著者
中家 陽子
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本応用きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13453424)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.27-30, 2000-04-25

きのこは古来から重要な食材や薬材として日本人に好まれ,その需要を満たすためきのこの人工栽培法が開発されてきた.また,近年の輸送技術や交通網の発達,グルメブーム等により多種多様のきのこが世界中から大量に輸入されるようになった.とくに輸入マツタケは,原産国の多様化、輸入量の増大ともに瞠目させられる.これは,日本人に最も好まれていること,需要が大きいにも関わらず国内での供給が不足していることを示している.輸入きのこの種類と量は季節により変動し,日本の四季を反映している.また,グルメブームにのって日本に登場した珍しいきのこが日本の食卓に取り入れられ,定着している様子が窺える.日本初の24時間空港である関西空港には将来第2滑走路が完成する予定であり,これに伴う便数や路線の変化がきのこの輸入量や原産国に与える影響は興味深い.その一方で多様化・大量化する輸入きのこの衛生確保も重要な問題である.
著者
加藤 典洋
出版者
新潮社
雑誌
新潮
巻号頁・発行日
vol.113, no.10, pp.163-173, 2016-10
著者
阿波 邦彦 堀江 淳 長江 真弥 村田 伸 林 真一郎 今泉 裕次郎 市丸 勝昭 直塚 博行 白仁田 秀一 江越 正次朗 堀川 悦夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Db1202-Db1202, 2012

【はじめに、目的】 COPDの骨格筋筋力低下は、全身持久力、ADL、健康関連QOLの低下、予後にも影響している。今回、外出に制限が生じ始める6分間歩行距離400mをもとに、大腿四頭筋筋力を体重で除した体重支持力指数(WBI)のカットオフ値を求めた。そして、そのカットオフ値でCOPD患者を2群に分け、身体機能、身体能力、ADL、健康関連QOLの比較をすることでWBIのカットオフ値の有用性を検討した。【方法】 対象は、研究の参加に同意が得られた男性COPD患者116名であった。平均年齢は74.4±8.7歳、BMIは20.6±3.8、%FEV<sub>1.0</sub>は50.8±23.6%であった。なお、対象の選定は、歩行に支障をきたすような骨関節疾患、脳血管障害や重篤な内科的合併症の有する者、理解力が不良な者、測定への同意が得られなかった者は対象から除外した。主要測定項目はWBIとした。副次測定項目はmMRC息切れスケール、呼吸筋力検査(PImax、PEmax)、握力、片足立脚時間、5m最速歩行時間、Timed Up and Go Test(TUG)、30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)、6分間歩行距離(6MWD)、漸増シャトルウォーキングテスト(ISWT)、長崎大学呼吸ADL質問票(NRADL)、健康関連QOLはSt George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)とした。予後指標はupdated BODE indexとした。統計学的解析は、外出に制限が生じ始めるWBIのカットオフ値を6MWD-400m以上群と未満群に分け、ROC曲線にて分析した。また、分析されたWBIのカットオフ値でWBI高値群と低値群に分け、2群間にて副次測定項目の比較をStudents' t-testで分析した。なお、帰無仮説の棄却域は有意水準5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、佐賀大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施し、ヘルシンキ宣言に沿った研究とした。なお、対象には研究の主旨、方法、同意の撤回などについて文書を用いて口頭にて説明したうえで同意を得て実施した。【結果】 外出に制限が生じ始めるWBIのカットオフ値は54.7であった。なお、ROC曲線下面積は0.798、感度は0.735、1-特異度は0.348であった。WBI高値群とWBI低値群における副次測定項目の比較は、mMRC息切れスケール(1.8±1.0vs2.3±1.0、p=0.008)、PImax(85.1±35.3vs56.0±28.8cmH<sub>2</sub>0、p<0.001)、PEmax(82.4±37.5vs54.4±32.1cmH<sub>2</sub>0、p=0.001)、握力(33.5±7.2vs 25.5±7.8kg、p<0.001)、片足立脚時間(67.0±42.0vs 22.7±30.2秒、p<0.001)、5m最速歩行時間(2.9±0.9vs3.9±1.5秒、p=0.001)、TUG(6.0±1.8vs9.1±4.6秒、p<0.001)、CS-30(18.3±4.5vs13.4±5.0回、p<0.001)、6MWD(416.7±110.6vs281.0±139.4m、p<0.001)、ISWT(411.9±170.4vs247.3±149.5m、p<0.001)、NRADL(78.7±20.3vs63.9±26.7点、p=0.001)、updated BODE index(3.7±3.0vs7.4±4.8、p<0.001)に有意差が認められた。しかし、SGRQ(39.3±17.5vs45.9±18.1、p=0.06)には有意差は認められなかった。【考察】 COPD患者における外出に制限が生じ始めるWBIは中等度の予測能を認めた。WBI低値群は、WBI高値群よりも各身体機能、身体能力、ADL、予後指標において有意に低値を認めた。これは先行研究と同様の結果であった。しかし、健康関連QOLに有意差は認められなかった。その原因として、健康関連QOLには筋力などの身体機能以外にも不安や抑うつなどの精神的症状も関与しているためと考えられる。今回の研究では、外出制限を6MWDの測定値で検討しているため、想像の域を脱していないことである。そのため、今後の課題は外出制限の具体的な設定や患者背景を検討してゆく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 本研究は、外出に制限を生じ始めるWBIのカットオフ値を推定する一つの指標となりうる可能性が示唆された。しかし本研究では検討課題も多く残された。そのため今後も研究を重ねていき臨床の場面にて活用できるような指標に展開したいと考える。
著者
大峰 真理
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.63-83, 2013

18世紀ナントがフランス第一の奴隷貿易港であり,王国を代表する国際商業都市であったことは,比較的よく知られている。なかでも世紀後半については,シャン・メイェールが史料「船乗り登録簿」(のちの分類名「船舶艤装申告書」)を分析して,奴隷貿易の進展を明示するとともに,ヨーロッパ沿岸貿易とアンティル諸島直行貿易の安定した成長を実証した。メイェールによる精緻な研究成果は,その後のナント海運史研究者と奴隷貿易・制度史研究者に受容され続けている。しかし彼がおこなった「18世紀前半は,記録の欠落が深刻である」という断定的な指摘は,世紀前半にかかわる史料調査と実証研究を限定してしまった。本稿は,筆者自身によるおよそ5年間の史料調査の結果『船舶艤装申告書一覧1694-1744年ロワール=アトランティック県文書館(フランス・ナント)Serie 120 J』(千葉大学,2011年)をもとに,記録情報を数量化し,最初の分析を試みて,研究史の欠落を補完しようとするものである。その結果は,18世紀前半ナント海運業の基軸分野の所在を明らかにするとともに,今後の歴史研究の展望を示唆するだろう。
著者
尾形 努 高野 和夫 河野 勝 吉田 一樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.719-726, 1993-10-25
被引用文献数
3

通信用電源システムには,バックアップ用として鉛蓄電池が使用されている.鉛蓄電池は,通常は維持充電が行われ,停電発生時に放電し,通信機器への電力供給を継続する.停電発生時に,鉛蓄電池から電力を供給できなければ,社会に及ぼす影響ははかりしれないものがあるため,NTTの各事業所は,鉛蓄電池の容量試験を行って,規定の容量以下のものは,取替えを実施している.現在の容量試験法は,作業時間が20時間以上と長時間に及ぶため,保守者の負担が大きく,簡便に行える劣化判定法の確立が強く望まれるようになった.本論文では,鉛蓄電池の劣化のメカニズムを整理し,内部抵抗と劣化,すなわち容量減退が極めて相関性が強いことを説明している.次に,この内部抵抗を求める手段として,極めて短時間の充放電特性測定が有効であることを述べ,500μs以下の充放電特性測定から求めた内部抵抗と容量の相関性が極めて強いことを明らかにし,これらの相関図より劣化判定が可能であることを述べている.
著者
ト藏 建治 林 信二
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 : 日本雪氷協會雜誌 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.543-550, 2003-11-15

近年の温暖化傾向のため増加しつつある温帯低気圧の発達・接近で東北地方北部太平洋側(青森,岩手県)では2年続きの暴風雪災害が発生している.2003年3月8日と2002年1月27日に南岸低気圧の発達・接近によりこれら地域に記録的な降雪がもたらされた.被害の実態は強風・波浪による沿岸養殖に関わる漁業施設や港湾などの土木施設が金額的には大きく報告されている.しかし,太平洋から吹きつける東風によりもたらされる湿った重い雪(ヤマセ雪)によりビニールハウスや畜舎などにも大きな被害が出ており,被害域は降雪量の多さに良く対応している.暴風雪のたびに注目されたのは2万戸以上の停電が生じ,12時間以上に及ぶ長時間の停電も多発したことである.停電の原因は電線着雪と言った一次的な雪害ではなく,送電線付近の樹木が雪荷重により倒木・枝曲がりし送電線に接触することによる停電で雪による二次災害(雪害)である.森林の維持管理に対する充分な検討がくわえられない限り,今後もこの種の雪害は繰り返し発生するだろう.
著者
真田 篤志 佐薙 稔 野木 茂次 山根 國義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波
巻号頁・発行日
vol.97, no.93, pp.43-48, 1997-06-12
参考文献数
10
被引用文献数
10

導波管に挿入した単一のあるいは対を構成する同軸プローブに対し, プロープの径や挿入長が大きい場合をも含めて, 3次元のFD-TD法を用いて解析を行った. 導波管内および同軸線路内の電磁界成分を求め導波管からみた同軸プローブの反射係数および等価アドミタンスを算出し, 実験結果と対照することにより解析手法の有効性を検討すると同時に回路設計に有効なデータとして示した. 解析値と実験値との一致は良好で, このような解析法の有効性が示された. さらに界分布から大電力動作時に問題となる電界集中についても考察を加えた.
著者
江里口 善生 木谷強
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.44-54, 1997-01-15
被引用文献数
9

テキストから興味ある情報を抜き出す情報抽出の手法として 文字列の並びを認識するパターンマッチング処理が注目されている.パターンマッチング処理は構文解析に比べ一般的に処理時間が短く 全文の解析を必ずしも必要としない情報抽出に適している.これまでにARPAによる情報抽出コンテストMUCなどで パターンマッチング処理を利用した情報抽出システムが開発されてきた。しかし パターンマッチングの効率は 大量文書を処理する場合は重要であるにもかかわらず ほとんど検討されていなかった.本論文では スキップ機能を有する富田一般化LRパーザをパターンマッチングエンジンとして使用し 情報抽出のための効率的なパターンマッチング手法を検討する.まず パーザヘの入力単位を形態素と文節で比較し 企業の業務提携に関する新聞記事を使用した実験から 処理精度と速度ともに文節単位の入力が優れていることを示す.次に マッチングする対象とならない語をパーザヘ入力する前に取り除く不要語フィルタリング処理を提案する.実験により 文節単位の入力で不要語フィルタリングを使用する場合 形態素単位の入力で不要語フィルタリングを使用しない場合に比べ 処理速度が約23倍も向上することを示す.提案する手法により 冨田一般化LRパーザを用いた情報抽出のための効率的なパターンマッチング処理が実現できることを明らかにする.Pattern matching, which recognizes character sequences in a text, has been used for extracting information of user's interest. Pattern matching is suitable for information extraction, since it is generally fast by its nature and the extraction does not necessarily require full text analysis. Several information extraction systems such as ARPA-sponsored MUC systems were based on pattern matching. Efficiency in pattern matching for information extraction, however, has not been well investigated in spite of the importance in processing a large amount of text. This paper studies efficient pattern matching using Tomita's generalized LR parser known as one of the fastest practical parsers. Two different input formats to the parser, a morpheme (primitive word) format and bunsetsu format comprising a content word and following function words, are compared. Prom our experiments using newspaper articles of corporate joint ventures, the bunsetsu format is proved to be superior to the morpheme format in both processing speed and extraction accuracy. Furthermore, filtering out unnecessary words prior to pattern matching improves the parser's speed about twenty-three times faster compared to parsing the morpheme input without word filtering. Our proposed method applied to Tomita's generalized LR parser for information extraction raises pattern matching efficiency greatly.
著者
中澤 信彦
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 = Economic review of Kansai University (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.249-271, 2015-03

本稿の課題は、ハイエクがバークをどのように読んだのか、その読解の詳細を追跡することによって、ハイエクの保守主義観の特質と意義を明確化することにある。ハイエクが残したバークへの言及は分量的に決して少なくないが、断片的なものばかりである。そこで本稿では、ハイエクがバークの膨大なテクスト群のうちの何を参照したのかにとりわけ着目しつつ、ハイエクの主要著作におけるバークへの言及の有様を時系列的に整理する。本稿の構成は以下の通りである。第1節では論文「真の個人主義と偽りの個人主義」におけるバークへの言及を検討する。第2節では壮年期の主著『自由の条件』を検討し、第3節では『自由の条件』の補論「なぜ私は保守主義者ではないのか」を検討する。第4節では『自由の条件』と並ぶ後年の主著『法と立法と自由』を検討する。最後にこれまでの議論を整理し、「つまるところ、ハイエクはバークをどのように読んだのか?」という問いに、できるだけ明快な答えを与えたい。