著者
佐藤 洋一郎 篠原 和大 浅井 辰夫 中村 郁郎 岡村 道雄 工楽 善通
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

日本各地の遺跡からは多量のイネ種子が出土しているが,その大半は黒化し炭化米と呼ばれている.故佐藤敏也氏が1960年代から1985年ころに収集した炭化米(これを佐藤コレクションという)を中心としてそれらの情報、とくに遺伝情報を1次資料化し,将来のデータベース化に備えようというものである.なお佐藤コレクションに含まれるサンプル総数は100万粒を超えるほど膨大なものであることがわかった.今年度はその最終年度であり、主にDNA分析に力を入れてまとめを行った.DNA分析を行った遺跡は全部で17遺跡(北海道から沖縄までの32都道府県にまたがる)で、そこから出土した計207粒の炭化米を研究に用いた.これら炭化米の多くは熱を受けて炭化したのではないことが外見上から確かめられた.DNA抽出はSSD法ないしはアルカリ法で行い,増幅はPCR法によった.その結果,古代の日本列島のイネのほとんどすべてがジャポニカであったこと,また約40%ほどの確率で熱帯ジャポニカの系統が含まれていることなどが明らかになった.熱帯ジャポニカは、場所、時期を問わず出土しており,当時の日本列島にひろく分布していたものと思われる.あわせて福岡市雀居遺跡から出土した炭化米はその220粒程度を対象に分析を行った.このうち12粒から,ジャポニカであることを示すDNA断片が増幅された.ただしそれらが熱帯ジャポニカであるか温帯ジャポニカであるかの判定はできなかった.
著者
佐伯 亮太 藤田 武彦 笹倉 みなみ 中村 義弘
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集・実践研究報告集 (ISSN:2433801X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.203-212, 2018

「団地の空室活用によるコミュニティづくりと団地再生の実践」1970 年代に建設された民間所有の5階建て階段室型団地(農住団地)の空室をシェアスペースに転用(DIY リノベーション)し活用することで,地域コミュニティづくり,団地住人の居住環境の改善,団地の入居率改善をねらった実践である。実践にあたっては,建物所有者,住人,外部協力者でのチームを立ち上げた。2017年10月現在,シェアスペースでは日常的に地域住民,団地住人が参加できるイベントが開催され,また団地の入居率も改善されるなど,一定の成果を見せている。本実践活動は,今後,急増することが予想される同様の建物の活用方法を模索するためのケーススタディである。
著者
中村 仁彦 永井 清 吉川 恒夫
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.489-498, 1986-10-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
20
被引用文献数
4 10

本論文では, 複数のロボットマニピュレータまたは多指ロボットハンドによる協調的あやつりの力学が議論される.協調的あやつりの問題は2つの局面に分けられる.1つは複数のロボット機構による合力を決定することであり, もう1つはそれらの間の内力を決定することである.合力は外力や環境拘束を受ける物体のあやつりに用いられる.内力は最大静止摩擦係数の不確さや変動に適応するために用いられる.合力の決定に対して動的協調制御方式が提案される.また, 最大静止摩擦の拘束の下で対象物に任意な加速度を発生する能力である協調的あやつり可能性を確認するための1方法が提案される.最後に, 最適内力を最大静止摩擦の拘束を満たすために必要な最小ノルムの内力と定義し, 最適解を求めるために非線形計画法が適用される.最適解は, それが存在する限り, 最大〓組の代数方程式を解くことによって必ず求められる.
著者
石川 紗希 中村 教人 高岡 早紀 山本 裕子 植松 明美 佐久間 貴裕 忍田 純哉
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.323-326, 2017

症例は77歳,女性。呼吸困難を主訴に救急外来に搬送された。来院時,心拍数111 /min,血圧70/52 mmHg,経皮的動脈血酸素飽和度91%(room air)であった。心電図で右側胸部誘導のST低下を認め,経胸壁心エコーでは右室は著明に拡大し,造影CTで両側肺動脈に広範囲の血栓を認めたため,急性広範囲型肺血栓塞栓症と診断された。抗凝固療法に並行し,肺動脈血栓摘除術の方針とした。急激な循環虚脱に備え,経皮的心肺補助装置を準備の上,肺動脈血栓摘出術を施行した。術後の呼吸循環動態は安定しており,術翌日に人工呼吸器から離脱し,カテコラミン投与を終了した。術後4日目にはICUを退室した。急性広範囲型肺血栓塞栓症では,早期診断と適切な早期治療が大きく死亡率を改善させる。救命するには呼吸循環補助を含め,各部門と連携した集学的治療が必要であり,常に外科的治療を念頭に置き対応する必要がある。
著者
荻野 弘之 佐良土 茂樹 辻 麻衣子 中村 信隆
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

(1)幸福主義の源泉であるアリストテレス倫理学研究の進展。複数の倫理学書を総攬することで「包括主義」対「卓越主義」の論争に対して調停的な読解の可能性を探った。(2)ヘレニズム時代とローマ期ストア哲学の幸福論の読み直し、特にエピクテトスの現代的読解の可能性を開拓した。(3)1980年代以降の徳倫理学の隆盛は哲学史的研究の深化と連動しているが、コーチングを哲学的に基礎づける新しい試みを開拓しつつある。(4)「人生の意味」を問題とする倫理学の傾向に対して、幸福の概念を幸福感という主観的要素に還元しようとする前提の妥当性を検証した。(5)これは昨今経済学で言及される「幸福度」の指標の批判に通じる。
著者
長尾 真 中村 裕一 小川 英光 安西 祐一郎 豊田 順一 國井 利泰 今井 四郎 堂下 修司
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

感性情報は情報科学でこれまで取り扱ってきた情報に比べ、はるかに微妙なものであり、また主観的、多義的、状況依存的で曖昧なものである。従って、情報科学的なアプローチと心理学、認知科学的アプローチの両者の共同により、この微妙で曖昧な情報の客観的な記述と抽出、感性情報のモデリングの研究を行った。得られた成果は次のようである。多くの会合を持ち、討論を行なって、感性情報の概念を明らかにした。 (全研究分担者)変換構造説に基づいて感性的情報の認知機構を明らかにした。 (今井) 画像パターンの学習汎化能力に感性的情報がどのようにかかわるのかの学習モデルを作成した。 (小川) 官能検査法の感性の計測に利用する方法を明確化した。 (増山) 新しい人間の視覚現象を発見し、そのメカニズムの研究を行い、画像の認知における感性の働きを究明した。 (江島) 微妙な曲率をもった曲面の見え方の画像解析の研究を行い、三次元世界と二次元世界との対応について究明した。 (長尾、中村) 雑音の聞こえ方についての実験を行ない、人間の感性にかかわる概念との関係を明かにした。 (難波) 音声の微妙な特徴の抽出の研究を行ない、同様な概念との関係をを明かにした。 (河原) 人間の表情変化の計測をし、その位相情報を取り出し、人間の感情との関係を明かにした。 (国井) ロボットのセンサーフュージョンと自律性についての実験を行ない、感性的行動のできるロボットの基礎を与えた。 (安西) ソフトウェアの使い易さ、使いにくさを感性的立場から評価した。 (豊田) テキスト・リーディングにおける人間の眼球運動の観察を行ない、視覚の感性的側面が果たす役割、効果を明かにした。 (苧阪)
著者
青木 誠 村田 将人 金子 稔 澤田 悠輔 神戸 将彦 萩原 周一 中村 卓郎 大山 良雄 田村 遵一 大嶋 清宏
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.699-703, 2014-10-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
15

症例は60歳代,男性。近医定期受診日に全身状態問題なく,肺炎球菌ワクチンを接種された。同日夜間より39度台の高熱が出現した。2日後には両側性の難聴も併発し,近医を再受診した。白血球数の著増を認め,当院を紹介受診した。ワクチン接種部の蜂窩織炎による敗血症と考え抗菌化学療法を開始した。その後全身状態に改善を認めたが,蜂窩織炎以外に明らかな感染源は不明であった。肺炎球菌ワクチンによる重篤な全身反応,敗血症様反応は本邦でも数例報告されているが,難聴を呈した例の報告はない。今後,肺炎球菌ワクチン接種に関わる医療従事者は接種により重篤な副作用を生じうる可能性を十分に理解する必要がある。
著者
大井 将徳 高橋 修 中村 嘉隆
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.909-910, 2015-03-17

近年,自転車が関与する事故が問題視されており,交通事故に遭った自転車運転者の多くが違反運転中に事故に遭っている.本研究ではモーションセンサを用いた自転車違反運転検知システムを提案する.モーションセンサはKinectを用い,スケルトン・トラッキングと深度情報によって違反運転の検出及び違反運転の種類の判別を行う.検出する違反運転の種類は二人乗り,自転車スマホ,傘さし運転,手放し運転,路側帯での右側走行とする.本研究は基礎実験として,屋内かつ障害物のない環境下で Kinect が検出可能な自転車の速度の調査と Kinect の配置場所による違反運転検出精度の評価を行い,それらから得られたKinectの最適な配置場所でシステム評価を行う.
著者
島谷 二郎 中村 泰
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2018-HCI-176, no.5, pp.1-6, 2018-01-15

空耳は,歌詞 ・ 言葉が別の言葉に聞こえる現象であり,日本ではユーモア,娯楽として親しまれている.人手による空耳文生成において使用する単語の種類を限定することでユーモアを向上させる手法がある.空耳の自動生成に関する研究は過去に行われてきたが,限定された単語のみを用いる状況は想定されてこなかった.使用できる単語の種類が限られる場合,日本語文を適当に区切り各パートに対する類音語を当てはめるという手法では,精度の高い空耳文の生成することが難しいという問題がある.そこで,動的計画法により文章の区切り方を含めて最適化することにより,音韻がより元の文章に近い空耳文を自動生成するシステムを開発した.Web アンケートを通じた評価により,文節で区切った場合よりも動的計画法を用いて最適化した場合において,音韻の類似性が主観的に向上することを示唆する結果を得た.
著者
佐藤 純 中村 利廣 菅原 伸一 高橋 春男 佐藤 和郎
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山.第2集 (ISSN:24330590)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.19-39, 1989-04-10 (Released:2018-01-15)

Chemical analysis for major and minor elements was performed on the pumice fall deposit, essential blocks from the two pyroclastic flow deposits and the lava flow, erupted in succession during the 1783 (Temmei) volcanic activity on Mt. Asama. The pumice samples representing a vertical column exhibit no remarkable trend of chemical variation with time. The analytical results for the lava flow show small spatial variation in K, Mg, Sr and some other elements. Further inspection of the data for all the samples indicates that Fe, Na, Ti, Sr, Cu, Co and Ni tend to increase with time throughout the whole eruptive sequence. A plot of Sr/(SiO2 + K2O) vs. (Fe2O*3+K2O)/(SiO2+K2O) illustrates that the erupting magma became progressively more mafic and more enriched in Sr during the activity. This type of plot, combined with the spatial distribution of certain elements superimposed on the distribution pattern of the lava flow, reveals that, during the lava eruption, the composition of erupting magma still shifted to slightly mafic.
著者
中村 俊夫 宇田津 徹朗 田崎 博之 外山 秀一 杉山 真二 松田 隆二 Nakamura Toshio Udatsu Tetsuro Tazaki Hiroyuki Toyama Shuichi Sugiyama Shinji Matsuda Ryuji
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.24, pp.123-132, 2013-03

To measure 14C age directly on plant opal itself with accelerator mass spectrometry (AMS), we have extracted carbon contained in plant-opal samples separated from modern lining plants as well as ancient soil deposits at archeological sites, in particular, rice field remains. Carbon dioxide was separated and collected from plant-opal samples by using a radio-frequency furnace (HF-1O, Leco Corporation) which is used successfully to extract carbon in the metal iron. Carbon content of plant opal is not clearly known, and yields of CO2 from p1ant-opal samples were very low (<0.1%) in our experiment Nagoya University AMS 14C dating laboratory. We have conducted CO2 extraction for 15 samples, and we can get enough CO2 from only three samples to perform 14C dating even with AMS. The obtained 14C ages were a few thousand years older than expectations on the basis of archeological aspects. Even more, plant-opal samples extracted from modern living plants showed 14C ages as old as 3-6 ka BP. This implies that carbon in plant opal is not derived from carbon incorporated into the plants by photosynthesis. More studies are required to apply routinely 14C dating of plant-opal material.名古屋大学年代測定総合研究センターシンポジウム報告
著者
中村 広一
出版者
一般社団法人 日本有病者歯科医療学会
雑誌
有病者歯科医療 (ISSN:09188150)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-6, 1995-08-31 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4

本論文においては, 61例の精神疾患と神経疾患患者からなる患者群, および17例の健常者からなる健常群という二つの群を対象として, 上下床義歯の装着所要時間の計測という方法で義歯の取扱い能力を評価した。患者群では脳血管障害1例を除く全例が調査時点ですでに床義歯の装用経験者であった。各群はさらに2つの群に下位分類された: 1群は上下に全部床義歯を装用中のもの, 2群は部分床義歯と部分床ないし全部床義歯を装用中のもの(表1)。患者群の疾患には, 精神分裂病(21例), パーキンソン病(9例), 脳血管障害(8例), アルコール依存症(7例), 気分障害(7例)およびその他が含まれた(表2)。結果は以下のごとくであった(図1)。1. 健常群の対象は3秒から11秒の間に義歯の装着を行い, その所要時間の平均は6.9±2.0秒であった。これに対して患者群の対象は, 3秒から356秒を超えるまでの広い範囲の散らばりを呈した。2.疾患が義歯取扱い能力に及ぼす影響を評価する目的で, 1, 2群の各々について装着所要時間を健常群と患者群との問で比較した。1群においては,患者群の平均所要時間は16.7±15.6秒と, 健常群の平均7.0±1.0秒に対して長かった。その差は有意(P<0.05)ではなかった。2群においては, 患者群の平均は, 23.7±17.9秒と健常群の6.9±2.4秒に対して有意(P<0.05)に長かった。3. 床義歯の形態が所要時間に及ぼす影響を明らかにするために, 健常群と患者群の各々について装着所要時間を1, 2群間で比較した。健常群においては, 両群間に差がなかった。患者群においては, 2群の平均所要時間が23.7±17.9秒と1群の16.7±15.6秒よりも長かったが, その差は有意(P<0.05)ではなかった。4. 義歯の装着所要時間が60秒を超えた5例の疾患には, パーキンソン病, 脳血管障害, 筋ジストロフィー, アルコール依存症, および精神分裂病の各1例が含まれた。これらの症例は義歯装着という行為を成し遂げるに必須のさまざまな要因を示唆した。
著者
中村 広一
出版者
Japanese Society of Psychosomatic Dentistry
雑誌
日本歯科心身医学会雑誌 (ISSN:09136681)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.185-189, 2000-12-25 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12

A 26-year-old female patient with schizophrenia was referred to us by her psychiatrist, complaining of the breakage of half of her bridge in the 5+5 region. Denture treatment was suitable for this case, in view of the long span of missing tooth in the 3+3 region, the condition of the abutment tooth, her mental problem and financial standing. She persisted, however, in demanding the bridge and never accepted denture treatment. All efforts to make her understand the suitability of the treatment proved useless due to the failure of mutual understanding. Her demands for the prosthesis were often unreasonable and bizarre.The author gave her time to change her mind while performing other tooth treatment. Three years and 7 months after her first visit, her partial denture was completed. At first, she was not able to accept it because of her youth and for aesthetic reasons. Often, she revealed unreasonable and delusional reactions to her denture. However, she came to accept it a little more day by day and now wears it normally, although it remains unclear whether she is fully reconciled to its use in her heart.The greater part of the difficulty in managing this patient was due to the lack of mutual undertanding and her bizarre thoughts and behavior caused by her schizophrenia. On the basis of this case, it is suggested that dentists treating such schizophrenic patients should try to 1) recognize the patients' mental pathology but not become involved in that, 2) understand the patient's desire for a certain treatment but reject it firmly if it is unreasonable, 3) sustain the dentist-patient relationship with patience, 4) wait for improvement in the patient's delusions and behavior regarding dental treatment, and 5) bring the treatment to the appropriate goal by these means.
著者
中村 広一
出版者
Japanese Society of Psychosomatic Dentistry
雑誌
日本歯科心身医学会雑誌 (ISSN:09136681)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.32-36, 1988-12-25 (Released:2011-09-20)
参考文献数
29

Danger of overlooking organic diseases and difficulty of a dentist's situation in treatment under a diagnosis of masked depression are discussed in this article. We propose the utility of introducing the concept of psychogenic overlay into the diagnosis and treatment of dental patients suspected to be depressive.