著者
斎藤 悦子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本のCSRは、環境問題解決に特化され、ステイクホルダーである生活主体としての労働者・消費者・家庭人・地域住民への社会的公正性や倫理性、人権に関する取組みが遅れている。本研究は、生活主体の立場から、CSRを考察し、社会的公正性、倫理性、人権といった領域に、いかに関わることが可能かを検証した。Grosser & Moon(2006)の研究をもとに、市場、政府、市民社会という3つのアクターと日本のCSRの関係、とりわけ日本では論じられることのなかったCSRと市民社会の在り方を事例研究により明らかにした。
著者
渡辺 正孝 児玉 亨 本多 芳子 小島 崇 桑波田 卓
出版者
財団法人東京都医学研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

最近は若者も老人もがまんができない、と言われる。かまんには、長期的な利益のために短期的な利益を放棄するというものと、ルールに従ってしたい行動をしない、というものの2種類がある。がまんには大脳前頭連合野が重要な役割を果たし、この脳部位には、どちらのがまんについても関係した活動が見られる。がまんをコントロールすることが知られる薬物(リタリン)を投与したところ、サルでもがまんがより良くできるようになること、リタリン投与により、前頭連合野や線条体でドーパミンの放出が増すことも明らかになった。
著者
秋山 真志
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

Thymic stromal lymphopoietin(TSLP)は表皮角化細胞 KC 由来の ADの病態を形成する最も重要なケモカインの一つとして位置づけられているが、どのような刺激が TSLP を誘導するかについては未解明であった。本研究ではAD の KC において小胞体ストレス応答が起こり、TSLP が産生されていることが示唆された。
著者
石川 享宏
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

小脳は運動学習において重要な役割を担っていると考えられ、学習すなわち入出力関係の調節は、下オリーブ核から小脳皮質に投射する登上線維入力によって制御される。したがって登上線維入力の生成メカニズムを明らかにすることができれば、小脳を介して適応的に運動を調節・制御する脳内メカニズムの理解が大きく前進すると期待される。本研究の目的は下オリーブ核に情報を伝達する神経回路と、それらの情報によって登上線維入力が生成される生理学的なメカニズムを解明することである。当該年度においては、小脳の中でも特に大脳皮質との間にループ状の神経回路を形成する大脳小脳に注目し、まず始めにマウスを用いて大脳運動野や末梢神経の電気刺激に対する応答を調べた。その結果、大脳小脳の一部であるCrus Iにおいて、両方の刺激に対して登上線維入力に伴う複雑スパイクが生じるプルキンエ細胞が多数観察された。刺激から応答までの潜時がほぼ同じ(12 msec)であることから、Crus Iに登上線維を送る下オリーブ核の一部(主オリーブ核)において中枢および末梢からの入力が同一の細胞に収束していると考えられる。そこで脊髄の一部(C5-7)に順行性の神経トレーサーを注入したところ、主オリーブ核の一部に直接投射していることが確認された。従来、主オリーブ核は主たる入力を大脳皮質から赤核経由で受けるとされてきたが、実際には脊髄からの直接入力も受けており、電気生理実験の結果が示すように大脳小脳において運動時には運動指令と感覚フィードバックのいずれに対しても登上線維入力が生成されうることが示された。
著者
金村 久美
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本語の長音と短音の区別は、外国人にとって習得しにくい。この研究では、長母音と短母音の区別のあるタイ語の母語話者は、母語の正の転移の影響を受け、日本語の母音の長短を容易に習得できるのかどうかを、母音の長短の区別のないベトナム語話者を比較対象として調査した。その結果、タイ語母語話者は日本語母語話者とは異なるパターンで日本語の長さの対立を知覚しており、母音の長短の習得上特に有利であるとはいえないことが明らかになった。
著者
河田 真由美
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

(1)ヒト大腸癌臨床検体を用いた研究大腸癌患者の血清および病理検体のmRNA、蛋白発現を解析したところ、癌部腸上皮細胞においてCHI3L1/YKL-40が高発現していることが確認され、その発現が強い検体ほど血管新生およびマクロファージの浸潤が強い傾向にあった。(2)ヒト大腸癌細胞株を用いた研究ヒト大腸癌細胞株SW480とヒト血管内皮細胞HUVEC、ヒトマクロファージ細胞THP-1を用いて、Boyden chamber法とtube fromation assayにて遊走能と血管新生能を検討した。SW480にCHI3L1を強制発現したものではHUVECとTHP-1の遊走能およびHUVECの血管新生能が著明に亢進し、ノックダウンしたものではそれらが有意に低下した。癌微小環境に影響をおよぼしているケモカインに注目し、抗体アレイ法で調べたところIL-8(CXCL8)とMCP-1(CCL2)を介していることが確認された。(3)マウスのxenograft modelを用いた研究ヌードマウスを用いて空ベクターおよびCHI3L1/YKL-40発現ベクターを遺伝子導入したヒト大腸癌細胞株HCT116を皮下接種した。4週間経過観察したところCHI3L1/YKL-40を発現した腫瘍はコントロールに比べて約3.5倍の大きさになっていた。また腫瘍を標本にして免疫染色したところCHI3L1/YKL-40を発現した腫瘍では有意に血管密度およびマクロファージの浸潤数が多かった。これらの結果はヒト大腸癌検体を用いた実験結果とヒト大腸癌細胞株を用いた実験結果とも合致しており、CHI3L1/YKL-40が腫瘍の増大に関与するともに間質細胞である血管内皮細胞やマクロファージにも影響を及ぼしているという結論を導いた。
著者
山崎 貴男 前川 敏彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

自閉症スペクトラム(ASD)では社会コミュニケーションが障害される.本研究はASDの腹側(顔認知)視覚路(「社会脳」)の機能変化について調べた.ASDと定型発達(TD)成人で視覚誘発電位を記録した.赤緑(RG), 黒白(BW), 顔刺激を用いた.TD成人に比べて,ASDではRGのN1潜時延長,BWのN1潜時短縮,顔のP1潜時短縮,N170潜時延長を認めた.これらの所見は,ASDはV1での細部の処理に優れるが,色処理は障害されること,V4でのゲシュタルト顔処理も障害されることを示唆する.従って,腹側視覚路(「社会脳」)の機能変化がASDの社会的処理の異常に関与している可能性が示唆された.
著者
久和 茂 池 郁生 酒井 宏治 滝本 一広 山田 靖子 山田 靖子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

マウスノロウイルス(MNV)は2003年に報告された新規マウス病原体で、まだ不明な点が多い。血清あるいは分子遺伝学的方法を用いた疫学調査により、日本の実験用マウスコロニーにおいてMNVの感染がなり拡がっていることが見出された。診断法の改良として、組換えVP1タンパク質を用いたELISA法の基盤を構築し、また簡便さ、速さ、検出感度に優れているRT-LAMP法を開発した。近年動物実験施設の衛生管理に多用されている弱酸性次亜塩素酸水がMNVの不活化作用を持つことを見出した。デキストラン硫酸塩(DSS)誘発炎症性大腸炎モデル、あるいはマウス肝炎ウイルス(MHV)感染症モデルの実験結果をMNV感染は修飾することが示された。
著者
笠井 清登
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

388名の気分障害患者の既存データを用いて、認知機能は自覚指標と関連し、他覚指標との関連は有意ではないことを示した。自覚ウェルビーイング/イルビーイングと他覚ウェルビーイング/イルビーイングを担う脳基盤は一部異なるという仮説が支持された。そこで大うつ病性障害患者309名を対象に、NIRSにより測定した語流暢性課題施行時の賦活反応性を用いて、自覚的うつ症状・他覚的うつ症状のそれぞれと相関する脳部位の検討を行った。他覚的うつ症状の重症度と下前頭回領域、自覚的うつ症状と両側側頭部領域の間でそれぞれ負の相関を認めた。また、自覚・他覚的うつ症状の重症度をそれぞれ標準化(Z[自覚うつ]、Z[他覚うつ])し、それらの差分により得られた乖離の程度(Z[自覚うつ]-Z[他覚うつ])と賦活反応性の相関を検討したところ、いくつかの脳部位で相関傾向を認めた。うつの自覚指標と他覚指標に一定以上の乖離がある大うつ病性障害患者群(N=6)と自覚指標と他覚指標に乖離がない大うつ病性障害患者群(N=10)における構造MRIと安静時機能的MRI(rs-fMRI)の予備解析を行った。構造MRIでは自覚指標と他覚指標の乖離群において左下前頭回で有意な体積低下を認め、他覚的うつ指標と体積低下は正の相関を示した。rs-fMRIでは左外側頭頂皮質と両側中側頭回・後部帯状回・両側前頭極のRSFC (resting state functional connectivity)低下と左下前頭回・両側縁上回・淡蒼球とのRSFC上昇を認めた。全頭型プローブNIRS装置を用い22名の大うつ病性障害の患者のRSFCを計測し、78名の健常者のRSFCと比較した。うつ病群は健常群と比べ認知制御ネットワークの一部と考えられる左前頭前皮質背外側部―頭頂葉間でRSFCが低下し、他覚的うつ症状の強さと負に相関した。
著者
高安 伶奈
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

本年度は最終年度でもあり、これまで研究してきた内容について、2つの論文を投稿した。1つはヒト唾液細菌叢の概日リズムの発見であり(DNA Res. 印刷中)、もう一つは腸内細菌叢が食事や病態の影響を受けない個人間で共通したきわめて普遍的な構造(累積相対量分布; CRAD)を持つことを発見し、さらにその形成メカニズムの数理モデルを考案した内容についてである(PLoS Comp. Biol, revised中)。昨年までに、唾液の細菌叢に概日リズムがあり、食事が与える影響が小さいことを発見していたが、新たに、食後30分前後に食事の内容や、個人によらず、Lautropia mirabilisの相対存在比が増加することを発見した。また、Lautropia以外にも、食事中や、食事直後に食事の内容等に応じて増加する細菌群を同定した。これらの内容を、11月にアメリカ・ヒューストンで行われたHuman Microbiome Congressでポスターにまとめ、発表を行い、その原因について情報交換を行った。現在、原因の探求についての追加実験の解析を行っており、今後論文として投稿する予定である。また、マウスの腸内細菌叢に対して抗生剤を単発投与する実験を行い、菌叢構造の入れ替わりは抗生剤濃度に応じて起こるものの、適量投与でも過剰量投与でも2週間程度で、水飲み投与のコントロール群と同等の水準まで回復し、その回復の速度にはある程度個体差があることを新たに発見した。
著者
中根 秀之 田中 悟郎 木下 裕久 一ノ瀬 仁志
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

この研究の目的は、長崎でFEPの発生率を明らかにすることである。 我々は、1年の期間(2011年8月から2012年7月まで)の間、コホート研究を行った。 研究対象者は、キャッチメントエリアである長崎市近郊の精神科医療機関を受診した長崎市に在住する初診患者である。合計25人がFEPと特定された。 推定された年間発生率は、(概算にて)10,000人につき0.76であった。 精神病未治療期間の中央値は49日、平均値は1278日であった。 昭和53年~54年に長崎市で実施されたWHO共同研究DOSMeD Studyと比較したところ、概算では年間新規発症率が低い値となることが現在までの調査で推定された。
著者
高田 峰夫 藤田 幸一 長田 紀之 Srawt Aree 竹口 美久 和田 理寛 山本 真弓 森本 泉 小島 敬裕
出版者
広島修道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

タイの南アジア系移民3集団(1.北タイ在住バングラデシュ系ムスリムの子孫、2.「ネパリ」、3.南アジア系子孫であるビルマ系ムスリム)の調査を行い、南アジアと東南アジアとのつながりを探った。1に関しては移動ルートと祖先の出身地等を明らかにすることができた。また、2については、内部のサブ・グループの存在やタイへの移入時期の違い等を明らかにした。3についてはミャンマーの政治的事情により十分に調査できなかった。また、ミャンマー人移民労働者の調査からは、大規模・継続的に国境地帯から離れたタイ内部へ出稼ぎに出ている実態が判明し、従来の国境地帯中心のミャンマー系移民労働者研究のバイアスが明らかになった。
著者
長谷川 真里
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、幼児、児童、青年における道徳感情帰属を検討した。(1)幼児にHappy Victimizer反応がみられたが、被害者情報の強調などの場面操作により減少した。(2)入り混じった感情理解はHV反応の調整要因となる可能性が示唆された。(3)仲間関係のジレンマ場面では青年期になってもHV反応が見られた。(4)類似の欧米の研究と異なり、日本の青年はHappy Moralist反応が少なく、比較文化研究の必要性が示唆された。(5)道徳感情帰属と行動の関連性について弱い証拠が得られた。幼児でも、道徳的意思決定に道徳感情を利用することが示唆された。またそれは感情の種類によって発達の様相が異なった。
著者
冨田 義人 石井 克幸 丸尾 健二 井上 哲男 村上 隆彦
出版者
神戸商船大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.全空間における非線形楕円型方程式(*)F(x,u,Du,D^2u)=0 in R^nの粘性解が一意に存在するための解のクラスをFの構造と関連させて決定した.主結果を粗く述べると、F(x,u,p,X)がpに関してm(m≧1)次の多項式、xに関してμ(μ≧1)次の多項式のようなふるまいをし、mとμとの間に1<μ<m/(m-1)が成立するならば、(*)は一意的な粘性解をもつ(この結果はAdv.in Math.Sci.and Appl.Vol.2に公表された).今後の課題はmとμとの関係が最良であるか吟味することである.2.交付申請書の実施計画に沿って、粘性解を扱うことの利点を示す偏微分方程式を考察した.領域の内部で退化が起こるDirichlet問題(**)-LAMBDA(x)Δu(x)+c(x)u(x)=f(x)in B={xεR^n;|×|<L}、u=β on |×|Lを考える.ここで、L>1,N≧2,LAMBDA(x)=(1-|×|)^λ(|×|<1のとき);=(|×|-1)^λ(1<|×|<Lのとき)である.|×|=1の球面上で方程式は退化していることを注意したい.この問題に対して、(1)c(x),f(x)がradialな関数で、0<λ<2を仮定するとき、(**)は|×|=1の球面上で u(x)=f(x)/c(x)をみたすradialな粘性解をもつ.(2)0<λ<1ならば、(**)は最大解および最小解をもち、かつ、これらの間に無数の粘性解が存在する.(3)1≦λ<2ならば、(**)は一意的にradialな粘性解をもつなどを証明した.これらの結果については投稿中である。今後の課題はradialでないc(x),f(x)および非線形を扱うことである.3.石井は主として、衝撃制御問題、ジャンプを伴う確率制御問題および確率微分ゲーム問題などから導かれる非線形楕円型偏微分方程式に対する粘性解の一意性と存在を考察した.
著者
辛 星漢
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究開発では、既存のパスワード認証方式を理論的に分析した上、効率がよくてかつ厳密な安全性証明ができる新しいパスワード認証方式を提案する理論研究とともに国際標準団体でのその標準化活動を行った。理論研究の成果としては、既存のパスワード認証方式の安全性を分析し、新たな(匿名)パスワード認証方式を提案した。国際標準化活動の成果としては、IKEv2 へ適用したパスワード認証方式(AugPAKE)の仕様が国際標準団体IETF より新たな規格 Experimental RFC 6628 として承認・発行された。
著者
伊藤 清亮
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

クリオグロブリン(Cryo)血症性糸球体腎炎のモデルマウスを作成することを本研究の目的とし、Cryo血症患者よりCryo活性を持つIgM型モノクローナルRF(Cryo+IgM mRF)産生ハイブリドーマを樹立し、Balb/cマウスに投与した。その結果、尿中アルブミンの増加が認められた。腎組織の検討では、管内増殖およびメサンギウム細胞の増殖、Cryo+IgM mRFの糸球体への沈着を認めた。腎組織の変化は軽度であったが、Cryo血症性腎炎モデルマウス樹立の基礎となるデータが得られた。
著者
岸 努
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

細胞周期G1期に機能するタンパク質群の発現を活性化する転写因子Swi5は、G1後期にユビキチンリガーゼSCFCdc4に依存して分解される。分解を受けずに安定化する安定化型Swi5を発現する細胞では、S期開始、染色体の分離、M期の終了が阻害された。この機構を解析した結果、G1期には、以降の細胞周期の進行を阻害する因子が存在すること、それらの発現をSwi5が活性化すること、Swi5がSCFCdc4によって分解されると細胞周期の円滑な進行が可能となることを明らかにした。
著者
木森 佳子 須釜 淳子 宮地 利明 中山 和也
出版者
石川県立看護大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、失敗する可能性の高い目視困難な末梢静脈を可視化する装置開発を最終目的に、近赤外光を用いた静脈透視技術と画像処理技術の課題を解決することである。これらの共通課題は深層静脈の可視化である。静脈透視技術について可視性に影響する光源とカメラと皮膚の位置関係、ナローバンドの効果、偏光フィルターの角度について検討した。その結果、これらの角度等により静脈の見え方は違いがあり最適値付近が明らかになった。画像処理技術の改良によってこれまでのプロトタイプより静脈可視化率が向上した。静脈の深さではなくコントラストの向上が功を奏した。臨床の意見を基に穿刺に有用な画像処理技術も向上した。
著者
長沼 毅 伊村 智 辻本 惠 中井 亮佑
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

初年度(H28、2016年度)は予定通りエジプトで調査を行った。しかし、当初希望していた地域には保安上の理由で入れなかったので、同国内の他地域で地衣類サンプリングを試みたが、そこでも希望するロケーションには到達できず、不首尾に終わった。一方、予定外の地衣類サンプルとして、フィンランドの北極圏・亜北極圏および赤道域のギアナ高地(標高2500 m)からイワタケ類の地衣類を得ることができた。2年度目のH29年度(2017年度)は、国立極地研究所とカナダ・ラバール大学などの国際共同研究「北極域研究推進プロジェクト(ArCS)」の協力を得て、カナダ亜北極域のサルイットにおいてイワタケ類の地衣類を採集することができた。これらの地衣類サンプルの菌類・藻類の構成種および共在微生物相について、18Sおよび16S rRNA遺伝子をターゲットとした標準的なクローン解析を行ったほか、次世代シークエンシングによる16S rRNA遺伝子の網羅的マイクロバイオミクス解析を行った。その結果、南極域と非南極域の間に生物地理的な境界線、いわば地衣類微生物の「ウォレス線」が引けることが示唆された。ただし、藻類・菌類種と共在微生物種のコンビネーションについての傾向性はまだ得られておらず、さらなる調査と解析を待たねばならない。また、南極と非南極の間の「ウォレス線」についてはまだ検証の余地があり、今後はアフリカ南端部および南アメリカ南端部でのサンプリングを計画する必要がある。
著者
中野 亮
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

モモ、クリ果実の主要害虫であるモモノゴマダラノメイガ(以下本種)において、オスが超音波からなる短いパルスと長いパルスを交尾に用いることを明らかにした。短いパルスは、食虫性のキクガシラコウモリが捕食時に発する超音波とパルス構造が極めて似ており、交尾の競合相手となる他個体のオスの接近を阻害した。また、短いパルスは多様なチョウ目害虫(アワノメイガ、ノシメマダラメイガ等)の飛翔をも効率よく抑制した。聴神経の電気生理実験の結果とあわせ、周波数40-60 kHz、パルス長20-30 ms、パルス間間隔(静音部)25-45 msの超音波が、チョウ目害虫の飛来を効果的に阻害することを突き止めた。