著者
中村 早希 三浦 麻子
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.157-168, 2018 (Released:2019-11-06)
参考文献数
52

In various social situations such as elections or shopping, individuals are often persuaded in multiple directions by different sources (i.e., multiple-source-and-direction persuasion). In this paper, we discussed the attitude change process in this type of situation, based on two dual-process models of persuasion: (1) the heuristic-systematic model and (2) the elaboration likelihood model. These models assume single-source-and-direction persuasion and cannot be applied without modification to multiple-source-and-direction persuasion. Therefore, this paper focuses on the simultaneous consideration of multiple persuasive messages as a process particular to this situation. In addition, by using a concrete experimental design, we demonstrated in this paper how a hypothesized model accounts for a recipient’s attitude change. We emphasized the significance and the future prospects of clarifying the attitude change process in multiple-source-and-direction persuasion.
著者
三浦 麻子 川浦 康至
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.153-160, 2009
被引用文献数
1 2

This study focused on an online knowledge-sharing community, in which information was exchanged and accumulated actively in the community based on the question-and-answer interaction of users. We examined its characteristics by text mining, one of the most effective methods for the content analysis of enormous quantities of text-based data. Based on an analysis of posted questions and answers, the same gender difference as in previous studies on interpersonal communicative discourse was found. Female users tended to post questions and answers related to their interpersonal relationships. Based on an analysis of their perspectives on the community, it was suggested that many users positively evaluated the usefulness of the community and did not hesitate to post questions and answers. These attitudes of users toward the community should lead to their positive evaluation of both the overall community and the communication made there, as pointed out by Miura and Kawaura (2008).
著者
小森 政嗣 前田 和甫 三浦 麻子 松村 真宏
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.277-284, 2014-11-25 (Released:2019-07-01)
参考文献数
20

Rumors can easily spread on the microblogging service Twitter in the form of retweets, which are tweets that a user has forwarded to his/her followers. This study investigated the social network characteristics of Twitter users who retweeted rumors concerning the Great East Japan Earthquake. We targeted not only the users who spread the rumor that was delivered to their timeline but also those who did not retweet the rumor. Moreover, we investigated each personal network of the user and his/her followings and followers on Twitter, including the set of connections between them. Consequently, we found that the users who spread the rumors are characterized by lower centrality (lower degree and betweenness) and lower reciprocity (fewer mutual follow relationships).
著者
楠見 孝 子安 増生 道田 泰司 MANALO Emmanuel 林 創 平山 るみ 信原 幸弘 坂上 雅道 原 塑 三浦 麻子 小倉 加奈代 乾 健太郎 田中 優子 沖林 洋平 小口 峰樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,課題1-1「市民リテラシーと批判的思考のアセスメント」では市民リテラシーを支える批判的思考態度を検討し,評価ツールを開発した。課題1-2「批判的思考育成のための教育プログラム作成と授業実践」では,学習者間相互作用を重視した教育実践を高校・大学において行い,効果を分析した。課題2「神経科学リテラシーと科学コミュニケーション」では,哲学と神経生理学に基づいて推論と情動を検討した。さらに市民主体の科学コミュニケーション活動を検討した。課題3「ネットリテラシーと情報信頼性評価」では,放射能リスクに関する情報源信頼性評価とリテラシーの関連を調査によって解明し,情報信頼性判断支援技術を開発した。
著者
山下 玲子 三浦 麻子
出版者
WebLab
雑誌
メディア・情報・コミュニケーション研究
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-18, 2018-03

本稿ではTwitterにおいて情報価値が少ないツイートがいかに拡散したか,第一筆者本人のツイートに対するリツイート (RT) に関するデータを分析し探索的に検討した。その結果,RTの拡散は,RT元と関連の薄い1,000~2,000人程度のフォロワーを持つユーザーが複数名集中して行うことで速まり,その過程で5ケタ以上のフォロワーを持つユーザーに到達しRTすることで,さらに拡散の範囲が広がることが示された。情報価値の少ないツイートの拡散では,強力なインフルエンサーによる局所的な拡散だけではなく,ある程度アクティブなユーザーのコンサマトリーな動機によるRTが局所的・同時発生的に起こることで,RTが芋づる式に拡がる「じわる」現象が存在することが示唆された。In this article, we investigated how a message in Twitter which was funny and of little information value diffused rapidly and widely. Using a tweet by a first author that was retweeted about ten thousand times, we analyzed the speed of the message diffusion by the retweet and the range of the message. The speed of the tweet diffusion was accelerated by retweeting of several moderate active users and in parallel retweeting of users who had over ten thousand followers expanded range of diffusion. This phenomenon suggested the accumulative power of "ordinary influencers" who were enjoying consummatory conversation in diffusing a funny message of little importance.
著者
松村真宏 三浦麻子 柴内康文 大澤幸生 石塚満
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.1053-1061, 2004-03-15

「2ちゃんねる」は日本最大のオンラインコミュニティサイトである.ところが,そこに書き込まれる情報はときとして「便所の落書き」と揶揄されるように,一見すると意味のない言葉や記号にしか見えないものも多い.これは非常に奇妙な現象である.というのも,便所の落書きを見るために毎日数十万人もの人が訪れるとはとても考えられないからである.ではなぜ2ちゃんねるはあれほど盛り上がっているのだろうか.実は傍から見れば意味がないように思える言葉や記号のやりとりが2ちゃんねるのユーザには意味があり,これが2ちゃんねるが盛り上がる要因となっているのかもしれない.このような動機から本稿では,2ちゃんねるにおけるコミュニケーションの特徴に着目して,2ちゃんねるが盛り上がるダイナミズムを解き明かすことを目指す.特に,コミュニケーションの特徴として,メッセージのサイズや投稿数,返信率,投稿される早さなどの基本的な属性に加え,2ちゃんねるに特徴的な名無しと,2ちゃんねる語やアスキーアート(AA)などの定型的な表現技法に注目する.共分散構造分析により構築した「2ちゃんねるモデル」は,定型的表現傾向が議論発散傾向と議論深化傾向に及ぼす関係などを明らかにしている.
著者
温 若寒 三浦 麻子
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.52-63, 2022 (Released:2023-09-30)
参考文献数
46

On the Internet, the appearance of behaviors that differ from those used in real-life may be observed. The online disinhibition theory, pioneered by Suler (2004), has frequently been cited in empirical studies to explain this phenomenon. However, scholars have not reached a consensus regarding the construct of online disinhibition. In this study, an appropriate construct of online disinhibition for psychological research was explored and a model was proposed to explain its functioning. First, this study highlighted that previous studies have examined online disinhibition from three perspectives. This paper discusses the contributions and limitations of previous studies and postulates that psychological research on online disinhibition should be conducted from the perspective of the mental state. Three significant models that explain the working of online disinhibition were reviewed: the “benign/toxic disinhibition model,” “online disinhibition/behaviors model,” and “online disinhibition and deindividuation model.” Finally, the “motivation-based online disinhibition model” is proposed as an improved model that solves the limitations of the aforementioned models.
著者
村山 綾 三浦 麻子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1203, (Released:2013-09-30)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究では,集団討議で生じる葛藤と対処行動,およびメンバーの主観的パフォーマンスの関連について検討した。4名からなる合計17集団(68名)にランダムに配置された大学生が,18分間の集団課題を遂行した。その際,討議開始前,中間,終了時に,メンバーの意見のずれから算出される実質的葛藤を測定した。また討議終了時には,中間から終了にかけて認知された2種類の葛藤の程度,および葛藤対処行動について回答を求めた。分析の結果,集団内の実質的葛藤は相互作用を通して変遷すること,また,中間時点の実質的葛藤は主観的パフォーマンスと関連が見られないものの,終了時点の葛藤の高さは主観的パフォーマンスを低下させることが示された。関係葛藤の高さと回避的対処行動は主観的パフォーマンスの低さと関連し,統合的対処行動は主観的パフォーマンスの高さと関連していた。関係葛藤と課題葛藤の交互作用効果も示され,課題葛藤の程度が低い場合は,関係葛藤が低い方が高い方よりも主観的パフォーマンスが高くなる一方で,課題葛藤の程度が高い場合にはそのような差はみられなかった。葛藤の測定時点の重要性,および多層的な検討の必要性について議論した。
著者
松村 真宏 三浦 麻子 小森 政嗣 平石 界
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.29, 2015

東日本大震災の際、情報を得るためのインフラとして活用されたツイッターは、他メディアに流れた情報を共有する「メタメディア」としても機能していた。震災関連情報の中には真偽の明確でない情報、悪質なデマ、賛否の分かれる事柄など、議論や論争を呼び起こすものが多かった。本稿では、ツイートログを対象として、メディアが誘発した投稿者の感情を分析し、メディアが投稿者の心理的な側面に及ぼした影響について探る。
著者
宮部 真衣 荒牧 英治 三浦 麻子
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.17, pp.1-7, 2011-09-08
被引用文献数
1 8

2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災においては,Twitter に多くのメッセージが投稿された.これまで,緊急時におけるマイクロブログの有用性が示されているものの,地域を考慮したマイクロブログの利用傾向に関する分析は十分に行われていない.本研究では,マイクロブログとして Twitter に着目し,東日本大震災発生後に Twitter へと投稿されたツイートを分析した.分析の結果,以下の知見を得た.(1) 被害の大きかった地域では直接的なメッセージのやり取りが行われる傾向がある.一方,被害の小さかった地域では,ツイートされた情報が拡散される傾向が高い.(2) 特に被害の大きい地域で発信された情報については,他地域へと移動する傾向が見られた.After the Great Eastern Japan Earthquake in Japan 2011, numerous tweets were exchanged on Twitter. Several studies have already pointed out that micro-blogging systems have shown potential advantages in emergency situations, but it remains unclear how people use them. This paper presents a case study of how people used Twitter after the Great Eastern Japan Earthquake. First, we gathered tweets immediately after the earthquake and analyzed various factors, including locations. The results revealed two findings: (1) people in the disaster area tend to directly communicate with each other. On the other hand, people in the other area prefer tend to rely on re-tweet; (2) information posted from the disaster area tends to spread in the other area.
著者
犬塚美輪 三浦麻子#
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第61回総会
巻号頁・発行日
2019-08-29

目 的 大学での学修において,ノート作成は有効な学習方略だと一般に考えられている。Kobayashi (2005) は,その効果は研究間の差が大きく平均すると小さいこと,適切なノート作成がされるかどうかが効果に関連すること,ノート作成において要約や精緻化などのgenerativeな活動がなされることが重要なことを指摘している。 授業中に作成するノートは,板書や教師の発話を記録することに重点が置かれやすく,genera- tiveな活動はなされにくい。一方,復習のためのノート作成では,情報の精査や要約,視覚的なまとめ直しなどの活動がなされやすいと考えられるため,学習を促進する効果的な学習方略となることが想定される。しかし,学生の中には,授業中に作成したノートやテキストを「見直す」だけで,復習のためのノート作成を行わない者も多く,効果的なノート作成が行われにくいと考えられる。また,コスト感の高さや有効性の認知の低さは,ノート作成を避ける要因の一つだろう。 以上を受けて,本研究では,限られたスペースにまとめるという課題によってgenerativeな活動を促すとともに,ノートをテストに持ち込めるようにすることで,ノート作成を促進する介入を行う。本研究では,こうした介入により,学習者のノート作成に関する認識が変化するか,またノート作成と成績に関連が見られるか,検討する。方 法対象者 統計学の入門授業の受講生49名。計画 対象者は,全15回の授業のうち,第2回に「テストのための学習方略質問紙」および「復習のためのノート作成質問紙」に回答した。質問項目はいずれも5件法での回答を基本とした。その後,第6回,第10回,第14回の3回,統計学の小テストを受け,第15回で総合テストを受けた。そのうち,第10回の小テスト以外のテストでは,「A4一枚表面のみ記入した『まとめノート』を持ち込んでよい」と指示された。また,第5回,第13回の授業では,復習のためのノート作成の効果と,よりよいノートを作るためのポイントが10分程度説明された。結果と考察事前のテスト学習方略 ノートや資料を「見直す」という回答の平均値は4.9以上 (SD=0.26) であり,学生が「見直す」方略をほぼ必ず用いると言えた。一方,復習のためのノート作成は平均値3.29 (SD=1.35) と相対的に低く,自発的に用いられにくい学習方略であると考えられた。自発的なノート作成の増加 第10回の小テストにおいて,自発的なノート作成を行ったのは7名とわずかであった。第6回の質問紙の項目との相関を見ると,「良いまとめノートになるよう工夫した」「まとめノートを作る時間的余裕がなかった」の2項目と中程度の相関がみられた (それぞれr=.39, p=.02; r=-.32, p=.06)。ノートづくりを工夫する経験が自発的な方略としてのノート作成を促進すると考えられるものの,まとまった時間を必要とする方略のため,主観的な「時間のなさ」から避けられやすいと考えられた。ノート作成に関する認識の変化 ノート作成に関する質問紙の項目のうち相関の高い組み合わせを選び,「工夫」「有効性の認知」「コスト感」の4尺度を作成した。第6回・14回の小テストと総合テストの際の尺度得点を,一要因被験者内計画分散分析で検討した結果,コスト感と有効性の認知には有意な変化が見られなかった (それぞれF(2,60)=2.24, 1.65) が,工夫は有意な主効果が得られ(F(2,62)=6.19, p=.004, η2p =.166),総合試験と各小テスト間に有意な差が見られた。総合試験では,小テストのときよりノート作成を工夫したことが示された。これは,ノート作成経験に加え,小テストより広い範囲の情報を精査・圧縮する必要が生じたためだと考察できる。ノート作成とテスト成績 2名の評定者が,総合テストのために作成されたノートの①記入量,②偏り,③構成の工夫,④図表,⑤具体例,⑥全体的な印象,を5段階で評定し(評定者間の評定の相関r>.73),2名の平均値を評定得点とした。また,授業者が授業中に配布した資料にはない表現や独自の整理が見られるかを3段階で判定し,⑦精緻化の評定得点とした。これらの評定得点を独立変数,総合テストの成績を従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ)の結果,有意なモデルが得られ(R2=.300)④構成の工夫と⑦精緻化の偏回帰係数が有意であった(それぞれβ=.406, p=.006; β=.305, p=.036)。ノート作成における授業内容の構造把握と精緻化が,内容理解を促進することが示唆された。