著者
本間 学 阿部 良治 小此木 丘 佐藤 信 小管 隆夫 三島 章義
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.281-289, 1965-06-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
3 3

This paper outlines the natures of Habu snake and Erabu sea snake and properties and actions of their venoms. Moreover was described the effect of tannic acid on the venoms.Habu snake (Trimereserus flavoviridis) is venomous, landinhibiting on the Amami islands and about 150cm long. The victims of Habu snake bite was estimated at 250 to 300 each year. The death rate during recent 7 years was more than 1 per cent. The minimal lethal dosis for mice, weighing 15 to 17g. was about 150γ/0.1ml by intramusculare injection. It was considered that the venom was composed of haemorrhagic, angiotoxic and myolytic factors, which were completly inactivated by heating at 100C for 10 minutes, and heat-stable myolytic factor.Erabu sea snake (Laticauda semifasciata) lives on the coast of Amami Oshima, and has strong fatal venoms. Minimal lethal dosis, in experiments with mice weighing 15 between 17g., was about 6γ/0.1ml by the intramusculare injections. Erabu sea snake venom is considered to have chiefly neurotoxic component which was relatively stable in heating.It was recognized that the toxic activities of the venoms of these different species were inhibited by aqueous solution of tannic acid; a 8.5% solution inactivated lethal and local haemorrhagic activities of 500γ/0.1ml of Habu snake venom, and fatal toxicities of 25γ/0.1ml of Erabu sea snake venom.The above mentioned effect of tannic acid on the venoms may be due to coagulations of the venom and tissue proteins by tannic acid.
著者
想田 光 岩井 岳夫 金井 貴幸 宮坂 友侑也 佐藤 啓 根本 建二 上野 義之 嘉山 孝正
出版者
日本加速器学会
雑誌
加速器 (ISSN:13493833)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.144-150, 2020-10-31 (Released:2021-10-05)
参考文献数
12

Yamagata University has carried out a heavy ion treatment facility project since 2004. Building and treatment machine has been constructed since 2017. The carbon ion medical accelerator consists of a permanent-magnet type electron cyclotron resonance (ECR) ion source, a series of linear accelerator of radiofrequency quadrupole (RFQ) and interdigital H-mode drift tube linac (IH-DTL) with an energy of 4 MeV/u, and an alternative gradient synchrotron of 430 MeV/u. There are two irradiation rooms, one has a fixed horizontal port and the other has a rotating gantry port with superconducting magnets. Since the irradiation rooms are placed above the accelerator room, the footprint of the building is only 45×45 m, which is significantly smaller than preceding facilities. The synchrotron has a variable-energy flattop operation pattern with 600 energies. This operation enables a three-dimensional spot scanning irradiation without range shifters. A superconducting rotating gantry is equipped with a pair of improved scanning magnets in the downstream of the final bending magnets and is downsized to 2/3 of the first model built in NIRS. The construction of the building was completed in May 2019. The treatment irradiation will start in February 2021 after machine optimization and clinical beam data measurement.
著者
佐藤 誠亮 久保 高行 四海 公貴 船引 達朗 大内田 友規 小田川 絢子 梶村 政司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20
被引用文献数
2

【はじめに】平和カップイン広島・国際交流車いすテニス大会(以下ピースカップ)は「広島から世界にpeace」をスローガンに、広島県車いすテニス協会(以下HWTA)の主催で開催されている。当初この大会のフィジオサービス(以下PS)は理学療法士(以下PT)の有志のみ(組織対個人)で運営されていたが広島県理学療法士会(以下当会)が会員活動を支援するためにHWTAと協議し当会の事業として位置づけた(組織対組織)ことでピースカップPSでの会員活動の負担が軽減した。現在では連携がさらに強まりHWTAが当会会員に対しての車いすテニス講習会を開催し当会会員PTの質の向上に役立っている。<BR>【変遷】1996年第51回ひろしま国体が開催され、続けて第32回全国身体障害者スポーツ大会・おりづる大会でスポーツ理学療法室が設置され当時のメンバー4名がピースカップでのPSを運営した。1997年HWTAより当会に正式要請があった。<BR>【現在の活動状況】当会からピースカップへ:大会期間中のPS運営を行う。2007度実績は1日利用者平均33名5日間延べ件数207件1日平均スタッフ数11名治療対象部位別件数は頭頚部87腰背部110肩上腕152肘前腕146手手指41治療方法は徒手療法63マッサージ149ストレッチ131テーピング42アイシング39物理療法39PS運営総経費は\77,328であった。ピースカップから当会へ:車いすテニス体験会の講師派遣してもらい障害者スポーツ研修の一助となっている。組織対組織として当会がピースカップPS運営に関わるようになり当会で運営のための予算を設け1.スタッフの交通費支給2.スタッフ確保が容易に3.物理療法機器レンタルが可能に4.事故発生時の責任問題の明確化5.PSでの使用物品の購入が可能になる事で参加会員の負担の軽減になった。<BR>【大会当日までの流れ】1.車いすテニス体験会の開催2.車いすテニス選手ケアのための研修会開催3.PSスタッフ参加募集4.PS運営のための大会直前研修会開催<BR>【考察および今後の展望】この取り組みのように他団体と本会が組織対組織で活動することで1.会員誰もが活動する機会が平等に与えられる。2.PTは障害を有するものを主な対象者として接するが実際には障害を有し社会復帰した後のものを対象として接する機会は少ない。障害を克服した方と接することで我々が臨床の場でよく接する障害を克服する前の対象者に還元できる事は十分にある。3.優秀な人材を発掘しその人材が本大会での活動のリーダーシップをとり質の高い選手ケアが提供できるようになる。これらは公益職能団体として不特定多数へ貢献できる活動といえる。全国的にみてもPT会が他団体の活動をサポートしている報告は散見される程度であるため、当会としてはこのような活動を組織として行うことのメリットを全国に発信していきたい。<BR>
著者
林 真一郎 水野 正樹 佐藤 匠 神山 嬢子 岡本 敦 吉川 知弘 鵜殿 俊昭 横田 浩 野田 敦夫 吉川 和男
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.32-39, 2013-09-15 (Released:2015-11-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

We tried to establish the detection methodology by viewing single high resolution synthetic aperture radar (SAR) satellite images which are now available. At first, a check list was made to qualitatively evaluate if it is or is not possible to detect landslide dams. By using that check list, high resolution SAR satellite images (TerraSAR-X, COSMO-SkyMed, RADARSAT-2) of Talas disaster in the Kii Peninsula have been evaluated. We confirmed conditions suitable for satellite as follows. All direction radar can detect landslide dams. The radar angle range suitable for obtaining images is from 35 to 50 degrees. Suitable image resolution is 3m. All sensors and bands are capable of detecting landslide dams.
著者
高橋 洋子 佐藤 恵美子 荒井 冨佐子 村山 篤子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.14, pp.52, 2002

2002年4月、新潟(N:n=115)と東京(T:n=128)で大学生にアンケートを行った結果、サトイモについて以下のこと判明した。(1)嗜好:N&middot;Tともに、「かなり好き」と「どちらともいえない」が約30&sim;35%で伯仲。(2)摂食頻度:N&middot;Tともに、「月1&sim;2回」が約50%。(3)「季節によって、食べる頻度に差がある」のは、Nで37.4%、Tで17.2%。実家で芋類を栽培しているのが、Nで34.8%、Tでは7.0%であったことを反映していると考えられた。(4)サトイモ料理について、顕著な地域差がみられた。N&middot;Tともに煮付け類が80%を超えたものの、Nでは郷土料理の「のっぺ」73.9%、「のっぺい汁」「みそ汁」「おでん」の3品目が30%代で続くのに対し、Tで30%を超えていた品目は、「けんちん汁」66.4%と「豚汁」47.7%のみであった。
著者
交野 好子 佐藤 啓造
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.448-457, 2001
被引用文献数
1

本研究は妊娠期の妊婦および胎児の父親を対象に, 妊娠の期待度や受け止め方, 胎児に対する思向等の胎児認知のあり方を明らかにするものである。その上で本研究は妊娠期の心的ハイリスクから, 将来の育児不安, 育児放棄, 虐待等の素因を, 早期診断できる測定具の開発を目指した基礎研究として位置づけられるものである.研究方法は質問紙を用いた自記式調査である.調査対象は妊婦429名, 回収率100%, 有効回答は418名 (98.1%) , 父親は230名, 回収率80.0%, 有効回答182名 (99.5%) であった.質問内容は (1) 年齢, 初妊・経妊別, 妊娠週数, (2) 妊娠の期待度および喜びの度合い, (3) 妊婦は父親となる夫が妊娠を喜んでいると感じているか, また逆に, 父親は妊婦が妊娠を喜んでいると感じているか否かである.さらに, (4) 妊婦および父親がどのように胎児・新生児ならびに出産後の育児等の状況イメージを描いているかについての質問22項目で構成されている.研究結果は妊娠の期待度, 妊娠の喜びの有無ならびに程度は, 妊婦と父親では異なるこが判明した.妊婦は妊娠の期待度・喜び度が高く, さらに父親になる夫が妊娠を喜んでいると感じている場合には, 胎児ならびに新生児の状況イメージが豊かに描けていた.それに対して父親は, 妊娠の期待度や妊婦が喜んで妊娠を受け止めているか否かでは平均得点に差は認められなかった.妊娠を喜んでいる場合のみ, 想像項目の中でも体内胎児および出産場面では想像の平均得点に開きが認められた.想像は妊婦の胎児認知の様相を表すには, 有効な方法であるが, 父親については今後検討していく必要性が示唆された.妊娠を父親が喜んでいると感じるか否かが想像得点を左右する点では, 妊婦が胎児を喜んで受け入れ, 愛情を注ぐことができるには夫の感情が大きく影響していると言える.鈴木の「子どもの虐待リスク因子」によれば, 虐待者は実母 (67%) が実父 (24%) をはるかに上回っている.一般的には, 「お腹を痛めて産んだこどもを母親は何故虐待するのか」と問われる.しかし, 本研究結果からみると, 妊婦の胎児認知は自分はもとより, 夫が妊娠を喜んでいるか否かに依拠していることが明らかになった.妊婦と胎児との関係にはその空間に夫の感情や夫婦関係が胎児認知のあり方に影響していることが推測される.妊娠中の心的ハイリスク因子は (1) 何らかの理由により妊娠を期待しない, (2) 自分も夫も妊娠を喜んでいないに加え, (3) 体内胎児や新生児ならびに出産後の育児等の状況イメージが描けないことにある.これらの妊婦に対応した場合, 継続的な心理的支援が必要であると考える.
著者
畑 友佳子 池田 ゆかり 木藤 聡一 佐藤 友紀 中越 元子
出版者
北陸大学
雑誌
北陸大学紀要 = Bulletin of Hokuriku University (ISSN:21863989)
巻号頁・発行日
no.51, pp.17-35, 2021-09-30

We report for the writing program at “Basic seminar Ⅰand Ⅱ” in the lower gradesof the faculty of pharmaceutical sciences at Hokuriku University. In this program, we thought it was important how the students could study with a feeling of growth. Thelearning goal of this program was to allow students at the time of graduation to learn independently and to utilize practically the skills they have learned to discover and solve problems. In addition, it aimed for the students to acquire the ability to write the reports based on the knowledge and skills with logical thinking, judgment, and expressiveness. In the program for the students enrolled in 2019, we were analyzedstudent questionnaires and evaluations of report by faculty members. Before this program started, there were many students who had poor writing skillsin the faculty of pharmaceutical sciences. However, by taking this program, they abled to realize on their own the improvement and growth of their writing skills and visualizeof learning outcomes. On the other hand, there still remains a problem that many students felt writing was so difficult. In the future, we need to overcome this problem.
著者
佐藤 克文 木下 千尋
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.29-35, 2018-12-20 (Released:2019-12-20)
参考文献数
18

小型の記録計を対象動物に搭載し,動物の行動や生理,あるいはその周辺環境を測定する手法が注目を浴びている.直接観察が難しい海洋動物を対象として始まったこの手法には,バイオロギング(biologging)という名前が付けられ,現在広く野生動物調査に用いられている.たとえば,鳥類であるペンギンが,餌を捕るために深度300 mへの潜水を繰り返す間に,その体深部温度が平熱の38℃から10℃以上も低下するなど,主に陸上動物を対象とした研究で構築されてきた従来の常識を覆すような発見が相次いでいる.本稿では,爬虫類であるウミガメ類の体温とその特徴に関連した生活史について,バイオロギングによって明らかになった成果を紹介する.
著者
佐藤 武夫
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.971, 1966-07-20
著者
中里 道子 児玉 和宏 佐藤 甫夫 佐藤 真理 宮本 茂樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1237-1239, 1997-11-15

インスリン依存型糖尿病(Insulin-dependent diabetes mellitus;IDDM)は,血糖値測定,インスリン自己注射,食事療法など,長期にわたる身体管理を要する慢性疾患である。ケトアシドーシスや低血糖などの急性合併症,網膜症,腎症などの慢性合併症を予防するためには,厳格な血糖値コントロールが必要とされる。 IDDMに精神障害を伴う場合,精神症状の管理が身体合併症の予防や長期的な予後にとって,極めて重要である。精神障害を伴ったIDDMに関する報告は少なく,精神分裂病の合併は極めてまれであると言われている。近年,幻覚・妄想を伴ったIDDMの2症例を経験した。この2症例では,小児科,精神科の協力体制が治療上有効であり,精神症状が著明に改善し,血糖値のコントロールも安定し,糖尿病の長期予後も良好に保たれている。
著者
佐藤 孝雄
巻号頁・発行日
2008-06-29

アイヌ研究の現在と未来:第1部.平成20年6月29日.札幌市
著者
佐藤 革馬
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.67-70, 2015

平成24年度より,本校の理科では観点別評価の運用を始め,知識教授型授業だけでなく,科学的な思考や表現力を身につけられるような授業研究と改善を行っている。昨年度の本校の物理基礎では,力学分野の計算指導から始めてみたが生徒にとっては大きな困難があったため,今年度はエネルギーの利用から始める授業構成に切り替えたところ,比較的物理基礎の授業に満足する生徒が増えた。本稿では,物理基礎の授業で実践したことを報告する。
著者
山本 聡 山崎 隆 山形 仁 佐藤 正
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.74-83, 2007 (Released:2021-06-01)

「ゲームの処方箋」プロジェクトは、早稲田大学こどもメディア研究所との産学協同研究である(プロジェクトリーダー:早稲田大学・河合隆史助教授)。本プロジェクトは、科学的手法でゲームの「人間にとっての良い影響(効能)」及び「遊び方・視聴方法等の活用方法(処方)」に関する研究を行い、ゲームが日常生活でサプリメントのような役割を果たすための知見を得ることを目的としている。第一線の科学者及び臨床家がプロジェクトに関わり、205年4月からの1年間を第1期として実験・研究を行ってきた。その結果、きわめて新規性・有効性の高い結果が得られた。206年7月にはシンポジウムを開催し、結果の発表を行っている。
著者
佐藤 英人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.144, 2010

1.はじめに<BR> オフィス立地は都市内部の物的な構造を議論する都市内部構造論や都市間結合のあり方を分析する都市システム研究などで早い段階から分析されてきた。これらの既往研究では、オフィス機能の立地や分布に着目し、オフィス機能の空間的な偏在性(オフィス機能が都心部に集中し、中心業務地区を形成したり、人口規模が上位な都市ほど、より多くの支店が配置されるという支店経済の成立など)が確認された。発表者も1980年代以降の東京大都市圏の多核化や郊外核の形成という新たな動向を明らかにすべく、郊外に整備された業務核都市(旧大宮市、幕張新都心、横浜みなとみらい21地区)に注目し、当地に進出した企業の属性や従業者の通勤行動などを分析した。<BR> しかし、既往のオフィス立地研究の多くは、立地や分布の空間的な偏在性を事実として明らかにしてきたが、なぜオフィス機能が偏在するのかという、要因分析に関しては十分な研究蓄積があるとは言えない。さらに、オフィスという業種横断的で、かつ就業形態という枠組みで集計されたデータは意外と少なく、実はどの企業が、いつ、どこから、どのようにして、現在のオフィスビルに移転したのか、基本的な知見すら十分に把握できていないのである。<BR> そこで発表者は、各種資料や統計を用いて、東京特別区内にオフィスを設置している主な企業を対象とした「移転経歴データセット」の作成に取り組んでいる。このデータセットには、どの企業(資本金規模、従業員規模、業種・業態、設立年、本社・支社の別、機能等)が、いつ(入居期間)、どこから(移転元住所)、どのようにして(拡張移転、統合移転等の移転形態)移転してきたのか、整理されており、オフィス移転の発着地を同時にとらえることができる。ただし、「移転経歴データセット」は、住宅地図の表札情報やNTTタウンページ、各企業の社史、『日経不動産マーケット情報』の記事、さらには、発表者が独自に実施した現地調査など、様々なソースから膨大なデータを取得しなければならない。そのため一個人の研究者では能力の限界から遅々として作業が進まず、オフィス移転の全体像を十分に把握し難いという課題に直面している。<BR><BR>2.隣接分野との連携<BR> 以上の課題を克服するために、発表者は都市経済学や不動産学の研究者とともに、不動産仲介会社が所有する賃貸オフィスビルの入退出データの公開に向けた取り組みを進めている<SUP>1)</SUP>。不動産仲介会社には、仲介した物件の入退出に関するデータが、過去15~20年にわたって蓄積されている。特に都市経済学や不動産学の研究者は、オフィス賃料や空室率の経年データから今後の賃料やコストを推計したり、一般化を試みる研究に関心が払われる一方で、住所データを用いた立地分析には十分な関心が払われていない。一個人の研究者の尽力のみでは、公開されることのない貴重なデータを、隣接分野の研究者とともに、いかに分担して利活用していくのか、重要になろう。なお、隣接分野との共同研究として、オフィス移転と企業の成長・衰退過程との関係性を議論する「企業のライフコース」からみたオフィス移転の分析にも着手している<SUP>2)</SUP>。<BR><SUP>1)</SUP>企業・家計の多様性に着目した都市内部構造の動態変化に関する研究,平成20~22年度文部科学省科学研究費補助金(基盤研究C),研究代表者:清水千弘,研究分担者:唐渡広志,吉田二郎,佐藤英人<SUP>2)</SUP>「企業のライフコース」からみた産業クラスターの形成要因―企業間ネットワークの構築とオフィス移転を手掛かりにして―,近未来の課題解決を目指した実証的社会科学研究推進事業(平成21年~22年度),一橋大学産業・金融ネットワーク研究センター,研究代表者:清水千弘,研究分担者:唐渡広志,佐藤英人,渡辺 努