著者
林 美朗
出版者
東海学院大学・東海女子短期大学
雑誌
東海女子大学紀要 (ISSN:02870525)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.181-192, 2004-03-31

症例は18歳、女性。主訴は大量服薬と過食嘔吐。高校1年の時より陸上部に籍を置いていたが、記録を伸ばすため、2年時より節食するようになる。3年時の春からは過食嘔吐も始まり、生活が乱れ、精神的にも不安定になった。自殺企図も見られたため、一時入院。以後、外来で精神療法的に関わりながら絵画療法・薬物療法等を併用した。筆者は、症例の高校生活の最後に「賞状をとるんだ」という目標を支持的に受容し、そのために生活の乱れの改善といったまずできることから始めて、「なかなか伸びない記録の代わりの成果のように錯覚していた」という過食嘔吐を、自由に自己を解放することに振り向けるよう誘導した。その結果、卒業直前の最後の駅伝大会では3位入賞を果たし、過食嘔吐も次第に抑制されてきた。また自らの闘病記を記した高校の「卒業論文」が佳作に入って、さらに症状の安定化が見られるようになった。症例は「卒業論文」は書くのがとてもつらかったと述懐していたが、本稿ではその「卒業論文」を症例の承諾が得られたので提示し、「書くこと」の自己治療的な効果を中心に、さらに若干の考察を試みた。
著者
大辻 隆夫 塩川 真理 加藤 征宏 松葉 健太朗
出版者
京都女子大学・京都女子大学短期大学部
雑誌
京都女子大学発達教育学部紀要 (ISSN:13495992)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.39-50, 2005-01-31

本研究の目的は,高校心理学導入の是非に関する基礎資料の収集及び導入にあたっての課題を明確にすることにある。高校2年生252人(男子96人,女子156人)及び教員42人を対象に調査及び考察をおこない,次の知見を得た。(1) 高校生は全体として高校心理学への関心を高く示し,とくに女子が積極的な関心を示した。(2) 高校生及び教員が,高校心理学の内容として期待する領域は,高校生で1位心理検査,2位コミュニケーション,3位カウンセリングであり,教員では1位メンタルヘルス,2位コミュニケーション,3位青年心理学であった。(3) 高校心理学の授業担当者として,高校生及び教師のいずれもが臨床心理士による授業を望んだ。(4) 教師は,高校心理学を新教科として設置すること,あるいは総合学習の授業時間を利用して教えることに関心を示した。これらの知見を受けてあえて提案するならば,高校心理学は,総合学習ないしは選択制教科として導入し,現時点では現在配置されている臨床心理士であるスクールカウンセラーを授業担当者として活用することが一案として考えられる。
著者
今井 輝光
出版者
三彩社
雑誌
三彩
巻号頁・発行日
no.533, pp.p86-89, 1992-02
著者
岩見 洋平 戸田 智基 川波 弘道 猿渡 洋 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.619, pp.11-16, 2003-01-24

音声における感情表現は韻律におおきく影響されるといわれており,これまで,韻律を制御するためのさまざまな分析と,その分析から得られる規則を用いた合成手法が報告されている.しかし,それらの報告において,韻律は感情表現において重要な要素であるが,韻律だけでなく声質も重要な要素であると指摘されている.そこで本報告では,感情音声の声質を制御する手法として, GMM (Gaussian Mixture Model)に基づく声質変換を用いた感情音声合成手法を提案する.この手法では読み上げ調に発話された音声の声質を,感情音声のそれに変換する.本研究でははじめに,怒り,悲しみ,喜び,読み上げ調(平静)の音声データを収録した.そして,その音声を用いて感情音声への声質変換を行い,客観評価実験及び主観評価実験を行った.その結果,声質変換のみでは感情表現は不十分であるが,適切な韻律が与えられた場合,声質変換を行うことにより,感情の表現力が向上することが分かった.本報告では,感情音声データベースの作成と,その音声から作成した感情間の声質変換音声の評価について報告する.
著者
佐々木 貴宏 所 真理雄
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.365-378, 1997-07-15
被引用文献数
6

マルチエージェント系におけるエージェントの環境への適応は,進化論からの類推に基づき,個体による生涯内での「学習」と集団による世代をまたいだ「進化」といった異なる2過程の相補的なものとして捉えられる.本稿では,ダーウィン型あるいはラマルク型の遺伝機構を持つ集団の進化の過程を再現し,特に動的な環境下でのそれぞれの集団の適応性について評価および議論する.その結果,ダーウィン型の集団の方が,静的環境下では効率的なラマルク型の集団よりも環境の変動に対して安定した挙動を示すばかりでなく,世代を通じて動的環境自体に適応していくことが可能であることを示す.
著者
宇野 毅明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.31, pp.55-62, 2003-04-18
被引用文献数
5

グラフG=(V, E)の頂点集合Sの任意の2頂点間に枝があるとき、Sをクリークとよぶ。また、2部グラフG=(V_1∪V_2, E)の頂点集合Sの任意の頂点v_1 ⋴ V_1とv_2 ⋴ V_2の間に枝があるとき、Sを2部クリークとよぶ。本稿では,巨大で疎なグラフ極大クリークと極大2部クリークを列挙する,実用的に高速なアルゴリズムを提案する。グラフの最大次数を△とすると,本稿の改良により,極大クリーク1つあたりの計算時間がO(|V||E|)からO(△^4)に,極大2部クリークはO(|V||E|)からO(△^3)に改善された。計算機実験により,ある程度ランダムな入力に対しては,1つあたりO (△^2)時間程度しかかからないことを示し、さらに現実のデータに対しても高速であることを示す。
著者
増市 博 大熊 智子 鷹合 基行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.299, pp.1-8, 2006-10-13

本稿では,深い言語処理のための言語理論の一つであるLexical Functional Grammar(LFG)を取り上げ,LFGに基づく日本語文法記述および日本語文解析/生成システムの研究,開発の現状とその応用技術について述べる.日本語LFGシステムの解析カバー率はEDRコーパスを対象とした場合で97.3%であり,適合率85.9%,再現率83.9%の係り受け精度を実現している.また,LFGに基づく文生成では95.7%の生成成功率を実現している.このように深い言語処理は精度およびカバー率の点で実用化のレベルに近づいてきている.さらに,宣言的な文法規則に基づく深い言語解析システムを用いれば,通常の係り受け解析システムよりも豊富な情報を持つ解析結果を得ることができる.今後深い言語処理技術は,より高度な言語処理アプリケーションを構築していく上で重要な役割を担っていくと考えられる.本稿では,このような深い言語処理の応用例として,日本語LFGシステムを用いた,医療テキストを対象とする情報抽出手法について説明を行う.
著者
坂下 智子
出版者
立教大学
雑誌
Aspekt : 立教大学ドイツ文学科論集 (ISSN:03876861)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.385-393, 2007
著者
小山 憲司
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.102-112, 2010 (Released:2010-05-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2

利用者の学術情報ニーズを補完する図書館間相互貸借(ILL)に注目し,それを取り巻く環境を概念モデルとして提示,検討することで,学術雑誌の電子化が学術文献の需給にどのような変化を与えているかを分析した。その結果,利用者の量的・質的変化,文献の発見可能性の高まりなど,文献需要を押し上げる要因が複数確認される一方で,ビッグ・ディール契約に基づく電子ジャーナルの導入や機関リポジトリを通じた一次資料の電子化など,電子的入手可能性の増大によるILLの減少が明らかとなった。学術雑誌の電子化が学術情報へのアクセス環境を改善したが,予算確保,未電子化文献への対応といった課題も認められた。オープン・アクセスの進展とともに,ILLという互助制度が今後も求められると考えられる。