著者
森田 剛仁 日笠 喜朗 芹川 忠夫 島田 章則 佐藤 耕太 竹内 崇
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

当教室では突発性に全身性発作を生じ、それが数日から数ヵ月の寛解期を経て発作を反復する特発性家族性てんかん犬の家系を獲得・維持している。本家系のてんかん発生メカニズム解明を最終目的とし,以下のような結果得た。【材料と方法】1)脳波検査(家系犬6例):国際式10-20法により、生後経時的にキシラジン(1.0mg/kg,I.M.)鎮静下で実施。2)脳内アミノ酸の検討:(1)脳脊髄液内(家系犬6例、正常犬4例):混合深麻酔下,大後頭孔より採取。高速液体クロマトグラフィー電気検出器(HPLC-ED)によりグルタミン酸,グルタミン,アスパラギン酸,アスパラギン,アルギニン,グリシン,タウリン,GABA,スレオニン及びアラニンを定量。(2)in vivo脳実質内(家系犬5例,正常シェルティー犬4例):深麻酔下にて,過換気状態で前頭葉皮質からマイクロダイアリシス法によりサンプル採取。HPLC-EDによりグルタミン酸,グルタミン,アスパラギン酸,アスパラギン,アルギニン,グリシン,タウリン及びGABAを測定し,各アミノ酸の変動を検討。脳波測定を同時に実施。(3)免疫組織化学的検討:グルタミン酸、グルタミン酸代謝に関連する蛋白質およびグルタミン酸レセプターに対する抗体を用いた免疫染色を実施した。【結果】1)脳波検査の結果、発作初期には鋭波及び棘波が前頭葉優位に確認され,発作を長期間反復した症例では,程度に差はあるもののそれらが頭頂葉および後頭葉にも検出された。2)家系犬の脳脊髄液内スレオニン値が高値を示した(家系例:549.35±72.94nmol/ml、対照例:301.71±87.51nmol/ml)。3)家系犬2例において正常換気から過換気状態(血中PCO2:15-25)に移行した時に高振幅鋭波の群発および棘波の散発が記録された。1例で過換気状態でグルタミン酸、グルタミン及びGABAの値が上昇した。他の1例では過換気状態でアスパラギン酸の値が上昇した。他の家系犬および対照例では各アミノ酸の著明な変動を認めなかった。4)てんかん重責後死亡例では、大脳全域におけるグルタミン酸トランスポーターの発現の低下が観察された。壊死した神経細胞周囲に顆粒状にグルタミン酸陽性を示した。【考察】家系犬1例の大脳前頭葉における異常脳波出現と一致し,前頭葉皮質のグルタミン酸あるいはアスパラギン酸の変動が認められた。また、免疫組織化学的にグルタミン酸の代謝に関係するグルタミン酸トランスポーターの発現の低下が観察された。今後、他のレセプターの発現を含め検討する必要がある。
著者
佐藤 律子 片桐 史子 石井 馨 片桐 正隆
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.72-82, 2001-02-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
28

エナメル質の斑状白濁は, 歯のフッ素症 (斑状歯) と初期齲蝕に共通な臨床的特徴であるが, 前者は酸に抵抗性を示す。本研究は斑状歯について, 齲蝕歯と埋伏歯を対照歯とし, 0.1N塩酸による脱灰処理前後のエナメル質の構造と質を肉眼像, SEM像やCMR像によって比較し, 酸に対する抵抗性の違いを検索することを目的とした。SEM像によると, 対照歯のエナメル小柱上面観は規則正しく魚鱗状に配列し, 小柱間隙は酸に強く脱灰され幅が広く, 割断面での最表層の無小柱エナメル様の部分は粗 であった。斑状歯では, 小柱体が不規則な配列で毛様に残存し, 小柱間隙は狭く, 割断面では比較的平滑であった。CMR像では, 表層の高石灰化層にさらに著しい石灰化の部分が点在していた。以上から, エナメル小柱の構造が酸による脱灰に抵抗していると考えられた。なお, 歯のフッ素症患者の生活環境水中のフッ素の定量分析の結果では6.1-6.7ppmで, 本症の重要な発現因子と考えられた。
著者
佐藤 哲 片岡 智美 篠 道弘 西崎 久純 安達 勇
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.216-220, 2008 (Released:2008-06-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

がん性疼痛の中でもオピオイドが奏効しにくい神経障害性疼痛に対してNMDA受容体拮抗作用を持つケタミンの有用性は高い. 今回, ケタミン内服液を使用した31症例を対象に投与量や継続期間などについて検討した. 治療効果が認められ継続投与された症例は22症例であった. 継続された症例における開始時の服用量は平均107.3mg/日, 服用期間は平均63日であった. 効果はあったが, 有害事象が観察されたため中止となった症例は7症例(嘔気・嘔吐4症例, 傾眠3症例)であった. 十分な効果が認められなかった症例は2症例であった. 神経障害性疼痛に使用して有効だった症例は18症例中14症例あり, ケタミンの内服液は神経障害性疼痛の緩和に有効であることが示された. Palliat Care Res 2008; 3(1): 216-220
著者
佐藤 了子 佐藤 恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.39, 2007

<B>目的</B> 通学時及び学内で制服着用を義務付けられていた女子短大生が、制服の廃止により旧制服に持つイメージをどのように捉えていたかを中心に、ファッションスタイルの嗜好、およびファッションスタイルの受容についても明らかにすることを目的とした。<BR><B>方法</B> 質問紙法によるアンケート調査。調査対象者は女子短期大学生1年生99名。有効回答数は96であった。調査期間は平成15年11月。調査内容は出身高校、旧制服の所有状況、旧制服に持つイメージ(SD法、5段階評価)、ファッションスタイルの嗜好(20項、5段階評価)、及び着装の受容(20項、4段階評価)についてである。<BR><B>結果</B> 旧制服の着用状況は、着用しないが52%、いつも着用する17%、着用することが多い21%、時々着用する10%であった。着用する理由として私服を選ぶ面倒がないから61%が最も多く、毎日の通学に私服を選ぶ必要がないという理由から旧制服を着用しているようであった。旧制服に持つイメージで平均点の高かった項目は、清潔な、清純な、上品な、知的なイメージであり、低かった項目は、個性的な、派手な、活発な、人目を引くなどの項目であった。ファッションスタイルで好まれているものは、気軽で自由なスタイル、シンプルなスタイル、若々しいスタイルで、好まれないものは、ロマンティックなスタイル、アダルトなスタイルであった。着装の受容については、抵抗感が少ないものは、ミニスカート、パンツとスカートの重ね着、破れたジーパンなどであり、抵抗感のあるものはへそ出しルック、シースルーの服、胸の大きくい開いた服を着るなどであった。現在流行の着装は受容されているが、体がでる着装には抵抗感があることが示唆された。
著者
中澤 高志 佐藤 英人 川口 太郎
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.144-162, 2008 (Released:2018-01-06)
参考文献数
27
被引用文献数
8 6

This paper examines the process of generational transition in two suburban neighborhoods in the Tokyo metropolitan area, focusing on the inter-generational reproduction of social status in their residents. One neighborhood is the Kamariya District located in the southwestern sector of the Tokyo metropolitan area. The other is the Yotsukaido District in the eastern sector. Both neighborhoods were developed in the 1970s as residential districts for commuters to the downtown, and are situated 40 kilometers away from Tokyo Station, the center of the Tokyo metropolitan area. The two neighborhoods are similar in the ages, educational attainments, and occupational class of the first generation residents: Husbands who are now in their 60s or 70s were typically white collar workers employed by major companies or the public sector and once commuted to the central business district by train and bus in relay, while wives stayed at home devoting most of their time to housekeeping and childrearing. The first generation residents of both neighborhoods think it ideal to keep independent of, but in close relationships with, their adult children.The broad similarity between the two neighborhoods seems to verify a prevailing recognition that the suburbs are a homogeneous space not only physically but also socially; however, comparison of the social status of the second generation demands re-investigation. The male second generation of the Kamariya District have well succeeded to the high social status of the first generation. On the contrary, the process of inter-generational reproduction of social status does not seem to function well in the case of the Yotsukaido District. More of the Yotsukaido second generation are in non-permanent positions or unemployed in the labor market and live with their parents than the Kamariya second generation.It is also interesting that the two groups of the second generation who are already married are distributed differently within the Tokyo metropolitan area. The residences of the Kamariya second generation are concentrated around the Kamariya District. The married second generation of the Yotsukaido District live also mainly within the eastern sector where the Yotsukaido District is located, however, the pattern of the distribution shows more expansion to the opposite side of the metropolitan area than that of the Kamariya second generation. Both Kamariya and Yotsukaido districts were once thought of as appropriate residential neighborhoods for downtown white collar workers. The difference in the distribution of the married second generation implies that the Kamariya District is still recognized as a commuter’s neighborhood by the second generation, but Yotsukaido no longer is.Along with the generational transition, some suburban neighborhoods will remain residential areas of commuters to the downtown who have high social status, whereas some neighborhoods are changing into self-contained territories which include both home and workplace, experiencing fluctuations in the attributes of residents.
著者
佐藤 俊治
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.69-74, 2002-03-25 (Released:2010-01-20)
参考文献数
15

近年, 哲学者の関心をひいている量子力学解釈の1つに, 様相解釈modal interpretationがある.様相解釈は次のことを狙った解釈である : シュレディンガーの猫のパラドクスに陥ることなく, 収縮なしの理論を構築すること.そのための戦術として, 様相解釈は量子系を特徴づける2種類の概念装置を用いる.すなわち, 通常の (量子力学的) 状態stateのほかに, 新たに性質propertyを導入する.これら二重の記述を巧妙に使いわけ-誤解を恐れずあえて一言でいえば, 状態をもちいて予測をし, リアリティについては性質をもちいて語る, ということをおこなう-いま述べた目的を果たそうとする試みが, 様相解釈の研究プログラムである.現在, 性質を具体的にどう定義するかにかんし, 複数の提唱が並存している.様相解釈という語はそれらの総称であり, 多くの論者がいずれか/いずれものアイディアを, あるいは展開し, あるいは批判する議論を戦わせている.しかし, 中でもとくに議論の俎上にのぼる機会が多いのが, ファーマースとディークスによる提唱である (Vermaas and Dieks 1995, ファーマース-ディークス様相解釈とよぶことにする).本論では, これを取りあげ, 論じる.ファーマース-ディークス様相解釈は次の2点をその基本アイディアのうちに含む.一方で, ある時刻に1つの合成系を成す諸部分系が, おのおのに, 自身の性質を所有するさいの (同時) 結合確率が, 明示的に定義される.他方で, 性質のダイナミクスが認められる.そのさい, 性質ダイナミクスが安定性テーゼstabilitythesisとよばれる条件を満足することが, 通常, 要請される.安定性テーゼを認めるとき, 本論のいう相互独立性テーゼを認めることが自然である (いずれのテーゼも詳細は後述).しかし, 以上のアイディアを十分実現可能なある具体的実験状況に適用するなら, 矛盾を生じる.本論はこの点を示す.結論は次のとおり : 《安定性テーゼ, かつ, 相互独立性テーゼ》と, 《同時結合確率の定義》とが, 両立しない事例が存在する.
著者
佐藤 みほ香 杉本 恵子 伊藤 マモル
出版者
法政大学スポーツ研究センター
雑誌
法政大学スポーツ研究センター紀要 = Bulletin of Sports Research Center, Hosei University (ISSN:21879168)
巻号頁・発行日
no.37, pp.41-47, 2019-03

大学体育会アスリートを対象に摂取量を適切にコントロールしたプロテイン粉末の摂取が身体組成,運動機能および運動後の疲労感に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,異なるプロテイン粉末を摂取する2つの被験者群における1ヵ月摂取後の身体組成,運動機能および運動後の疲労感の変化を栄養・食事指導の教育的観点から比較した。用いたプロテイン粉末は,アサヒ社製ディアナチュラアクティブ (DNA) および明治社製ザバスWHEY100 (WHEY100)であった。その結果,DNA群では摂取前後でミネラル量のみに有意な低下が認められ,WHEY100群では水分量,たんぱく量,ミネラル量,骨格筋量で有意な低下,体脂肪量で有意な上昇が認められた。また,健康関連QOL (HRQOL: Health Related Quality of Life) の指標であるSF36-v2アンケートの結果では,10項目中「FP (日常的役割機能;身体) 」「GH (全身的健康感)」「FP (活力)」「SF (社会的生活機能)」「RE (日常的役割機能;精神)」「MCS (精神的側面のQOL)」「RCS (社会的側面のQOL)」の7項目においてDNA摂取群の方が高得点を示した。その中でも「GH (全身的健康感)」では有意に高い値を認めた。以上のことから,DNAの摂取は本研究に協力した被験者の身体組成維持や健康関連QOL向上にWHEY100よりも貢献する可能性を示唆した。
著者
佐藤 貴弘
出版者
一般社団法人 日本体育学会体育社会学専門領域
雑誌
年報 体育社会学 (ISSN:24344990)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.3-15, 2021 (Released:2021-05-14)
参考文献数
38

Purpose of this study is to describe and explain global perspective of physical education teacher education during COVID-19 in the United States. There are several themes that are discussed following that: a) current trend and status of physical education teacher education (PETE) in the United States, b) public school teachers’ challenges and struggles while teaching physical education during COVID-19, c) college and university professors’ paradigm shifts from face-to-face teaching to online education, d) changing business and operational models of colleges and universities, e) future direction of physical education and sport after COVID-19.
著者
生田 太 出口 広紀 岡本 貢一 名古屋 幸司 佐藤 史也 水沼 由貴 金子 礁 新井 恵実 蒲田 和芳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.339-344, 2015 (Released:2015-07-07)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

〔目的〕変形性膝関節症(膝OA)を有する高齢者の膝内転モーメントや活動性に対するRRR(膝回旋エクササイズ)プログラムの効果を明らかにすることを目的とした.〔対象〕膝OAを有する女性高齢者を無作為に割り付け,被検者数は慣習エクササイズ群12名,RRRプログラム群9名であった.〔方法〕介入前後で歩行時の膝内転モーメントとKOOS,SF-36の計測を実施した.〔結果〕SF-36はRRRプログラム群の方が有意に向上した.KOOSと膝内転モーメントに群間差は認められなかったが,膝内転モーメントはRRR群にて減少傾向であった.〔結語〕RRRプログラムは膝OA患者の生活向上に効果的であることが示された.
著者
高津 俊司 佐藤 馨一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.553-558, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
11

本研究は、開発者負担金による鉄道整備の事後評価を目的として、都市開発と一体的に整備が進められた臨海副都心線(りんかい線)を事例として、開発者負担金について開発者にアンケート調査を行い、開業後の輸送実績を元にして鉄道計画支援システム(GRAPE:GIS for Railway Project Evaluation)を用いて鉄道整備効果を分析し、開発者負担方式の評価と今後の課題を考察した。その結果、次のような知見が得られた。(1)事後アンケート調査によれば、鉄道に対する評価としては、広域、大量、高速などの特性を評価し、約8割の会社が「受益があるのである程度の負担はしかたない」と回答している。費用負担の額についても、計画時点より現時点の方が、「ほぼ妥当である」との回答が増加している。(2)りんかい線の整備による開発区域内の利用者便益(割引後 30年集計)を GREPEで推定すると、開発者の費用負担金の額を上回った。(3)これらの結果から、鉄道整備の財源方式として、請願駅方式で駅周辺の開発者からの負担金を徴収する方式は、一定程度の妥当性があると想定される。
著者
杉本 雄太郎 佐藤 有理
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第28回全国大会(2014)
巻号頁・発行日
pp.2B31, 2014 (Released:2018-07-30)

メンタルモデル理論はJohnson-Lairdらにより提案された、推論の非言語表現に基づく認知システムである。一方で、この理論は数理論理学的概念を用いた応用理論でもあるため、経験的な妥当性だけでなく形式理論的側面についても議論されてきた。本研究は、最近のメンタルモデル推論のプログラム実装や図的推論研究を基に、量化文から成る三段論法推論の範囲におけるメンタルモデル推論について形式化を行う。
著者
佐藤 裕也 華山 宣胤
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.89-90, 2015-03-17

競馬の馬の着順予想についての研究はこれまでに多く行われ、様々な着順予想の方法が考案されてきた。しかし、これまでの研究で使われてきた着順予想の方法を筆者の持つ、JRAのデータに当てはめると、一部のレースでは着順予想の精度が高い予想ができるものの、全てのレースではあまり精度の高い予想が出来ないものが多いということが分かった。そこで、本研究では、馬のオッズや得票率を用いて着順の予想するハーヴィルの公式、馬券の得票率の不平等さを測るジニ係数等を用いて、競馬のレースを馬券の投票数が多い馬が上位に入賞するようないわゆる堅いレース、馬券の投票数が多い馬が上位に入賞しないいわゆる荒れるレースに分類を行う。