著者
河村明和
出版者
日本教育カウンセリング学会
雑誌
教育カウンセリング研究 (ISSN:21854467)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.11-21, 2016

本研究では,公立中学校の特定の部活動に参加する生徒たちを対象に,部活動の満足度を構成する要因を,調査と一年間の関与観察と聞き取り面接から検討した。部活動集団教育的相互作用得点の「集団凝集性」「斉一性・自治体制」「P機能」「M機能」「愛他性」「集団圧」の向上から,生徒全体の部活動満足度の高まったことが認められた。観察・面接結果から,生徒個々の部活動満足度に影響を与える要因として,①レギュラーポジションの獲得,②キャプテンなどの役割行動の状況,③部内の人間関係,④顧問教員との関係が見出された。以上の結果より,生徒たちの部活動満足度は,先行研究を支持し,1)その部活動が追求する内容に取り組むプロセス,2)部活動における集団体験,以上の2点から構成されることが明らかになった。そして,1)と2)に関して,顧問教員の影響があることが示唆された。
著者
河村茂雄 武蔵由佳
出版者
日本教育カウンセリング学会
雑誌
教育カウンセリング研究 (ISSN:21854467)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-9, 2016

学習集団(学級集団)における協同学習成立の最低条件と考えられる「ルールの共有」と「親和的な人間関係の確立」という2つの条件を満たしている学級の出現率,および文部科学省(2012)が問題として取り上げている教員主導の知識伝達型の一方向的な授業の展開が行われている学級の出現率について調査した。結果,小学校で2条件を満たしているのは「親和的でまとまりのある学級集団(満足型)」で10学級(32%),教員主導の知識伝達型の一方向的な授業の展開が行われている学級は「かたさのみられる学級集団(かたさ型)」で5学級(16%)であった。さらに,抽出した学級に対して一定期間の授業を中心とした終日の学級観察を行い,その特性を整理し,児童たちの学習意欲を調査し,比較した。結果,「 親和的でまとまりのある学級集団(満足型)」の中でも,協同学習の取り組みと教員による自律性支援の教授行動が高い学級において,児童の学習意欲を高めることに寄与する可能性が考えられることが明らかになった。
著者
香坂 雅子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.33-40, 2015-02

女性の健康(Women's Health)では,疾患の性差の把握はもちろんのこと,女性特有のQOL,心理社会的背景やライフステージを考慮した予防やヘルスプロモーション,治療が求められる.ここでは,ライフステージをふまえながら,女性の睡眠ならびに特有な睡眠障害について概説する.睡眠時間についての大規模な調査が行われ,女性の多くの年代で男性よりも睡眠時間が短く,年々その傾向は際立っている.女性の睡眠は,性ホルモンの影響を受け,月経周期とともに変動し,睡眠の質が不良となる,徐波成分や睡眠紡錘波の周波数が変化する,などの報告がある.また,黄体後期では,体温リズムの振幅が低下する,などの特徴が認められる.睡眠構築についても性差があり,加齢とともに徐波睡眠は減少するものの男性に較べて女性では比較的保たれ,レム睡眠の分断が少ない. 睡眠障害についてみると,アジア,欧米圏で行われた疫学調査のメタ解析では,女性における慢性不眠の報告が多い.日本の全国調査でもDoiらは男性173. %,女性の215%. と,同様の傾向を示した.慢性不眠の背景となるような身体的,心理社会的要因としては,更年期に特徴的な血管運動神経症状を呈する更年期障害,介護を担う家族の一員としての心理社会的要因による不眠,レストレスレッグズ症候群などがある.睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は日中の眠気を訴える疾患であるが,発病率に性差があり,女性では不眠を訴えることが多い.OSASが重症になると女性では男性に較べて糖尿病や,虚血性心疾患の合併率が増すとの報告もある.女性においては,睡眠時間と高血圧の発症との間に相関があり,5年後の追跡調査では5時間以下の睡眠をとる女性は,7時間睡眠に較べて19. 4倍の発症率を示した.睡眠の剥奪は女性にとって有害な心血管疾患をもたらすと警告している. 女性が,それぞれのライフステージにおいて健康を保つための知識を確保できるようにするとともに,教育や啓発活動を受けることのできる行政のシステムづくりが必要と考える.
著者
横瀬 宏美 鈴木 正泰 金野 倫子 高橋 栄 石原 金由 土井 由利子 内山 真
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.310-321, 2015

背景:月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:以下PMDD)は,黄体期後期に抑うつ症状が出現し,仕事や学業,対人関係などにおける生活上の問題をきたす病態である.PMDDは月経のある女性の3〜8%にみられ,様々な研究が行われてきたが詳細な病態生理学的機序については不明な点が多い.方法:一女子大学において,ある年度に心理学の講義を履修した学生に研究参加を呼びかけ,833名(有効回答率93%)からデータを得た.調査は自記式で行い,調査用紙には 1)月経前不快気分障害診断に関する項目,2)生活習慣,睡眠習慣,朝型・夜型の時間特性などに関する要因,3)月経の状態,婦人科受診歴などの婦人科的要因,4)精神科受診歴および家族歴,性格特性,季節性特徴などの精神医学的要因,5)最近1年間のライフイベント,ストレス対処行動などストレス関連要因,という内容を含めた.PMDDの診断は,精神疾患の診断・統計マニュアル新訂版(DSM-IV-TR)に基づいて行い,PMDDと個々の要因との関連について統計学的に検討した.結果:PMDDは833名中45名(5.4%)にみられた.PMDDの有無を従属変数とし,合計30の要因との間で単変量ロジスティック回帰分析を行ったところ,合計16の有意な関連要因がみいだされた.これら有意な関連要因間の交絡関係を調整するため多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ,神経質,身体的不調への過敏,家族との問題,ストレス対処行動としての飲酒がPMDDと有意な正の関連を示した.結語:今回の調査で得られたPMDDの有病率は5.4%と,先行研究における有病率とほぼ同等であった.本研究の結果から,PMDDにはうつ病と共通する性格素因や心理的ストレスなど,精神医学的および心理的要因が強く関与していることが示唆された.
著者
三原 實
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.35-50, 2003-06-30
被引用文献数
4

ゴキブリ目は,石炭紀後期(約3億年前)地層より化石が発見され,国内でも2億3千年前の翅の化石が山口県美祢市で出土している歴史の旧い昆虫である.地球上のゴキブリは現在まで約3,500種が知られ,日本では9科25属52種が纏められている(朝比奈,1991).ゴキブリは熱帯・亜熱帯が主な生息域であり,国内における分布状況も南西諸島に多くその種数は45,九州23,四国11,本州17,北海道3,小笠原8種である.自然界におけるゴキブリの生活場所は森林や草原の地表で,林内では落葉内,石の下,倒木下,浅い土中,樹木根際,樹木では樹葉上,樹皮下,樹洞内,朽木内,その他草原や叢中などに生息し,植物の腐食有機物,動物,昆虫などの屍骸,樹液,朽木などを食餌としている.
著者
兼城 千波 岸本 享太
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMD, 機構デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.96, pp.61-64, 2013-06-14

本報告では,弾性を持ったマイクロスプリングアレイ(薄膜アレイ)をLSI配線技術として適用するために,スプリングプローブの作製におけるプローブの弾性を制御する方法について実験・検討した結果について述べる.成膜時におけるスパッタガス圧をコントロールすることにより,金属膜内の弾性応力に変化を持たせ,スプリングワイヤとすることができる.本報告では,スプリングプローブアレイを構成する膜の作製条件として,スパッタガス圧の変化条件および膜厚について検討した結果について述べる.スパッタ成膜時における膜中の応力分布は,スパッタガス圧と膜厚に依存している.スプリングプローブアレイを作製するためには,成膜時における内部応力差を上層部と下層部で大きくする必要がある.この応力差を利用することで,プローブの曲率を変えることができる.スプリングアレイの曲率を任意に調整できるようになれば,LSI実装用の配線技術として応用可能である.
著者
小野 和彦 岩田 靖
出版者
信州大学
雑誌
教育実践研究 : 信州大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13458868)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.77-86, 2002-07-31

The purpose of this paper is to report the lesson of "net-type(especially dual-type)" game practiced in elementary school. The reason that net-type game is selected to physical education curriculum depends on the theory of "tactical games approach". In this lesson, decision making process in the game context was emphasized as learning objective. Learning outcome was considered from the viewpoint of formative class evaluation scored by learners.
著者
藤井 正
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.2-2, 2004

都市圏は、爆発的に拡大する近代都市空間を把握し整備するための、単核で求心的な構造を有する結節地域概念(中心地とその関係圏という空間的まとまり)である。それに対して近年の日米大都市圏についての構造変化・多核化研究は、新たな機能地域構造を提示しつつある。都市圏は、都市機能の郊外立地とともに多核的な構造へと変化してきた。合衆国ではオフィス中枢をも含む郊外都心も形成され郊外の自立化が指摘された。しかし、各郊外領域間や中心都市との流動は少なくないし、都心群はむしろ機能分担している。日本でも中心都市通勤者数が減少をみるなど、少子高齢化や都市機能の郊外立地、郊外への転入人口の減少などのなかで東京や大阪などの大都市圏という従来の地域構造は転機を迎え、今後の住民の生活行動が問われている。 このように相互流動の展開が見られる都市圏を、本報告では新たな機能地域(相互流動による空間的まとまり)として理解したい。中心都市による単核の求心的な結節地域構造から、郊外への中心機能の立地(分散的多核化)がすすみ、合衆国では機能集積を生み出す集中的多核化によって郊外都心形成もみた。しかしそこでも都心群は機能分担し、領域間ではかなりの相互流動を示す。こうした郊外都心形成には至らないわが国大都市圏でも、郊外間流動が増加する一方、中心都市通勤者も減少を示すようになってきた。そこでは中心都市の強固に見える結節地域構造の下層で展開する分散的多核化により、やはり相互流動の展開する新たな機能地域構造がその重要性を増している。また都市政策面で盛んに主張されるコンパクトシティだが、それらが形成する都市圏(都市地域)全体の構造についても、同様の視角からの検討が今後求められよう。