著者
河原 常郎 土居 健次朗 大森 茂樹 倉林 準
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0320, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】変形性膝関節症や半月板損傷による歩行は,膝関節の疼痛を訴えるケースが多い。このような症例に対して,歩隔を大きくした歩行(以下,WB歩行)は,膝関節における疼痛の軽減につながることが多くあった。本研究は,WB歩行を運動学的に解析し,その有用性を検討することを目的とした。【方法】対象は整形外科的,神経学的疾患の無い健常成人男性11名(年齢25.6±2.8歳)とした。使用機器は,VICON MXシステム(Vicon Motion System:カメラ7台,200Hz),床反力計(AMTI2枚,1,000Hz),使用ソフトはVICON NEXUS 1.7.1とした。運動課題は歩行動作とし,両踵骨間の距離を,①N:規定なし,②W:左右上前腸骨棘間距離,③WH:②の1.5倍の3パターンとした。マーカは,15体節(頭部,体幹,骨盤,左右の上腕,前腕,手部,大腿,下腿,足部)の剛体リンクモデルを用い,35点を貼付した。解析項目は,歩隔,足角,歩幅,歩行速度,ケイデンス,下肢(股関節,膝関節,足関節)関節角度,関節モーメント,身体重心(COG)位置とした。計測は右脚立脚期に行った。計測時間は,自然3次スプライン補間を用いて,各データのサンプル系列から,全データのサンプル数が同じ長さになるようにデータを正規化した。統計処理は,一元配置の分散分析後,有意差を認めたものに対して多重比較Bonferroni法にて検証した。【結果】1)歩隔:歩隔は,N:93.7±31.0mm,W:288.5±33.3mm,WH:429.0±47.1mmであり,各歩行パターン間に有意差を認めた。2)歩行速度:歩行速度は,N:72.1±5.3m/min,W:70.1±6.4m/min,WH:72.6±7.2m/minであり,各歩行パターンに有意差を認めなかった。3)歩幅,足角,ケイデンス:歩幅は,N:596.0±36.1mm,W:575.4±49.9mm,WH:644.0±31.3mm,足角は,N:5.8±5.1°, W:4.0±2.9°, WH:10.1±3.0°であった。WHはN,Wに対して有意に大きい値を示した。ケイデンスはN:121.1±7.4steps/min,W:122.0±6.2steps/min,WH:112.5±8.2steps/minであった。WHはN,Wに対して有意に小さい値を示した。4)関節角度,モーメント:股関節における関節角度は,立脚期を通して,歩隔の増大に伴い,外転角度増大,外旋角度減少を示した。関節モーメントは,立脚期を通して,歩隔の増大に伴い,股関節内転モーメント(N:760.5±17.9Nmm,W:563.2±53.9Nmm,WH:342.1±84.2Nmm)・膝関節内反モーメント(N:668.3±61.1Nmm,W:599.5±54.2Nmm,WH:555.1±119.2Nmm)減少,足関節内反モーメント(N:34.6±8.5Nmm,W:108.8±22.1Nmm,WH:211.4±16.1Nmm)増大を示した。歩行周期において,WHは,初期接地から荷重応答期にN,Wと比較して股関節内転・内旋モーメント,膝関節内反モーメント減少を示した。その他の関節角度,関節モーメントは,各歩行パターン間において有意差を認めなかった。またWHは,立脚終期に,N,Wと比較して足関節背屈角度減少,股関節内転・外旋モーメント・膝関節内反・外旋モーメント・足関節外転モーメント減少を示した。5)COG:COGの側方変位量は,N:29.9±11.4mm,W:34.6±10.2mm,WH:76.0±11.0mmとなり,歩隔の拡大に伴い増加を示した。重心側方変位の増加量は,歩隔の増加量と比較して減少した。COGの鉛直変位量は,N:37.9±7.2mm,W:38.1±6.0mm,WH:39.0±7.4mmとなり,各歩行パターン間に有意差を認めなかった。【考察】WB歩行による歩隔の拡大は,膝関節内反・外旋モーメントを小さくした。その量は,軽く足を開く程度のWにて約1割,さらに足を開くWHにて約3割のモーメントの減少が可能であった。WB歩行は,変形性膝関節症(内側型),内側半月板損傷などの有痛性膝関節疾患のケースにおいてストレスとなる関節運動の制御が「安全」かつ「容易」に可能であるという点で有効であるという事が示唆された。ただし本研究は,対象を健常成人としており,WHは,N,Wと比較してケイデンス減少を示したものの,歩行速度が変わらず,歩幅は増大を示した。また,WB歩行はCOGの側方変位過多や足関節内反モーメント増大など,デメリットの要素も残しており,完全な安定した歩行戦略であるとは言い切れないことがわかった。【理学療法学研究としての意義】今回,我々はWB歩行の解析を行い,その運動学的な特徴を示した。その中でWB歩行は,歩行時の膝関節のストレスが軽減することを明らかにした。このことは変形性膝関節症における疼痛回避の一手段となりうる可能性が示唆された。
著者
Riho Komatsuzawa Teruo Miyazaki Hajime Ohmori Chitose Maruyama Stephen W. Schaffer Shigeru Murakami Takashi Ito
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
The Journal of Physical Fitness and Sports Medicine (ISSN:21868131)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.165-171, 2020-07-25 (Released:2020-07-15)
参考文献数
28

The amount of taurine and taurine derivatives in the body is affected by various diseases and physiological events, such as exercise. However, there is little information about possible changes in taurine distribution within tissue. In the present study, we examined whether matrix-assisted laser desorption/ionization-imaging mass spectrometry (MALDI-IMS) can be used to determine the effect of exercise on the distribution and content of taurine and acetyltaurine, a taurine derivative present in skeletal muscle. Using 9-aminoacridine to detect the amino acids in tissue samples, the content of taurine and acetyltaurine in homogenates of skeletal muscle was measured by MALDI-IMS. While the intrinsic levels of taurine in skeletal muscle tissue were adequate to be detected by MALDI-IMS, that of acetyltaurine was not observed. Following 120-min of treadmill running (20m/min), taurine content of soleus and plantaris muscles significantly declined. In the gastrocnemius muscle, taurine content is higher in slow-twitch fiber than fast-twitch fiber. However, the taurine content was not significantly changed by treadmill running in both fast- and slow-twitch fiber of the gastrocnemius muscle. In conclusion, MALDI-IMS using 9-aminoacridine as a matrix could detect the distribution of taurine in skeletal muscle before and after exercise.
著者
中田 明里 山本 綺羅 福士 小春 武藤 日菜向
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-07-04

1.研究目的及び調査方法三島市の楽寿園内にある小浜池は湧水によって形成され、古くから人々の生活と密接な関係があるがその水位変化は謎が多い。よって、水位変化の原因と小浜池湧水の周辺水脈との関係性を降水量,電気伝導度(以下EC)の2点から考察した。三島市と御殿場市の過去(1958-2019年)のアメダス気象データ、小浜池(1958-2019年)と伊豆島田浄水場(2004-2019年)の地下水のデータを用意した。続けて、①谷津(長泉)②富沢不動【愛鷹山】③窪湧水【黄瀬川】④谷田押切⑤竹倉【箱根】⑥小浜池⑦蓮沼川⑧菰池⑨三島梅花藻の里⑩源兵衛川⑪白滝公園⑫柿田川【三島溶岩=富士山】⑬伊豆島田浄水場(【】内は水脈を示す)以上13地点で採水し、ECを、マルチ化学センサ2(島津理化)を用いて測定したのちGISを利用して地図上に示した。 2.調査結果と考察2-1 湧水のECについてECについては①④⑤の愛鷹山と箱根由来の地点で高い傾向がみられ、反対に全体として三島溶岩由来と伊豆島田浄水場で低い傾向がみられた。ECの差の原因は三島溶岩と箱根系の溶岩の新旧の違いに関係すると考えられる。一般的に溶岩が若いほど地下水の流動速度が大きいこと、岩石から溶け出すイオンの量が流動時間に比例することから、より古い箱根溶岩と愛鷹山の水脈においてECが高い傾向が見られたと考えられる。したがって、古い溶岩の水脈と比べてECが低い伊豆島田浄水場の水は三島溶岩系、つまり小浜池と同水脈だと考えられる。 2-2 小浜池の水位変化パターンについて(1)水位0mを超えると伊豆島田浄水場の水位変化に比べ、小浜池の水位上昇が鈍くなった。0mを超えると湧水が拡散するためだと考えられる。したがって、地下水の増減と小浜池の水位の増減を同等のものとすることはできない。(2)降水量と小浜池の水位変化の関係を明らかにするため、2019年に発生した台風19号以後に着目してグラフを作成した。11月17日から18日にかけての御殿場市の降水量と小浜池の水位変化に相関性はないことに加え、御殿場市は小浜池が在る三島市から32.9kmあることから短期間(1~2日)では影響しないとした。(3)小浜池の近くにある説明の看板に水位が150㎝を超えると満水とし、7~8年に一度満水になると書かれていたため、1958~2018年の小浜池の最高水位をグラフ化し事実を検証した。結果、満水である150㎝をこえた年は不定期であり7~8年に一度満水になるという記述は誤りであった。また、1970年までは毎年満水になっていたが1970年以降は満水にならない年が多くみられた。 (4)2011年を境に小浜池の平均的な水位に変化がみられた。同年3月11日三陸沖を震源に発生した東日本大震災を原因とした地層の変化が影響したと考えられる。 3.今後の課題2-2(1)について、湧水の拡散の事実を検証するため小浜池の水位が最下点に達する春頃に湧き出し口の調査を行う。2-2(2)で述べた考察に加え、御殿場市の降水量と小浜池の水位変化の関係性の濃度をより明らかにするには長期的なデータの比較が必要である。2-2(4)で記した考察を裏付けるために、同時期の他条件(気温や地下水の増減)を調べる必要がある。 4.参考文献 三島市オープンデータ https://www.city.mishima.shizuoka.jp/ipn017227.html気象庁 http://www.jma.go.jp/jma/menu/menureport.html伊豆島田浄水場水位のデータ 謝辞 本研究を進めるにあたり、伊豆半島ジオパーク推進協議会事務局専任研究員、鈴木雄介様に多大なご協力を賜りましたことを深く御礼申し上げます。
著者
岡山 将也 谷亀 高広 大和 政秀 岩瀬 剛二
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第52回大会
巻号頁・発行日
pp.90, 2008 (Released:2008-07-21)

ラン科植物の多くが美しい独特の花を咲かせ、多くの人々を魅了してきた。しかし近年、乱獲や開発時の生育地の破壊等により絶滅の危惧に瀕している種が増加しており、生態の解明と保全方法の開発が早急に求められている。ラン科植物の種子は非常に小さく、貯蔵養分をほとんど蓄えていないため、発芽や初期の生育のための栄養分は完全に菌根菌に依存している。本研究は身近な野生ランであるシュンラン(Cymbidium goerinngii)とネジバナ(Spiranthes sinensis)を対象とし、根に共生する菌根菌の多様性を明らかにし、保全のための基礎的データの取得を目的としたものである。シュンランについては栽培品種も実験に用いた。顕微鏡で観察しラン科植物の根にコイル状菌糸(ペロトン)の感染を確認した。根を表面殺菌してガラス棒で潰し、遊離したペロトンを培地上に播き、伸長してきた菌糸をとり菌株を得、rDNAのITS領域の塩基配列解析により菌根菌の種を同定した。その結果、シュンランの菌根菌としてPeniophora sp.が、ネジバナはSistotrema sp.、Epulorhiza sp.、Bjerkandera sp.および Peniophora sp.が同定された。栽培品のシュンランからはTulasnella sp.が同定された。ラン科植物の菌根菌としてPeniophora属菌の報告は本研究が初めてである。これまでネジバナの菌根菌はThanatephorus cucumeris、Ceratobasidium cornigerum、Tulasnella calosporaであると報告されていたが、Peniophora属菌とSistotrema属菌の報告は本研究が初めてである。本研究の結果はシュンランとネジバナにはかなり多様な木材腐朽菌や土壌菌が共生していることを示し、これまで考えられていたようないわゆる’’Rhizoctonia’’に限られたものではないということが明らかになった。また、これらの菌根菌は木材や落葉を分解して得た栄養をランに供給していることを示唆しており、このようなラン科植物の保全のためには、むやみに落葉や倒木を除去しないことが重要であると考えられる。
著者
石飛 幸三
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.59-69, 2015-04-30 (Released:2015-05-12)
参考文献数
13

われわれは人生最期の迎え方について,今までになく考えなければならなくなっています。延命治療法は次々と開発されます。医療制度は国民皆保険です。平和な日本は世界一の長寿社会になりました。自分の最期の迎え方を選べるはずなのに,どこまで医療をしなければならないのかわからなくなっています。われわれ人間は自然の生き物です。いずれ老いて衰えて,最期は自分の口で食べなくなります。 それは身体が生きることを終えようとしているからです。必要な水分や栄養の量はどんどん減っていきます。死ぬのだからもう要らないのです。「入れない方がむしろ穏やかに逝ける」のです。昔から老衰での最期は,死のうちで最も穏やかなものであることを人類は知っていました。しかし現代人は死をタブー視して,目の前の事態を回避することだけに拘って,点滴や胃瘻をつけておけばまだ生きられると思って,反って苦しむことになっていたのです。医療は本来人のための科学です。今こそわれわれは,人生の最終章における医療のあり方を検討する時が来ました。私が作った「平穏死」という言葉は,単なる延命治療が意味をなさないのであれば,それをしなくても責任を問われるべきでないという主張の旗印です。「生きて死ぬ」は自然の摂理,老衰における医療を加減できてこそ,現代の医療が完成するのです。
著者
井徳 正吾 渋谷 詩織
出版者
文教大学
雑誌
情報研究 = Information and communication studies (ISSN:03893367)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.1-19, 2018-01-31

Green Tea beverages sold in plastic bottle could represent as one of the best samples ofcommodity product in Japan. We have 4 major brands and the first one sold was the “Oi Ocha(pronounced Oh Yee Ocha)” by Ito En, LTD., which still maintains strong market share as thepioneer brand. This report focuses on “Namacha” by Kirin Co., Ltd., and studies how itstrategically challenged the pioneer, Oi Ocha, and what were their strategy to compete againstthe late starters such as Iyemon by Suntory and Ayataka by Coca Cola Japan. Brand valueshall specifically be focused to understand the brand strategy of the product represents thecommodity in the category.

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1922年09月04日, 1922-09-04