著者
小暮 敏明 巽 武司 佐藤 浩子 伊藤 克彦 関矢 信康 並木 隆雄 寺澤 捷年 田村 遵一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.61-68, 2007-01-20 (Released:2008-09-12)
参考文献数
14
被引用文献数
3 1

和漢薬が奏効した線維筋痛症 (FMS) の二例を提示し, FMSの臨床像と甘草附子湯証との類似点を考察した。症例1は52歳, 女性で2001年左手関節痛を自覚, その後両側の肘, 肩, 足関節痛とその周囲の筋痛が出現。近医リウマチ科で精査を受けたが異常はなくFMSと診断された。NSAIDsが無効のため, 04年当科を紹介受診した。桂枝二越婢一湯加苓朮加防已黄耆湯葛根を投与, 内服2ヵ月で疼痛は半減。06年3月VASは20%となりNSAIDsは不要となった。症例2は58歳, 女性で10年前から左肘痛を自覚。2004年から項頸部痛や両側上肢, 肩の疼痛が出現し, 近医整形外科を受診。頸部X-rayや神経学的に異常がなかったためNSAIDsで経過観察となった。05年3月症状が不変のため4月に当科を紹介受診。炎症反応が陰性でACRのFMS分類基準に適合した。甘草附子湯の3ヵ月の服用でVASは30%となりADLは向上した。
著者
渡邉 雅子 WATANABE Masako Ema
出版者
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
雑誌
名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 教育科学 (ISSN:13460307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.1-13, 2011

Using a structural comparison of the dissertation and the essay (French and American academic writing), this paper attempts to clarify the differences in thought and written expression of these writing structures in the two countries, examining the societal and cultural background that has influenced both styles of writing. In contrast to the dissertation, which has a dialectical three-stage structure of thesis-antithesissynthesis, the essay focuses on the thesis, the author's claims, and supporting evidence. The essay in its simplified structure is likened to the "arrow shot at the target" in a straight line, whereas the dissertation is more of a "bird's eye view" depicting the largest possible structural outline for the theme and the integrating of opposing viewpoints. The two styles clearly have contrasting features, for the essay places importance on creating a firm link between the claim and the grounds, while the dissertation accepts the complexity of the theme and attempts mostly to describe the full picture. The elimination of the antithesis and synthesis from American academic writing is relatively recent, tracing back to the 1960s, when American higher education became rapidly popularized. It was created from the necessity to have a form of academic wiring that could be easily written by students from diverse socio-economic backgrounds. The American style of essay is designed to work well in a popular democracy. By contrast, the dissertation was introduced at the end of the 19th century as a symbol of the new society and education after the French Revolution. With the arrival of the dissertation, it can be said that the traditional education of France in the classical languages and rhetoric was transformed into a discipline that makes use of dialectics to build up a robust form of personal thought. However, the intellectual tradition descended from Greek and Roman thought remains in the dialectical structure of the dissertation and in the common culture of French literature and philosophy. The French dissertation presupposes that the educated are the successors of the ancients, their raison d'étre based on a cultural superiority inherent in the classics, the knowledge of which inspires a method of thinking that necessitates a comprehensive viewpoint integrating opposing views. The dissertation, then, is the written embodiment of this pedagogical, philosophical perspective. I suggest that this way of thinking could offer a counterpoint to globalism, which imposes a uniform set of rules and viewpoints on everyone.
著者
重田 みち
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.51-79, 2018-11-30

日本中世の能楽論書『風姿花伝』五篇のうちの神儀篇は、能楽史研究をはじめ藝能史・説話史研究、民俗学等の資料として注目されてきた。しかし、その成立時期や著者を純粋に世阿弥と見てよいかどうか等、文献学的な問題が多く積み残されている。また、同篇は従来、既成の伝承を比較的素朴に綴った猿楽伝説と見られ、その著述に世阿弥の特別な意図がなかったかどうかなど、伝書としての性格や史料論的な観点に注目した検証は行われていない。
著者
神野 秀雄
出版者
愛知教育大学
雑誌
治療教育学研究 (ISSN:09104690)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-9, 2006-02-28

本論文は,初来所時31歳(男性)の高機能自閉症(IQ:92)に関する事例報告である。Aさんは女子学生5,6名を回答者にして「クイズサークル」を年数回実施し,それを5年間続けて終了した。Aさんは,クイズサークルの「会長」として来所していたが,まもなく学生たちにAさん自身のことを「先生」と呼ばしめるようになり,大学の非常勤講師としてクイズサークルを主宰しているという揺るぎない妄想に変化していった。このように学生たちには尊大な態度を示したが,一方筆者(セラピスト)には,強迫行為や強迫観念など“気になること”や“悩みごと”をクライエントとして相談し,カウンセリングによりいくらかでも悩みを軽減できる神経症的な心の構造を示した。本事例の発達経過をみると,Meltzer,D.のいう自閉(autistic)から後自閉(post-autistic)に移行・成長した経過を経たと思われ,その視点から妄想や強迫症等について考察した。
著者
畑 明郎
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
vol.6, pp.39-54, 2000

<p>イタイイタイ病は日本の公害病認定第一号であり,イタイイタイ病裁判は四大公害裁判の先頭を切って被害住民原告が勝訴した裁判である。その意味では現代日本の公害問題の原点であり,近代日本の鉱害の原点とされる足尾鉱毒事件に匹敵する公害事件と言える。</p><p>本稿は,江戸時代以降の300年以上に及ぶ鉱公害の歴史,イタイイタイ病の原因物質であるカドミウムを排出した三井金属・神岡鉱山の約120年に及ぶ歴史,イタイイタイ病発見後の約40年に及ぶ被害者運動の歴史,イタイイタイ病裁判後の約30年に及ぶ公害防止対策などを,加害と被害の社会過程に焦点を当てて歴史的に概括して,20世紀日本の典型公害の一つであるイタイイタイ病問題の教訓を明らかにする。</p><p>また,イタイイタイ病の公害病認定30周年を記念して,「イタイイタイ病とカドミウム環境汚染対策に関する国際シンポジウム」が1998年に富山市で開催され,カドミウム汚染の世界的な広がりを明らかにしたが,食糧庁による1997〜98年産米の全国調査では,秋田県,新潟県,宮城県などで1ppm以上のカドミウム汚染米が多数発見され,イタイイタイ病は過去の公害病ではなく,カドミウム汚染問題が未解決であることを示す。</p>
著者
南里 英幸 松尾 太郎 大貫 祥央 福地 健太郎
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2018-HCI-177, no.34, pp.1-8, 2018-03-09

高精細な 3D プリンタが安価に利用可能となり,印章 (はんこ) の偽造は誰もが容易にできるようになりつつある.本調査では,紙に捺印された印影をスキャンした画像から,複数種類の手法で印章を作成し,予備調査によってもっとも高評価であった,アクリルを用いたマテリアル ・ ジェッティング方式によるものを用いて目視による真贋判定実験を実施した.対象者は著者らが所属する大学の大学生で,いずれも印影照合の経験は持っていなかった.実験の結果,正答率は約 70% となり,また偽造した印章による印影のうち 25% は本物と誤判定された.また,照合の過程で印影のどの箇所を見て判断したかについて被験者に指摘してもらい,本実験で採用した手法の問題点を分析した.
著者
渡辺 哲
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

CDAA食投与によるラットNASHモデルでは、早期より肝に著明な脂肪沈着を認め、4ヵ月で肝硬変を呈した。肝の脂質過酸化と門脈血エンドトキシンの上昇がみられた。酪酸菌を1%の割で餌に混ぜて投与すると、エンドトキシン濃度が有意に低下し、脂質過酸化も著明に抑制された。また、肝の有意な線維化抑制と前癌病変であるGST-Pの産生低下がみられた。これらの変化は、腸内細菌叢の変化と、菌が産生する酪酸によることが示唆された。

17 0 0 0 化学熱傷

著者
湊原 一哉
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.1121-1127, 2007-06-20 (Released:2014-12-03)
被引用文献数
1

化学熱傷とは酸やアルカリを代表とする様々な化学薬品によって引き起こされる熱傷様の皮膚・粘膜障害である.その病態は刺激性接触皮膚炎の範疇に位置付けられている.原因となる化学物質は膨大な数におよぶ.そのため,初期の対応にとまどうことが少なくない.本稿では原因となる主な物質の分類と作用機序,診断時のポイント,および一般的な治療について述べ,さらには本邦でこれまで報告された症例をもとに具体的な事例についてまとめた.
著者
永橋 為介 土肥 真人
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.213-216, 1996-03-29
被引用文献数
2 4

わが国でも都心部の公園は野宿者の生活場所として利用されており, 公園管理者との間に摩擦を生じている。本稿は, この事例として大阪市天王寺公園を取り上げ, 都心部における野宿者と都市公園管理に関わる問題を整理, 把握し検討することを目的とした。同公園に関する野宿者への聞き取り調査を実施し, 同公園の野宿者に関する管理方法を公文書, 新聞などから概観し, 1990年の有料化が野宿者排除に与えた影響を考察した。その結果, 同公園の管理方法は野宿者問題と公園を切り離すことには成功したが, 排除された野宿者は外周柵の外に多く存在し, 依然として同公園周辺地域の問題として現存していることが明らかになった。
著者
商業興信所 編
出版者
商業興信所
巻号頁・発行日
vol.明治43年, 1911
著者
平尾 禎秀
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.194-200, 2008-09-30 (Released:2010-05-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1

2006年の容器包装リサイクル法改正により, 排出抑制に関する措置が施行され, 特にレジ袋について, 地方自治体と小売店等が連携し, 有料化やポイント制などの導入により削減を進める取り組みが全国的な広がりを見せるようになってきている。有料化を実施した地域では高い効果が上がっており, これは行動経済学の知見によって説明が可能であることを示しつつ, その前提として関係者の連携体制の確保が重要であることを示す。また, 2008年のG8神戸環境大臣会合で合意された神戸3R行動計画において, レジ袋対策をとることが盛り込まれた。20ヶ国以上の取組状況を概観し, 各国の取り組みが相互に影響し合っている様子を紹介する。こうした国内・国際両面でのレジ袋対策の進捗が持つ政策手法的な示唆にも言及する。