著者
眞野 友裕 宮木 杏菜 伊川 正人 中村 肇伸
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.111, pp.AW1-6-AW1-6, 2018

<p>【目的】精子と卵子は,受精後にリプログラミングを経て胚体外組織を含む全ての細胞に分化できる「全能性」と呼ばれる能力を再獲得する。本研究では,全能性獲得の分子基盤を明らかにするために,全能性細胞で特異的に発現する遺伝子の探索を行い,Zbed3(Zinc-finger BED Domain-containing 3)を同定した。本報告では,Zbed3の生体内での機能を明らかにすることを目的として研究を行った。【方法】着床前胚におけるZbed3のmRNAおよびタンパク質の発現はそれぞれqRT-PCRと蛍光免疫染色を用いて検討した。また,Zbed3ノックアウトマウスは,CRISPR/Cas9システムを用いて作製した。【結果】Zbed3の着床前胚における発現を検討した結果,Zbed3は受精卵から4細胞期胚の間で特異的に発現し,卵細胞膜皮質下に限局していた。Zbed3は,培養細胞を用いた研究から,Wnt/β-cateninシグナルを正に制御することが報告されているが,少なくとも初期胚では,Wnt/β-cateninシグナルの制御には関与しないことが示された。一方,Zbed3の特徴的な細胞内局在は,SCMC(subcortical maternal complex)と呼ばれる複合体の構成成分の局在と酷似していた。また,免疫沈降によりZbed3はSCMCの構成成分であるMater相互作用することが示唆された。これらのことから,Zbed3はSCMCの構成成分である可能性が考えられた。次に,生体内での機能を調べるために,Zbed3のノックアウトマウスを作製した。その結果,メスのZbed3ノックアウトマウスから得られた受精卵では胚盤胞期への発生率が著しく低下すること,また多くの受精卵から不均等な割球を持つ2細胞期が得られることが明らかとなった。以上から,Zbed3は初期発生に必須の母性効果遺伝子であり,均等な割球を持つ2細胞期胚への分裂に重要な役割を果たすことが示唆された。</p>
著者
荒井 智大 藤尾 淳 島岡 理 望月 泉 宮田 剛 臼田 昌広 井上 宰 村上 和重 手島 仁 中村 崇宣 中川 智彦 中西 渉
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.12-18, 2018
被引用文献数
1

急性虫垂炎の発症については季節性変化を報告した論文がみられ,特に高気圧時の化膿性疾患の増加を指摘した報告もある.2012年1月1日から2014年12月31日までの3年間に,当院で手術を施行した急性虫垂炎450例について,診療録をもとに後方視的に発症時期を調べその季節性変動を検討した.対象の平均年齢は38.3歳で,男女比は1.5:1であった.手術症例は7-9月が11-12月に比べ有意に多かった(p<0.05).気候要因としては,気温が高いほど発症が多い傾向があるが,気圧には先行研究で示されたような化膿性疾患の増加との関連性は認められなかった.急性虫垂炎の病因は複合的であり更なる検証が必要だが,この季節性変動の情報が急性虫垂炎の発症機序解明に僅かながらも寄与する可能性があると考えられた.
著者
風間 基樹 岡田 直仁 中村 晋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.722, pp.207-217, 2002-12-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
28

強震動を受け強非線形化した地盤の地震時挙動を解析するため, 高速ウェーブレット変換を用いた時間-周波数領域の非定常地震応答解析手法を提案した. 提案手法は地震動が入力されてから非定常に変化する地盤のせん断剛性と減衰定数を, その時点までに地盤が受けた累積損失エネルギーと最大ひずみレベルに基づいて規定する方法を示している. この方法の特長は, 地盤の時々刻々の剛性低下が陽な形で計算結果として出力されることであり, 一種の非線形解析となっている. また, 提案手法を用いて神戸ポートアイランドで観測された強震記録を対象とし, 液状化による剛性低下を伴う地盤の強震時挙動解析に対する適用性を検討した.
著者
福田 豊 畑瀬 卓司 和田 数字郎 佐藤 彰洋 中村 豊
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2021-IOT-54, no.10, pp.1-7, 2021-07-02

1997 年に最初の無線 LAN 規格 IEEE 802.11 が策定されて以来,伝送レートを高速化するために数年ごとに新しい規格が登場し,現在では第 6 世代と言われる IEEE 802.11ax の標準化が完了している.標準化は後方互換性を維持しながら進んだため,最新規格 IEEE 802.11ax の AP (Access Point) でも IEEE 802.11a/b 対応機材は接続し通信を行うことができる.この後方互換性と比較的短い年月での世代更新により,キャンパス無線 LAN では多様な IEEE 802.11 規格が混在している.しかし,異なる規格の混在はスループット特性が低下する Performance Anomaly 問題の発生を招くため,可能な限り規格の混在を回避する運用が望ましい.そのためにはまず全接続に対する無線 LAN 規格の混在状況を把握する必要がある.そこで本稿では九州工業大学のキャンパス無線 LAN を利用する端末の規格を調査し,得られた知見から混在を回避するための運用方法を述べる.
著者
小林 直人 中村 修 大井 健太
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.11-25, 2011 (Released:2011-03-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

この論文では研究戦略の形成とそれに基づく構成的な研究評価について考察した。特に研究遂行にあたっては、戦略形成の一環として研究プログラムの目標とそれを達成するためのシナリオの設定が大切であることを強調し、その研究戦略に沿った研究評価を行うことの重要性を指摘した。また研究評価にあたっては、研究の進展(progress)、深さ(depth)、位相(phase)の3側面から評価を行うとともに、それらを研究戦略と対比しつつ演繹・帰納・仮説形成(アブダクション)用語1による推論を組みあわせて構成することの重要性や、最終的に総合的な評価を形成する際にも構成的な評価法が重要なことを述べた。さらに産総研における研究ユニット評価および長崎県における公的研究機関の研究プログラム形成と評価の実情を紹介して、構成的な評価法との対比を試みた。構成的な評価法は、研究の価値を引き出し、次の進化に向けるために必要な創造的営みの一つとして捉えることができる。
著者
中村 理恵子 大森 泰 須田 康一 和田 則仁 川久保 博文 竹内 裕也 山上 淳 天谷 雅行 北川 雄光
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1515-1526, 2018 (Released:2018-08-20)
参考文献数
24

自己免疫性水疱症は自己抗体により細胞間接着が障害され,皮膚や重層扁平上皮に水疱が形成される疾患の総称である.多くは皮膚に水疱やびらんを形成するが,目,鼻,口腔粘膜,口唇,咽喉頭,食道などの重層扁平上皮にも水疱やびらんを形成することがある.しかし,咽喉頭および食道粘膜における病変の発生頻度や特徴についてはよく知られていない.この研究においては,自己免疫性水疱症における上部消化管内視鏡検査の重要性を評価することを目的とし,内視鏡的な咽喉頭食道病変の発生頻度をprimary endpoint,内視鏡的・臨床的特徴を見出すことをsecondary endpointとして評価を行った.口腔または咽喉頭病変を50.4%,咽喉頭病変を30.8%に認めた.通常観察で食道粘膜面に異常を認めなかった症例の40.6%において機械的刺激による表皮剥離または血疱形成(Nikolsky現象)を呈した.全体の16.8%に通常観察で食道病変を認め,56.0%がNikolsky現象陽性を呈した.皮膚病変を認めない29.2%の症例において,77.7%に口腔または咽喉頭病変,36.1%に食道病変,58.3%にNikolsky現象を認めた.上部消化管内視鏡所見より自己免疫性水疱症を疑うことは可能であり,その内視鏡的特徴および所見を理解しておくことは重要である.
著者
大矢 周平 中村 一樹 板倉 颯
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.I_1147-I_1153, 2021

<p>自動車依存の限界はより顕著となり,公共交通を中心とした移動を安全で快適に行える都市空間の再整備は急務である.この中で,公共投資が難しい財政制約下では,複数の交通システムを繋ぐネットワーク整備の有効性も求められる.特に,駅周辺の歩行環境の質は,公共交通の利用意向に影響し得る.しかし,複数の交通手段による移動において,手段間の移動の質の相互関係は明らかでない.そこで本研究では,交通手段の組み合わせと移動の質の関係を把握する.まず,交通手段別の移動の質の評価手法について整理する.次に,移動ログデータを収集し,交通手段別に移動の質を評価するアンケートを行う.最後に,交通手段の組み合わせ別に前後の移動の質の評価との関係を分析する.この結果,交通手段の組み合わせにより移動の質の評価が異なることを示した.</p>
著者
渡辺 隆 岩上 直幹 小川 利紘 中村 正年 Takashi WATANABE Naomoto IWAGAMI Toshihiro OGAWA Masatoshi NAKAMURA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
no.69, pp.111-115, 1980-03

冬期高緯度において,中間圏オゾンのロケット観測を太陽吸光法を用いて行った.得られた高度分布は,典型的な中緯度の値にくらべて著しく小さい.
著者
中村 芳樹
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.746-753, 2002-10-01 (Released:2011-07-19)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4
著者
坂田 克彦 中村 芳樹 吉澤 望 武田 仁
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.82, no.732, pp.129-138, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

Studies have previously been undertaken on the prediction of perceived spatial brightness aimed at achieving designs that take account of a feeling of brightness of space, and various estimation models and factors affecting the prediction of perceived spatial brightness are known. In this study the authors focused their attention primarily on factors other than average brightness to explain perceived spatial brightness in nonuniform luminance distribution with the aim of proposing an index which encompasses existing knowledge while being based on simple quantities. The authors set 32 different lighting conditions in an office with north-facing windows and measured the luminance images for each condition. They then asked subjects to evaluate the perceived brightness from two seats, one with the windows in sight and with no windows in sight, thereby providing 64 different luminance distribution and estimation value samples. Ten contrast images of different spatial frequency were decomposed from each luminance image by wavelet transformation symlet6, then AD (ambient directivity, low spatial frequency) and CD (contrast detail, high spatial frequency) were defined on the basis of each variance of contrast image. The authors used multiple regression analysis to obtain a multiple regression equation to explain spatial brightness using three variables: average luminance, or NB value; AD; and CD. AD lowers spatial brightness, while CD raises it. The estimated accuracy was greater than that achieved using a conventional equation. After considering the above, the authors suggested NSB (Natural scale of Spatial Brightness), a spatial brightness prediction model based on luminance contrast.
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-50, 2010-07

One of the serious social problems is the increasing of number of public assistance recipients. This article would like to suggest that those recipients capable of gaining "independence by working" should be identified and a system established to assist them in achieving this goal. For the purposes of this study, a database containing 502 public assistance recipients in Tagawa, Fukuoka Prefecture was examined. Through a statistical analysis of this database, the following recommendations towards independence from public assistance may be made:1) In the initial stages of public assistance, administrators and caseworkers should offer incentives to work to recipients.2) For the sake of recipients who are single mothers, the number of day-nursery facilities should be increased in order to assist them in job-hunting and/or the procurement of work-related qualification or skills.3) For recipients suffering from some form of addiction (e.g. drugs, gambling, alcohol), the treatment of their addiction should be prioritized
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-50, 2010-07-31

One of the serious social problems is the increasing of number of public assistance recipients. This article would like to suggest that those recipients capable of gaining “independence by working” should be identified and a system established to assist them in achieving this goal. For the purposes of this study, a database containing 502 public assistance recipients in Tagawa, Fukuoka Prefecture was examined. Through a statistical analysis of this database, the following recommendations towards independence from public assistance may be made:1) In the initial stages of public assistance, administrators and caseworkers should offer incentives to work to recipients.2) For the sake of recipients who are single mothers, the number of day-nursery facilities should be increased in order to assist them in job-hunting and/or the procurement of work-related qualification or skills.3) For recipients suffering from some form of addiction (e.g. drugs, gambling, alcohol), the treatment of their addiction should be prioritized
著者
松村 葵 建内 宏重 永井 宏達 中村 雅俊 大塚 直輝 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Aa0153, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 上肢拳上動作時の肩関節の機能的安定性のひとつに肩甲骨上方回旋における僧帽筋上部、下部線維と前鋸筋によるフォースカップル作用がある。これは僧帽筋上部、下部と前鋸筋がそれぞれ適切なタイミングでバランスよく作用することによって、スムーズな上方回旋を発生させて肩甲上腕関節の安定化を図る機能である。これらの筋が異常な順序で活動することによりフォースカップル作用が破綻し、肩甲骨の異常運動と肩関節の不安定性を高めることがこれまでに報告されている。しかし先行研究では主動作筋の筋活動の開始時点を基準として肩甲骨周囲筋の筋活動のタイミングを解析しており、実際の肩甲骨の上方回旋に対して肩甲骨周囲筋がどのようなタイミングで活動するかは明らかとなっていない。日常生活の場面では、さまざまな運動速度での上肢の拳上運動を行っている。先行研究において、拳上運動の肩甲骨運動は速度の影響を受けないと報告されている。しかし、運動速度が肩甲骨周囲筋の活動順序に与える影響については明らかになっておらず、これを明らかにすることは肩関節の運動を理解するうえで重要な情報となりうる。本研究の目的は、上肢拳上動作の運動速度の変化が肩甲骨上方回旋に対する肩甲骨周囲筋の活動順序に与える影響を検討することである。【方法】 対象は健常男性10名(平均年齢22.3±1.0歳)とした。表面筋電図測定装置(Telemyo2400, Noraxon社製)を用いて僧帽筋上部(UT)・中部(MT)・下部(LT)、前鋸筋(SA)、三角筋前部(AD)・三角筋中部(MD)の筋活動を導出した。また6自由度電磁センサー(Liberty, Polhemus社製)を肩峰と胸郭に貼付して三次元的に肩甲骨の運動学的データを測定した。動作課題は座位で両肩関節屈曲と外転を行った。測定側は利き腕側とした。運動速度は4秒で最大拳上し4秒で下制するslowと1秒で拳上し1秒で下制するfastの2条件とし、メトロノームによって規定した。各動作は5回ずつ行い、途中3回の拳上相を解析に用いた。表面筋電図と電磁センサーは同期させてデータ解析を行った。筋電図処理は50msの二乗平均平方根を求め、最大等尺性収縮時の筋活動を100%として正規化した。肩甲骨の上方回旋角度は胸郭に対する肩甲骨セグメントのオイラー角を算出することで求めた。肩甲骨上方回旋の運動開始時期は安静時の平均角度に標準偏差の3倍を加えた角度を連続して100ms以上超える時点とした。同様に筋活動開始時期は安静時平均筋活動に標準偏差の3倍を加えた値を連続して100ms以上超える時点とした。筋活動開始時期は雑音による影響を除外するために、筋電図データを確認しながら決定した。筋活動のタイミングは各筋の筋活動開始時期と肩甲骨上方回旋の運動開始時期の差を求めることで算出し、3回の平均値を解析に用いた。統計処理には各筋の筋活動開始時期と肩甲骨上方回旋の運動開始時期の差を従属変数とし、筋と運動速度を要因とする反復測定2元配置分散分析を用いた。事後検定として各筋についてのslowとfastの2条件をWilcoxon検定によって比較した。有意水準は0.05とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には研究の内容を十分に説明し同意を得た。なお本研究は本学倫理委員会の承認を得ている。【結果】 屈曲動作において、slow条件ではAD、UT、SAが肩甲骨上方回旋よりも早く活動を開始していた。一方でfast条件では全ての筋が上方回旋よりも早く活動を開始していた。分散分析の結果、筋と運動速度の間に有意な交互作用が得られ(p<0.01)、事後検定の結果、運動速度が速くなることでMTの筋活動は有意に早く開始していた。外転動作において、slowではMD、UT、MT、SAが肩甲骨上方回旋よりも早く活動を開始していた。一方でfastでは全ての筋が上方回旋よりも早く活動を開始していた。分散分析の結果、筋と運動速度の間に有意な交互作用が得られた(p<0.05)。事後検定の結果、運動速度が速くなることでMTとLTの筋活動が有意に早く開始していた。【考察】 本研究の結果、運動速度を速くすることで屈曲動作においてMTが、また外転動作においてはMTとLTの筋活動のタイミングが早くなることが明らかとなった。また運動速度を速くすると、肩甲骨の上方回旋の開始時期よりもすべての肩甲骨固定筋が早い時期に活動し始めていた。これは運動速度が肩甲骨固定筋の活動順序に影響を及ぼすことを示唆している。拳上動作の運動速度を増加させたことにより、速い上腕骨の運動に対応するためにより肩甲骨の固定性を増大させるような戦略をとることが考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果、運動速度に応じて肩甲骨固定筋に求められる筋活動が異なることが示唆され、速い速度での拳上動作では、肩甲骨の固定性を高めるために僧帽筋中部・下部の活動のタイミングに注目する必要があると考えられる。
著者
中村 友香 藤澤 憲 中西 裕子 西林 佳人 守谷 安津蓉 小河 理恵子 髙橋 真一郎 亀井 有美 高橋 眞琴 Yuka NAKAMURA Ken FUJISAWA Yuko NAKANISHI Yoshito NISHIBAYASHI Atsuyo MORIYA Rieko OGAWA Shinichiro TAKAHASHI Yumi KAMEI Makoto TAKAHASHI
出版者
鳴門教育大学地域連携センター
雑誌
鳴門教育大学学校教育研究紀要 = Bulletin of Center for Collaboration in Community Naruto University of Education (ISSN:18806864)
巻号頁・発行日
no.35, pp.29-38, 2021-02

新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の対応に際して,緊急事態宣言発出後,筆者らが関与する教育関係,福祉関係,医療関係の最前線での実践現場においては,これまでの実践内容にない対応を求められた。本論文では,筆者らが関与している教育関係,福祉関係,医療関係の最前線での実践現場についての現状と課題を把握していくことを目的とした。現状として,実践現場での感染症予防対策以外にも教材作成や労務上の対応が求められており,課題として,児童・生徒,利用者の心のケアや実践者自身のバーンアウトへの対応必要性も示唆された。
著者
奥野 ひろみ 小山 修 安部 一紀 深井 穫博 大野 秀夫 中村 修一
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.247-256, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
24

目的 カトマンズ近郊 A村をフィールドとして、人口、経済力、情報量などの増加が母親の妊娠、出産、育児という保健行動にどのような影響を及ぼしているのか、 2001年と 2006年の実態の比較から考察を行い、都市部近郊地域の母子保健の課題を明らかにする。方法 ネパール国ラリトプール郡 A村で、0~12か月児を持つ母親へ聞き取り調査を実施した。就学歴のある母親とその児群と就学歴のない母親とその児群および全体について、 2001年と 2006年のデータを比較した。結果 2006年に少数民族の母親の増加がみられた。妊婦検診、分娩、児の罹患時に利用した施設は病院が多く、この 5年間でいずれも増加傾向がみられた。また、妊婦検診費用が約 7倍、分娩費用が約 2倍となっていた。児の発育状況では、カウプ指数が 1ポイント上昇した。児の一般的な感染症への疾患の罹患は減少した。考察 海外への出稼ぎなどにより収入の増加した中間層と、地方からの移入者で経済的な課題を持つ層の 2極化がみられた。妊婦や児が病院での健康管理を積極的に受けている理由は、病院に対する安全や安心の意識に加え、中間層の増加による消費文化の意識が考えられた。経済的な課題を持つ層は、ハイリスクグループと捉えることができ、安価で身近な場所でのサポートの必要性が示唆された。育児の課題は、「栄養改善」や「感染症対策」から「栄養のバランス」などに移行していることが示唆された。