著者
大沼 由香 伊藤 博義
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.35-46, 2003-03-31

介護福祉士は、高校卒から4年生大学卒までの養成施設や国家試験による多種多様な資格取得方法が認められているが、年間4〜5万人が有資格者となり、これまでの登録者数は約30万人である。このように多様な介護福祉士の専門性を一定水準に確保するためには、資質の向上が必須課題であるが、介護職種の低賃金・不安定雇用など、福祉労働者の待遇問題も大きな課題となっている。本研究の目的は、専門学校出身の若い介護福祉士の待遇と専門職性の満足度等を記名・記述調査し、問題点を整理し、課題の解決に向けて考察することである。調査結果から、専門職性と就労実態の満足度は相関関係にあることが推察される。なお、資質向上の課題として、1.介護福祉士自身の課題,2.職場で解決すべき課題,3.社会福祉事業自体の課題についても、若干の提言を行う。
著者
濱中 康治 志村 圭太 梅村 悟 永井 洋 伊藤 博子 中島 啓介 長崎 稔 木村 鷹介 中村 拓成 田中 尚喜 柏口 新二 岡田 知佐子 紙谷 武 石崎 一穂 片野 裕司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101523-48101523, 2013

【はじめに、目的】成長期における野球肘においては、発育途上にある骨端骨軟骨の障害が多いことに特徴がある。なかでも離断性骨軟骨炎とも呼ばれる、上腕骨小頭骨軟骨障害(以下OCD)は進行すると治療に難渋するため早期発見が望まれる。OCDの早期発見を目的として、1981年から徳島県で実施されている野球肘検診をはじめ、全国各地で野球肘検診活動の取り組みが行われ、その活動は広まり始めている。その多くは、各地の野球教室や野球大会と合同で開催され、野球教室や大会の現場での検診が実施されているが、大規模な検診になると、より多くの機材やマンパワーが必要となるため、都市部での野球肘検診の実施には高いハードルがある。当院では、都市部における野球肘検診活動として、2010年より医療機関内における野球肘検診を実施している。OCD発症予防のための啓発活動と野球肘検診活動の更なる拡大を目的として、その取り組みの紹介とこれまでの検診結果を報告する。【検診方法】当院では1ヵ月に1度、平日の午後6時から、スポーツ健康医学実践センター内で野球肘検診を実施している。野球肘検診については、その目的と機能から保険外診療とし、1件の受診料は2500円に設定している。対象はOCDの好発年齢・保存的加療の適応年齢を考慮し、原則として10~12歳の小学生としている。理学療法士(以下PT)による理学所見評価、臨床検査技師による超音波画像検査(以下エコー検査)、医師による総合評価を実施する。 理学所見評価については、肘関節屈曲・伸展の他動運動時の疼痛と可動域制限の有無、内側上顆・腕橈関節・肘頭の圧痛、外反ストレステストでの疼痛、手関節屈筋群(上腕骨内側上顆に起始するもの)の筋委縮、橈骨頭の肥大、尺骨神経溝部での尺骨神経亜脱臼の有無を評価し、その他、肘関節以外にも利用者が疼痛を訴えた箇所に必要な所見を評価している。エコー検査では前方・後方から上腕骨小頭の不整像の有無とその程度を評価し、それらの結果から、医師による総合評価で二次検診の必要性を判断し、二次検診の必要ありと判断された利用者には、医師が紹介状を作成し、医療機関での精査を勧めている。【倫理的配慮、説明と同意】今回の報告におけるすべての調査は電子カルテを用いて後方視的に行っており、対象者に有害事象は生じなかった。また匿名性の保持と個人情報流出には十分留意した。【検診結果】2010年6月から2012年11月までに、延べ119名の利用があった。年齢は10.5±1.1才だった。理学所見評価での異常所見は肘関節の他動運動時痛3名(2.3%)、可動域制限39名(32.8%)、内側上顆の圧痛10名(8.4%)、肘頭の圧痛1名(0.8%)、腕橈関節部の圧痛0名(0%)、外反ストレステストでの内側部痛20名(16.8%)、手関節屈筋群の筋委縮2名(1.7%)、橈骨頭の肥大4名(3.4%)、尺骨神経溝部での尺骨神経亜脱臼3名(2.5%)に認められた。エコー検査での異常所見を認めたものが6名(5.0%)であった。医師の総合評価によって二次検診の必要ありと判断されたのは27名(22.7%)で、肘内側部障害の疑い18名、OCD疑い6名、上腕骨近位骨端線障害1名、体幹・下肢の骨軟骨障害疑い4名だった。二次検診の必要ありと判断された利用者27名のうち、当院でのフォローアップを実施したものは18名(66.7%)であった。【考察】OCD疑いと判断された6名のうち、3名が肘内側部に圧痛・外反ストレス痛を認めた。1名は肘関節の伸展制限のみを認めたが、2名についてはエコー所見以外、全ての所見で異常は認められなかった。一般的にOCDは投球時の肘外反ストレスによる肘外側部への圧迫・剪断力によって生じ、外側部に疼痛が出現するとされているが、当院の野球肘検診でOCDが発見された6名はいずれも肘外側部の理学所見は認めなかった。このことは早期のOCDは理学所見に乏しく、OCDの早期発見にはエコー検査が有用であることを示すものである。また、当院でフォローアップを実施したOCD疑い5名の中で、定期的な野球肘検診の必要性を示唆する1例を紹介する。初回の検診時(10歳10ヶ月時)にはエコー検査を含めた全ての所見で異常を認めなかったが、その7ヶ月後(11歳5ヶ月時)の検診で外反ストレステストでの内側部痛があり、エコー検査で初期のOCDが発見された。その後、投球動作を禁止することで約7ヶ月後に良好な骨化が確認され、競技復帰が可能となった。この経験から、当院では10歳前後のOCD好発年代には定期的な検診の必要性を啓発し、6ヶ月に1度の検診を勧めている。【理学療法学研究としての意義】医療機関における野球肘検診を紹介することで、野球肘検診を実施できていない地域にも野球肘検診を広め、PTがその活動に参加することにより、より多くの野球プレーヤーを障害から守ることが可能になる。
著者
植月 惠一郎 松田 美作子 山本 真司 伊藤 博明 木村 三郎 出羽 尚
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近代初期英国文学とエンブレムの関係を明らかにした。シェイクスピア劇や十七世紀英詩を対象に、キリスト教的起源の聖なる図像、モットー、警句と多神教の異教や土着の習俗起源の世俗的な図像、モットー、警句の絶妙な絡み合いから文学の豊饒な表現が生まれた過程を研究した。一方で地理的にも視野を拡大し、ドイツ、フランス、オランダなどを中心とする当時の文化的先進国のエンブレムが、英国のエンブレムに与えた影響も研究し、時間的な視野も拡げ、図像と警句の関係は、十八~十九世紀の挿絵と物語の関係にも転じ、エンブレムの時間的変移も研究した。
著者
平澤 一浩 大塚 康司 伊藤 博之 上田 百合 白井 杏湖 鈴木 衞 永井 義幸 加藤 紀和 櫻井 衛
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.529-533, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
20
被引用文献数
3

Intranasal steroids are widely used to treat olfactory disorder, and are known to have fewer side effects than systemic steroids. However, there are some reports that intranasal steroids have induced adrenal insufficiency, even when the steroid dosage is appropriate. We encountered a case of secondary adrenal insufficiency after using intranasal betamethasone for olfactory disorder within the usual dosage. In this case, we were not aware of instructing the patient not to swallow the steroid which had dripped into her pharynx. Thus, a large amount of steroids which had passed through her nasal cavity might have been absorbed in the oropharyngeal mucosa and also ingested. That is possibly the main cause of developing adrenal insufficiency. Recently, Toki-shakuyaku-san, a traditional Chinese medicine, has started to be used for olfactory disorder after a cold. Because of its minimum side effects, it may be safely used for patients with the risk associated with steroid use.
著者
伊藤 博之
出版者
滋賀大学経済学部
雑誌
滋賀大学経済学部研究年報 (ISSN:13411608)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.55-74, 2012

This paper describes a genealogy of corporate governance, following the philosophy of Michel Foucault. Genealogy is a way of thinking which delve into a domain of power relations struggling to construct a social reality. Corporate governance, which has emerged as an independent discipline around the 1990s, is interpreted as such a domain. The paper discusses the following four points. Firstly, it analyzes how the discourse of shareholder sovereignty has established its hegemony by referring to historical events as non-discursive constitute and the agency theory as discursive constitute of a knowledge/power relation. Secondly, it attempts to explain the reason why the corporate governance has not been established as an independent discipline until around the 1990s. Especially, the discourse of "managerialism" is focused on. Thirdly, discourses of corporate control focusing on the separation between ownership andcontrol are analyzed to reframe what corporate governance is all about. It suggests that the justification to be governed is the key to corporate governance. Finally, as a result of the genealogy, it argues for the importance of searching for excellent governance in practice. Practices of corporate governance tend to be dominated by a specific power relation, which strangle prudence and freedom of human beings. The genealogy teaches us that the way to escape the oppression is only in the practices seeking for excellentgovernance.
著者
伊藤 博明
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

イタリア・ルネサンスに発展したシビュラの表象は、古代の『シビュラの託宣』や中世後期のテクスト的な伝統を継承したうえに、15世紀の人文主義者や新プラトン主義的哲学者の議論を背景に産み出された。その図像的総決算と言うべき、システィーナ礼拝堂天井にミケランジェロが描いた6体のシビュラ像は、8体の旧約の預言者像とともに置かれて、古典古代におけるキリスト教の普遍性を示している。
著者
宮本 雅史 伊藤 博元
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.92-96, 2005 (Released:2007-12-14)
参考文献数
9

慢性腰痛に対する運動療法は重要な保存的治療法である.しかし現在の医療制度の中では,その治療効果についての科学的根拠が確立されていないという理由から,診療報酬を削減される危機に陥っている.従来のシステマテックレビューには個々の論文の間で慢性腰痛の定義や治療効果を判定するためのアウトカム指標が統一されていないことや,運動療法の種類や対照群の治療法がさまざまであるなどの問題点が指摘されている.近年,Liddle SDらはこれらの点に改善を加えた新しいシステマテックレビューを行い,運動療法は慢性腰痛患者に対し特に腰痛の特異的機能評価の観点から効果的に作用すると報告した.国内でも現在,慢性腰痛に対する運動療法に関する質の高いRCTが進行中であり,運動療法の有効性に対する評価を見直すべき時期にきているといえるであろう.
著者
中井 義明 大橋 淑宏 江崎 裕介 石塚 洋一 松下 隆 伊藤 博隆 馬場 駿吉 平川 勝洋 原田 康夫 菊屋 義則 岡崎 英登 黒川 道徳 二宮 優子 村上 譲 伊東 一則 深水 浩三 大山 勝 松根 彰志 飯田 冨美子 小川 敬 大堀 八洲一 花田 武浩
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Supplement5, pp.655-673, 1990-10-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

漢方製剤である麻黄附子細辛湯の通年性鼻アレルギーに対する効果を検討した。漢方の古典の記載に忠実に基づいた製法により得られたエキスを含む細粒剤と, それまでの経験に基づいた製法により得られたエキスを含む散剤の比較試験を実施した。有効率 (著効+有効) は散剤投与群で63.5%, 細粒投与群で76.7%と, 両群とも良好な結果であり, 統計学的に差は認められなかった。各症状の改善率において, 細粒投与群が散剤投与群より鼻汁, 鼻閉症状に高い効果を示したが, 統計学的な差は認められなかった。細粒剤といわゆる抗アレルギー剤の有効率を比較すると, くしゃみ発作および鼻汁は同程度の効果が, 鼻閉については優る効果であったと考えられる。副作用については, 散剤投与群で6.2%, 細粒剤投与群で5.1%の症例に認められたが, いずれも症状は軽微であり, また臨床検査値にもなんら異常は与えなかった。
著者
伊藤 博之 筈井 俊輔 平澤 哲 山田 仁一郎 横山 恵子
出版者
日本ベンチャー学会
雑誌
日本ベンチャー学会誌 (ISSN:18834949)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.11-24, 2021-03-15 (Released:2022-12-01)

企業家研究は多元的な概念の発展を通して興隆してきたが、シュンペーターが当初描いた、意志の力を伴って創造的破壊に突き進むという企業家像よりも,富やイノベーション創出のための道具的存在としての企業家像が敷衍している。これに対して、本論文は、フーコーのパレーシア概念を援用することで、「既存の体制と異なる真理を語り、勇気をもって、リスクを冒し挑戦するという企業家の生き方」を「パレーシアステースとしての企業家」と捉える。小倉昌男の事例研究を通して、企業家的真理ゲームとして展開される企業家活動の政治的・倫理的実践のあり方を明らかにする。

1 0 0 0 OA 秘書類纂

著者
伊藤博文 編
出版者
秘書類纂刊行会
巻号頁・発行日
vol.〔第21巻〕, 1936
著者
伊藤 博
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3-4, pp.107-117, 2020-12-05 (Released:2021-01-08)
参考文献数
45

脳は,外界刺激への反応を最適化するのみならず,内部モデルを作り個々の行動のもたらす結果を推測することで,より長期的で複雑な行動計画を可能としている.空間探索はその能力を端的に示す行動で,一つ一つの行動選択が目的地に到達するためにどのような意味を持ち得るかを,脳内の空間地図に照らし合わせて計算していると考えられる.本稿では,まず空間認知・探索の研究の歴史を振り返り,これまで解明されてきた脳内メカニズムを議論する.こうした研究の多くは,海馬や嗅内皮質領域の活動と,動物の現在地またはその周辺の空間表現との関連を主に探ってきた.しかし,空間探索には他にも様々な計算過程,例えば目的地の決定や経路の選択が必要であり,こうした点に関しては未だに多くの部分が不明である.また脳内空間地図により計画された目的地への経路が,最終的に四肢の動作として表現されるための座標変換も必要となる.このように空間探索行動には,様々な計算が複雑に絡み合っており,それぞれの異なる機能に着目した研究が求められる.こうした問題に対して我々のグループが行ってきた研究の成果を紹介しながら議論したい.