著者
岡本 紗知
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.407-408, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
3

文系・理系というのは基本的に学問上の区分だが、個人の特性などと結び付けられることでステレオタイプ化につながることがある。本研究は、この文系・理系を学生自身がどのように定義をしているのかを明らかにするために実施した。42名の半構造化インタビューデータから、学生が文系・理系を7つの着眼点に基づき分類することが明らかとなった。これら7分類は、「興味の対象」「技能」「知識生産の性質」「知識生産の方向性」「思考のプロセス」「思考の出発点」「思考の到達点」である。この中で、「思考のプロセス」に言及した学生が最も多く、ここには「文系は感情が許されるが、理系は感情を排除して考える」や「理系は論理的に考える」というものが見られた。しかし、例え同じ単語で表現されても学生により解釈が異なったことから、学生の文系・理系の定義は、ある程度の共通性があるものの、完全に一致することはないことが明らかとなった。
著者
小川 恭生
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.114-119, 2023-04-30 (Released:2023-06-14)
参考文献数
6

Differentiation of central from peripheral lesions is important when examining patients with dizziness or vertigo. Nystagmus is one of the most important clues to the differential diagnosis between central and peripheral lesions. It is not rare in patients with central lesions to have no neurologic symptoms other than nystagmus in the acute phase. Direction-changing gaze-evoked nystagmus, upbeat nystagmus, downbeat nystagmus and direction-changing apogeotropic positional nystagmus are known as characteristic findings of central vertigo. In this article, we report a case with direction-changing gaze-evoked nystagmus, a case with upbeat nystagmus, a case with downbeat nystagmus, and a case with direction-changing apogeotropic positional nystagmus, and explain/speculate on the mechanism of nystagmus in each case.
著者
上智大學法學會
出版者
上智大學法學會
巻号頁・発行日
1957
著者
須田 悠基
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-24, 2020-09-30 (Released:2020-09-30)
参考文献数
17

Truth pluralism is a theory of truth stating that truth is realized in more than one manner. This theory has two goals: (1) to provide a model that can cope with every truth-apt proposition while accommodating the merit of each monist position and (2) to demonstrate that truth is substantive. To achieve these goals, truth pluralism depends on three theoretical tools: minimalism concerning truth-aptitude, platitude, and domain. In this paper, I will demonstrate how truth pluralism fails to achieve its goals since its theoretical tools are beset by some serious issues. Finally, I indicate the correct manner of truth pluralism to achieve the desired goals.
著者
James K. CHAMBERS Shinya IWASAKI Shigeki IMAMOTO Yuya NAKAMOTO Kazuyuki UCHIDA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.634-637, 2022 (Released:2022-05-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2

A two-months-old, male, mixed breed cat presented with epileptic seizures. The cat was diagnosed with drug-resistant epilepsy, and died at 3-years of age. No gross lesion was found at necropsy. Histopathologically, the dentate gyrus granule cell layer of the hippocampus was irregularly arranged. Granule cells were dispersed and ectopic cells were sporadically observed in the molecular layer. The granule cells had an enlarged cytoplasm and swollen nucleus. Immunohistochemistry for NeuN and GFAP confirmed severe neuronal loss and mild gliosis in CA1. Binucleation and ischemic change were observed in the remaining pyramidal cells. This report describes a case of feline temporal lobe epilepsy and hippocampal sclerosis associated with dentate gyrus malformation.
著者
立川 真紀絵
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.189-197, 2013 (Released:2017-02-17)
参考文献数
12

本研究では,中国人ビジネスパーソン(以下CBP)に対するインタビューから,CBPの在日日本企業における異文化間コンフリクトの対応方法を分析した。その結果,「回避」「順応」の対立管理方式が多く用いられ,対応方法には言語・文化的マイノリティーや部下であること等の職場環境的な要因の影響が考えられた。一方,それらの多くは発想の転換や相手情報・企業ルールに基づく理解等,多様な働きかけを伴っており,戦略的な使用が観察された。「回避」「順応」がCBPに多用される中で,その一部は主体的な対立管理となり,有効に作用していることが示唆された。
著者
太田 聡 太田 真理 Satoshi OHTA Shinri OHTA
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
no.10, pp.179-191, 2016-01

連濁はもっとも広く知られた日本語の音韻現象の1つである。先行研究では,日本語の複合語は連濁の生起率の違いに基づいて,いくつかのグループに分類されることが提案されている。しかしながら先行研究では,連濁生起率の分類基準が恣意的であった点,またグループの数をあらかじめ仮定していた点に問題があった。そこで本研究では,混合正規分布モデルに基づくクラスター分析と連濁データベース(Irwin and Miyashita 2015)を用いて,日本語複合語を分類する際の最適な分類基準とクラスター数を検討した。複合名詞と複合動詞のどちらも,2つのクラスターを仮定したモデルが最適であり,クラスター同士の分類基準は,複合名詞では連濁生起率が90%,複合動詞では40%であった。これらの結果は先行研究のクラスター数や分類基準とは異なるものであった。我々の結果は,モデルに基づくクラスター分析が言語データに対する最適な分類を行う上で非常に有効であることを示すものである。Rendaku is one of the most well-known phonological phenomena in Japanese, which voices the initial obstruent of the second element of a compound. Previous studies have proposed that Japanese compound words can be classified on the basis of the frequency of rendaku (rendaku rate). However, since these studies used arbitrary criteria to determine clusters, such as 33% and 66%, as well as arbitrary numbers of clusters, it is crucial to examine the plausibility of such criteria. In this study, we examined the optimal boundary criteria as well as the optimal number of clusters using a clustering analysis based on Gaussian mixture modeling and the Rendaku Database (Irwin and Miyashita 2015). The cluster analyses clarified that the two-cluster model was optimal for classifying both compound nouns and compound verbs. The boundary values of the rendaku rate for these clusters were approximately 90% and 40% for the compound nouns and compound verbs, respectively. These results were inconsistent with the findings of previous studies. Our findings demonstrate that model-based clustering analysis is an effective method of determining optimal classification of linguistic data.
著者
田熊 一敞 永井 拓 山田 清文
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.2, pp.112-116, 2007 (Released:2007-08-10)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

学習・記憶は,ヒトの知的活動の中心をなすものであり,得られた情報を脳に蓄積し,その情報に基づいて新たな問題に対する推論と意志決定が行われている.学習・記憶が円滑に進むためには,入力・情報処理・出力に区別されるプロセスが適切に機能する必要があり,いずれのプロセスにおける機能不全によっても日常生活は困難なものとなることが予想される.一方,昨今の我が国における急激な高齢化は,認知症を代表とする学習・記憶障害を伴う疾患の増加をもたらし,また,社会環境の多様化や複雑さは,小児の発達障害や薬物乱用など学習・記憶障害と直面する様々な問題を招くものと考えられる.したがって,学習・記憶行動の評価系は,今後の記憶障害に関連した疾患の病態解明ならびに治療薬開発において不可欠な必須アイテムである.一般に,動物実験のヒトへの外挿においてしばしば問題点が見られるが,学習・記憶については,下等動物から高等動物に至るまで類似した機構が数多く存在することより,小動物を用いた学習・記憶に関する実験成果の利用価値は極めては高いと考えられている.そこで本稿では,小動物(マウスおよびラット)を用いた学習・記憶行動の評価系のゴールデンスタンダードとして汎用されている(1)Y字型迷路試験,(2)ロータロッド試験,(3)恐怖条件付け文脈学習試験,(4)水探索試験,(5)新奇物質探索試験,(6)受動回避試験,(7)放射状迷路試験,(8)Morris水迷路試験および(9)遅延見本合わせ・非見本合わせ試験の原理と具体的方法について概説する.
著者
濱田 国佑
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-17, 2013 (Released:2016-07-02)
参考文献数
17

本論文では,2005年に実施されたSSM 調査データを用い,新自由主義的な 政策支持と社会に対する閉塞感との関連,さらには社会的不平等感との関連に ついて,世代的な差異に着目しながら検討を行った。 世代別に新自由主義的な政策支持を従属変数にして重回帰分析を行ってみた ところ,「規制緩和支持」に対して「再配分志向」が影響を与えていた。また, 「権威主義」および「閉塞感」については20~34歳の世代でのみ効果が認めら れた。「民営化支持」に対しては,「閉塞感」の効果は見られないものの,20~34 歳の世代で「再配分志向」の効果が見られた。以上の分析結果から,小泉政権 による新自由主義的な改革に対する支持の一因として,「再配分」を求める意識 および「閉塞感」が一定の影響力を持っていることが明らかになったと言える。 次に,構造方程式モデリングによって若年層における意識間の関連について 検討を行ったところ,「閉塞感」から「再配分志向」を経由して新自由主義的な 政策支持に影響を与える間接効果の存在が確認された。「閉塞感」と「再配分志 向」がそれぞれ独立に影響を与えているわけではなく,「閉塞感」を感じる人ほ ど「再配分志向」を高め,それが新自由主義的な政策支持に影響を与えている ことが明らかになった。
著者
埼玉県編
出版者
埼玉県
巻号頁・発行日
1979
著者
国分 貴徳
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.86-93, 2020 (Released:2020-07-31)
参考文献数
2

本稿はEditorialとして,本誌「理学療法−臨床・研究・教育」を例に,論文投稿から査読の流れおよび査読に対する返答までの流れについてまとめたものである。初めての論文投稿を検討されている方々へ,少しでも情報提供をと考えて筆をとった次第である。初めての論文投稿と聞くと,誰しもが高いハードルに感じ二の足を踏むことであろう。しかしながらまずは症例報告からであっても,自身の臨床思考過程を可能な限り科学的かつ客観的に文章にまとめ他人の批評を受けることは,自身の臨床における思考過程が整理され,明日のより良い臨床実践につながる。そればかりか,そのような積み重ねが理学療法の科学性,Evidenceの確立に確実に寄与しうる。そしてその延長線上に臨床研究の実践と,論文執筆が待っている。本項を通し,少しでも多くの理学療法士が論文投稿を身近に感じ,本誌への投稿がなお一層増えることを期待してやまない。
著者
福井 俊哉
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3+4, pp.159-163, 2015 (Released:2016-06-17)
参考文献数
9

【要旨】認知症と認知症疾患の包括的理解を目的として、主に本邦における認知症概念と認知症を取り巻く医学的・社会的背景の変遷について述べた。現在では認知症が脳疾患の症状であるという認識が浸透しつつあるが、歴史的には一貫して、避けることのできない老化現象の一部として捉えられていた節がある。神話の時代における認知症と精神疾患は畏敬と脅威の対象であったが、8世紀になると、認知症を患ったものは「狂(たぶ)れており、醜(しこ)つ」ものであり、神識(心の働き)迷乱して狂言を発すると捉えられた。平安時代では年を取ると「ほけほけし…ほけりたりける人」となり、鎌倉時代には、「老狂」に至った者は社会的に何を仕出かすかわからないと考えられていた。江戸時代になると老いによる身体認知機能の低下は「老耄」と称せられ、老耄は老いの不可避的現象なので逆らわずに受け入れるようにとの教訓が残されている。このように、一般的には認知症の原因は加齢に基づくものと考えられていたが、古代唐代の医書では「風」(ふう:外因の邪気)が皮膚から侵入することが、また、中世元代の医書では老年期の精血減少(虚)が健忘、恍惚、狂言妄語を生じる原因であると記載されている。さらに、江戸時代には脳障害や老衰病損、明治時代には老耄、進行麻痺、動脈硬化、卒中発作、昭和時代には老耄性痴呆・動脈硬化性精神病・アルツハイメル氏病が認知障害の原因であるとされ、次第に現代の考え方に近づいている様子がうかがわれる。
著者
長久 功 花北 順哉 高橋 敏行 南 学 北浜 義博 尾上 信二 紀 武志 伊藤 圭介
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.133-137, 2009-02-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

Cervical anginaは,何らかの頚椎近傍の病変に由来する狭心症様発作性前胸部痛と定義されている.今回われわれは,非特異的前胸部痛に対して頚椎手術で症状が改善した症例を経験したので,前胸部痛の発生機序と臨床症状の特徴,治療方法について報告する.症例は72歳女性,不安定性を伴った頚椎症性脊髄症で,経過観察中に前胸部痛が出現したが,心疾患由来のものが否定された.後方アプローチによる治療を行った結果,前胸部痛が改善した.前胸部痛の直接的原因は,C3-4間での不安定性に伴ってC3-7間で髄内への圧迫が増強し,頚椎症性脊髄症を引き起こしたためと考えた.頚椎症の症状を伴い前胸部痛が誘発される場合は,cervical anginaを念頭に置いた頚椎,頚髄の検査が重要である.