出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1395, pp.108-111, 2007-06-11

初夏の日差しの中、滋賀県の長浜駅を降りると琵琶湖からの涼しい風が吹き抜ける。長浜は新幹線の停止駅である米原から、JR北陸線で10分足らず。新幹線を乗り継げば名古屋から40分、大阪からは新快速を使って1時間30分程度で来られる。 5月の大型連休。関西や中京地区からやってきた大勢の観光客が、駅から長浜商店街に向かって歩く。
著者
施 勤忠 安藤 成将
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.P1-14, 2005-02

宇宙機には衛星分離機構、ソーラパネルやアンテナなどコンポーネントの展開機構に火工品が広く採用されている。これら機構の作動による衝撃は数千G に及ぶ非常に高い加速度と数十kHz の高周波成分が生じる。その結果、多くの場合において、加速度センサへ過大な応力が印加されることなどによって計測された加速度に「ゼロシフト」が発生してしまう。このようなゼロシフトを「完璧に」防ぐ方法はないと考えられているが、宇宙機開発の検証試験現場においては、実用上使用可能補正手法の開発が望まれている。本稿では、実用上重要な2 つの課題であるゼロシフトの判定方法、及び補正手法の手順の確立や信頼性について検討した。ゼロシフトの判定方法については、正・負SRS(Shock Response Spectrum)による判定法と速度による判定法がある。補正手法については、衝撃などの瞬時現象に最も適しているウェーブレットを用いた補正手法の手順を確立し、手法の信頼性について基礎実験による検証を行ない、本手法の有効性を確認した。
著者
神馬 幸一
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.72-78, 2013-09-26

2012年のノーベル経済学賞は「安定配分理論とマーケットデザインの実践」に関する業績に与えられた。ここにおける数学的基礎理論と経済学的実践は,臓器マッチング体制の確立という具体的な成果を導いてきた。生体育移植における多くの事例では,他者に無償で腎臓提供をしたい場合であっても,当事者間における医学的適応性の問題により提供を諦めなければならないことがある。しかし,この臓器マッチング体制により実施される組み直し腎臓交換は,その問題を解消する。すなわち,この仕組みは,医学的適応性に関して問題を有する複数の腎移植当事者を組み換え直すというものである。これは,臓器売買の場合と異なり,無償提供の意思を結び付ける画期的な発想であるとも評価できる。本稿では,この臓器マッチング体制の様々な手順内容を確認した上で,これらの新しい生体間移植医療の手法における倫理的問題を検討する。
著者
田中 綾乃
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.23-39, 2008-09

This article considers the relationship between faith and knowledge in Kantian philosophy in the 18 century. Philosophy in the early stages was regarded as anchilia filia (maidservant) to theology. But in the modern age, a wedge was driven between philosophy and theology, and the former established itself as an independent field. As a result, the faith-knowledge problem became a new issue comprehended within the realm of philosophy.Kant argued, in his introduction to the 2nd version of Critique of Pure Reason (1787), that "Ich musste also das Wissen aufheben, um zum Glauben Platz zu bekommen" (I have therefore found it necessary to deny knowledge, in order to make room for faith). In order to explore the significance of this statement, I will first focus on the relationship between faith and knowledge in The Impossibility of an Ontological Proof of the Existence of God in Critique of Pure Reason, where Kant exposes the fallacies in all the theoretical proofs of God's existence, and shows that God's existence cannot be demonstrated. Then, I will analyse the concept of Kant's Vernunftglauben (reason-faith), and clarify the issues of christianity and knowledge in Kantianism. Finally, I will distill Kant's concept of religion and Christianity from Religion, written in 1793.本稿では、18世紀のドイツの哲学者カントにおける信仰と知の関係を考察する。かつて哲学は「神学の侍女」と呼ばれていたように、哲学は神学の手段として機能していた。だが、近代に入り、神学と哲学の間に楔が打ちこまれ、信仰と知の問題は哲学内部の問題として新たに呈示されることになる。カントのこの言葉は一体どのようなことを意味するのであろうか。本稿では、このことを明らかにするために、まず、1) カントの「神の存在論的証明」の批判を概観することで、『純粋理性批判』において示された信仰と知の関係を確認する。次に、2) カントの「理性信仰」の内実を明らかにし、カントにおける信仰と知の問題を考察する。最後に、3) カント自身は、宗教およびキリスト教をどのように捉えていたのか、そのことを『単なる理性の限界内の宗教』(1793年)から導く。
著者
下中 雅仁 細木 高志 冨田 因則 安室 喜正
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.623-631, 2002-09-15
被引用文献数
6

電気細胞融合により, ネギ(Allium fistulosum L., 2n=2x=16)とタマネギ(A. cepa L., 2n=2x=16)との種間体細胞雑種を育成した.ネギのプロトプラストからのコロニー形成を阻害するためのヨードアセトアミド(IOA)濃度を明らかにした.IOA処理を行ったネギプロトプラストと分裂能を持たないタマネギプロトプラストを混合し, ヘテロカリオンのみが選択的に発達するための細胞融合法を構築した.その結果, 培養45日目には417個のコロニーが得られ, その内の約80%がカルスへと発達した.325個中の33個(10.1%)のカルスからシュートの発達が認められた.これらの個体の中には奇形を示すものもあったが, 2個体はガラス温室で生育した.細胞遺伝学的およびDNA解析を行った結果, ガラス温室内の個体はネギまたはタマネギの葉緑体を有する複二倍体(2n=2x=32)の体細胞雑種であることが明らかとなった.さらに, 他の3個体はネギの核ゲノムとタマネギ由来の葉緑体を有していた.これらの個体のネギの育種上での利用について考察した.
著者
有江 力 難波 成任 山下 修一 土居 養二 木嶋 利男
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.531-539, 1987-10-25
被引用文献数
2

Fusarium wilt of bottle gourd (Lagenaria siceraria Standl.) caused by Fusarium oxysporum f. sp. lagenariae is a serious and wide-spread soil-borne disease in Japan. In some fields of Tochigi prefecture, welsh onion (Allium fistulosum L.) has been mix-cropped customarily as an associate crop with bottle gourd. Those fields showed little occurrence of the disease, in spite of continuous cropping of bottle gourd. This phenomenon suggested the relation between mix-cropping with welsh onion and control of the disease. From the subterranean parts of the welsh onion, Pseudomonas gladioli were isolated frequently, and some of these bacterial isolates showed antifungal activity to F. oxysporum f. sp. lagenariae on BPA plates. But as they were usually pathogenic to roots of welsh onion, we had to select, for practical use, isolate that antagonized strongly to F. oxysporum f. sp. lagenariae, had no pathogenicity to welsh onion or other plants, and multiplied well on subterranean parts of welsh onion. Such an isolate P. gladioli M-2196 (isolated from Miltonia sp.) was selected from 90 isolates of Pseudomonas spp. from 20 kinds of plants. For the purpose of biological control of Fusarium wilt of bottle gourd, we cultured P. gladioli M-2196 on BP broth up t0 10^9 cells/ml, dipped the root systems of associate crop (welsh onion or chinese chive) in the cultural suspension for five min., and then bottle gourd was mix-cropped with associate crop in infected soil. With this treatment, occurence of Fusarium wilt was districtly suppressed. This mix-cropping using associate crop with P. gladioli M-2196 seemed to be a beneficial technique for biological control of soil-borne fungal diseases.
著者
有江 力 難波 成任 山下 修一 土居 養二 木嶋 利男
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.531-539, 1987
被引用文献数
9

ユウガオつる割病はユウガオの重要な土壌伝染性病害であるが,その連作にかかわらず,発生が認められない圃場が存在し,これらの圃場ではユウガオと共にネギの混植が慣行的に行われている例が多かった。そこで,この原因を調べたところ,現地のネギ地下部からは高率に<i>Pseudomonas gladioli</i>が分離され,これらはユウガオつる割病菌(<i>Fusarium oxysporum</i> f. sp. <i>lagenariae</i>)に対して高い抗菌性を示した。そこで,<i>Pseudomonas gladioli</i>を中心に,20種の植物より分離した<i>Pseudomonas</i>属細菌4種90菌株について,つる割病菌に対して強い抗菌性を有し,かつネギの地下部に定着性のある菌株を探究したところ,<i>P. gladioli</i> M-2196が選抜された。ネギおよびニラの地下部に本菌株を浸根接種し,ユウガオつる割病汚染土にユウガオと混植したところ,つる割病の発病が著しく抑制され,その実用性が確認された。以上の結果,抗菌性を持つ細菌と定着植物を用いた土壌病害の生物的防除の可能性が明らかになった。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1086, pp.44-47, 2001-04-09

3月31日、大阪市の臨海工業地帯に鳴り物入りで開業した米国映画のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」。「ジョーズ」など日本でもよく知られた映画のアトラクションをふんだんに設け、「東京ディズニーランドにも匹敵する集客力のある施設に」との地元の期待は大きい。 前田建設工業もUSJの集客力に期待する企業の1つだ。
著者
渡部 和子
出版者
The Society for Psychoanalytical Study of English Language and Literature
雑誌
サイコアナリティカル英文学論叢 (ISSN:03866009)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.19, pp.15-28,44, 1998

George Eliotの中期の小説The Mill on the Flossは、ヒロインMaggieTulliverの成長を描いたBildungsromanで、全7巻から成っている. そのうち第1巻と第2巻はMaggieの9歳から13歳までの少女時代を扱っているが、興味深いことに、"Boy and Girl"と題される第1巻と、TomのStelling牧師宅での学校時代を背景にした"School-Time"第2巻とでは、Maggieの描写に明らかな違いがある. 第1巻に登場するMaggieははつらつとしているがあたり構わず衝動的でさえあり、母Mrs. Tulliverを嘆かせるエピソードに事欠かない."friendly pony" (34) にも例えられる彼女のinnocentな時代と言ってよいであろう. しかし第2巻のMaggieはこれとはずいぶん趣を異にしている. 母親のしてくれるカールを受け付けず、おさまりのつかないのが特徴だった彼女の黒髪が、結い方が変わり耳の後へなめらかに櫛けずられるようになった (128). それなりにおさまりがつくようになったのである. そして程なく、生まれて初めて父親以外に彼女の黒い目を評価してくれる異性に出会う. その人Philip Wakemに対して、"Should you like meto kiss you, as I do Tom?" (161) と尋ねるMaggieの方は、無邪気な、兄に対する妹の感情であったかも知れないが、これは紛れもなき淡い初恋の情景の一頁と言えよう. このように、成長のしるしというには気になる変化が語られるのである. 一方でMaggieは子供時代の名残を色濃く残してもいる. 例えば、自分の賢さを認めてもらいたいばかりのMaggieは、かつて父の裁判上の相談相手Riley氏に対してしたようにStelling牧師を相手に、恐れも見せずしやべりまくる. しかし、第1巻と異なって「ジプジーのところへ家出した女の子」の話を持ち出されると、急に黙り込んでしまうのである (131).<BR>この話、Maggieがジプジー部落へ家出した事件は、第1巻の終わり近く、第11章で語られる. そして厳密には、この事件を境に、これまで述べたようなMaggieの変化が表れるのである. ということはこの事件が本質的にMaggieの変化、つまり彼女の"aloss of innocence"に深く関わっているからではないだろうか. 本論では"Maggie Tries To Run Awayfrom Her Shadow"と題される第1巻第11章に焦点を当て、この出来事がMaggieの子供時代の精神史において果たした役割を考察してみることにする. その過程で、この章タイトルに含まれる「影」の意味も明らかにすることが出来るであろう.