著者
内貴 滋
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、我が国が道州制を将来の目標として、国と地方の構造改革を進めているこの時期に、地方自治の母国といわれる英国において地方構造の一層制への改革、スコットランド独立に象徴される分権政府への権限委譲問題、地域の決定を尊重する地域主義法の成立など大きな構造改革が進展している状況を明らかにし、その課題を分析することにより、日英双方の国と地方の構造改革への新たな提言を行う。
著者
高橋 一誠
出版者
名古屋市立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究は、運転者の生体指標(心拍・呼吸)から覚醒度を推定し、覚醒度低下検出時に運転者を最適な運転水準へ誘導するシステムの基礎体系を構築することを目的としている。システムは①覚醒度推定に用いる心拍および呼吸を計測する静電容量センサ、②覚醒度推定アルゴリズム、③覚醒度維持刺激の3つの要素技術から成る。平成25年度に実施した各要素の技術開発の成果を以下に記す。①自動車運転時において心電図と呼吸を着衣状態で安定的に計測することを目的とし、本年度は静電容量型アクティブ電極を用いた心電・呼吸センサのプロトタイプを実車に搭載し、直進走行時において安定的に心電図と呼吸を計測できることを確認した。②眠気兆候を捉え易い心拍と呼吸を用い、覚醒度推定アルゴリズムの開発を行った。被験者48名の協力により実施した実験から、運転時の覚醒度低下に観察される心拍と呼吸の特徴を定量化した指標を用いたアルゴリズムにより、覚醒度推定の最も信頼性の高い眼球運動指標よりも早い段階で眠気兆候を捉えることができることを見出した。この成果はInternational Journal of ITS Researchに投稿している。③生理的に眠気を緩和させる手法の開発を目的とし、眠気時の血中酸素飽和度の低下に着目した。被験者16名の実験から、運転者の心拍と呼吸リズム間にCRPS (Cardio-Respiratory Phase Synchronization)を出現させることによって眠気時の頭部酸素量低下を抑えることができることを見出した。このCRPSは運転者の心拍リズムに同期した振動刺激をシート座面から付与することによって導出可能である。これらの成果は、IEEE Transactions on Intelligent Transportation Systemに掲載された。
著者
牧野 俊郎 若林 英信
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

日本の夏の蒸し暑さや冬の温められた居住室内の乾きを抑えるには,湿気を呼吸する後づけ型の室内付設壁板を設けることが考えられてよい.そのような壁板に,人体や衣服と室内壁板の間のふく射伝熱を改善する機能を付与することができればさらによい.本研究では,そのような壁板の候補の1つとして,ハニカム的な構造をもつ多孔性の金属の板に大鋸屑を詰めた壁板を試作し,その平衡質量含水率を測定して吸放湿量の温湿度特性を推定し,湿気伝導率と熱伝導率,全半球放射率を測定する.その結果,この壁板は高い吸放湿性と高い熱伝導性をもつことが示される.
著者
小池 貴久
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

理論的に存在し得るK中間子原子核の中で最も基本的なものは"K-pp"系の束縛状態であると予想されているが、その存在は未だ実験的に確立されていない。茨城県東海村のJ-PARCにおいて、ヘリウム3標的の(飛行K-, n)反応を用いたK-pp探索実験が進行中であるが、K-ppの束縛エネルギーや幅の値を実験データから引き出すためには、理論計算によるスペクトルとの比較が必要である。そこで同反応スペクトルを理論的に十分な信頼性をもって計算できるチャンネル結合DWIA(歪曲派インパルス近似)計算の枠組みを完成させることが本研究課題の目的である。本年度の主な成果は、1. K-pp単一チャンネルDWIA計算の枠組において、K-ppのpoleの位置は複素エネルギー平面内で固定された点ではなく、実軸上のどのエネルギー点から見るかによってその位置が変化するという"moving pole"の考え方を提唱し、スペクトルの形は"moving pole"の動き方と関係づけられることを明らかにした。これは実験データの解釈に影響を及ぼす重要な結果である。この成果はPhysical Review Cで公表した。2. K-p―πΣ間チャンネル結合DWIA計算の枠組にさらにπAチャンネルの効果を加えた結果、これまでよりも詳細なsemi-exclusiveスペクトルの記述が可能になった。定量的議論のためにはまだ相互作用のモデルに改良の余地が残されているものの、適当な相互作用ポテンシャルさえ与えればチャンネル結合DWIA計算が可能になったことは大きな成果である。今後、他の様々な反応への応用も期待できる。以上の成果は日本物理学会、及び多数の研究会等において公表した。
著者
村上 正子 安西 明子
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

我が国は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」を批准し、その国内実施法において子の返還を命じる裁判の実現方法(強制執行の方法)を明文で規定した。この実施法が適用される事案はそれほど多くはないが、その立法過程を見ると、従来の国内の子の引渡を命じる判決の執行実務の運用を制度化したと評価できる面もある。このことから、本研究では、国内実施法の規定が今後の国内事案の執行にどのように影響を与え、これまで指摘されてきた問題点の解決に役立つかを検討し、国内の子の引渡しの執行における行動指針を示すと同時に、汎用性のある理論を明らかにしようと試みた。
著者
西川 完途
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中国大陸のサンショウウオ科およびイモリ科の種多様性の評価と系統進化を探るため、中華人民共和国の四川省、浙江省、河南省、福建省、広西チワン族自治区において野外調査を行い、得られた標本や組織サンプルから形態と分子に基づく系統分類学的な解析を行った。その結果、中国における両科の分類には多くの問題があり、複数の同物異名と新種が発見された。また、多くの生物地理学的な知見が新たに得られた。
著者
吉田 雅穂 宮島 昌克 久保 光 沼田 淳紀
出版者
福井工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,木材の腐朽の心配のない地下水位以深の軟弱地盤を対象として,間伐材を用いた地盤補強技術の開発を行った.軟弱粘性土地盤に施工する道路盛土の補強技術に関しては,現場施工実験と室内模型実験により,丸太打設後に地盤支持力が増加することを明らかにした.また,戸建住宅の直下に丸太を打設する液状化対策技術に関しては,模型振動実験により,住宅の沈下抑制効果を明らかにした.さらに,既設構造物の周囲に丸太を打設する対策方法の有効性も示した.
著者
久保 ゆかり
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、幼児期3年間において〈けんか〉への対処についての認識がどのように変化していくのかについて、4歳時点からインタビューを実施し、1年後、2年後を追い、発達的変化を検討した。その結果、〈けんか〉への対処についての認識の発達の経路としては、2つあることが示唆された。一つ目は、自己抑制的で定型的な対処から、自他の要求を踏まえた交渉へと変化する経路であり、二つ目は、4歳から6歳まで、自己抑制的で定型的な対処について捉え続けるという経路であった。さらに、その2つ以外の経路の存在を示唆する事例が見出された。そこから、〈けんか〉への対処についての認識の成長の仕方には、多様な経路のあることが示唆される。
著者
佐々木 恵
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,精神健康に関して専門的援助を受ける際の促進要因・阻害要因を特定し,その関連要因を明らかとすることを目的とした。一般大学生ならびに精神健康の専門家を対象とした調査から,促進要因・阻害要因それぞれについて17項目を抽出した。また,これらと基本属性,精神症状,ストレス・コーピング特性との関連を検討したところ,精神症状が強い学生は弱い学生と比較して,専門的援助への抵抗が強くなること,個人のストレス・コーピング特性がその抵抗感に影響を及ぼすことなどが示された。今後はこれらの知見をもとに,精神障害の予防・早期介入のための情報発信・啓発を行っていくことが必要と考えられる。
著者
安藤 悦子
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

<結果>上記研究テーマに基づき、半構成的インタビューガイドを用いてインタビューを実施した。対象者は16家族20名(男性8名・女性12名)。患者死亡からの経過年数は8ヶ月〜9年。インタビュー時間は35分〜125分であった。(1)ターミナル期にあるがん患者の家族が認知する看護師のケアリングは、【患者が人として大事にされる】【患者の身体的苦痛が和らぐ】【家族も気にかけてもらえる】【自由度を広げる療養環境】【物腰が柔らかい】などで、それらは【ちょっとしたことでも頼みやすい】【任せられる安心】を生み、【やらなければならない負担の軽減】【患者は幸せだった】という家族の満足感につながっていた。(2)逆にケアリングとならなかった看護師の関わりは、【患者の苦痛が軽視される】【心のない事務的な対応】【頼んでも拒まれる】などがあり、これらに対しては【仕方がない】【お世話になっているから我慢する】とあきらめていた。(3)直接的な看護師の関わりはなく、看護師不在でケアリングがないは、【医師との対立:治療方針・治療の場の決定】【医師への不信:説明不足】【抱えているものを分かち合えない存在】【自分たちでどうにかする】などがあり、最後まで看護師に役割を期待していなかった。特に【医師との対立・医師への不信】は患者の死後も、【後悔・怒り・わだかまり】を残した。<考察>家族にとっては第一義的に患者に対する看護師の関わりが家族へのケアリングとなっていた。これは家族が患者を自身の分身のように感じ、患者の苦痛や患者への応対の一つ一つを自分の痛みとして敏感に反応しているものと考えられる。逆に言えば、看護師の患者に対する関わりが、家族にとっては患者の死後も【患者は幸せだった】と家族の悲しみを和らげる糧となりうることが確認された。また、家族は看護師が考えている以上に、医療者に対して我慢やあきらめを強いられる立場にあり、これらが患者の思いを代弁したくてもできないストレスとなりうることを厳しく自覚することが求められる。看護師不在でケアリングがない【医師との対立・医師への不信】に対し、患者/家族-医師関係の調整において、看護師が患者/家族にとって資源となりうることを看護師側からアピールし、期待される存在として認知されることの重要性が示唆された。
著者
塩澤 正
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は国際英語論の立場から、日本の教育現場で英語を教える場合の態度、留意点、基準などを国政英語論とその関連連領域から考察し、具体的に教授法や教材までを提供することである。この研究を通していくつかの論文や口頭発表と1冊の専門書(『現代社会と英語-英語の多様性をみつめて』)(供編著)を発表することができた。また、さらに1冊の教材『Global Activator』、と専門書『国際英語論が英語教育を救う』(仮)を執筆中であり、2014年中には出版される予定である。
著者
佐々木 保行 大日向 雅美
出版者
鳴門教育大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究は,パタニティ・ブルーとよばれる子どもの誕生から3か月位までの間にみられる,父親の役割をめぐる心理的動揺や葛藤による心身の症状を指す現象についての研究である。1987年にプルーエットがはじめて指摘した現象であるが,今日,子育てにおける父親の役割や父親になることの意義等に関する内外の研究が隆盛であるにもかかわらず,その発生のメカニズムの解明と防止策については,全くといってよいほど触れられていない。本研究は,少子化の問題や核家族に関する研究の蓄積が従来とくらべ顕著になっているが,父親と子ども,さらには父親と子育てという社会的,今日的課題を深める上で,父親の心理社会的対応をより細かく実現するためにも,これまで注目されなかった課題を取りあげることによって,父親研究をより推進する役割をになうことになる。本年度は,これまでのパタニティ・ブルーの特徴をチェックする質問項目の選定とその関連研究を,再度洗い直しをして,本研究の意義を確認する作業を実施した。チェック・リスト等は近々,学会や研究紀要等で発表する予定である。なお,わが国における最近10年間の父親研究のレビューを行うことによって,父親研究のもつ一つの盲点を指摘した。掲載論文は鳴門教育大学研究紀要(教育科学編)の第15巻である。
著者
加納 亜由子
出版者
神戸大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究の目的は、近世後期豪農の非相続人(当主の弟)の家族役割を再検討することである。先行研究で「一人前として扱われない」ながらも「当主の代理・補佐」的な立場であった可能性があると指摘されている点に着目し、一次史料に基づいて再検討を行った。その結果、当主の弟は、「家」内部では「当主の代理・補佐」的な役割を果たすことが可能であったが、公的行為の主体になることはできないかったことを明らかにした。近世社会における非相続人の家族役割とその限界を具体的に明らかにし得たことで、これまで当主を中心に語られてきた近世の家族役割の見直しが進むことが期待される。
著者
呉 秀賢 常森 寛行 杉元 幹史 乾 政志 筧 善行
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

難治性・進行性腎癌、膀胱癌、前立腺癌に対する抗TRAIL受容体抗体併用抗癌化学療法の開発研究を行った。その結果、(1)抗TRAILデスレセプター2に対するモノクロナール抗体であるLexatumumabと臨床的投与可能な低濃度のアドリアマイシン、シスプラチン、エピルビシン、テラルビシンなどとの併用抗癌化学療法による相乗効果を発見した。(2)カスパーゼを阻害することにより相乗効果が抑制されることからカスパーゼカスケード、特にカスパーゼ8の活性化がこの相乗効果に重要であることを証明した。(3)PCR array解析で26個のアポトーシス関連遺伝子の発現変化を発見するなどの成果を得た。
著者
アスキュー 里枝
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本プロジェクト「もう一つの精神史」の目的は、明治以来、来日した外国人の中でももっとも日本の心をよく理解したとされるラフカディオ・ハーンこと小泉八雲の日本における受容・表象のあり方を検証し、近・現代日本の隠れた精神史を明らかにすることにあった。この目的は大体果たせたのではないかと思う。具体的な研究成果としては、期間内にテーマに関する論文を三本書き上げ、そのうちの一本はニュージーランドの査読付き学術誌に掲載された ("The Politics of Nostalgia in Vestiges of Japan", NZAS, 2012)。残りの二本は査読付き学術誌での掲載に向けて準備中である。
著者
長田 洋輔
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

骨格筋の修復や再生は骨格筋幹細胞である筋衛星細胞によって行われる.本研究ではマウス筋衛星細胞由来の細胞株C2C12の培養によって生じるリザーブ細胞を休眠状態の筋衛星細胞のモデルとして使用し,リザーブ細胞形成に関与する因子を探索した.アダプタータンパク質Grb2,Sos1,Rasがリザーブ細胞形成に必要であること,Grb2の強制発現はリザーブ細胞形成を促進し,恒常活性型Sos1およびRasの強制発現はリザーブ細胞形成を抑制することを明らかにした.これらの結果はGrb2-Sos1-Rasはリザーブ細胞形成に必須であるが,過剰なシグナルはリザーブ細胞形成に対して抑制的に働くことを示唆している.
著者
鈴木 康代
出版者
千葉県南房総市立丸山中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

〈研究の目的〉本研究では中学校3年「水溶液とイオン」で,生徒の興味・関心を高め,自主的に学ぶ意義を感じる学習プログラムの開発を目指した。生徒に自ら学ぶ意義を感じさせる手段として,基礎知識を活用して問題解決したり実験結果から考察したことを表現したりする能動的な活動を取り入れること,モデルづくりや実験など体験学習を増やすこと,日常生活との関連を図ることの三つが有効かどうかを解明しようと試みた。〈研究方法〉1「水溶液とイオン」の単元で生徒の自主的な学びを引き出すため,学んだ知識を活用して問題解決し,考えを表現する授業プログラムを開発する。2 生徒の問題解決を助け興味・関心を高めるモデルや教具を開発する。3 学習内容と生活との関連を図り学ぶ意義を感じさせるため,専門家や企業との連携授業を企画・実施する。4 他の単元においても表現活動やモデルづくり,連携授業が有効かどうかを調査する。〈研究成果〉・単元全体を通して「乾電池の仕組み」を探ることを柱とした学習プログラムを組んだ。生徒は自ら積極的に問題解決しようとする姿勢をみせ,生徒の興味・関心を高め,イオンについて学ぶ意義を高めるのに有効であることが明確になった。・考察の際に生徒一人一人に制作させたイオンモデルを使用したことは,生徒の思考を進めることができ,目に見えないイオンについて初めて学ぶ中学生にとって,有効な手段であることが分かった。モデルと合わせて行った簡易電池作りや自作乾電池作りなどの体験学習は電池の仕組みを考えさせる上で有効であった。・企業や大学,博物館,高校の化学部との連携授業は「化学って凄い」と言う感想をひきだし,学んだことが実生活に生かされていることを実感させ,学習意欲向上に有効であった。・新学習指導要領で取り入れられた内容である遺伝・無脊椎動物の単元で,モデルづくり,連携授業,表現活動等同様の支援を入れた授業を実施した。知識の定着と学習意欲の高揚に効果があった。平成24年度の新学習指導要領全面実施に向けて,言語活動を含む新しい学習プログラムを作ることができた。
著者
南澤 孝太
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

当該年度は,入の力触覚知覚に関する基礎的研究,および力触覚インタラクションシステムの実装という両側面からの研究を行い,本研究のテーマである人の知覚特性を活用した力触覚ディスプレイの設計論を構築した.(1)指の皮膚感覚と腕の固有受容感覚の役割分担の検証と,両者を統合した力触覚提示手法の構築人間の力触覚の知覚において,指先から手首にかけての自己受容感覚を欠如しても,肘から肩にかけての4自由度の力覚提示のみでも十分な重量感の伝達が行えることを確認した.これにより簡易な装置による高品位な触覚情報提示が実現可能となる.また重量の知覚における皮膚感覚と固有受容感覚の役割分担および統合の効果について検証し,皮膚感覚は小さい力で優位に働き,固有受容感覚は大きい力で優位に働くという,相補関係にある役割分担が存在することを確認し,皮膚感覚と固有受容感覚が統合されることで,知覚域全体でのフラットなパフォーマンスが達成されていることを,心理物理実験を通じて検証した.この結果から,皮膚感覚は知覚範囲が狭いが分解能は高く,自己受容感覚は分解能が低いが知覚範囲は高い,という相補関係にある役割分担が存在することが示唆された.本研究成果はROBOMEC 2009およびIEEE Haptics Symposium 2010において発表を行った.(2)空中に浮かぶ三次元映像の把持操作が可能な,ハプティックインタラクションシステムの構築身体性を有する触覚情報の提示技術を開発するため,これまで設計した指先装着型ハプティックディスプレイと手掌部装着型ハプティックディスプレイを統合し,手袋型のハプティックディスプレイを実装したまた.物理シミュレーション空間において手のモデルを構築し,バーチャルな手と物体との接触における手の各部位での垂直力と剪断力の実時間計算を行った.さらに立体映像の提示を導入し,視覚情報と触覚情報の位置の一致により実在感の向上が行えることを心理物理実験により検証した.最後に,これうの知見を統合し,全周囲立体映像提示装置TWISTERにおいて手袋型ハプティックディスプレイを用いた,3次元視触覚情報提示システムを構築し,身体性を有する触覚コミュニケーションメディアの有効性を確認した.本研究成果は,東京ゲームショウ2009において技術展示を行い,ハプティックインタラクションの可能性を提示することができた.
著者
羽原 英明 藪内 俊穀 坂上 仁志
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

高強度レーザーが固体物質内部に生成する高エネルギー電子をその場計測するため、物質形状そのものをチェレンコフ光の分光器とする構造とすることを考案し、ターゲット材質やプリズム構造を最適化することによりレーザーから高エネルギー電子流のエネルギー変換効率を精度よく求めた。通常のガラス材、屈折率2の高屈折率ガラス、屈折率3.5のシリコン結晶を用い、チェレンコフ光の計測波長を可視から赤外まで拡大することで、幅広いエネルギー範囲での計測を行うことができた。
著者
鉾井 修一 小掠 大輔
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

インドネシア・スラバヤとマレーシア・クアラルンプールの住宅を対象として、日常の生活状況やエアコン使用に関する意識調査と住宅の温湿度測定を行い、これらの地域の人々が現在どのような温湿度条件下で生活し、どのような温湿度を快適と感じているのかその実態を調べた。睡眠時に寒いと感じる低い設定温度を選択していること、またそのようなエアコンの運転に伴い様々な健康問題も生じていることを明らかにした。