著者
古郡 規雄 下田 和孝
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.259-265, 2020-10-25

パーソナリティとは,個人の感情,認識,欲望,行動のパターンにおける一貫性と一貫性を説明するために使用される抽象化されたものである.近年,ビッグ・ファイブ理論の一般的普及や,行動遺伝学,神経生物学等の発展を背景にして,パーソナリティに対する関心が高まっている.次元論的人格理論のうち代表的なものとしては,Cloninger による7次元モデルやCosta & McCrae によるビッグ・ファイブ理論がある.近年の分子遺伝学の進歩によりパーソナリティに関与する遺伝子は数多く,一つ一つの効果は小さいと結論づけられている.本稿では7次元モデルとビッグ・ファイブ理論を紹介し,過去に我々が行った研究ではドパミンDRD4遺伝子多型は新規性追求と血液型ABO 遺伝子多型が固執に影響を及ぼしていた.今後は,脳画像研究や神経生理学的検証でさらなる確認試験が必要となる.
著者
伊藤 富子 工藤 智 下田 和孝
出版者
北海道立水産孵化場
雑誌
北海道立水産孵化場研究報告 (ISSN:02866536)
巻号頁・発行日
no.59, pp.11-20, 2005-03
被引用文献数
1

北海道では、2001年に大沼公園内円池でオオクチバスとコクチバスが、2002年に余市町余市ダムでオオクチバスが、2002-2004年に南幌町親水公園池でオオクチバスが、それぞれ捕獲された。余市ダムおよび南幌親水公園におけるオオクチバスの生態的地位と履歴を解明する目的で、オオクチバスの食性を調べると共に、オオクチバスと餌生物の炭素および窒素同位体の分析を行った。また、同位体分析結果の解明のため、オオクチバスの同位体濃縮係数とターンオーバータイムの測定を試みた。その結果、余市ダムのオオクチバスは最近違法放流されたものと推定された。一方、南幌親水公園池では、比較的長い間この水域に生息していた体重500g以上のものと最近放流された体重100g以下の個体の両者が含まれていると推定され、2004年6月に採集された体重300g余の個体は新たにごく最近違法放流されたものであると考えられた。
著者
伊藤 富子 工藤 智 下田 和孝
出版者
北海道立水産孵化場
巻号頁・発行日
no.59, pp.11-20, 2005 (Released:2011-03-05)

北海道では、2001年に大沼公園内円池でオオクチバスとコクチバスが、2002年に余市町余市ダムでオオクチバスが、2002-2004年に南幌町親水公園池でオオクチバスが、それぞれ捕獲された。余市ダムおよび南幌親水公園におけるオオクチバスの生態的地位と履歴を解明する目的で、オオクチバスの食性を調べると共に、オオクチバスと餌生物の炭素および窒素同位体の分析を行った。また、同位体分析結果の解明のため、オオクチバスの同位体濃縮係数とターンオーバータイムの測定を試みた。その結果、余市ダムのオオクチバスは最近違法放流されたものと推定された。一方、南幌親水公園池では、比較的長い間この水域に生息していた体重500g以上のものと最近放流された体重100g以下の個体の両者が含まれていると推定され、2004年6月に採集された体重300g余の個体は新たにごく最近違法放流されたものであると考えられた。
著者
菊池 絵梨子 下田 益弘
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.85-91, 2010-11-15 (Released:2011-05-25)
参考文献数
5
被引用文献数
2 4

超音波断層法 (US) は,腎形態を評価する上で静脈性腎盂造影 (IP) に替わるファーストラインの検査となった。腎疾患には低形成腎を始めとして腎サイズの異常を呈する疾患が少なからず認められる。腎長径には年齢ごとの正常値が存在するが,静脈性腎盂造影 (IP) が汎用された時代には簡便な方法として同時に撮影される椎体の厚さとの比が用いられていた。今回われわれは,195名の腎尿路奇形を有さない児に対しUSを施行し,腎長径と身体的パラメータの関係を明らかとするとともに,USで同時に撮影したL4~5の棘突起間距離を用いた腎長径の評価法について検討した。結果,腎長径は身長と最も高い相関を示した。また,腎長径はおおむねL4~5棘突起間距離の4~6倍となることが示された。L4~5棘突起間距離はUSで容易に測定でき,変換式や身長別正常値表も必要としないことから,腎サイズを簡易的にスクリーニングする上で有用な評価法となる可能性がある。
著者
鈴木 優喜子 原田 祐輔 下田 信明 望月 秀樹
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.251-255, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
23

〔目的〕視空間認知障害に対する介入研究の介入デザイン,対象疾患,介入方法と効果,評価指標について分析することを目的とした.〔方法〕国内文献データベースを用いて検索した.〔結果〕適格基準を満たした文献は14編であった.準ランダム化比較試験(RCT)が1編,非RCTが2編,前後比較研究が11編であった.対象疾患は脳卒中が14編であった.介入方法は9種類あり,それらのうち8種類の介入で視空間認知障害に有意な改善を示した.〔結語〕視空間認知障害に対するRCTによる研究や脳卒中の半側空間無視以外を対象とした視空間認知障害についての研究が不足していることが示された.
著者
下田 章平
出版者
書学書道史学会
雑誌
書学書道史研究 (ISSN:18832784)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.29, pp.73-87,103, 2019-10-31 (Released:2020-01-31)

This paper deals with Seido Kikuchi and Rendo Ohashi, who seem to have taken over the network of art collectors of Seido. I primarily examine Kikuchi  Seido  Nikki and some rare materials kept by the Ohashi family to reveal the network of Seido in the early Showa era. As a result of my examination, I conclude that Seido had a close relationship with the group of art collectors led by Bokudo Inukai in the early Showa era.   In addition, I identify two important points that will help to reveal the bigger picture of the network of art collectors in the period from the Xinhai Revolution to the end of World War II, a transitional period in the history of art collection. First, the activities of collectors between Japan and China after Luo Zhenyu's return to China need to be researched. Second, the roles of the collectors in the network who were contemporaries of Seido Kikuchi (Senro Kawai, Rokkyo Sugitani, Sentaro Yamaoka, Kyozan Yamamoto, Hekido Tanabe, Ginjiro Fujiwara and Tatsujiro Hashimoto), as well as the roles of the collectors who led the next generation (Kikujiro Takashima, Yasunosuke Ogiwara and Tsuneichi Inoue) and of those in China (Choji Sasaki and Shunzaburo Kuroki), need to be considered.   The network of Seido included many Japanese art collectors other than those mentioned above, but few  points of contact between Chinese/Korean and Japanese art collectors, including their social relationships, have been confirmed; consequently, Chinese/Korean and Japanese art collectors are likely to have had separate networks. This fact will have to be taken into account when Chinese paintings, calligraphy and calligraphic rubbings are studied.
著者
川幡 太一 鈴木 俊哉 永崎 研宣 下田 正弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. DD, [デジタル・ドキュメント]
巻号頁・発行日
vol.2013, no.7, pp.1-4, 2013-07-19

悉曇文字は日本において、仏典の研究や菩薩の種字等に用いられるインド系文字の一種である。本報告では、日本の悉曇文字の国際符号化文字集合 (UCS) への提案活動に関して、その概要・標準化の経緯・および標準化にあたっての技術的課題および今後の予定について述べる。
著者
下田路子
雑誌
水草研究会報
巻号頁・発行日
vol.49, pp.12-15, 1993
被引用文献数
1
著者
小林 奈保子 下田 実可子 清水 綾音 川原 正博 田中 健一郎
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-9, 2021-02-05 (Released:2021-02-09)
参考文献数
17

皮膚は表皮(ケラチノサイト),真皮(ファイブロブラスト),皮下組織から構成されており,生体内部の保護や体温調節などの役割を果たしている。また,表皮最下層の基底層にはメラニンを産生するメラノサイトが局在している。一方,紫外線(UV)などの刺激に曝されると,皮膚障害(ケラチノサイトでの細胞死)・メラノサイトでの過剰なメラニン産生・ファイブロブラストでのコラーゲン産生低下が起こる。このように,皮膚がUVに繰り返し曝露されると,酸化ストレスによる障害が蓄積し,シミ・シワを特徴とする「光老化」が引き起こされる。そこで,本研究では,酸化ストレスによる皮膚障害を抑制する精油を網羅的スクリーニングにより発見することを目的として実施した。その結果,ラベンダー精油がケラチノサイト保護とコラーゲン産生低下の回復,ジャスミンAbs.がメラニン産生抑制とコラーゲン産生低下の回復という複数の保護作用を持つことを見いだした。また,これらの保護作用は抗酸化作用を介する可能性が示唆された。今後さらなる解析を行い,酸化ストレスによる皮膚障害を抑制する最適な精油を提案したい。
著者
久野 純治 坂田 清美 丹野 高三 坪田(宇津木) 恵 田鎖 愛理 下田 陽樹 高梨 信之 佐々木 亮平 小林 誠一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.255-266, 2021-04-15 (Released:2021-04-23)
参考文献数
50

目的 大規模自然災害後の被災地では生活不活発病が問題とされ,それに伴う転倒予防の必要性が高まっている。本研究では東日本大震災後の被災高齢者の新規転倒要因を明らかにすることを目的とした。方法 2011年度に岩手県沿岸部で実施された大規模コホート研究(RIAS Study)に参加した65歳以上の高齢者のうち,転倒や要介護認定,脳卒中・心疾患・悪性新生物の既往がなく,2012~2016年度までの調査に毎年参加した1,380人を対象とした。本研究では毎年の質問紙調査で一度でも転倒したと回答した者を新規転倒ありとした。新規転倒要因には,2011年度実施した自己記入式質問票,身体計測,および,握力検査から,自宅被害状況,転倒不安,関節痛,認知機能,心理的苦痛,不眠,外出頻度,既往歴(高血圧,脂質異常症,糖尿病)の有無,飲酒状況,喫煙状況,肥満度,握力を評価した。新規転倒の調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を,年齢と居住地域を調整した多変数ロジスティック回帰分析を用いて算出した。その後,前期高齢者と後期高齢者に層化し,同様の解析を行った。結果 5年間の追跡期間中,参加者の35.5%(男性31.9%,女性37.9%)が新規転倒を経験した。新規転倒と有意に関連した要因は,男性では認知機能低下疑い(OR[95% CI]:1.50[1.01-2.22]),女性では認知機能低下疑い(1.82[1.34-2.47]),不眠(1.41[1.02-1.94]),脂質異常症の既往(1.58[1.11-2.25]),過去喫煙(4.30[1.08-17.14])であった。年齢層では,後期高齢女性で自宅半壊(7.93[1.85-33.91]),心理的苦痛(2.83[1.09-7.37])が有意に関連した。結論 男女ともに認知機能低下,女性では不眠,脂質異常症の既往,過去喫煙が新規転倒要因であった。後期高齢女性では自宅半壊と心理的苦痛が新規転倒要因となった。大規模自然災害後の転倒予防対策では従来指摘されている転倒要因に加えて,環境やメンタル面の変化にも注意する必要があることが示唆された。
著者
近藤 真阿久 竹村 裕 築地原 里樹 下田 晋寛 曽我 公平 須賀 一博 頼 威任 キム スンミン 簡野 瑞誠 宇尾 基弘
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2020 (ISSN:24243124)
巻号頁・発行日
pp.2P1-D09, 2020 (Released:2020-11-25)

In recent years, the demand for orthodontic treatment has been increasing, but the change in the moment due to the movement of the teeth during orthodontic treatment has not been measured and has not been quantitatively evaluated. The purpose of this study is to develop a three-tooth device with a built-in 6-axis force sensor and to evaluate orthodontic treatment quantitatively. We have developed a device that can change the angle of the central tooth using a stepping motor to reproduce the movement of the teeth during orthodontic treatment. We verified whether wires needed to be reattached during orthodontic treatment using this device. As a result, it turned out that a larger moment can be applied to the teeth by reattaching the wire during orthodontic treatment
著者
鈴木 絢子 秋山 今日子 西尾 陽平 田丸 精治 亀尾 由紀 中野 仁志 野口 慧多 寺田 豊 下田 宙 鈴木 和男 渡部 孝 吉澤 未来 後藤 慈 佐藤 梓 池辺 祐介 佐藤 宏 前田 健
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-12, 2012 (Released:2014-01-30)

イヌジステンパーウイルス(Canine distemper virus;CDV)は食肉目動物に致死的な感染を引き起こす。イヌでの致死的な感染はワクチン接種により減少しているが,野生動物での流行は拡大している傾向さえ見受けられる。更には,中国ではヒトと同じ霊長類であるサルに流行し,多くのサルが犠牲となったばかりか,国内の検疫所でも見つかっている。本項では最近国内の野生動物で発生した事例を中心に紹介する。
著者
鈴木 絢子 秋山 今日子 西尾 陽平 田丸 精治 亀尾 由紀 中野 仁志 野口 慧多 寺田 豊 下田 宙 鈴木 和男 渡部 孝 吉澤 未来 後藤 慈 佐藤 梓 池辺 祐介 佐藤 宏 前田 健
雑誌
山口獣医学雑誌 (ISSN:03889335)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-12, 2012-12

イヌジステンパーウイルス(Canine distemper virus;CDV)は食肉目動物に致死的な感染を引き起こす。イヌでの致死的な感染はワクチン接種により減少しているが,野生動物での流行は拡大している傾向さえ見受けられる。更には,中国ではヒトと同じ霊長類であるサルに流行し,多くのサルが犠牲となったばかりか,国内の検疫所でも見つかっている。本項では最近国内の野生動物で発生した事例を中心に紹介する。
著者
下田 淳
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.101, no.8, pp.1434-1465,1547-, 1992

Der Deutschkatholizismus war eine von der romisch-katholischen Kirche losgesagte religiose Bewegung in den 40er Jahren des 19. Jahrhunderts und hat ein groBes Aufsehen in der damaligen Gesellschaft Deutschlands erregt. Deshalb hat er nicht nur eine kirchengeschichtliche, sondern auch eine geschichtswissenschaftliche Bedeutung. Diese Studie zielt darauf, diese Bewegung im Kontext der neueren deutschen Geschichte zu erfassen. In Rucksicht auf die bisherigen Arbeiten und die protestantische Stadt Braunschweig als Beispiel anfuhrend, analysiere ich hier den Deutschkatholizismus aus zwei Gesichtspunkten: den "Stadtbewohnern gegenuber" und dem "Staat gegenuber". Der Deutschkatholizismus war beeinfluBt von den Vorstellungen des Protestantismus (besonders den Reformierten), der Aufklarung und des Liberalismus, aber er konnte kein Programm der politischen Reform vorlegen. Obwohl die Bewegung in Braunschweig direkt vom katholischen Kleinburgertum getragen wurde, unterstutzten sie auch breite protestantische Schichten. Das bedeutet, daB die Mentalitat der Bewohnerschaft in der protestantischen Stadt mit der deutschkatholischen Bewegung ubereinstimmte. Die Stutze der Kirchenpolitik im Herzogtum Braunschweig war die protestantische Landeskirche. Die deutschkatholische Bewegung konnte sich, in Verbindung mit der aufklarischen Atmosphare in Braunschweig, auf staatliche Unterstutzung verlassen, soweit sie dieses System nicht in Gefahr brachte. Ubrigens ist ein Grund dafur, daB sich Protestanten nicht direkt zum Deutschkatholizismus bekannten, auf das aufklarische Verhalten der hiesigen protestantischen Kirche zuruckzufuhren. In Braunschweig hat der Deutschkatholizismus schon vor der Revolution seine StoBkraft auf die Stadtbewohner verloren. Das bedeutet, daB die Mitte des 19. Jahrhunderts eine Schwellenzeit zur "Modernisierung der Mentalitat" der stadtischen Bevolkerung (besonders der protestantischen Stadte) ausmacht. Von nun an zwingt sie der Staat unter ein Verwaltungssystem, das sich mit dem Kirchenwesen nicht verbindet.
著者
高橋 康弘 振甫 久 村山 智恵子 下田 雄斗 石黒 正樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】肩関節周囲炎は中年以後の肩関節周囲組織の退行性変化を基盤として発症した疼痛性肩関節制動症として理解されている。痛みは徐々に増強し,その激痛により日常生活の行動を制限する。特につらいのが夜間痛である。夜間痛の持続期間は,全く無いものから数ヶ月間に及ぶものまで幅が広いのが現状である。今回,夜間痛の持続期間が影響を及ぼす因子について検討するために,肩関節周囲炎がプラトーに至り,治療が終了となった症例を分析した。【方法】2011年5月から2013年9月までに肩関節周囲炎と診断され,機能面がプラトーに至るまで運動療法を施行した23症例23肩(女性18例・男性5例,年齢64.3±10.7歳)を対象とした。腱板断裂は対象外とした。両側肩に,肩疾患・受傷既往や合併症のある者も除外した。全例同一理学療法士が担当し,概ね同じリハビリテーションスケジュールで行われた。肩関節周囲炎の回復期に入り,4週間以上関節可動域(以下,ROM)の改善が得られない状態をプラトーとし治療を終了した。夜間痛は,毎日持続する痛みがあり,一晩に2~3回以上は目が覚めるものと定義し,夜間痛の発症から消失するまでの期間を週単位で記録した。夜間痛の持続期間が影響を及ぼす予測因子として,全治療期間,運動療法期間,最終獲得ROM(屈曲・外転・外旋・結帯動作)を列挙した。外旋ROMは下垂位でのポジションとした。全治療期間は初診日から治療の終了日までとし,発症日は特定できないケースが多いため考慮しなかった。運動療法期間は,運動療法が開始となった日から治療の終了日までとした。最終獲得ROMの屈曲・外転・外旋に関しては,プラトーに至った患側ROMを健側ROMで除し,患側ROMの改善した割合(以下,改善率)を算出した。最終獲得の結帯動作に関しては,健側結帯動作とプラトーに至った患側結帯動作の差(以下,結帯差)を脊椎の個数で示した。Grubbs-Smirnov棄却検定を行ない外れ値の検討をした上で,夜間痛の持続期間と各予測因子の関係をSpearmanの相関係数を使用して調べた。p<0.05で統計学的有意とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿って計画され,対象者には本研究の趣旨を説明し,同意を得て実施した。【結果】夜間痛の持続期間と外旋改善率においてはr=-0.79 p<0.01であり,負の強い相関を認めた。夜間痛の持続期間と結帯差はr=0.46 p<0.05であり,正の弱い相関を認めた。夜間痛の持続期間とその他の因子には相関は見られなかった。【考察】今回の研究により,外旋ROMと結帯動作の予後は夜間痛が長期間に及ぶほど,悪影響を受けることが示唆された。特に外旋ROMは夜間痛の期間に強く影響を受ける結果となった。肩関節周囲炎の夜間痛は,肩峰下滑液包と腱板の癒着による肩峰下滑動機構の破綻,もしくは上方支持組織の拘縮が,肩峰下圧の上昇に関与しているといわれる。夜間痛が発生している期間は上方支持組織の伸張性が低下し,下垂位での内外旋を制限するため,それが長期間になるほど,外旋・結帯動作のROM予後に悪影響すると考察された。一方で,屈曲・外転ROMに関しては,上方支持組織の伸張性は関与しないため,夜間痛の持続期間の影響を受けなかったと考えられた。夜間痛に対しては炎症軽減のために日中の安静指導や,上方組織の伸張性回復のための徒手的治療が提案されており,これらの重要性を再確認する機会となった。夜間痛と内外旋制限の関係については,先行研究とも一致する結果であった。今後はさらに症例数を重ね,夜間痛の持続期間に影響する因子を可能な限り多く抽出し,より信憑性の高い研究が必要であると感じた。【理学療法学研究としての意義】今回我々は,夜間痛の持続期間が明確で,尚且つプラトーに至り治療が終了になるまで介入可能であった症例を分析した。肩関節周囲炎の夜間痛に対する報告は散見されるが,持続期間に着目した研究や,最終予後に至るまで追求し分析を行った物は見当たらないため,本研究の臨床的意義は高いと考える。
著者
下田 智子 八幡 磨並 山本 留美加 及川 幸子 良村 貞子
出版者
看護総合科学研究会
雑誌
看護総合科学研究会誌 (ISSN:1344381X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.15-29, 2012-06

見守りは,援助者が対象者に対し,必要な介助や支援ができるような体制を整えて,意図的にその行為や様子を観察することである。また,看護師は患者の自立に向けた健康回復への支援において見守りを行うことが多いが,意図的な見守りが患者や家族に認識されていない場合もある。そこで,本研究では自立に向けたケアの一場面である嚥下障害の患者に対する食事時の見守りに着目し,その実態を参加観察法で調査した。A病院の神経内科・外科病棟で収集したデータは10場面であった。その結果,以下の点が明らかになった。 1.嚥下障害のある患者の食事時の看護師による見守りは,患者の状態に応じて,自立に向け,代償的な直接的ケアも合わせ行われていた。 2.見守りは,患者の自立に向け,個別的アセスメントに基づき,その項目や時間が変化していた。 3.「姿勢を整える」などの見守り時の看護師の直接的ケアは,姿勢の保持を観察することより他者に容易に理解可能な行為であった。

1 0 0 0 OA 女子普通文典

著者
下田歌子 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1899