- 著者
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三宅 弘恵
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2003
動力学的な震源モデル(応力ベース)の特徴を生かした運動学的な震源モデル(すべり量ベース)の記述方法として「擬似動的震源モデル」が提案されている.擬似動的震源モデリングとは,震源における動的破壊計算で確認された理論式と経験式をもとに,最終すべり量・静的応力降下量・破壊エネルギー・破壊開始時刻・最大すべり速度・ライズタイム・強震動パルス幅といった断層破壊にかかわる一連のパラメータを,摩擦構成則にしたがう断層破壊の計算を行うことなく導出する方法である.平成16年度はM6.5,M7.0,M7.2の3つの地震規模に対して10ケースづつのシナリオ地震を想定し,擬似動的震源モデルの構築と広帯域強震動予測を行った.動的および擬似動的震源モデリングでは,破壊エネルギーの不均質性に基づいて断層パラメータが構築されるため,破壊開始点がアスペリティ内に位置する場合,大きなすべり速度と短いすべり継続時間を有する領域がアスペリティ端部に見られ,時に大振幅をもった鋭いパルス波が震源ごく近傍で生成される.このような地震波は,従来の運動学的震源モデルから想定される経験式を上回る偏差を示し,動的破壊過程に起因する極大地震動と考えることができる.本年度は,2004年新潟県中越地震や2003年イラン・バム地震などで得られた近年の大地震動成因の解明を目的として,極大地震動に関する研究に着手した.また,地震学的に興味深い現象として,Mw6.5-7.0クラスの断層から生成される地震動レベルは,Mw7.0-7.5クラスの断層から生成される地震動レベルよりも大きい(Somerville,2003)という,地震動パラドックスが挙げられる.本研究では,破壊エネルギーの地震モーメントのスケーリングにみられる地表断層地震と地中断層地震の違いに着目して,動力学的震源モデルに基づくすべり速度時間関数を構築し,地震動パラドックスを解明するための強震動予測手法のプロトタイプを提案した.