著者
中津 継夫
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.209-219, 1995-04-01
被引用文献数
4

ビスコクラウリン型アルカロイド製剤であるセファランチンのマウス脾臓内マイトジェン誘導ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)活性増強効果とサイトカイン産生増強効果について検討した.セファランチンはリポポリサッカライド(LPS)による脾臓内HDC活性誘導を正常マウスと同様にT細胞機能欠損マウスならびにT,B細胞機能欠損マウスで増強した.したがって,セファランチンの増強効果はT,B細胞を介さずとも生じることが明らかにされた.セファランチンはマクロファージのHDC活性ならびにサイトカイン産生を増強した.ヒスタミンはマクロファージのサイトカイン産生を誘導したが,LPS誘導のサイトカイン産生はヒスタミン受容体拮抗剤ジフェンヒドラミン,シメチジンでは影響されなかった.また,HDCの阻害剤αフルオロメチルヒスチジンにより,ムPS誘導のサイトカイン産生ならびにセファランチン添加時のサイトカイン産生は抑制された.以上の結果より,ヒスタミンはマクロファージのサイトカイン産生に促進的に作用し,この作用はマクロファージの細胞内外のヒスタミンで制御されていることが示唆された.また,セファランチンのサイトカイン産生増強効果においてもヒスタミンが関与していることが示唆された.
著者
油布 佐和子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.23-38, 2010-06-30

教職における病気休職者増加を説明する理論が見当たらない理由の一一つは,教職を公務労働(教育公務員)として認識する視点が欠落していることによる。本論文では,第一に,感情労働論・ケアワーク論を手がかりに,共同体で営まれていた<人を育てる>という活動が職業となることについての問題を,クライアントとの関係という点から検討する。そこでは,教育的な関係や言説において,絶えず情緒や感情が重視されることの理由が示される。第二に,そうした子どもとの教育的関係が,公務員として雇われて働く「労働過程」のなかにおかれていることに起因する問題を,感情労働論の議論を借りて考察する。そして第三に,現在の新自由主義的な改革の中で,公務員改革の一貫として進められている教職の様々な改革が,教師の教育活動を変容させていること,しかしながら第四に,こうした趨勢に対応する抵抗主体としての教員集団が存在していないことの問題を指摘する。病める教師の増加は,教育という活動を共同体的な「教師-子ども関係」の認識にとどめ,「教育労働」に無自覚であることや,「小さな国家」への移行によって教育労働が変容しているという現状を認識できないことのなかで,自らに過重に責務を負わせたことから生じているといえる。教育社会学における教師研究は,教師がこうした状況や構造を侑緻する視点を提供するという点で,他の教師研究と差異化して展開されるべきだろう。
著者
厚川 和哉 尾脇 重信 児玉 尚子 矢野 幸彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A1099-A1099, 2008

【目的】ブリッジ動作は大殿筋やハムストリングスの筋力強化を目的として幅広く用いられている。しかし、我々は大殿筋の筋特性として、1.殿筋筋膜等を介して様々な筋と筋連結している、2.遅筋線維が多く関節を動かす推進力としての働きが少ない、3.神経支配比が大きく筋紡錘密度が低い等の知見を得、ブリッジ動作を用いての大殿筋の筋力強化訓練としての有効性に疑問を抱いた。さらに先行研究において、表面筋電図を用いてブリッジ動作における大殿筋の筋活動量を測定したが、被験者間に著しい差を認め、ブリッジ動作においては大殿筋以外にも他の筋群が作用している可能性が示唆された。以上をふまえ、本研究ではすでに測定したブリッジ動作に加え、同筋の活動が強く影響されるADL動作として立ち上がり動作を用い、筋活動量を測定し、大殿筋に対する筋力強化訓練としてのブリッジ動作の有効性をさらに研究していくことを目的とした。<BR>【方法】被験者は19名(平均年齢28.1±4.3)の健常成人とし、右大殿筋に表面筋電図を貼付。測定肢位はA.左側臥位で右下肢をスリングで吊り上げ、背側から徒手的に骨盤を固定し、股関節の関節運動が生じないように被験者に指示し、等尺性収縮を5秒間保持させる。B.座位で股関節90°膝関節100°の状態から動作速度5秒間で立ち上がりを行うこととした。以上2条件を設定し、BIMUTUS VIDEO(キッセイコムテック)を用いてA.は筋電図波形から中央の3秒間、B.は離殿時からの中央3秒間の積分値を算出し、肢位の違いによる筋活動の差の比較、個人の筋活動の比率を比較し検討を行った。<BR>【結果及び考察】先行研究においては、側臥位とブリッジ動作の比率には0.5~6.6倍の幅を認め、χ2値より有意な差が認められた。側臥位と立ち上がり動作の比率は0.9~1.7倍で、有意な差が認められなかった。以上の結果から立ち上がり動作時における大殿筋の作用向上の目的で筋力強化を行う場合にはブリッジ動作よりも側臥位での選択的収縮を行うほうがより効果的であることが示唆された。さらに、ブリッジ動作では過剰な筋活動が行われている事が示され、動作獲得を目的とする訓練では、大殿筋の筋特性を踏まえ、感覚入力を与えながら訓練を行っていく必要があると考えられる。<BR>
著者
吉岡 敦子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.115-123, 2007
被引用文献数
2

インターネット情報検索は,検索テーマに関する既有知識と検索したサイトから得られる知識を体系化させながら検索を進めていくことから,本研究では,インターネット情報検索を知識構築過程と捉えて,知識構築を促すメタ認知とメタ認知活性化のための支援の効果について,特徴的な事例を挙げて質的に検討した.その結果から,「検索テーマについての既有知識や検索経験を検索のリソースにするためのメタ認知」と「サイトの文書から有効な情報を得て検索のリソースにするためのメタ認知」が有効なことが明らかになった.求める情報を得ることができた検索者は,これらのメタ認知を促して確認したり理解するなどの認知活動を行っている一方,求める情報を得ることができなかった検索者は,メタ認知を活性化できないために判断できず迷っていることが示唆された.また,これらのメタ認知を促す支援を与えることの有効性も示唆された.今後の課題として,検討した事例数が少ないことから,量的なデータにもとづいた分析を行うことと,本研究で与えた支援だけでは効果がみられなかった検索者に対する支援方法について解明することが挙げられる.
著者
秋保 亘
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.67, pp.138-152, 2016

<p></p><p>De nombreux commentateurs interprètent l'essence d'une chose singulière soit comme générale, soit comme singulière, et cela le plus souvent par un choix exclusif. Il reste que leurs interprétations ont en commun de se fonder sur la définition que Spinoza donne d' « essence » au début de la deuxième partie de l'<i>Éthique</i>. En effet, cette définition est la clef d'une interprétation de l'essence de la chose singulière. Le présent article essaie de comprendre cette essence en examinant la signification et la fonction de la définition spinoziste selon son usage effective dans la chaîne démonstrative.</p><p>Spinoza n'utilise cette définition que dans les trois démonstrations de la deuxième partie [E2P10(S), E2P37, E2P49] auxquelles correspondent respectivement les trois moments de l'essence de la chose singulière : généralité, singularité et affirmation. En plus, tous ces moments sont intégrés immédiatement dans la théorie du « conatus » déterminé comme « essence actuelle » de la chose singulière dans la troisième partie.</p><p>Nous présenterons notre interprétation de la définition de l'essence ainsi que de l'essence de la chose singulière en examinant ces trois démonstrations de Spinoza. Tout d'abord, sa définition nous permettra de cerner l'essence en tant qu'elle n'appartient qu'à une chose singulière déterminée, et par là, rendra manifeste l'intimité, sinon l'inséparabilité, entre cette essence et la chose à laquelle précisément elle appartient. D'où il suit que l'essence en question doit être en elle-même singulière. Toutefois, nous verrons aussi qu'une sorte de généralité dans l'essence joue un rôle important. Car, si une chose singulière peut être produite par la puissance de la substance et qu'en même temps, elle peut participer à cette puissance, c'est en vertu de sa détermination ontologique et générale en tant que « mode » de la substance. Une fois donnée ou produite, une chose singulière affirme sans cesse l'existence actuelle et en elle-même singulière de son corps, et c'est précisément cette affirmation, qui est à son tour singulière et qu'on appelle le conatus, qui manifeste cette puissance substantielle. Ainsi, nous comprendrons que des interprétations qui prennent l'essence de la chose singulière exclusivement soit pour générale, soit pour singulière échouent à apprécier la véritable ampleur de la théorie spinoziste de l'essence de la chose singulière.</p>
出版者
日経BP社
雑誌
日経インタ-ネットテクノロジ- (ISSN:13431676)
巻号頁・発行日
no.35, pp.172-175, 2000-06

高木証券が,新しい通信サービスであるIP-VPNを使った広域イントラネットの利用を開始した。NTTエムイーのXePhionを用いて全国16本支店とデータセンターを結び,Webサーバーや電子メールを使った営業支援システムと株価情報配信を実現した。フレームリレーも候補に挙がったが,運用の容易さや将来の拡張性からIP-VPNを選択した。
著者
矢後 妃奈子 中山 実
出版者
The Institute of Image Information and Television Engineers
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.J190-J196, 2015

本稿では,漢字画像の特徴が漢字一文字を用いたRSVP実験における注意の瞬き現象に与える影響を検討した.画像特徴量として,漢字画像の離散コサイン変換(DCT)を用いてDCT係数による2種類の指標を導入した.すなわち,DCT係数でのDC成分で表される画像の平均輝度に相当する値と,画像間にDCT符号相関を適用して算出する画像間類似度である.これらの指標とRSVP実験での注意の瞬き現象との関係を分析した.その結果,時系列での画像特徴の変化によって,注意の瞬きの生起に影響することを確認した.具体的には,ターゲットと妨害刺激の漢字画像間での輝度変化や類似度変化の極性によって,注意の瞬きが抑制されることを明かにした.
著者
倉持 裕子 長谷川 啓子 山本 弘美 河村 満
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.188-196, 1996

Wernicke 野 (左上側頭回後部) の梗塞性病変により典型的 Wernicke 失語を呈した2症例の読字・書字障害を検討した。小学校1~3年生で学習する教育漢字一文字およびそれに対応する仮名語,ならびに仮名一文字 (清音46字) の音読と書き取り検査を施行した結果,2症例とも,漢字・仮名のいずれにおいても音読のほうが書き取りより良好であった。漢字・仮名語の音読・書き取りいずれにおいても,課題字 (正答字) と音韻が類似した誤りが多く認められた。これは, Wernicke 失語の口頭言語における特徴である "音韻の選択障害" と "音韻の聴覚的処理障害" が,文字言語においてもみられたものと考えられた。仮名一文字の書き取りにおいても2症例は類似した傾向を示し,正答字に余分な文字を付け加えて書く反応 (付加反応) が多くみられた。書き取りにおける付加反応は, Wernicke 失語の口頭言語での特徴である, "流暢な多弁傾向" を反映しているものと考えられた。