であることを示唆した。

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出版者
国立国会図書館
雑誌
外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説 (ISSN:13492071)
巻号頁・発行日
vol.(月刊版. 283-1), 2020-04
著者
佐藤 達也
出版者
日本観光研究学会
雑誌
観光研究 (ISSN:13420208)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.49-57, 2016 (Released:2016-12-01)
参考文献数
12

島国である日本において、積極的な海洋の活用は不可欠であり、多様な自然とともに地域ごとに様々な形で文化が形成されてきた。しかし現在ではそういった海洋の活用は減り、メディア等で取り上げられることの多い無人島でさえ、その活用については約1 %未満であった。そこで三重県鳥羽市浦村町の無人島である麻倉島において、総合産業としての観光という点に着目し、観光活用案の立案とプログラムの催行を試みた。2012 年から2014 年まで行なわれた調査の結果、積極的な地域資源の観光活用が、地域のみならず参加者へも波及効果を促し、海洋の総合管理を鳥瞰的に行なうことができる結果が示された。
著者
高本 香織
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.29-45, 2015-03-31

平成20 年に経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者・介護福祉士候補者の受け入れが始まり、日本で働く外国人ケアワーカーの存在が学術的・社会的関心を集めている。本稿では異文化間ケア先進国であるアメリカの事例を中心に、海外で働く外国人看護師を対象とした異文化適応研究を調査した。その結果、受け入れ国や看護師の出身国・言語・人種に関わらず、異文化間ケアの現場における看護師の適応プロセスには共通の課題が存在することが改めて確認できた。なかでも言語とコミュニケーション(非言語コミュニケーションも含む)は最も重要な課題であった。さらに、看護師に期待される仕事、そして患者や患者家族のあり方といった異文化間ケアの現場における看護のあり方の文化的差異も課題であることがわかった。今後の研究においては、受け入れ国の文化と出身国の文化に特有の事例や現象について理解を深めることも重要であることが示唆された。
著者
田中 みどり
出版者
佛教大学文学部
雑誌
文学部論集 (ISSN:09189416)
巻号頁・発行日
no.104, pp.21-38, 2020-03-01

萬葉集の「つつじ花 にほへる (君)」(つつじの花が周囲の緑からとびだすような鮮烈な色であるように生き生きとした)「紫の にほへる (妹)」(むらさきの花のように鮮やかに目にとびこんでくる)「山吹の にほへる (妹)」(山吹の花のように目にまぶしい)などは、いずれも、「つつじ花」「紫草」「山吹」を「君」や「妹」の比喩に用いている。当時、「黄ナル」色は、生成り色も含んだ茶系統の色であり(当時の分類で言えばアヲ系統)、「現在の黄色」にあてはまる色は「ヤマブキ色」であった。また、「白」は透明感を含んだ色であった。日本の古代色、アカ(明)・クロ(暗)・シロ(顕)・アヲ(漠)は、アカ・クロが明度を、シロ・アヲが彩度をあらわすものに他ならない。「シロ」という色彩語が「顕」の義をもつことが、いまだこの時代には実感として保たれていたのである。萬葉集にほへる君にほへる妹色彩
著者
飯野 修一 渡辺 正平
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.555-559, 1989-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
20

1. モロミ上槽時の圧力増加に伴う搾酒の成分変化は次のとおりであった。漸増するもの(日本酒度, 紫外部吸収及びpH), 漸減するもの (直糖及びMn), モロミタレ歩合80%以上の上槽末期から増加するもの(アミノ酸度, 着色度, Fe, Cu及びZn) 及び増減のないもの(酸度及び低沸点香気成分)の4つのタイプに分類された。2. 官能的には上槽末期から評価は落ち, 雑味と味の薄さが指摘された。なお上槽末期の官能低下にアミノ酸度, Cu及びZnの増加がよく一致した。3. 藪田式自動圧搾機に比べて, 水圧式圧搾機の場合にはFe, Cu, Znの増加及び官能変化は比較的緩慢であった。これは上槽時の圧力増加が緩慢であったからと推定された。終わりに本試験に協力していただきました清酒メーカーの2社に深く感謝いたします。
著者
佐藤 忠文
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.187-203, 2019-12-31 (Released:2020-01-18)
参考文献数
36

本研究では,自治体が広報活動で使用する広報写真について,情報資源化へ向けた課題を考察する。近年,オープンデータや文化情報資源に対する関心が高まるが,資源としての広報写真の現状はこれまで明らかにされていない。そこで本研究では,まず広報写真の性質を論じ,行政広報論の視点のもと広報写真家の言説に着目,そこから広報写真の共通構造を導出した。次に,それをもとに情報資源化の問題点について仮説を構築し,自治体に対し質問紙調査を行いその現状を明らかにした。最後に,調査結果をもとに課題を考察した。研究の結果,広報写真は,効率的な内容理解と行動変容を促す創造的な視覚媒体と言え,広報目的の達成に向けて,確実性,共感性,倫理性,記録性からなる共通構造を持つと考えられた。そして質問紙調査から,①撮影・管理,②アーカイブ,③二次利用の状況が明らかになった。そのうえで,①の課題として,撮影量に対応可能な効率的なメタデータ管理方法と柔軟な権利処理手続きの開発,②の課題として,広報写真の文脈までを保存し管理の煩雑さに対応可能なアーカイブ構築,③の課題として,商用利用を含む利用促進へ向けた利用ルール等の整備が明らかになった。本研究の成果は,主に3点である。従来の言説をまとめ広報写真理解のための理論を構築したこと,これまで明らかにされなかった広報写真の現状を一定明らかにしたこと,そこから情報資源化へ向けた具体的な課題を明らかにしたことである。
著者
田上 竜也
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. フランス語フランス文学
巻号頁・発行日
no.35, pp.18-31, 2002-09

ポール・ヴァレリーにとってナルシスの形象は生涯にわたり特権的な価値を帯びていた。その口切りといえるのは、若年期を過ごしたモンペリエの植物園に葬られる少女ナルキッサの伝説に喚起され、その墓碑銘をエピグラフに記した1891年初出の詩篇『ナルシス語る』である 一[...]どんなに私は嘆くことか、お前の宿命的で純粋な輝きをかくも柔らかく私に抱きかかえられた泉よ私の眼はその死の紺碧のなかに汲んだのだ濡れそぼれた花々の冠を頂いた自らの像を[_】((E,1,82)(1)rエロディアード』に強く触発されたこの詩には、しかしながらマラルメの詩における意識の微細な動きを映し出す意図や、詩句の純化された緊張感は希薄であると言わざるを得ない。夕暮れの月光に照らされる泉、百合や薔薇、ミルトといった花々、サファイアや水晶に形容される水面、ニンフの群れといった光景は、世紀末の意匠として目新しいものではなく、若書きの陳腐な道具立ての域を越えていないとすら言える。けれどもナルシスのモチーフはそうした通俗の次元にとどまらず、その後ヴァレリーのなかで独自の展開を遂げ、さまざまな意味を担っていくことになる。この稿では自意識の構造を示すモデルとしてのナルシス問題系の変遷を、主として1920年前後の著作に焦点を当てつつ辿ることにする。