著者
梅原 克彦
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.11-25, 2015

筆者が本学に着任した2012年1月当時、東南アジア諸国からの観光客誘致についての問題意識は、秋田県内でほとんど共有されていなかった。本稿は、「行動するシンクタンク」として設立された東アジア調査研究センターの一員として行った、東南アジア諸国とりわけタイからの観光客誘致に関する調査成果について整理、記録するとともに、その過程で明らかになった課題等について論じるものである。まず、観光客誘致のターゲットとしての東南アジアの観光市場と仙台市の先進事例を参考に、タイ、シンガポールで行った聞き取り調査成果を踏まえて、「ASEAN諸国との観光交流促進について」行った政策提言について論じる。次いで、タイからの観光客誘致に向けて実施され、筆者も参加したタイ商談会と、タイ旅行業協会による秋田調査について紹介する。また、これらの成果によって実現した本県知事によるトップ・セールス及び観光セミナーと、タイ国際航空チャーター便による東北一周ツアーについて論じる。最後に、今後の東北地方全体の広域連携を見据えて、「街道」コンセプトを全面に押し出したツアープラン等、幾つかの具体的提言を行う。
著者
小林 信彦 Nobuhiko KOBAYASHI
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学人間科学 (ISSN:09170227)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-24, 1999-07

Sagara's daughter reaches the ultimate truth, as soon as she learns the Saddharmapndarika. This episode exemplifies the supernatural speed with which the ultimate truth is reached. Saicho interpreted this episode as a case of "a woman's becoming a butsu". However, a male organ having already appeared on the body, Sagara's daughter is no longer female at the time of becoming a buddha.
著者
鶴見 介登 平松 保造 林 元英 山口 東 呉 晃一郎 藤村 一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.261-283, 1974
被引用文献数
1

新規化合物K-308およびその側鎖の酢酸をプロピオン酸に代えたK-309について,抗炎症作用ならびに鎮痛作用をibufenac(IF),ibuprofen(IP)等と比較検討した.1)血管透過性充進ならびに浮腫などの急性炎症反応に対して,K-308はK-309と同等の抑制作用を示し,IFおよびIPと同程度の効力が認められた.2)紫外線紅斑に対してK-308はIFと同程度の抑制作用を示し,K-309はそれらよりわずかに弱かった.3)持続性浮腫および肉芽増殖などの亜急性炎症反応に対して,K-308は明らかな抑制作用を示しIFとほぼ同等の効力が認められた.K-309はそれらよりやや強い効力を示した.4)Adjuvant炎症における予防的ならびに治療的投与法において,K-308はいずれに対しても有意な抑制作用を示したが,K-309の方がやや強力であった.K-309はIPと同等の効力を示したが,Phenylbutazoneよりわずかに弱かった.5)胃粘膜障害作用はK-308とK-309は同等でIFやIPより弱く,胃腸障害は比較的弱いものと考えられた.6)鎮痛作用はK-308がAminopyrineよりわずかに弱い効力を示し,K-309はK-308より弱くIPと同程度であった.特に炎症性落痛Yom..対して有効のようであった.7)PSP排泄に対してK-308とK-309は同程度の抑制作用を示し,軽度な尿酸排泄促進作用が推測された.以上の成績からK-308およびK-309は,急性慢性の炎症性疾患に対してIFおよびIPと同等の効果が期待され,しかもそれらより胃腸障害は少なく,鎮痛抗炎症薬として臨床上価値のあるものと思われる.
著者
森井 俊廣 門口 隆太 小松 元太 松本 智
出版者
新潟大学農学部
雑誌
新潟大学農学部研究報告 (ISSN:03858634)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.99-107, 2011-03

砂層とその下部に礫層を重ねた単純な構造の土層地盤では、互いの層の土粒子の大きさあるいは間隙サイズに伴う保水性の違いにより、砂層と礫層の境界面の上部で降下浸潤水が保水され、集積する。境界面に傾斜をつけると、集積水は傾斜方向に流下していくため、境界面はあたかも不透水性の障壁として機能し、それ以深の領域への水の浸入が抑制される。また、境界面に沿って流下した水は、末端で集水することにより、貴重な雨水資源として捕獲することも可能である。砂層と礫層を重ねた単純な土層地盤にみられる浸潤水の遮断・捕獲の機能を、土の毛管障壁あるいは土のキャピラリー・バリア(Capillary barrier of soil)と呼ぶ。傾斜したキャピラリー・バリアのもつ浸透抑制機能を利用すれば、地盤に浸透した降雨水を表層部で効果的に捕捉し、地盤深部への浸潤を低減できるため、地山斜面やため池堤防斜面などの斜面すべり防止技術への展開が可能となる。一方、キャピラリー・バリアを地表面の近傍で平面上に敷設すれば、土壌水を根群域に保水できるため、節水かんがいが可能となる。このような土のキャピラリー・バリアがもつ応用展開の可能性に着目し、まず、土のキャピラリー・バリアの技術的特徴を紹介したのち、野外実験および圃場実験にもとづき、傾斜したキャピラリー・バリア地盤における雨水遮断機能ならびに水平状に敷設したキャピラリー・バリア地盤における節水かんがいの可能性を調べる。
著者
大竹 孝昌 徳丸 正孝 村中 徳明 今西 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.697, pp.19-24, 2003-02-28
被引用文献数
3

本論文では,カオスニューラルネットワーク(CNN)を用いた自動作曲システムを構築する第1段階として,メロディのコーディング方法についての検討を行った.CNNには,幾つかのパターンを記憶パターンとしてホップフィールド型ニューラルネットワークに埋め込み,記憶パターンと異なるパターンを初期値として与えると,様々なパターンを次々と想起するという特徴がある.また,想起過程において,複数の記憶パターンの特徴を併せ持つパターンや,記憶パターンと印象が近い新たなパターンなど,数々の興味深いパターンを想起するという興味深いふるまいを示す.本研究では,このようなCNNの特徴を利用した自動作曲システムの構築を試みる.本論文では,システム構築の第1段階として,メロディのコーディング方法についての検討を行っている.CNNに記憶させるパターンは,パターンを構成するニューロンの発火・非発火状態のバランスを考慮する必要がある.そこで,幾つかのコーディング方法を提案し,それらの方法を用いてメロディの作成実験を行った.また,作曲されたメロディの試聴比較評価を行い,コーディング方法の有効性について検証した.
著者
吉松 軍平 坂田 直昭 山内 聡 赤石 敏 藤田 基生 久志本 成樹 海野 倫明
出版者
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.989-992, 2012-07-31

70歳代,男性。35%過酸化水素水100mLを誤飲し,頻回の嘔吐と腹部膨満が出現。30分後,当院に搬送。右下腹部の圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CT検査で胃結腸間膜内と肝内門脈に気腫像を認め,上部消化管内視鏡検査で下部食道から胃大弯側全体に著明な発赤腫脹とびらんを認めた。過酸化水素水誤飲による上部消化管粘膜障害と門脈ガス血症が考えられたが,腹膜炎の所見はなく,意識障害や神経症状などの脳塞栓の症状を疑わせる所見も認めなかったため,絶飲食下で,プロトンポンプインヒビターとアルギン酸ナトリウムの投与を行った。腹部症状は速やかに改善し,誤飲24時間後のCTで門脈ガスは消失していた。水分/食事摂取を開始したが症状悪化はなく,入院後5日目に退院となった。過酸化水素水誤飲による門脈ガス血症は消化管穿孔を認めなければ保存的治療が可能であるが,脳塞栓などの塞栓症の前段階であり十分に注意して観察する必要がある。
著者
立川 和美
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.101-107, 2011-11

1 0 0 0 OA 『名人伝』論

著者
山下 真史
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.11-19, 1994-12-10

中島敦の『名人伝』は、名人を純粋さの体現者とする通念に対して、名人を突き詰めれば木偶に至るということ、そしてその名人を偶像化することの滑稽さを描いた作品である。川端康成の『名人』などと比較しながら、同時代の文学状況にこの作品を置いてみると、中島が太平洋戦争下の日本の<純粋さ>を徒に崇める風潮への批判、陶酔を拒否して醒めた認識を持ち続けることをモチーフとしてこの作品を書いたことが分かる。
著者
大野 誠司 一井 麻理子 間宮 勝 大田 建久 一ノ瀬 琢美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.81-90, 1996-03-25
参考文献数
10
被引用文献数
4

光メモリとしての応用が可能な双安定光スイッチングは光情報処理システムに不可欠な技術である. また偏光スイッチングは入力に対する反転出力と非反転出力を同時に得ることができる. これをふまえ本論文では双安定性を示すモードホッピングを有する半導体レーザ(マスタレーザ)を光源とし, 発振しきい値電流付近で定バイアス電流駆動とした別の半導体レーザ(スレーブレーザ)に対してTM偏光波注入を行う. これら二つのレーザからなる系を一つのシステムと見なしたとき, システムへの電流入力とシステムからの出力光の偏光状態の間に双安定な偏光スイッチングが実現できることを提案し, それを実験において確認した. まずこのスイッチングの原理として半導体レーザ増幅器の増幅率の注入光波長依存性, TM波注入による偏光出力の制御, モードホッピング等に関して説明し, 次いでこの原理に基づいた実験とシミュレーション結果をもとに双安定特性に関して検討した. この双安定偏光スイッチングの利点としてマスタレーザとスレーブレーザの特性に応じてON/OFF出力の差, 双安定ループの回転方向が設定可能であることを理論的, 実験的に示した. 更にスレーブレーザの多段接続が可能であることを推察した.