著者
西村 秀樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

明治・大正期には、八百長の流行が新聞を通して公示され続け、協会は八百長に対する処罰を給金や番付に反映させた。八百長を生み出す契機は角界の組織風土に求められる。すると、八百長は、身分制度下での昇進・降格を巡るもの、部屋・一門の紐帯が生み出すもの、情宜- 人情・友愛 - から生まれるもの、協会の商策によるものに分類できた。当時は「引き分け」八百長が多く、「兵法」としての引き分けとの区別が微妙であったので、八百長をおこなった廉でバサバサと処分できない状況にあった。八百長が擁護されるのは、相手の体面のために譲歩する、興行の利益に資する、相手が病身・負傷にある、昇進・陥落がかかっている場合であった。
著者
小野 京右 武川 浩士
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.63, no.608, pp.1110-1117, 1997 (Released:2014-03-12)
参考文献数
5

A mathematical method of complex modal analysis and an experimental identification procedure of modal parameters for nonproportionally damped mechanical systems have been established thus far. However, the physical structure of complex modes of nonproportionally damped systems has not been thoroughly understood. This paper deals with a physical and graphical interpretation of complex modes in comparison with real modes of proportionally damped systems using the complex plane and the complex vector space. It is explained why the resonance vibration of nonproportional-ly damped systems does not exhibit the natural mode shape which appears in the free vibration of the same system. The condition that makes the resonance vibration mode approximately coincide with the natural mode shape of the free vibration is discussed.
著者
鈴木 渉
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 教育科学 = Bulletin of Yamagata University. Educational Science
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.123(295)-140(312), 2008-02-15

Summary : This paper illustrates the actual situation and challenges faced by adult musical groups, particularly, amateur orchestras. The aim of this paper is to propose ways to improve and support their activities. The author researched on the H City Orchestra, a musical group the author is involved in, and discusses and summarizes this case study in the paper. In particular, the author focuses on the motivation behind members' musical performances and practice sessions. Furthermore, the author researches on the proper future course for orchestra activities and sheds light on the path its members wish to see taken. Moreover, by extending the scope of research to 44 bands in the westerm part on west area of Tokyo, in Tama district, and taking up concerns shared by each of these groups, especially particular articulating the challenges faced when recruiting members, this paper discusses the future and ways of assisting adult orchestra activities.
著者
林田 奈々 田中 文也 瀬能 宏 岩槻 幸雄
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.13-16, 2012-08-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
10

A single specimen of a lutjanid fish, Lutjanus johnii (445mm in standard length), was collected from the Kuro-shima Island, Nichinan, Miyazaki, Kyushu Island, Japan. The species is distinguished from other members of the genus by the following combination of characters: a black ocellus larger than eye mainly above lateral line and below anterior soft dorsal-fin rays; longitudinal scale rows on back parallel to lateral line; a brownish dark spot on exposed area of each scale on body. This occurrence represents both the first record from the Japanese waters and the northernmost record on the basis of specimen. Morphological features and coloration of the Japanese specimen are described in detail, and the standard Japanese name, Kadogawa-fuedai is given.
著者
木村 雅敏 岩坪 友義
出版者
日本生産管理学会
雑誌
生産管理 (ISSN:1341528X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.147-152, 2008-10-20 (Released:2011-11-14)
参考文献数
18

製パンの市場規模は, 生産量ならびに生産金額ともに2000年をピークに伸び悩んでおり, とりわけ生産金額においては, 2000年から2002年にかけて大きな減少が見られた。それらの中で, 上位5社の市場占有率の合計は, 製パン市場全体の7割以上を占める寡占状態となっているが, 競争が激化しているため, 5社間でも業績に格差が生じている。本論文では, 製パン市場を対象として, 生産・販売実績ならびに消費者評価に基づいて主要5社における市場での位置付けを示した。
著者
AMMARIA AOUAR METRI ADEL SIDI-YAKHLEF CHRISTIAN BIÉMONT MOHAMED SAÏDI OKACHA CHAÏF SID AHMED OURAGHI
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.120, no.3, pp.209-216, 2012 (Released:2012-12-21)
参考文献数
61

We characterized 2005 individuals from nine populations in the region of Tlemcen in Western Algeria for the ABO, rhesus, MNSs, and Duffy blood groups, in association with genetic traits. The results were compared to those for other populations in Algeria, North Africa, and Southern Europe, in order to situate and clarify the genetic status of this region. Principal-component analyses and phylogenetic trees of the matrices of the genetic distances, on the regional and Mediterranean scales, reveal strong homogeneity at the regional level and convergence between North African populations. This indicates high genetic affinities among these populations. This study highlights the differences between the two sides of the Mediterranean, probably due to the independent peopling history of these populations after they had settled. The resulting genetic structure of these populations is best explained by a combination of gene flow, ecology, and history.
著者
髙橋 萌々子 近藤 千紘 高野 利実
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.134-142, 2017-03-25 (Released:2017-06-25)
参考文献数
8
被引用文献数
2

顆粒球コロニー形成刺激因子(granulocyte-colony stimulating factor:G-CSF)製剤は、骨髄中の好中球前駆細胞に存在するG-CSF受容体に結合し、好中球前駆細胞から好中球への分化を促進することで、末梢血中の好中球数を増加させる。フィルグラスチムのN末端にポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)を結合させ、血中半減期を延長することで作用を持続させた持続型G-CSF製剤ペグフィルグラスチムは、化学療法の副作用の1つである発熱性好中球減少症を有意に抑えるだけでなく、化学療法の治療強度を高めることもできる。PEG製剤の開発により、がん治療が今後さらに発展していくことが期待される。
著者
杉山 幹雄
出版者
日本海水学会
雑誌
日本塩学会誌 (ISSN:03695646)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.128-136, 1961 (Released:2013-05-17)
参考文献数
7

(1) 各種無機塩類の単独飽和溶液の組成および蒸気圧に関する既存のデータについて調査した結果, 一般的な関係が存在することを知り, この知見に基ずいて混合飽和溶液の組成と蒸気圧に関する数ケの仮定を立てて検討した. 実験は湿度を測定する間接的な方法であり, 簡便な装置を考案して用いた. 実験誤差は全データについて±2%以内である.(2) 各種無機塩類の単独飽和溶液における蒸気圧降下ΔPn (mmHg, 脚符号nは塩の種類を示す. 以下同様) とイオン濃度ZnCn (Cnはモル濃度mol/1,000 molH2O, Znは1分子当りのイオン数) の間には温度をt (℃) とすると, 多少の例外はあるが次の関係がある.ΔPn=b・10aZnσna=-0.0000320t+0.00565b=0.0130・100.00734t・Psただし, Psはt℃における飽和蒸気圧 (mmHg) である.(3) 無機塩類の混合飽和溶液の蒸気圧降下についてはダルトンの分圧の法則に類似した理論が成立する. すなわち, 蒸気圧降下ΔP (mmHg) は各塩の蒸気圧に関する分降下ΔP'n (mmHg) の和に等しく, 式で表わすとΔP=ΣΔP'nである. ただし, 上式においてΔP'n=C'n・ΔNnであつて, C'nは混合飽和溶液中における各塩のモル濃度であり, ΔNnは各塩の蒸気圧に関する分子降下であつて下式により求められる.ΔNn=ΔPn/CnΔPnのtに対する変化は前述のとおりであるから, ΔNn, ΔP'n, ΔPのtに対する変化も全く同様である.(4) 食塩その他の無機塩類の結晶において不純分がその吸放湿性におよぼす影響は, 従来定性的にばくぜんと表わされていたにすぎないが, これを各塩の蒸気圧に関する分子降下という形で定量的に表現することができた. 希薄な水溶液においては蒸気圧降下は溶質の種類に関係なく濃度により定まるが, 飽和溶液においては各塩に特有な蒸気圧降下作用, すなわち分子降下がある. これはイオンの水和現象に関する考察により解釈することができる.(5) 食塩の表面は食塩を液底体の一部とする食塩と不純分との混合飽和溶液の薄膜で覆われていると見なされるので, 本報の理論により食塩表面の呈する蒸気圧, 吸放湿速度等は不純分組成と水分から求められ, また外囲の湿度変化に応じた食塩の溶解析出量および吸放湿量等を不純分組成から算出することもできる.本報の理論は食塩以外の無機塩類の結晶に対しても適用できることは明らかである. 本報の理論による固結現象の定量的解析は続報において行なう予定である.
著者
内田 樹 Tatsuru UCHIDA
雑誌
女性学評論 = Women's studies forum
巻号頁・発行日
vol.13, pp.153-177, 1999-03

Dans notre derniere analyse,nous avons interprete la Saga-Alien: Alien (1979),Aliens (1986) et Alien 3(1992) a partir de I'hypothese de Harold Schecter. Il a ecrit qu'une des sources du fantasme qui hante laSaga-Alien est la legende classique : serpent dans le ventre. Mais en meme temps,cette legende est nourrie abondamment d'un ressentiment contemporain contre les feministes americains des annees 70-90.Aux Etats-Unis,une des censures les plus severes sur les films est imposee par les feministes. Pour esquiver l'accusation feministe portee au nom de "la correction politique (politically correctness)",la Saga-Alien a employe la strategie de l'entrisme: jouer les feministes tout en les flattant excessivement. Au niveau narratif,les films de la Saga-Alien etaient absolument innocents: I'heroine (Ellen Ripley,astronaute) a gagne toutes les batailles sanglantes sur l' Alien, signe du desir sexuel masculin. Mais au niveau iconographique,la schema est completement renversee. L'heroine est convoquee au milieu de l'ecran seulement pour etre persecutee et punie au centre de tous les regards des spectateurs masculins.
著者
佐藤 由宇 櫻井 未央
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.147-157, 2010-06-20 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
2

広汎性発達障害者の抱える心理的な問題として,他者との違和感や自分のつかめなさといった自己概念の問題の重要性が近年指摘されているが,その研究は非常に困難である。本研究では,当事者の自伝を,彼らの自己内界に接近できる数少ない優れた資料であると考え,中でも卓越した言語化の能力を有する稀有な当事者による自伝を分析することによって広汎性発達障害者の自己内界に迫り,自己の特徴と自己概念獲得の様相を探索的に明らかにすることを目的とした。1冊の自伝を取り上げ,KJ法で分析を行った。結果,311のエピソードを取り出し,28のカテゴリーを生成した。その当事者の自己の様相においては,自己感の曖昧さや対人的自己認知の困難などの特異的な困難が明らかとなった。それらの困難ゆえに,対人的自己認知の獲得の過程において,主体としての自己を喪失する危機が生じやすいが,その際,自己感の曖昧さや対人接触の拒絶,解離など一般に障害あるいは症状とみなされる現象が危機に対する対処として機能していると考えられた。さらに,対人的自己認知は困難であるとはいえ,対人的経験の中で自己感を得られる新たなコミュニケーションスタイルを獲得しうる可能性も示唆された。
著者
松阪 仁伺
出版者
兵庫教育大学
雑誌
兵庫教育大学研究紀要 (ISSN:13493981)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.59-66, 2007-02
著者
太田 壽城 原田 敦 徳田 治彦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.483-488, 2002-09-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
51
被引用文献数
2 7

高齢化社会の進行に伴って老人医療費は急速に増加し, 新しい高齢者医療の役割として老人医療費の適正化が期待されている. 本研究の目的は, 日本における大腿骨頚部骨折の医療経済に関する文献データを収集し, 大腿骨頚部骨折の治療と介護に関わる費用と, 現在効果的と考えられている対策の医療経済的効果について検討することである. 大腿骨頚部骨折の新規発症について Orimo らは国内の50施設をモニターし, 日本全体における大腿骨頚部骨折の新規発症を89,900~94,900人 (平均92,400人) と推計している. 大腿骨頚部骨折の予後については, 大腿骨頚部骨折により歩行可能な者から寝たきりあるいは要介助となる者は36~42%と推測され, 大腿骨頚部骨折後の生命予後は平均5年程度はあると推察された. 一方, 大腿骨頚部骨折の手術・入院費用は140~180万円, 介護保険制度の単位から算出した最も介護度の低い要介護1の年間介護福祉施設サービス費用は242万円と推定された. これらの文献データを基に, 日本における大腿骨頚部骨折の医療と介護にかかる費用を推計すると, 年間の大腿骨頚部骨折にかかわる医療・介護費用は5,318.5~6,359.0億円と推計された. 大腿骨頚部骨折の予防あるいは骨粗鬆症の治療と大腿骨頚部骨折の医療費について検討した. 日本において80歳代の女性全員 (約273万人) にヒッププロテクターを適用した場合, 単純なコストベネフィットの計算では144.7~243.0億円の適正化という結果になった. ホルモン補充療法も骨折患者の発生を顕著に低下させ, 費用削減効果があるとされている. 日本において80歳代の女性 (約273万人) の半数がビスフォスフォネートを服用した場合の推計を行うと, コストの方がベネフィットを大きく上回る結果となった. しかし, 薬剤中止後も治療期間と同程度の期間効果が継続すると仮定すると, コストとベネフィットが拮抗した.
著者
山下 純隆
出版者
福岡県農業総合試験場
雑誌
福岡県農業総合試験場研究報告 (ISSN:13414593)
巻号頁・発行日
no.29, pp.10-12, 2010-03

口臭の発生は、各種疾患によるほか、食物残渣などの蛋白質成分が口腔内で微生物により分解される場合や、ニンニクなどの食物が咀嚼による植物細胞自身の破壊で酵素が作用し誘導される場合などに起こる。これまで、口臭などの不快臭を低減するために、薬草や香草などの植物やその乾燥物・抽出物を用いた消臭に関する研究が多く行われてきた。農産物の新たな機能性として口臭などの不快臭に対する消臭効果を明らかにすることは、農産物の需要拡大に繋がることが期待できる。そこで、ニンニクを摂取したあとに口臭として発生するニンニク臭の軽減を図るために、その主要な成分であるとされるアリルメチルジスルフィド(以下、AMDS)とジアリルジスルフィド(以下、DADS)について着目した。これら主要成分に対し、いくつかの農産物による消臭効果を測定した中で、特に効果が高かった豆乳と牛乳について、その結果を報告する。
著者
名波 正義
出版者
兵庫医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

糖尿病性腎症(DN)の尿細管間質病変は腎予後と深く関連している。本研究ではDNの尿細管障害過程における細胞内鉄代謝の関与を検討した。2型DNモデルマウス(db/db)の近位尿細管において、鉄取り込み蛋白であるトランスフェリン受容体1(TfR1)、二価金属イオン輸送体1(DMT1)の発現亢進、ミトコンドリアにおける鉄シャペロン蛋白であるフラタキシンの発現抑制およびマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)活性の低下が認められた。以上の結果から、DNでの近位尿細管における細胞内鉄輸送異常とミトコンドリアでの鉄代謝および酸化ストレス制御障害が尿細管障害過程に関与している可能性が示唆された。