著者
浅野 二郎 仲 隆裕 藤井 英二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.67-74, 1988-03-18
被引用文献数
1

紹鴎・利休以前,茶会の場における庭は,例えば喫茶往来に記される喫茶の亭における庭,あるいは尊教院の茶座敷に対する茶の庭としての「堀庭」にみる如く,書院造庭園の系譜に属する庭,いわばそれは観る庭,楽しみの庭ともいえる庭園であった.紹鴎・利休において,茶はそれまでの茶から離れ,わび茶の確立に向う.その中で茶の湯の場はわび茶のための場としての草庵茶室の創出へと展開する.それとともに,この茶室のための外部空間としての庭は,わび茶の理念をふまえる庭,即ちそれまでの庭とはその造庭理念のうえで全く道を異にする,いわば新しい庭,「坪の内」が茶の庭として創り出される.紹鴎・利休が求めた草庵わびの茶は,しかし,やがて武家の茶・大名茶と呼ばれる茶,即ち「客をもてなす道理を本位とする」茶を生み出し,それがひとつの大きな流れとなる時期を迎える.この新しい茶の流れにとって織部・遠州が果した役割は極めて大きい.而して,織部・遠州の茶会において,すでにあった鎖の間をひとつの茶会の流れの中で,真に活かしきり,用いきる時期を迎える.さらに,この鎖の間の活用のなかから露地(茶庭)と書院造庭園とが相互に響き合う見事な,そして新しい庭づくりが創まる時期を迎える.つまり,二つの庭の有機的一体化の時期を迎えることになるとみる.それは,わび茶に対する新しいとらえ方がこのような造形の実現を可能にしたとみてよいであろう.また,これを形而下のこととしてみれば,織部・遠州における鎖の間にかかわるさまざまな面での造形が,その大きな契機として働いたといってよいのではないかと考える.このようにして到達した新しいわび茶の造形のひとつの到達点に孤篷庵・忘筌の露地があるとした.また,さらにこの忘筌の露地の造形の発展・展開のなかに石州の慈光院の庭があり,松平不昧の向月亭の前庭と菅田庵の露地とのつらなりがあるとみる.
著者
鈴木 俊哉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.1-8, 2013-07-19

近年、モバイルデバイスでのセキュリティ配慮のためにアプリケーションの実行環境も仮想環境や Web ブラウザ内部に閉じられ、様々な周辺機器への利用が難しくなってきている。本稿では JavaScript インタプリタが対応していないキャラクタデバイスの制御信号を WebSocket によって受信し、Web アプリケーションのインタフェースを改善する可能性について試験実装と評価を行った。Recent mobile devices restrict the distribution and the installation of the software, and the applications are permitted to be executed under some virtualized machines or in the web browser. Thus it is difficult for the software developers to extend the user interfaces of their applications with special human interface devices (HID). Although there is a movement of a migration from all physical HID into "virtualized" HID using trackpad with multitouch features, it is not easy to realize many devices onto single trackpad, because the touch events on the web application are tightly bound to the document object models. In this report, the direct injection of the control packet from the character devices to web applications is discussed, and preliminary implementation based on WebSocket technology is evaluated.
著者
竹澤 邦夫 二宮 正士 吉田 康子 本郷 千春 徳井 和久 伊東 明彦 竹島 敏明
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.121-127, 2009-04-10

リモートセンシングデータを用いて水稲の収量を高い精度で推定する方法として、当該年次と過去の年次のデータに異なった重みをつけることが考えられる。その際、過去の年次のデータに対する重みとして年次によって異なる値を用いることができる。その際の重みの値を最適化するために確率的な最適化手法を試みた。回帰式として重回帰式を用いた。その結果、ここで用いたデータに関しては年次によって異なる値を用いた場合はむしろ予測誤差が大きくなってしまうことが分かった。過去のデータと当該年度のデータに対する重みとして全て同じ値を用いた場合に予測誤差が最も小さくなった。これは、回帰におけるパラメータの数を多くしすぎると過剰適合によって予測誤差が大きくなる現象の一例と考えられる。しかし、最適化された重みに対して収縮手法を用いることによって全ての重みの値を等しくした場合よりも予測誤差が小さくなることも分かった。
著者
IWASAKI Taku
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, 1991-06-25
被引用文献数
1
著者
中川 圭 鈴木 正徳 海野 倫明 遠藤 公人 片寄 友 松野 正紀
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.823-828, 2000-12-01
被引用文献数
2 4

著者らは骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndrome: MDS) による続発性造血性ヘモクロマトーシス (erythropoietic hemochromatosis) を基礎疾患とした肝細胞癌の1切除例を経験した.<BR>症例は平成元年より肝機能異常・貧血を指摘され, 平成9年肝硬変・糖尿病の診断. 平成10年胆嚢摘出術の術前精査で骨髄異形成症候群 (MDS-RA (reactory anemia) 型) の診断を受け, 平成12年経過観察中にS5, 8境界領域の高-中分化型肝細胞癌を認め手術施行した. 術後のペルシアンブルー染色でKupffer細胞が強く染色されるとともに肝細胞に鉄顆粒が認められ, 本症例が続発性ヘモクロマトーシスであることを示唆していた. MDSでは無効造血で鉄が余剰となるため合併症として本症のごときヘモクロマトーシスを発生しうる. 本症例はヘモクロマトーシスに肝癌を併発し切除されたもので, 本邦報告例としてはきわめて稀な症例である.
著者
栾 竹民
出版者
鎌倉時代語研究会
雑誌
鎌倉時代語研究
巻号頁・発行日
vol.15, pp.126-151, 1992-05-30
著者
山元 貴継 内山 桂次 枝廣 優也
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.44-58, 2016

<p>2012 年にテレビアニメとして放映された作品「氷菓」をめぐっては,その舞台となった岐阜県高山市を訪れる観光客の動き「アニメ聖地巡礼」が確認されている.本研究は,それら「アニメ聖地巡礼」者だけでなく,同市市街地を訪れている観光客の層と,それらの観光客の動きの特色を分析したものである.2014 年6 月に高山市内の5 つの調査地点において質問紙調査を行い,計623 組,1,958 名以上分の観光客から回答を得られた.その結果,回答観光客全体では,名古屋大都市圏からは多くの観光客が日帰りで,関東地方および近畿地方からは多くの観光客が宿泊を伴って,高山市の市街地を訪れていたことが明らかになった.このうち48 組(全体の7.7%)が,アニメ作品「氷菓」を視聴した上で高山市を訪れていた.また,回答観光客全体は幅広い世代にまたがっていた一方で,「氷菓」を視聴した観光客は20 代が圧倒的に多くを占め,男性のみの団体観光客が目立った.さらに,回答観光客全体では,歴史的町並みの広がる「さんまち」地区と高山駅との間といった狭い行動範囲にとどまるのに対して,「氷菓」を視聴した観光客は「聖地」を求めて,広範囲かつ頻繁な動きをみせることが明らかになった.</p>
著者
菊地 伸二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.63-69, 2014-12-20

アウグスティヌスは、「自由意思と恩恵」の問題について、ペラギウス(及びペラギウス主義者)との間で、20年近くにわたり論争を繰り広げた。それは、アウグスティヌスの逝去によって中途で幕切れとなるものであったが、この論争によって、彼は「自由意思と恩恵」の問題について思索を深めるとともに、この問題についての後世への影響は測り知れないものとなった。もっとも、アウグスティヌスが、この問題を思索しはじめたのは、司祭に叙任されてから間もなく、「パウロ書簡」を精読するようになってからであり、とくに『ローマの信徒への手紙選釈』では、「ローマの信徒への手紙」の大意を「律法と恩恵」に関する書物と位置づけ、その中で、人間がもつ自由意思と神からの恩恵の双方を重視しようとする見解を披歴している。その見解は、たしかに、『シンプリキアヌスへの返書』に見られるような「自由意思と恩恵」についての決定的な見解にまでは至っていないものの、人間の「信仰」に働く自由意思を重視しながら、自由意思と恩恵の双方を生かそうとする態度が見受けられるものであり、彼の「自由」理解の一断面を示すものとして重要な意味を有するものである。
著者
菊地 伸二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.15-23, 2015-12-20

「書簡」186と「書簡」194は、いずれも416年から418年の間にかけてアウグスティヌスによって執筆された作品であり、両者とも、ペラギウス主義の問題点について扱っている。アウグスティヌスによれば、人間の本性は、原罪によって著しく損なわれ、救済されるためには、人間の自由意思は単独では何ら有効な働きをすることは不可能であり、神の恩恵が先立ち、また、神の恩恵が共に働くことによってはじめて、救済への道が開かれる。ペラギウス主義は、人間の自由意思の働きをきわめて肯定的に捉え、恩恵を、いわばその補助手段的に捉えることにより、人間の側からのみ自由を理解しようとしたが、そのために、創造主である神の領分を十分に取り扱うことができず、神の側から神の自由を考察することには失敗したと言える。
著者
石浦 章一 木曽 良明
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.64-69, 2006-04

長寿高齢化社会を迎え,アルツハイマー病の予防・治療への関心が高まっている。アルツハイマー病は認知症(老人痴呆)の一種で,脳の萎縮や軽い記憶障害から始まり,進行すると家族の顔すらもわからないという深刻な状態に陥る病気だ。