著者
早貸 千代子 横尾 智治 小澤 富士男 菱山 玲子 徐 広孝 鈴木 清夫 関口 隆一 高橋 宏和 千野 浩一 土井 宏之 早川 和彦 山本 智也 小塩 靖崇 佐々木 司 小宮 一浩
出版者
筑波大学附属駒場中・高等学校研究部
雑誌
筑波大学附属駒場論集 = Bulletin of Junior & Senior High School at Komaba, University of Tsukuba (ISSN:13470817)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.159-169, 2016-03

心も体も大きな変化をもたらす10代は、精神疾患の好発時期といわれている。その要員として、夜更かし・睡眠不足等の生活習慣の乱れや、悩みや心配事を相談せず(できず)一人で抱え込む(援助希求をしない)等が指摘されている。現在の教育課程では、精神疾患とその対処に対する正しい知識を学ぶ機会がないために、本人も周囲も不調になったことに気付きにくく、本格的な病気の進行・長期化といった状態を招いている可能性が高い。そこで、本校の成長過程プロジェクト研究(以下、PI)では中学2年生を対象に、保健の授業の中で、心の不調や病気の予防・早期発見・早期対応の正しい知識と対応法(以下、メンタルヘルスリテラシー)の教育を試みた。授業前後で精神疾患の知識の向上と援助希求行動と援助行動の考えの改善が見られたのでここで報告する。
著者
久保 智英 佐々木 司 松元 俊
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.47-54, 2010 (Released:2010-04-27)
参考文献数
17

本研究では,長時間過密労働をシミュレートした環境下での,1)情動的負担の変容過程,2)情動的負担と行動的疲労の関係を明らかにするために事例的検討を行った.その際,情動的負担が顕著だった事例と,同じ状況にあっても情動的負担が抑制されていた事例に着目した.結果より,「怒り-敵意」因子に属する訴えは,行動的疲労が亢進する上での重要なサインであること,情動的負担と行動的疲労との関係は情動的負担が高い時に行動的疲労が軽・中程度で,情動的負担が低くなると行動的疲労は高くなる関係にあることが示唆された.
著者
松元 俊 佐々木 司
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

電車運転士,保健師に対してシフトワーク・チャレンジの練習問題を行った。その結果,職種,年齢階層,夜勤経験の有無にかかわらず,正答率の高い問題と正答率の低い問題の傾向は似ていた。また正答率は,夜勤経験のある者で無い者より高かったが,夜勤経験率が低い保健師の方が,夜勤経験率が高い電車運転士よりも正答率は高かった。この理由として夜勤経験の有無よりも,たとえば保健師ならば,日ごろの業務で夜勤者の健康管理を行っているという夜勤・交代勤務に対する関心の高さが正答率を上げていることが考えられた。これらのことから,シフトワーク・チャレンジは,有効なリスクコミュニケーションツールになり得ることが示唆された。
著者
佐々木 司 南 正康 尾之上 さくら 山野 優子 北島 洋樹 松元 俊 吉川 徹
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.143-147, 2012 (Released:2014-03-25)
参考文献数
10

第二世代の抗ヒスタミン薬は,自動車運転実験においても眠気がないと報告されている。しかし眠気は,昼間の概半日リズムの影響を強く受けもする。そこで本論文では,第二世代抗ヒスタミン薬のこの時刻帯の自動車シミュレータ運転時の眠気への影響を検討した。被験者は男性スギ花粉症患者16名であった。そのうち8名が午前群(10~12時)に,残りの8名が午後群(13~15時)に割り振られた。午前群は午前9時に,午後群は午後0時に服薬し,服薬60分後に1施行15分の運転を4試行×2セッション行った。その際,覚醒時脳波が測定され,シータパワー密度が分析された。薬剤は,服薬60分,120分,180分,240分後の採血によった。その結果,薬剤の血中濃度は,服薬60分目のみ高かった(p=0.04)。シータパワー密度は,両方のセッションで午後群に高かった(ss1; p=0.005, ss2; p=0.024)。したがって第二世代の抗ヒスタミン薬であっても早い午後に服用する際には,自動車運転は避けるべきと結論付けた。(図3)
著者
佐々木 司
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、生活スタイルを含めた環境改善による大学の精神的健康増進を行うために、アプローチすべき要因を実証的に解明することを目的としたものである。平成21年度は、健康診断のデータをもとに、学生の精神保健にとって一つの大きな問題である留年と関連する要因の解明、大学生でも問題となりつつある自殺の念慮や企図と関わる要因などについて解析を行った。まず学部2年生約3,000人を対象に、1年生から2年生に進学できなかった留年生の精神状態を解析したところ、留年生は非留年生に比べて、抑うつ・不安を示す質問紙(GHQ12)の得点が有意に悪く(p<0.01,OR=1.5)、幻聴様体験などの精神病様体験の頻度も高かった(p<0.005,OR=2.9)。また、入学時あるいはそれ以前の状態や既往と入学1年後の留年との関係をみると、入学以前に「自殺企図を考えたこと」のある学生では留年のリスクが高く(p=0.04,OR=2.6)、ほかに飲酒(p=0.04,OR=1.7)、「抑うつ」の既往(p=0.06,OR=2.0)などの影響が認められた。そこで「自殺念慮」や「自殺企図を考えたことがあること」がどのような要因と関連しているかを、入学後の健診データから検討した。その結果、性格における神経症傾向のほかに、「いじめられた体験」と精神病様体験とが、自殺念慮、自殺企図の考慮いずれとも有意な関連を示した(OR=2.7および3.1と、OR=2.7と2.8)。これらの結果から、1)大学の精神保健対策においては留年生のケアが一つの重要なポイントであること、2)大学入学以前からの「いじめ対策」、ならびに精神病様体験への注意とケアが、大学での精神保健対策を考える上でも極めて大切であることが示唆された。