著者
クーロワ ナズグリ
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.93-100, 2016-03-31

近年,自殺は15〜19 歳の青少年の主な死因の1 つとなっている.世界保健機関(WHO)によると,世界的に青少年の死因の中で第2 位に位置している.それにもかかわらず,多くの国では自殺予防対策が行われておらず,限定的な対策が行われているだけである.各国の統計局や日本の厚生労働省,警察庁,文部科学省の統計や報告,また,WHO やユニセフ,自殺予防機関の統計,報告,マスメディアの情報を分析し,青少年の自殺の状況を把握し,青少年の自殺予防の実態を明らかにした.各国の自殺予防対策は不十分で,主に市民やボランティアが対策を実施していることがわかった.自殺は青少年の主な死因の1 つとなっており,女子より男子の自殺が多く,主な自殺手段は縊死(首つり)である.自殺リスクは主に家族環境や学校環境にあり,親の教育や学校の教師の自殺予防の教育研修,学校などで面接相談のできる場所を設けることが自殺を減少させるための一歩であると考えられる.
著者
澤原 光彦 北村 直也 末光 俊介 青木 省三
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1353-1359, 2015-12-01 (Released:2017-08-01)

わが国の自殺死亡者は年間3万人を超える事態が1998年から14年間続いた後,2011年から減少に転じ,2014年には25,000人台に減少したが,若年者の自殺死亡率は依然としてきわめて高い水準にあり,15〜39歳までの各年代の死因の第1位を「自殺」が占めている.本稿では,警察庁統計,自殺対策白書,自殺総合対策大綱,各種レビューを参照して,若者の自殺の特徴を紹介した.次いで,学校,地域,救命救急センターで現在行われている自殺防止活動の一部を紹介した.さらに,救命救急センターにおいて自殺企図者に精神科医が対応するときに,注意を要する点を述べた.最後に,思春期・青年期に自殺企図を生じ,そのために筆者が関与した症例のうち代表的な事例3例を提示し,それぞれに短く解説を加え,私見を述べた.
著者
鈴木 陽雄 佐藤 正
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.213-215, 1972-04-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
9
被引用文献数
4 5
著者
生井 みづき 瓜生 大輔 徳久 悟 柏樹 良 稲見 昌彦 奥出 直人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.281, pp.41-46, 2009-11-05
被引用文献数
3

"panavi"は、適切な温度調節と動作の誘導により、ユーザの料理スキルの習得を支援するシステムである。本システムは、センサ・アクチュエータ・無線通信機能を内蔵するフライパンと、オリジナルフォーマットのレシピ、ナビゲーションディスプレイを有するコンピュータの3つから構成されている。本システムは他の調理道具と同様に家庭のキッチンで使用可能であるため、毎日の食事作りの際に繰り返して使用することで、プロの料理人が身体能力として身につけている能力を、素人が獲得することの支援が可能である。本論文では、panaviのシステムの仕組みと、ユーザが経験するインタラクションについて述べる。
著者
阿部 武尊
出版者
スポーツ史学会
雑誌
スポーツ史研究 (ISSN:09151273)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.15-25, 2016 (Released:2017-06-08)

The purpose of this study is to clarify the process of labor negotiation by Japan Professional Baseball Players Association in order to capture the change of the status of the players, who are the important persons concerned in the professional baseball world. This article focuses the period from 1985, when the Japan Professional Baseball Players Association (JPBPA) was established to 1993, when a free agent (FA) system was introduced. Recognized as a labor union by the Labor Relations Commission, the JPBPA obtained their legal right that they could negotiate with the Nippon Professional Baseball organization (NPB). As a result, the JPBPA succeeded in the improvement of the working conditions as they had wished since its foundation. In addition, JPBPA managed to reach the introduction of the FA system, which permits the freedom of the transfer of the player. However, due to the interest of each baseball clubs the players as combatant could not involve in decision making directly. As a result, the introduced FA system was different from the system that the JPBPA required in 1991, and limited players could exercise the right. However, the introduction of the FA system could be regarded as an epoch-making, in that it enables the players to negotiate with the baseball clubs equally viewpoint with the NPB by the freedom of the transfer of players being permitted. Furthermore, we should pay attention to having gained such rights by the JPBPA under the condition which the NPB seems to lead the process of the negotiation.
著者
塚越 覚 丸尾 達 伊東 正 扶蘇 秀樹 岡部 勝美
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1022-1026, 1999-09-15
被引用文献数
1 2

NFT毛管水耕システムを用いたホウレンソウ(Spinacia oleracea L.品種'ジョーカー'および'オリオン')栽培において, 収穫前にNO_3-Nのみの補給停止(実験1 : 夏作), または全肥料成分の補給停止(実験2 : 秋作)が, 生育, 可食部の硝酸含量, 廃液の無機成分濃度に及ぼす影響を検討した.実験1 : 収穫6日前からのNO_3-Nの補給停止で, 可食部の硝酸含量は2, 199 ppm, 廃液のNO_3-N濃度は1.0 me・liter^<-1>と, 食品・廃液の許容基準を満たすことができた.NO_3-N以外の成分は初期濃度と同じか, それ以上に廃液中に残存した.実験2 : 2&acd;6日前からの追肥停止で, 廃液のNO_3-N濃度は0.7 me・liter^<-1>以下, 可食部の硝酸含量は2, 870 ppm以下となり, 食品・廃液の許容基準を満たすことができた.さらに, 他の主要無機成分についても, 残存濃度を低減できた.しかし, 6日前からの追肥停止では, 地上部生体重が低下した.以上より, 夏作で収穫予定日の6日前, 秋作では2&acd;4日前から, 肥料成分を含まない水を補給する方法が, 可食部の硝酸濃度の低いホウレンソウの生産と, 廃液中の主要無機成分含量の低減に有効と考えられた.
著者
杉浦 直
出版者
The Tohoku Geographical Association
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-23, 2007-04-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
36
被引用文献数
5 3

本論文は, カリフォルニア州サンフランシスコのジャパンタウン (日本町) における都市再開発事業の進展を, そこに絡む活動主体 (アクター) の動きと相互の関係に焦点をあてて分析し, 当該再開発の構造とエスニック都市空間の建造環境の変容におけるその役割を考察したものである。日本町が位置するサンフランシスコのウェスターン・アディッション地区は, 第二次世界大戦の後, 建造環境が荒廃し都市再開発の対象となった。実際の再開発はA-1プロジェクトとA-2プバロジェクトに分かれる。A-1プロジェクトにおいてはサンフランシスコ再開発公社 (SFRA) の強い指導の下に経済活性化優先のスラムクリアランス型の再開発が行われ, 日本町域では近鉄アメリカなどによる大型商業施設 (ジャパンセンター) の開発が行われた。A-2プロジェクトは少し性格を異にし, コミュニティ・グループの参与の下に再開発が企画・実施され, 日本町域では日系ビジネス経営者を中心に構成された日本町コミュニティ開発会社 (NCDC) による「4プロツク日本町」再開発が行われたほか, 日系アメリカ人宗教連盟 (JARF) による中低所得者向きの住宅も開発された。なお, プロジェクトの初期において草の根的コミュニティ・グループ (CANE) による立ち退き反対闘争が行われたことも特筆される。このような再開発を経てジャパンタウン域の建造環境は大きく変容したが, その変化はかつての伝統的な総合型エスニック・タウンからツーリスト向けのエスニック・タウンに在来の現地コミュニティ向けエスニック・タウンの要素が混在した複合型のエスニック・タウンへの変化であったと要約されよう。こうした変化は, 前述した諸アクターの相互関係によって規定される再開発の加構造がもたらした必然的な帰結と言える。
著者
外内 尚人
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.6-13, 2015-03-16 (Released:2016-03-29)
参考文献数
16
被引用文献数
1

酢酸菌は我々にとって非常に重要な微生物であり、食酢の製造に利用される。酢は酒から作られ、原料や気候など酒と同様に各地の文化を形成した。日本の酢は、4 世紀頃朝鮮から伝えられた。古代から肉食が禁じられた中で、魚介類や野菜を調味して食す、という独自の和食文化が発達した。酢は、その調味料の一つとして用いられた。時代とともに、「鱠(なます)」や「すし」といった代表的な料理も発展した。世界的にも、先史時代、古代文明において酢はそれぞれの地域に誕生し、中世ヨーロッパでは食品保存や消毒の目的でも多く使われた。アジアでも酢は重要であり、食欲増進と雑菌抑制に用いられる。ナタデココも酢酸菌を利用した発酵食品である。酢酸菌の生理的特徴は、膜上の酸化酵素による強力な酸化能と、空気や液面との接触を維持する菌膜形成である。この2つの特徴は、自然環境下での生存戦略に関わっている。有害な酢酸を生成して他の生物の生育を妨げ、その後に自身が耐性をつけて徐々に資化していく。自身の生育を犠牲にしてまでもその生存環境を形成する、シンプルで傍迷惑な戦略と考えられる。
著者
北神 雄太
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.72, pp.475-476, 2010-03-08
参考文献数
4
著者
福田 緑
雑誌
学習院大学人文科学論集 (ISSN:09190791)
巻号頁・発行日
no.17, pp.201-224, 2008-10-31

Aleida Assmann definierte das Gedächtnis durch drei Gedächtnisformen, nämlich durch das kommunikative, das kollektive und das kulturelle Gedächtnis. Nach der Definition von Assmann gehört Literatur zum kulturellen Gedächtnis. Aber meiner Meinung nach ist die Eigentümlichkeit der Literatur in ihrer Theorie nicht genügend erfasst. Um die Probleme ihrer Definition klar zu machen, betrachte ich einige Gedichte und Äußerungen von Paul Celan. Erstens hält Assmann Literatur für ein „passives“ „Speichergedächtnis“. Assmann sagt, dass das Speichergedächtnis das kulturelle Archiv sei, in dem ein gewisser Anteil der materiellen Überreste vergangener Epoche aufbewahrt werde, nachdem diese ihre lebendigen Bezüge und Kontexte verloren haben. Aber in der Rede „Meridian“ legte Celan auf den Dialog viel Gewicht. Für Celan ist der Dialog mit „offenbleibenden“, „zu keinem Ende kommenden“ Fragen identisch, und seine Gedichte suchen m.E. nach Möglichkeiten für solche Dialoge, bestehen sie doch aus Fragen oder Begegnungen. Solche Spannung von Schreibenden und Lesenden, nämlich aus Gedichten entstehenden Dialogen oder Gegensätzen, kann man in der Definition von Assmann nicht finden. Ein Beispiel für einen solchen Gegensatz kann man als „Ästhetik der Negation“ im Gedicht „Psalm“ sehen. In diesem Gedicht taucht das Wort „Niemandsrose“ auf, welches zum Titelwort des Gedichtbands wurde. Im Kontext des Gedichts deutet „Niemandsrose“ auf die Abwesenheit Gottes hin. Außerdem kann man mit Rose vielfältige Deutungen verbinden, z.B. kann die Rose Leben, Fülle, Liebe oder Schönheit bedeuten. Der Titel „Niemandsrose“ verneint solche Bedeutungen, die durch die Rose symbolisiert werden können, grundsätzlich. Zweitens setzt Assmann voraus, dass etwas Bestimmtes im Gedächtnis gespeichert werde. Bei Celans Gedichten kann man kein genaues Geschehen ablesen. Vor allem ist der Sprachverlust im Gedicht „Zwölf Jahre“ thematisiert. Man kann dieses Gedicht als einen unmöglichen Versuch lesen, den Sprachverlust sprachlich darzustellen. „Zwölf Jahre“ kann als der Zeitabschnitt der Nazi-Diktatur interpretiert werden. Aber Celan zeigt kein bestimmtes Geschehen auf. Literatur hat somit die Möglichkeit, dadurch etwas darzustellen, dass man es gerade nicht beschreibt. In dieser Hinsicht ist die Definition des kulturellen Gedächtnisses von Assmann problematisch. Zum Schluss bezieht Assmann die „Vielfältigkeit“ des kulturellen Gedächtnisses primär auf die Interpretation des Lesers. Aber wie das Gedicht „Eine Gauner- und Ganovenweise / Gesungen zu Paris Emprès Pontoise / Von Paul Celan / Aus Czernowitz bei Sadagora“ zeigt, hat das Gedicht selber schon die Vielfältigkeit, indem es aus Zitaten aus anderen Texten oder sprachschöpferischen Wortspielen besteht; so kann man z.B. „Mandeltraum“ als den Traum der Erlösung interpretieren, und das Wort „Trandelmaum“, das durch den Austausch „m“ und „t“ bei „Mandeltraum“ entsteht, könnte auf das Scheitern des Mandeltraums hinweisen. Wenn man diese Eigentümlichkeit der Literatur versteht, kann man nicht sagen, dass Literaturwerke nur ein „passives“ „Speichergedächtnis“ seien.
著者
酒井 與喜夫 湯沢 昭
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.551, pp.1-10, 1996-11-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
9

一般住宅の冬季の降雪対策や, 道路行政における除雪・排雪計画を策定する上で, 降雪・積雪予測は不可欠である. しかし, 気象予測の観点から見た場合, 1週間以内の短期や中期予測に関しては実用的な状況にあるが, 1カ月以上の長期予測はその予測の地域的な広がりや予測精度の観点から見た場合, 必ずしも満足のいく結果とはなっていない. 雪国には, 古来より気象にまつわる諺が多くある. その中の1つに「カマキリが高い/低い位置に産卵すると大雪/少雪」と言うのがある. 本研究は, カマキリの卵ノウ高さからその年の最大積雪深を予測しようとするものであり, その予測結果についての時系列的な検証と, 実際の予測方法の提案を行うものである.
著者
上原善広著
出版者
新潮社
巻号頁・発行日
2015
著者
廣田 吉崇
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.13-72, 2010-03

本稿において、茶の湯の家元である千家の血脈をめぐる論争を材料として、家元システムの現代的展開について考察する。 千利休の直系の子孫である三家の千家は、茶の湯の家元として現在もその存在感を示している。その千家の初期の系譜のうち、千家第三代の千宗旦の出自については、千宗旦が千道安の実子であるという説と千少庵妻・千宗旦母が千利休の娘であるという説とが、昭和三十年前後に強く主張された。その対立する見解は、表千家の機関誌である『茶道雑誌』の誌上に発表されたものが多い。これは一種の論争として、四十年代、五十年代と、新たな論者が参入しながら継続した。この背景には、現在の千家が千利休の血を引いているのかどうかという教条主義的な問題があり、それが論争を大きくしたといえる。すなわち、「利休血脈論争」と呼ぶべき性格のものであった。 現在では、千少庵妻は千利休の娘「お亀」であると一般には理解されている。しかし、結論を出すには根拠が不十分という考え方も歴史学者の間では依然として根強い。そもそも、この両説は江戸時代から存在しており、千家の系譜に関する歴史資料自体がすでに意図的に潤色されている可能性がある。 ところで、筆者の関心は、江戸時代からすでに存在している説をめぐって、なぜ昭和三十年代から論争に発展しなければならなかったかにある。近世に誕生し、発展してきた家元システムは、明治維新に伴う混乱期を乗り越え、第二次世界大戦後には、伝統文化の領域における頂点に上昇することとなる。さらに、昭和三十年以降の高度経済成長により、経済力を身につけた大衆に立脚する現代の巨大家元システムへと飛躍することに成功する。その過程において、千利休の血脈を継承していることが、家元の正統性の根拠としてあらためて主張される必要があったものと考える。