著者
芥川 昌也
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.61-66, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
16

新教育課程では,これまで高校で学習したメンデル遺伝を中学校で履修することになったが,一遺伝子交雑しか扱わず,検定交雑や特殊な遺伝は扱わない。高校低学年で履修する「科学と人間生活」では遺伝の内容は全く扱わない。高校の低学年で90%以上の生徒が履修する「生物基礎」では遺伝学関連分野は,旧課程のメンデル遺伝から分子生物学へと内容がシフトし,DNA,染色体の基礎,遺伝子の発現,ゲノムについて学習する機会がある。選択で約20%の生徒が履修する「生物」では遺伝子と染色体,遺伝子による発生の制御,全能性といったテーマを扱うこととされている。分子生物学の基礎から応用までを教える過程で,DNAとバイオテクノロジー,ヒトの染色体と病気の遺伝子,出産に関わる案件,遺伝子差別と情報管理の問題に触れる等の工夫が可能である。その中で,教員は生徒たちに,知識以外に必要な倫理的な判断能力を育成する必要がある。
著者
谷村 嘉彦 平山 英夫 近藤 健次郎 永田 寛 岩永 宏平 鈴木 征四郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.129-132, 2016 (Released:2016-08-15)
参考文献数
6

Photon energy spectra were measured above the operating floor of unit 3 reactor at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station by using a CdZnTe semiconductor spectrometer. The spectrometer was installed in a lead collimator to measure the photons from the area directly below the detector. The collimator and spectrometer were lifted up by a huge crane and set above the operating floor. The photon spectra were derived by unfolding the pulse height spectra measured using the spectrometer. The response function of the spectrometer was calculated with the MCNP-4C code and was used as an input parameter of the unfolding code MAXED. It was found from the photon energy spectra that low-energy photons with energy below 0.4 MeV were dominant above the operating floor. These spectra are fundamental data for evaluating the dose reduction effect by setting up shields on the operating floor.
著者
ムハマド ホリルロハマン 湊 真一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第29回全国大会(2015)
巻号頁・発行日
pp.4E11, 2015 (Released:2018-07-30)

与えられたグラフのオイラー路を高速に列挙索引化するアルゴリズムを提案する。このアルゴリズムは、KnuthのSimpath法を拡張したもので、有向非巡回グラフ(DAG)を用いて各辺の接続関係を圧縮して表現することにより、高速な計算を実現した。本手法により、膨大な個数のオイラー路を、現実的な時間で正確に数え上げることが可能となった。
著者
大滝 周 川嶋 昌美 高木 睦子 津川 博美 福岡 絵美 浅野 和仁
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.82-87, 2017 (Released:2017-08-17)
参考文献数
19

足部保温は,臨床の現場や日常生活の中で血流改善や温熱作用による鎮痛効果,リラックス効果などのさまざまな目的で活用されている.しかし,足部保温の体温変動に及ぼす影響について言及している論文は見当たらない.そこで今回,足部保温の1つとして看護の現場で多用されている足浴が体温の変動に及ぼす影響について明らかにすることを目的とし健康な女性を対象に研究を行った.被験者の両下肢を40℃に設定した足浴器(高陽社製,足湯器 冷え取り君FB-C80)の湯に膝下20cmまで15分間浸漬,深部温度と外殻温度を測定した.最初に足浴による保温が体温に及ぼす影響を調べるために,深部温度および外殻温度の体温測定を行った.その結果,深部温度は,保温終了5分後,10分後もほぼ一定の状態で経過した.一方,外殻温度は足浴に伴い上昇し,その後,一定の状態での経過あるいは温度の低下がみられた.次に,保温終了5分後の深部温度および外殻温度について比較を行った.その結果,深部温度と外殻温度に有意な差が認められた.これらの結果より足浴が体温に及ぼす影響として,深部温度の変化はみられないが外殻温度の変化がみられることが示唆された.
著者
高橋 秀樹
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.23-33, 2003-07-10

和歌を詠んだ者が皆「和歌の家」を形成したわけではないように、音楽をたしなんだ人々がすべて楽人で、「音楽の家」を形成していたわけではない。では楽人の条件とは何か、地下楽人にとって「音楽の家」を伝えるというのは具体的に何を指すのかを、鎌倉時代の音楽説話集『文机談』や藤原孝道の楽書の記述から検討して、「音楽の家」の実像に迫るとともに、地下楽人の家と王権・貴族社会とのかかわりについて論及する。
出版者
[書写者不明]
巻号頁・発行日
0000
著者
内海 健太 齊藤 智
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.349-366, 2016 (Released:2018-03-21)
参考文献数
67

The goal of this review paper is to elucidate prospective memory (PM) mechanisms by identifying the roles of inhibition. Recently, inhibitory functions in PM have become of interest, but little is known about them. Previous studies examining the relationship between PM and inhibition can be broken into two categories: (1) studies that have examined the relationship using analyses based on the correlation of scores in related tasks and (2) studies that have employed experimental manipulations and have focused on inhibition that actually functioned in the PM remembering process. In reviewing these studies, we have found that both response inhibition and representation inhibition are involved in PM. Based on these results, we suggest that PM involves two control processes and that the separate inhibitory mechanisms apply to each of the control processes. This cognitive psychological hypothesis is supported by neuroscience studies. Finally, we argue that this distinction in the roles of inhibition is important for the development of PM theory.
著者
大槻 麻衣 大隈 隆史
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2020-HCI-187, no.13, pp.1-6, 2020-03-09

超高齢化・少子化のために労働人口減が進む現代日本社会において,サービス業における人手不足が今後ますます深刻化することが予想される.現状,サービス業における訓練では,OJT (On the Job Training) として,指導者が訓練者に付き添い,実際の接客を通じて指導を行うことが多いが,訓練者の認知や判断の途中経過を指導者が客観的に捉えることが難しいことから,OJT による指導は極めて難しい.また,訓練の効果を評価するためには,採点者に依らない定量的な指標の計測が必要であるが,実店舗での接客中に計測することも困難である.これらの問題に対し我々は,飲食サービス業において特に実店舗で訓練が難しい要素である「気づき」と「優先順位判断」に着目した VR 業務訓練システムを開発する.提案システムでは,VR 空間に再現した実店舗モデルを用いて訓練を行う.訓練者は複数のテーブルに対して並列して接客業務を訓練することができ,また,指導者はリアルタイム,あるいは後からその様子を見て採点可能とした.本稿では提案システムの設計とプロトタイプの実装について述べる.
出版者
経済雑誌社
巻号頁・発行日
vol.日本後記・続日本後記・文徳実録, 1916
著者
海部 陽介 坂上 和弘 河野 礼子
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.25-38, 2017 (Released:2017-06-27)
参考文献数
29
被引用文献数
1

長崎県佐世保市に所在する下本山岩陰遺跡から,1970年に麻生優らによって発掘された人骨を整理したので報告する。この資料中には,縄文時代前期に属する比較的保存のよい2体と,弥生時代に属する合葬された男女2体,その他の人骨が確認された。縄文時代前期人骨について,少なくともほぼ完全な1体には縄文時代人的な形態特徴が色濃くみられた。弥生時代人骨は,1個体に高顔傾向が認められる点に留意しなければならないが,全体的に北部九州弥生時代人より縄文時代人と類似する。この形態特徴と遺跡の地理的位置の両面から,本人骨は,一般に縄文時代人の系譜を継ぐとみなされている,いわゆる西北九州タイプの弥生人集団(在来系の弥生人集団)に含めることができるだろう。これらの人骨にみられた高頻度の骨折,同地域内での咬耗ならびに口腔衛生状態の変化についても合わせて報告する。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1406, pp.28-33, 2007-09-03

繁華街の雑踏をよそに、日雇い派遣の3人は神戸の中心地、JR三ノ宮駅南口へと急いだ。ただ、そこは単なる集合場所で、実際に働く場所は別だという。派遣先の運送会社の関係者が3人を連れていった先が違法行為の現場だった。 新港第2突堤。そこにあるコンテナで、ペットボトル入りの飲料水の荷さばきをするのがその日の仕事だった。大型連休の谷間、5月1日とその翌日のことである。
著者
藤澤伸介
雑誌
日本教育心理学会第60回総会
巻号頁・発行日
2018-08-31

問題と目的 葉状図形とは,正方形に内接する2つの四分円弧に囲まれた2頂点図形のことで,「正方形の面積×0.57」を暗記して求積問題に対処する抜け道指導が小学生になされていることが問題視されている。藤澤(2002a,2002b)で指摘されている「ごまかし勉強」を促す指導になっているためだ。藤澤(2017)では,高校生になっても0.57指導の影響は強く残っており,その記憶が概念の意味理解や円滑な問題解決思考の働きを抑制している可能性が示されている。記憶に思考抑制効果があるとすれば,指導直後はさらに抑制効果が大きいであろう。 本研究では,藤澤(2017)で使用されたのと同一課題を中学入学直後の1年生に与え,高校生より大きな抑制現象が見られるかを調査した。方 法 首都圏にある私立の中高一貫校(入試Aランク校:藤澤(2017)の調査対象校と同一)の中1男子86名を対象に,1辺8cmの正方形に内接する葉状図形の面積を,設問(1)π≒3.14,設問(2)π≒3.142に場合分けして計算させる出題の質問紙調査をし,解法を分析した。(解答時間は約10分である。)実施に当たっては結果が成績評価に影響しないことを対象者に伝え,無記名用紙を使い,調査者には本人特定が一切不可能な体制にした。結 果 数学的解法は,円周率をπとし一般式32π-64を導出した後,πに2種の円周率を順に代入すればよい(モデル化型)。或は2題の解法が同一なので,片方の計算過程を利用して,他方の異なる部分の計算だけを行っても解が求められる(数値利用型)。更にモデル化を一切考えずに,2設問を別問題と考え,個々に初めから数値を順に計算して解を求める方法もある(算数解答型)。この3タイプが正攻法である。 86名中正攻法による解答は,70名(81%)であったが,そのすべてが算数解答型で他の2タイプは存在しなかった。 本調査で設問(1)をπ≒3.14とし,設問(2)をπ≒3.142にしてあるのは「正方形面積×0.57」という便法が適用できない時に,どう対処するかを見るためである。 正攻法ではない「正方形の面積×0.57」の利用者は16名(19%)であり,設問(1)はその全員が正解であったが,π≒3.142の設問(2)は,11名が正攻法で正解になり,5名は正しい解法に辿り着かず不正解となった。この5名の内訳は,3名が空欄で,2名は設問(1)の数値と全く掛け離れた数値を解答していた。考 察 藤澤(2017)に示された,同一問題に対する同一学校の高校生の結果と比較すると,「正方形の面積×0.57」の利用者は高校生の場合,85名中6名(7%)であるから,中学生の方が多く利用していることがわかる(百分率の検定:1%水準で有意差あり)。入学直後であるため,指導影響がそれだけまだ強く残っているということである。 設問(1)を0.57を利用して解いた16名のうち5名が設問(2)を解けなかったことは,どう解釈すべきだろうか。可能性としては,(a)葉状図形求積問題は難問のため,0.57が利用できる(1)だけ解答した。(b)難問ではないのに,0.57利用習慣が思考を抑制し,解けるはずの(2)が解けなかった。の2つが考えられる。0.57の数値を暗記させる指導は,必ずしも受験生の全員が受けているわけではないにもかかわらず,(1)の問題は81%の70名が正攻法で解いていることを考えると,(b)の思考抑制の確率が高いであろう。 ごまかし勉強を誘発するテスト出題や指導は依然として衰えておらず,0.57を意味なく暗記させる指導はその最たる例である。試験を乗り切る指導に悪影響はないと便法指導者達は主張するが,この数値暗記によると考えられる思考抑制現象は受験後も残るのである。便法指導を行う教育は,意味理解を軽視した学習観を植えつけやすいので要注意である。0.57=π/2-1を利用して0.571を導き,解答した答案もあったが,こうできるような指導なら0.57でも問題はないのである。
著者
田村 幸雄 松井 正宏 吉田 昭仁
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

外装仕上材からそれらを支える2次部材に変動風圧力が伝達され,最終的に構造骨組を通じて地盤へ伝達されるプロセスを詳細に追い,従来の耐風設計で行われている構造骨組用風荷重と外装材用風荷重の妥当性を検討した。特に,外装材と構造骨組の区別が付かないモノコック構造体や,大スパン屋根の外装材を支持する部材と構造フレームなどにおける構造物全体の挙動と局所的な風圧力が荷重効果に与える影響について検討し,両者を別々に評価する手法を提案し,耐風設計への応用を示した。
著者
田村 幸雄 松井 正宏 吉田 昭仁 小林 文明
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の原子力発電施設やLNGタンクなどは全て海岸線に沿って建設されており,米国中部の竜巻常襲地域の竜巻発生確率などと較べても,これら我が国の高危険度施設の竜巻遭遇確率は遥に高い。本研究では,従来から設計では採り上げられていなかった竜巻等のシビア・ローカルストームの,原子力発電施設,大規模液化天然ガス貯蔵施設,使用済核燃料再処理施設,有害産業廃棄物処理施設など,被害が発生した際に周辺地域,住民に甚大な悪影響を与える重要施設に対する影響と対策,設計・施工に対するガイドラインを検討した。