著者
横内 理乃 新田 静江
出版者
日本老年看護学会
巻号頁・発行日
pp.80-85, 2012-03-31

抄録 本研究は,家族介護者にみられる高齢者施設入所時と入所2か月後における生活状況と精神的健康度の変化を明らかにすることを目的に,介護老人保健施設10か所の入所者21人の家族介護者20人を対象に入所時と入所2か月後に面接調査した.その結果,入所時の介護負担感尺度得点は認知症あり,入所期間の設定なし,および家族の協力不十分で高く,精神健康度得点は,入所目的が介護負担の軽減で高かった.入所時と入所2か月後の比較では,家族介護者の自分のための時間が2.8±2.0から5.6±4.9時間(p<0.05),睡眠時間が6.1±1.5から6.7±1.1時間(p<0.01)に増加し,精神健康度は6.0±3.5から2.1±2.4点(p<0.001)と有意な減少がみられた.本結果から,入所時の家族介護者の生活状況と精神健康状態は不良である場合が多く,入所後に改善する過程を理解して支援する必要性が示唆された.
著者
佐古井 智紀 持田 徹 桒原 浩平
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.107-118, 2010

著者らは WBGT の特性を検討した既往研究において,皮膚の飽和度合と湿球温度 <i>T</sub>w</sub></i>,黒色グローブ温度 <i>T<sub>gB</sub></i>,気温 <i>T<sub>a</sub></i> を用いて人体の熱平衡式を記述し,皮膚温 <i>T<sub>sk</sub></i> を <i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> の線形式で表す理論式を得た.ただし,皮膚の飽和度合を用いた式では,<i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> の按分比は皮膚の飽和度合の影響を受けず,発汗が <i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> の按分比に及ぼす影響を把握できない.本論文では,皮膚の飽和度合に代わって,ぬれ率と <i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> を用いて人体の熱平衡式を記述し,皮膚温 <i>T<sub>sk</sub></i> を <i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> の線形式で表す熱平衡理論式(WBGT 理論式)を導出,その特性を考察した.日射がある屋外で,着衣の日射吸収率が黒色グローブ温度計の日射吸収率と異なる場合に,湿球温度 <i>T<sub>w</sub></i> と黒色グローブ温度 <i>T<sub>gB</sub></i>,乾球温度 <i>T<sub>a</sub></i> から推定される皮膚温に 7℃程度の違いが生じ得ることが判った.着衣と黒色グローブ温度計の日射吸収率の差を的確に考慮するため,日射の影響を反映した人体の作用温度を表す上での黒色グローブ温度 <i>T<sub>gB</sub></i> と灰色グローブ温度 <i>T<sub>gG</sub></i> の按分比を導き,その結果から <i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>gG</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> の 4 者によって皮膚温を表現する新しい WBGT 理論式を示した.<br>
著者
武井 秀夫
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.135-144, 1993-03-31 (Released:2016-12-01)
被引用文献数
2

Medical anthropological research in the last twenty years has shown clearly that medicine is a cultural system which can be studied in the same manner as kinship, religion, politics, and so forth. In this paper, basic medical anthropological notions about illness experience are presented, and the theoretical development of analytical frameworks for discourse of patients, their family members, and health practitioners is outlined, with additional commentaries by the author, in order to make it clear the relevance of these notions and frameworks for the modern biomedically-oriented medical practice. Fmphasized throughout the paper are the significance of the meaning of illness experience for the patients, and that helping them cope with their suffering is a primary function of medicine.
著者
田中 究 前田 潔 北山 真次 高田 哲 富永 良喜 加藤 寛
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

被虐待児童の評価として、既に十分に確立している精神疾患概念(診断基準)を用いて評価し、被虐待児童の精神症状、心理的影響について、その成育史上の特徴との関連を明らかにすることは有用であると考えられ、調査を実施した。本調査は兵庫県児童擁護連絡協議会および神戸市養護施設連盟に加盟する児童養護施設(28施設)において行ったものである。その結果、児童養護施設には高率に被虐待児が入所しており、また何らかの精神症状、精神疾患を持つものも高率におり、児童養護施設はもはや生活施設としてではなく、療育・治療の施設としての位置づけがなされなくてはならない状況であった。また、2施設においては悉皆調査を行い、児童の精神医学的診断を質問紙法(子ども用面接(ChIPS))でおこない、加えて児童の観察および診察および事例検討を通して精神科医および小児科医、臨床心理士が評価を行った。また、この評価と生活状況、養育環境および虐待体験の有無、虐待の種類などについて検討し、統計学的解析を行った。この結果、児童養護施設入所時のうち被虐待児の割合は70%認め、何らかの精神症状を持つ児童が74.7%認めた。その内訳は反応性愛着障害35%、注意欠陥多動性障害23%、反抗挑戦性障害28%、行為障害28%、全般性不安障害16%、気分変調・抑うつ状態16%、遺尿(夜尿)18%、解離症状24%、感情コントロール不全16%、知的障害19%などを認めた。さらに、乳児院を経て入所した児童は、反応性愛着障害、注意欠陥多動性障害、反抗挑戦性障害で有意に多かった。これらの児童への治療は、身体医学的治療(薬物療法)および精神医学的治療を医師らがあたり、心理学的治療(遊戯療法、芸術療法、認知行動療法、など)は臨床心理士等に業務依頼し、経時的にこれらの症状評価を行った。研究協力者として加藤寛氏(兵庫県こころのケア研究所研究部長)、井上雅彦氏兵庫教育大学発達心理臨床研究センター准教授)に評価、治療等へのご協力を頂いた。
著者
上田 直生 ラガワン ベンカテッシュ
雑誌
情報学 (ISSN:13494511)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, 2009

京都市中心部で伝統的に使われている「上ル」「下ル」等の住所は、正式な郵便の住所ではなく、伝統的に使われている住所であり、明確なルールや管理団体が存在しない。このため、これまで正式な住所データベースには掲載されておらず、GISやITのシステムで京都の住所を扱うことは非常に困難であった。そこで、京都の住所の現状についてフィールド調査を行い、これらのジオコード(住所から緯度経度への変換)を行うサービスを開発した。
著者
岩崎 信治
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第57回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.F01, 2010 (Released:2010-06-15)

イギリスの人類学者エヴァンズは1900年にクノッソスにある古代ミノクスの宮殿で、二世紀または四世紀と云われる迷路の原型が画かれたクノッソス貨幣の出土を発掘した。このクノッソスの迷路はその後世界各地から出土品や遺跡として現われた。代表的な迷路はフランスのシャルトル大望堂の床に描かれたモザイクであり、北欧では石で庭に画かれた迷路が各地に見られる。これら迷路の成立過程や存在理由は民族の神話や伝説であったり、神話学的解説や学術的定説は未だに不明である。迷路は入り口から中央の終点まで迷うことない一本道だが、途中はくねくねと迂回する曲折模様や螺旋状を示している。その形状はクノッソス貨幣の迷路の原形を伝承するもので、このようなクノッソス文化形態は日本では全く見ることができない。
著者
濤岡 暁子 野坂 久美子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.821-831, 2000-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
29

本研究では,各歯列期における齲蝕感受性の程度が,齲蝕の新生とリコールの間隔の間に,どれ程関連しているかについて調査を行った。対象は,昭和60年から平成6年までの10年間に本学小児歯科外来に新患として来院した患児2,797名のうち,リコールを1年間以上継続して行った1,329名である。まず,患児を齲蝕と修復物の数と部位から,齲蝕感受性の高い群と低い群に分けた。さらに,それぞれの群を初診時年齢から4つに分類し,リコール間隔の一定していた群と不規則な群に再分した。その結果,初診時年齢0~3歳未満で齲蝕感受性の高い群は,1か月間隔に比べ2か月間隔のリコールでは,齲蝕発生歯数が著しく増加していた。また,初診時が0~3歳未満,3~6歳未満群の時,齲蝕感受性の高い群,低い群ともに,乳歯列から,混合歯列,永久歯列へと移行するに従い,齲蝕の発生は,減少していった。しかし,6~8歳未満,8~10歳未満群では,混合歯列から,永久歯列へ移行した時,齲蝕発生歯数は多くなっていた。また,リコール間隔が一定と不規則の場合を比較すると,各歯列期に移行した時の齲蝕の発生は,減少した場合は一定の方が齲蝕の減少歯数が大きく,増加した場合は不規則の方がより大きい齲蝕増加歯数であった。以上の結果から,リコールは,低年齢時から規則性をもって始めるほど有効性があり,また,齲蝕の程度や永久歯萌出開始時期を考慮した間隔が必要と考えられた。Key words:齲蝕感受性,齲蝕の発生,リコール間隔
著者
石田 百合子
出版者
上智大学
雑誌
上智大学国文学科紀要 (ISSN:02895552)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.69-87, 1989-01-14

上智大学創立七十五周年記念/村松・太田両教授定年送別記念号
著者
中野 亜希人 脇田 玲
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1528-1537, 2013-04-15

近年,実世界の様々なモノの形を変える研究が注目を集めている.剛体や弾性体など固体を用いた形状ディスプレイについて多くの研究がある一方,流体に着目した形状ディスプレイの研究はあまり進められていない.そこで筆者らは,磁力に引き寄せられ,変形,移動する磁性ゲルの形を幾何的かつ位相的に操作することが可能な形状ディスプレイを開発している.実世界の流体の形を操作することができれば,まったく新しいデザイン支援や発想支援の可能性を切り開くと考えられる.筆者らは,磁力のON/OFFを制御する装置と,撹拌棒ジェスチャによるインタラクションシステムを構築し,磁性ゲルの多様な変形を実現した.本論文では,磁性ゲル形状ディスプレイのシステムおよびそのインタラクション手法を示す.
著者
中野 亜希人 脇田 玲
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.299-303, 2014-09-12

コンピュータグラフィックスの三次元モデルを実空間で編集するインタフェースの研究が盛んである.このインタフェースのデザインは,モデリングの起点となる基本形状を物質化する手法と,造形や工作の道具を電子化する手法に大別される.しかし,近年の三次元スキャニング技術の精度や速度の進歩は目覚しく,ユーザの変形操作を翻訳するための計算機化インタフェースの恩恵は薄くなりつつある.コンピュータの高速な計算力を用いた,ユーザの創造性を拡げるための計算機支援インタフェースの開発が必要であろう.そこで筆者らは,プラトン立体型インタフェース同士の集合演算によって形状パターンを生成するシステムを開発している.複数の立体が干渉し合う状況では,ユーザは和や差,積といった集合演算の結果を想像できない場合が多い.コンピュータはそのような形状の可能性を提示することで,ユーザに新たな形状の発見を促す.
出版者
大分商工会議所
巻号頁・発行日
vol.昭和10年版, 1935
著者
Atsuko Takano
出版者
The Japanese Society for Plant Systematics
雑誌
Acta Phytotaxonomica et Geobotanica (ISSN:13467565)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.45-53, 2020-02-29 (Released:2020-03-17)

Salvia lutescens (Koidz.) Koidz. var. intermedia (Makino) Murata (Lamiaceae) has been proved to be divided into two allopatric taxa, one in the Kinki Distr. ("Kinki form") and the other in the Kanto Distr. ("Kanto form") according to the recent molecular phylogenetic and morphological analyses. In this sense, the past lectotypification of var. intermedia by Murata & Yamazaki (1993) was incorrectly applied, as the lectotype (N. Takemura s.n., MAK), belonging to the Kinki form, is in serious conflict with the protologue of Makino (1901) which agrees well with the Kanto form. Therefore, I revise the lectotypification of var. intermedia in accordance with ICN Art. 9.19(b) to change into a specimen of the Kanto form (R. Yatabe & J. Matsumura s.n., TI), and describe the Kinki form as a new variety, var. occidentalis. Furthermore, lectotype of S. lutescens var. crenata is also designated. A key to the varieties and taxonomic treatment of each taxon of S. lutescens is provided.
著者
加地 雄一
出版者
中央大学教育学研究会
雑誌
教育学論集 (ISSN:02869373)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.235-244, 2020-03
著者
杉本 正勝
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.54(1997-MBL-001), pp.1-6, 1997-05-30

モーバイルコンピューティングの入力手段の一つである片手操作キーによる日本語入力法について述べる。研究の背景を説明した後に、研究の流れに従って、英語テキスト入力、SHKキーカード、曖昧さ解消型圧縮ローマ字漢字変換方式の日本語テキスト入力を論じる。