著者
大塚 静英 及川 哲郎 望月 良子 早崎 知幸 小曽戸 洋 伊藤 剛 村主 明彦 花輪 壽彦
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.93-97, 2009-01-20
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

難治性の顔面の皮疹に葛根紅花湯が著効した3症例を経験したので報告する。症例1は39歳男性。20歳頃より鼻に限局して丘疹が出現し,以後,塩酸ミノサイクリンの内服にて寛解,増悪を繰り返し,いわゆる酒さ鼻となったため,2007年5月に当研究所を受診した。葛根紅花湯(大黄0.3g)を服用したところ,3週間後,鼻全体の発赤が軽減し,丘疹も減少,額・頬部の発赤も消失した。症例2は,56歳女性。鼻,口周囲を中心としたそう痒感を伴う皮疹にて2006年10月に当研究所を受診した。ステロイド外用剤にて軽減するものの中止すると増悪を繰り返していたことより,酒さ様皮膚炎と診断した。葛根紅花湯(甘草0.8g,去大黄)を服用し,ステロイド外用剤は同時に中止したところ,3週間後,全体的に紅斑は鼻と口周囲のみとなり,8週間後には症状はほぼ消失した。症例3は,26歳女性。鼻口唇部の紅斑,アトピー性皮膚炎にて当研究所を受診した。黄連解毒湯にて全体的には症状が軽減するも,鼻口唇部の紅斑は不変であったため,葛根紅花湯(大黄1g)に転方したところ,2カ月後,鼻口唇部の紅斑は消失し,6カ月後には鼻口唇部の色素沈着がわずかに残るのみとなった。葛根紅花湯は,従来,いわゆる酒さ鼻に用いられてきたが,鼻だけでなく,顔面・鼻周囲の皮疹にも応用が可能であると考えられた。
著者
伊藤 剛
出版者
日本リアルオプション学会
雑誌
リアルオプションと戦略 (ISSN:21896585)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.17-25, 2017 (Released:2019-01-31)

破壊的イノベーションと、電力事業のビジネスモデル変革についてお話をさせていただきます。 電力システム改革によって、色々な企業が電気の小売業へ参入できるようになり、総括原価方式による料金認可制が廃止され、卸電力市場における流動性が増大するようになりました。その結果、新しいリスクが発生します。例えば、卸市場や小売市場において取引相手の倒産等により電気代を回収できないリスクであるとか、燃料価格や卸電力価格の変動により、当初期待していたリターンが得られなくなるリスクなどです。こうしたカウンターパーティリスクや価格リスクについては、電力会社をはじめ、色々な企業、機関が議論を深めてきました。ところが、最近、こうした“伝統的な”リスクとは異質の新しいリスクが登場してきており、今日は、この新しいリスク、非連続的な業界構造の変化に伴うリスクのお話させていただきます。レイトン・クリステンセン教授が提唱した「破壊的イノベーション」や「イノベーション・ジレンマ」は大変示唆に富む考察ですが、この論理は、情報通信業界のような技術革新のサイクルが短い業界に適用されるものであって、電力業界は、あのようなダイナミックな産業の構造変革とは無縁だと思っていました。それが実は、この電力業界でも、破壊的イノベーションが起こり得て、ドラスティックな変革が業界大で起こりうると思うに至っております。
著者
三木 文雄 生野 善康 INOUE Eiji 村田 哲人 谷澤 伸一 坂元 一夫 田原 旭 斎藤 玲 富沢 磨須美 平賀 洋明 菊地 弘毅 山本 朝子 武部 和夫 中村 光男 宮沢 正 田村 豊一 遠藤 勝美 米田 政志 井戸 康夫 上原 修 岡本 勝博 相楽 衛男 滝島 任 井田 士朗 今野 淳 大泉 耕太郎 青沼 清一 渡辺 彰 佐藤 和男 林 泉 勝 正孝 奥井 津二 河合 美枝子 福井 俊夫 荒川 正昭 和田 光一 森本 隆夫 蒲沢 知子 武田 元 関根 理 薄田 芳丸 青木 信樹 宮原 正 斎藤 篤 嶋田 甚五郎 柴 孝也 池本 秀雄 渡辺 一功 小林 宏行 高村 研二 吉田 雅彦 真下 啓明 山根 至二 富 俊明 可部 順三郎 石橋 弘義 工藤 宏一郎 太田 健 谷本 普一 中谷 龍王 吉村 邦彦 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中田 紘一郎 渡辺 健太郎 小山 優 飯島 福生 稲松 孝思 浦山 京子 東 冬彦 船津 雄三 藤森 一平 小林 芳夫 安達 正則 深谷 一太 大久保 隆男 伊藤 章 松本 裕 鈴木 淳一 吉池 保博 綿貫 裕司 小田切 繁樹 千場 純 鈴木 周雄 室橋 光宇 福田 勉 木内 充世 芦刈 靖彦 下方 薫 吉井 才司 高納 修 酒井 秀造 西脇 敬祐 竹浦 茂樹 岸本 広次 佐竹 辰夫 高木 健三 山木 健市 笹本 基秀 佐々木 智康 武内 俊彦 加藤 政仁 加藤 錠一 伊藤 剛 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 和英 足立 暁 大山 馨 鈴木 国功 大谷 信夫 早瀬 満 久世 文幸 辻野 弘之 稲葉 宣雄 池田 宣昭 松原 恒雄 牛田 伸一 網谷 良一 中西 通泰 大久保 滉 上田 良弘 成田 亘啓 澤木 政好 三笠 桂一 安永 幸二郎 米津 精文 飯田 夕 榊原 嘉彦 螺良 英郎 濱田 朝夫 福山 興一 福岡 正博 伊藤 正己 平尾 文男 小松 孝 前川 暢夫 西山 秀樹 鈴木 雄二郎 堀川 禎夫 田村 正和 副島 林造 二木 芳人 安達 倫文 中川 義久 角 優 栗村 統 佐々木 英夫 福原 弘文 森本 忠雄 澤江 義郎 岡田 薫 熊谷 幸雄 重松 信昭 相沢 久道 瀧井 昌英 大堂 孝文 品川 知明 原 耕平 斎藤 厚 広田 正毅 山口 恵三 河野 茂 古賀 宏延 渡辺 講一 藤田 紀代 植田 保子 河野 浩太 松本 慶蔵 永武 毅 力富 直人 那須 勝 後藤 純 後藤 陽一郎 重野 秀昭 田代 隆良
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.914-943, 1987
被引用文献数
2

Clavulanic acid (以下CVAと略す) とticarcillin (以下TIPCと略す) の1: 15の配合剤, BRL28500 (以下BRLと略す) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性をpiperacillin (以下PIPCと略す) を対照薬剤として, welI-controlled studyひこより比較検討した.<BR>感染症状明確な15歳以上の慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) およびその急性増悪, 細菌性肺炎, 肺化膿症を対象とし, BRLは1回1.6g (TIPC1.5g+CVA0.1g) 宛, PIPCは1回2.0g宛, いずれも1日2回, 原則として14日間点滴静注により投与し, 臨床効果, 症状改善度, 細菌学的効果, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性について両薬剤投与群間で比較を行い, 以下の成績を得た.<BR>1. 薬剤投与314例 (BRL投与161例, PIPC投与153例) 中, 45例を除外した269例 (BRL投与138例, PIPC投与131例) について有効性の解析を行い, 副作用は293例 (BRL投与148例, PIPC投与145例) について, 臨床検査値異常化は286例 (BRL投与141例, PIPC投与145例) について解析を実施した.<BR>2. 小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではBRL投与群78.8%, PIPC投与群79.4%, 肺炎・肺化膿症症例ではBRL投与群 (79例) 82.1%, PIPC投与群 (73例) 79.5%, 慢性気道感染症症例ではBRL投与群 (59例) 74.6%, PIPC投与群 (58例) 79.3%の有効率で, いずれも両薬剤投与群間に有意差を認めなかった.<BR>3. 症状改善度は, 肺炎・肺化膿症症例では赤沈値の14日後の改善度に関してPIPC投与群よりBRL投与群がすぐれ, 慢性気道感染症症例では胸部ラ音, 白血球数, CRPの3日後の改善度に関してBRL投与群よりPIPC投与群がすぐれ, それぞれ両薬剤投与群間に有意差が認められた.<BR>4. 細菌学的効果はBRL投与群68例, PIPC投与群57例について検討を実施し, 全体の除菌率はBRL投与群75.0%, PIPC投与群71.9%と両薬剤投与群間に有意差は認められないが, Klebsiella spp. 感染症においては, BRL投与群の除菌率87.5%, PIPC投与群の除菌率16.7%と両薬剤群間に有意差が認められた. また, 起炎菌のPIPCに対する感受性をMIC50μg/ml以上と50μg/ml未満に層別すると, MIC50μg/ml未満の感性菌感染例ではBRL投与群の除菌率69.6%に対してPIPC投与群の除菌率94.7%とPIPCがすぐれる傾向がみられ, 一方, MIC50μg/ml以上の耐性菌感染例ではPIPC投与群の除菌率12.5%に対して, BRL投与群の除菌率は66.7%と高く, 両薬剤間に有意差が認められた.<BR>5. 副作用解析対象293例中, 何らかの自他覚的副作用の出現例はBRL投与群5例, PIPC投与群11例で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>6. 臨床検査値異常化解析対象286例中, 何らかの異常化が認められた症例は, BRL投与141例中45例 (31.9%), PIPC投与145例中28例 (19.3%) で, 両薬剤投与群間に有意差が認められた. 臨床検査項目別にみると, GPT上昇がBRL投与140例中26例 (18.6%), PIPC投与140例中14例 (10.0%), BUN上昇がBRL投与128例中0, PIPC投与127例中4例 (3.1%) と, それぞれ両薬剤投与群間での異常化率の差に有意傾向が認められた.<BR>7. 有効性と安全性を勘案して判定した有用性は, 全症例ではBRL投与群の有用率 (極めて有用+有用) 76.3%, PIPC投与群の有用率の74.8%, 肺炎・肺化膿症症例における有用率はBRL投与群81.0%, PIPC投与群75.3%, 慢性気道感染症症例における有用率はBRL投与群70.0%, PIPC投与群74.1%と, いずれも両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>以上の成績より, BRL1日3.2gの投与はPIPC1日4gの投与と略同等の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を示し, とくにβ-lactamase産生菌感染症に対しても有効性を示すことが確認され, BRLが呼吸器感染症の治療上有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
伊藤 剛
出版者
JAPAN ASSOCIATION OF INTERNATIONAL RELATIONS
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
no.145, pp.141-154,L15, 2006

This paper addresses the changing nature of power (or influence) in the study of Chinese politics and diplomacy, and seeks to clarify the extent to which theoretical approaches in academia can be useful for a fuller understanding of China.<br>The discussion has three parts. The first deals with the part of foreign policy, and argues that China's application of the "New Conception of Security" or "Peaceful Rise" has created more stable relationships not only with the United States but with neighboring countries. More specifically, in order to sustain economic development since the 1990's, the creation and the development of "soft power" has produced more benefits to China's interests.<br>The second part addresses China's domestic politics. Since the 1949 revolution, the Chinese Communist Party has maintained the "party state, " and even after the economic growth started in the early 1990's, the CCP, with its society so far pluralized, has sought to keep its power under control. The emergence of various societal groups, which leads to the application of "corporatism, " will be addressed.<br>The third part seeks to combine both arguments of foreign policy and domestic politics. It argues that, in the face of the rapidly changing politics and society within China that has also affected its foreign policy, various theoretical frameworks such as "second image" and "reversed second-image" could be useful. The Chinese government, trying to maintain its power not only over its society but also vis-à-vis other countries, has created more complicated means to maintain its authority and legitimacy.<br>The paper concludes by slightly touching on the brief history of Japan's study on Chinese studies. There, more positive methods and approaches toward the "real" Chinese politics and diplomacy should be examined.
著者
松田 裕子 大塚 理恵子 伊藤 剛 小川 郁夫 佐藤 豊 瀧原 道東 加治 弘 迫田 寛人 竹本 寛 松永 義則 森 昭夫 山岡 義生 井上 潔
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.2287-2292, 1985-11-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
6
被引用文献数
2

胃内視鏡検査施行時に1,129例の胃液を採取してpH値を測定し,内視鏡所見との関係を検討した. 内視鏡的に無所見であった353例におけるpH値の分布は,年齢が高くなるにつれて高pH領域へと偏り,加齢による影響を示したが,性別による差異は認められなかった. 胃潰瘍225例のpH値分布は無所見群のpH値分布と類似していたが,十二指腸潰瘍160例は無所見群や胃潰瘍群よりも低pH値領域に偏った分布を示し,この傾向は高齢者においてなお著明であった. 胃潰瘍および十二指腸潰瘍において,病変が活動期である時は胃液はより低pH値を,病変が瘢痕期である時はより高pH値を示したが,十二指腸潰瘍では瘢痕期においてもなお無所見群よりも明らかに低pH値にとどまった. 本法は被検者に苦痛を与えることなく,多数例に反復施行が可能であり,胃の形態と機能の両面から同時に観察することができ,臨床上有用であると考えられた.
著者
伊藤 剛志 清見 礼 今堀 慎治 上原 隆平
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告アルゴリズム(AL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.9, pp.1-8, 2009-01-23

本稿では 「じゃばら折り」 に関する新しい折り紙の問題を提案する.本問題では与えられた n 個の山折り/谷折りの割り当てに対して,紙をその割り当てに従って等間隔に折ることを目的とする.扱う紙のモデルは以下の通り. (1) 紙は厚み 0 で重ねて一度に複数枚折ることができる. (2) それぞれの折り状態は平坦である. (3) それぞれの折り目はそこで最後に折られたときの折り状態を記憶する. (4) 紙は n 箇所の折り目を除いて剛体である.このモデルにおいて,与えられた割り当てを実現する効率の良い折り操作を見つけることがこの問題の目的である.一般の山谷割り当てに対する問題を単位長折り問題と呼び,山谷割り当てが 「MV MV MV ...」という形をしているときは特にじゃばら折り問題と呼ぶことにする.アルゴリズムの複雑さは折りの回数によって測り,折りを開く回数は無視する.この問題には自明な上界、と自明な下界 log (n + 1) が存在する.本稿ではまず以下の非自明な 2 つの上界を示す. (a) どんな山谷割り当てでも高々 [n/2] + [log (n+1)] 1 回の折りで実現することができる. (b) 任意の ∊>0 に対してじゃばら折りは 0 (n∊) 回の折りで実現することができる.次に以下の非自明な下界を示す. (c) ほとんどすべての山谷割り当ては Ω (n/log n) 回折らなければ作ることができない結果 (b) と (c) より,じゃばら折り問題は単位長折り問題の中では簡単な部類に入ることがわかった.We introduce a new origami problem about pleats foldings. For a given assignment of n creases of mountains and valleys, we make a strip of paper well-creased according to the assignment at regular intervals. We assume that (1) paper has 0 thickness and some layers beneath a crease can be folded simultaneously, (2) each folded state is flat, (3) each crease remembers its last folded state made at the crease, and (4) the paper is rigid except at the n given creases. On this model, we aim to find efficient ways of folding a given mountain-valley assignment. We call this problem unit folding problem for general patterns, and pleats folding problem when the mountain-valley assignment is "MVMVMV…" The complexity is measured by the number of foldings and the cost of unfoldings is ignored. Trivially, we have an upper bound n and a lower bound log [(n+1).] We first give some nontrivial upper bounds: (a) any mountain-valley assignment can be made by [n / 2 ] + [log (n+1) ] foldings, and (b) a pleats folding can be made by O (n∊) foldings for any ∊>0. Next, we also give a nontrivial lower bound: (c) almost all mountain-valley assignments require Ω(log n / n) foldings. The results (b) and (c) imply that a pleats folding is easy in the unit folding problem.
著者
牛山 久仁彦 伊藤 剛 幸田 雅治 田村 達久
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大規模災害が頻発する日本において、自治体とそれを支援する自衛隊の連携がどのように行われるのかは、極めて重要な課題である。とくに、東日本大震災では、自衛隊の迅速かつ適切な災害派遣や自治体との緊密な連携・協力のあり方が問われることとなった。本研究では、自衛隊の災害派遣をめぐる法制度や諸外国の現状との比較検討を行うと共に、今後も予想される大規模災害に際し、どのような備えが必要なのかを研究したものである。
著者
伊藤 剛
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

昨年度得た多数の近縁ゲノム間での自然選択強度のデータを整理し、特に水平移行の有無に関して着目しながら、機能と自然選択による進化の関係を明らかにした。これまでの研究で、水平移行した遺伝子では自然選択の緩和が生じている可能性(=同義置換数に対して非同義置換数が比較的多い)が示されていた。一方で、遺伝子の機能に関する考察から、量的に偏ってより多く水平移行している遺伝子のうち、細胞表面構造に関係するタンパク質の遺伝子などでは正の自然選択が示唆された。しかし、そのほかの大量移行の例では、例えば遺伝子発現の制御に関与する遺伝子のように、分子レベルでの生命活動に大きな変化をもたらす可能性は考えられるものの、水平移行と正の自然選択の関係は必ずしも明確ではない。そこで、近縁種(株)間のオルソログにおいて、水平移行した遺伝子とそうでない内在性のものとで、フレームシフトによるタンパクコード遺伝子の読み枠の破壊があるかどうかを比較した。すると、例えば大腸菌K-12株とO157の間では、内在性遺伝子では1.0%(34/3291)でフレームシフトによる偽遺伝子化が見られたが、一方で水平移行したものでは6.9%(23/332)と明らかに水平移行での遺伝子破壊が多かった。これは、水平移行したものではむしろ大部分で自然選択が緩和されているという考え方を指示するものである。本研究により、水平遺伝子移行によって大きな生命多様性がもたらされるが、自然選択という意味では重要度の高いものは小数に限られることが明らかになった。本研究に関しては一部を論文化するとともに国内外の学会等でも発表しており、また全ての結果をデータベース化し可視化するプログラムも作成したので、誰でも容易に大量解析の全情報を活用できるようになっている。
著者
藤田 直晴 小畑 精和 伊藤 剛 虎岩 直子 市川 宏雄 広松 悟 輿水 肇
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

カナダの多文化政策に相応する複合的・多元的な観点から、カナダの5つの主要都市を中心に調査を行い、学術的にも都市地理学、都市社会学、都市政策、都市政治学、環境政策、文化と文学といったマルチ・ディシプリナリーな観点から、カナダの多文化政策に関する研究を行った。ヴァンクーヴァー、カルガリー、トロント、オタワ、モントリオールには、多くの移民が集中することから、社会的不平等や地域間格差を是正するための多文化政策は重要となる。このカナダの豊かな民族的多様性は、世界に広がる豊かなネットワーク資源となり、カナダの「強み」と「楽しみ」へと直結している。しかし、国際競争力が上昇するにためは、カナダの多文化社会が抱える「弱み」や「苦しみ」にも目を向ける必要があるため、長所・短所双方の観点から考察を加えた。本研究課題の成果に関しては、図書として2011年度中の出版に向けて準備中である。
著者
林 嘉光 浅野 高行 伊藤 剛 桐山 昌伸 丹羽 宏 正岡 昭
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.466-471, 1994
被引用文献数
3

症例は59歳, 男性。1993年8月より息が吐きにくくなり, 10月下旬には喘鳴, 呼吸困難が出現し, 入院となった。当初, 気管支喘息と診断したが, 気管に痰が詰まった感じと呼気性の呼吸困難が続くため, 気管断層撮影, 胸部CT撮影を実施し, 気管下部の分岐部直上に2cm大の有茎性腫瘤を認めた。可及的な気道確保の目的で, 気管支鏡下高周波スネアで腫瘍頭部を切除した。病理組織診断は神経鞘腫と判明し, 残存する腫瘍に対しては1994年1月11日に根治的手術を行った。手術時, 気管内腔は腫瘍により分岐部より口側へ1から4気管軟骨輪にわたって狭小化し, また膜様部外側へも隆起していた。しかし, 食道を含む周囲組織への浸潤はなく, 腫瘍を含む4気管輪を管状切除し, 端々吻合を行った。経過も順調で術後19日で退院した。