著者
村井 源 松本 斉子 佐藤 知恵 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
pp.1101130023, (Released:2011-01-25)
参考文献数
16
被引用文献数
8 1

本論文では,計量的な物語構造の分析を実現するために,人文的な物語分析の古典的手法であるプロット分析を援用し,分析結果に対する計量的解析を行った.プロット分析は人文学的手法であるが,一致度の計算を実施することでプロット分割と分類の正当性の数値的評価を行った.プロット分類の結果に対してn-gram分析を行うことで物語構造の連続的パターンを抽出した.また同様にχ二乗検定を用いて頻出プロットの時代的変化を抽出した.さらに,テーマとプロットの関係を分析するために計量的手法で物語のテーマ語を抽出し,作品をテーマごとに分類した.このテーマの分類結果を用いて,各テーマのプロット的な特徴を抽出した.本論文での分析はプロットへの分割と分類を計量的指標を用いつつも人手で行うという点で,完全な自動化の実現ではないが,本論文の成果は将来的な物語分析の完全な自動化の基礎になると期待される.
著者
花田 惇史 吉田 裕一 佐藤 卓也 後藤 丹十郎 安場 健一郎 田中 義行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.161-169, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
27
被引用文献数
3 4

近年,受粉用ミツバチがしばしば不足し,果実を中心に園芸作物の生産コスト増大や品質低下を引き起こしている.その解決策の一つとして,医療用の無菌ウジ増殖技術を応用して生産したヒロズキンバエについて,施設栽培作物の花粉媒介昆虫としての実用化の可能性を検討した.イチゴ,トマト,ナスおよびメロンを対象として,開花期にヒロズキンバエをハウス内に放飼し,着果率や果実形態の比較によって,各作物への受粉効果を調査した.トマト,ナスおよびメロンにおいては,明確な着果促進効果は得られなかった.一方,イチゴでは,ハエは羽化直後から盛んに花に飛来する姿が観察され,ハエ搬入前と比較して受精不良果発生率は大きく低下した.ただし,90 m2当たり400頭の搬入では品種によって効果が不十分であった.しかし,1000頭搬入した場合は,ミツバチと同等の効果が得られたことから,ヒロズキンバエはミツバチの代替ポリネーターとして十分利用可能であると考えられた.
著者
木田 秀幸 今野 武津子 高橋 美智子 近藤 敬三 飯田 健一 佐藤 繁樹 須賀 俊博
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.312, 2008

〈緒言〉<I>Helicobacter.pylori</I>(<I>H.pylori</I>)は、グラム陰性の螺旋様桿菌で胃内に感染し胃炎、消化性潰瘍、胃癌、胃MALTリンパ腫などの上部消化管疾患の病態に関与していることが明らかになっている。<I>H.pylori</I>の診断方法としては、血清及び尿中抗体測定(抗体)、便中抗原測定(HpSA)、尿素呼気試験(UBT)、迅速ウレアーゼ試験、病理組織学的検査、細菌培養などがある。唯一の直接的証明法である<I>H.pylori</I>の分離培養は、特異性に優れ菌株保存が可能なため抗菌薬の感受性検査や遺伝子学的解析を行うためには不可欠である。培養に用いる検体は胃粘膜生検が一般的であるが、我々は胃粘膜生検の他に胃液を検体とした<I>H.pylori</I>培養を1997年より行なっている。この10年間の培養経験と成績を報告する。<BR>〈対象と方法〉1997年3月から2008年3月までに腹痛を主訴に、当院小児科を受診し上部消化管内視鏡検査を施行した小児を対象とした。また、血清<I>H.pylori</I> IgG抗体(血清抗体)あるいは便中<I>H.pylori</I>抗原(HpSA)陽性患児とその家族も対象とした。<BR>患児95例は内視鏡検査と胃粘膜生検を施行し、その家族で<I>H.pylori</I>陽性の有症状者(既往も含む)にはインフォームドコンセント(I.C.)を得た後、82例に対し内視鏡下生検あるいは胃液を採取し培養を施行した。除菌後の検体を含む延べ培養総数は、289例(胃液培養111例、胃粘膜培養178例)であった。培地は<I>H.pylori</I>の選択分離培地である「ニッスイプレート・ヘリコバクター寒天培地」(日水製薬株式会社)を用い、微好気条件下で35℃(2005年10月までは37℃)ふらん器にて最大1週間の培養を行なった。結果の判定は、発育したコロニーのグラム染色を行い、グラム陰性螺旋菌であることを確認、ウレアーゼ試験、オキシダーゼ試験、カタラーゼ試験陽性となったものを<I>H.pylori</I>培養陽性とした。<BR>〈結果〉HpSA又は血清抗体陽性群78例の胃液培養では、68例が陽性で10例が陰性となり、感度87%であった。HpSA又は抗体陽性群118例の胃粘膜培養では、103例が陽性で15例が陰性となり、感度87%であった。HpSA又は血清抗体陰性群では胃液培養、胃粘膜培養共に全例が培養陰性であり特異度は100%であった。培養結果とHpSA及び血清抗体が不一致となった25例中9例に雑菌発育が認められ培養不可能であった。胃液と胃粘膜の雑菌発育に大きな有意差は認められなかった。1998年までは、HpSA又は血清抗体やウレアーゼ試験との不一致例が検体56例中18例(32%)、雑菌発育8例(14%)と培養成績に良好な結果が得られなかった。不一致18例中7例(39%)の原因は雑菌発育によるものであった。しかし、1999年以降の不一致は、検体233例中7例(3%)、雑菌発育2例(1%未満)と培養成績が明らかに向上した。<BR>〈結語〉我々は、胃液を検体とした<I>H.pylori</I>の培養を1997年から試行錯誤の中行なってきた。1998年以前の培養成績と他の検査方法との不一致や雑菌発育は、培地の使用方法や培養条件、検体処理方法等、様々な要因が示唆された。<BR>胃液検体は胃粘膜検体と比較しても十分な培養成績を得ることができた。また、胃液採取は、内視鏡を用いた胃粘膜採取と比較し患者への侵襲性が小さく、採取部位による影響も受けないことからも有用性が高いと考えられる。
著者
根本 直樹 佐藤 正洋
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.183-195, 2013

秋田県北部,二ツ井地域の天徳寺層上部及び笹岡層下部からの有孔虫化石を検討した.検討した区間からのGloborotalia inflata(sensu lato)の豊富な産出は,この区間が上部鮮新統のNo.3 Globorotalia inflata bedに相当することを示唆する.また,その産出は温暖な中層環境を示す.いくつかの層準からのGlobigerina quinquelobaの産出は,本地域の表層が時々低塩水に覆われたことを示唆する.天徳寺層上部産化石底生有孔虫群集の多くは,上部漸深海帯での堆積を示唆する.天徳寺層最上部の堆積の間,本地域は温暖な水塊の影響を受けた.笹岡層下部は,温暖な水塊の影響を受けた外部浅海帯に堆積した.
著者
佐藤 至 鈴木 忠彦 小林 晴男
出版者
Japanese Society of Veterinary Science
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.731-734, 2005 (Released:2011-03-05)
著者
澤田 晶子 佐藤 博俊 井上 英治 大谷 洋介 半谷 吾郎
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第28回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.108, 2012 (Released:2013-11-01)

ニホンザルの主要食物である植物と異なり、単独で点在するキノコは絶対量が少なく、あっという間に食べ尽くされてしまうため、学習のチャンスが極めて少ない食物である。菌類相の多様性が高い屋久島において、ニホンザル (Macaca fuscata yakui) は何らかの手段で毒キノコを識別して忌避しているのだろうか。本研究では、ニホンザルが食べたキノコ・食べなかったキノコの分子種同定結果を基に、ニホンザルのキノコに対する選択・忌避の傾向とその基準について解明した。 調査は屋久島に生息する野生ニホンザルAT群を対象とし、2009年8月から2010年9月にかけて実施した。キノコはニホンザルの採食時間のわずか2.2%を占めるにしかすぎなかったが、年間を通じてニホンザルは少なくとも67種 (31属) という非常に多様なキノコを食べていたことが判明した。採食時の行動に着目したところ、ニホンザルは手に取ったキノコに対してにおいを確認する、かじって吐き出すという検査行動を取ることがあった。そこで、採食時の行動パターンを、ニホンザルがキノコに遭遇したとき・手に取ったとき・検査行動を見せたとき・食べたときと4段階に分けて分析した。結果は、ニホンザルが検査行動なしですぐに食べるキノコは毒キノコである割合が低く、ニホンザルが途中で採食を止めたキノコは毒キノコである割合が高いことを示すものであった。これらのことから、ニホンザルはキノコに対してある程度事前の知識を有しており、味覚とあわせて毒キノコ回避において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 さらに、キノコの属性や系統について詳細な解析をおこない、ニホンザルのキノコに対する選択・忌避の傾向との関連性を検証する。
著者
佐藤 潤一
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.129-172, 2011-06

From 1990's, theories of Japanese Constitutional Law had been radically changed. The constitutional law is discussed by many books and articles of the political theory, history of law, and the philosophical theory. Constitutional theory is influenced by these theories. In this lecture note, I try to reconsider the theories of constitution interpretation, especially the historical aspects and comparative study about the constitutional theory of common law countries, e.g., U.K., Australia, Canada, New Zealand and South Africa.
著者
小泉 昌子 徳田 愛華 佐藤 吉朗 峯木 眞知子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.416-424, 2019 (Released:2019-07-27)
参考文献数
16

本研究では, 牛乳添加時のコーヒーの温度の違いが, ミルク入りコーヒーのおいしさに与える影響を明らかにすることを目的とした. ミルク入りコーヒーの分析項目として, 物理的特性, 温度, 香り, 時系列官能評価 (TDS法), 嗜好型・分析型官能評価を行った. 1 . TDS法では, 90℃試料で口中と飲み込み後の20秒から50秒まで苦味が有意であり, 80℃試料は口中10秒間で特徴的な味はなく, 飲み込み後に苦味, 甘味, 再び苦味が有意であり, 70℃試料は口中では苦味,飲み込み後は牛乳味が有意に気になる感覚であった. 2 . 評点法による官能評価では, 90℃試料・80℃試料は同様のプロファイルを示し, 70℃試料は他の2試料に比べ, 甘味が強く, 苦味・後味が有意に弱かった. ミルクの好み, 総合評価で70℃試料は90℃試料よりも好まれた. 重回帰分析では, 総合評価に牛乳感の強さが影響を与えることがわかった. 3 . ブラックコーヒーが90℃の時点で牛乳を添加すると約15℃, 80℃・70℃の時点で添加すると約10℃温度が低下した. 室温では, 3試料間の粘度に有意差はなかった. 4 . GC-MSでは5種の香気成分が検出され, ブラックコーヒーと比べると, 2-methylfranは80℃・70℃試料で少なく, pyridineは90℃・80℃試料で多かった. 以上, 70℃で牛乳を添加した試料は検出された香気成分が他の2試料に比べ少ない傾向にあり, 甘味が強く, 苦味・後味が弱く, 飲み込み後に牛乳味が気になる感覚と評価された.
著者
佐藤 淑子
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.20, pp.1-10, 2013-03-31

"本研究は、 育児期家族において、 社会・人口動態的な変数が、 父親と母親の自己認識や性別役割分業意識、 夫婦間コミュニケーション、 心理的ストレスにどのような影響を与え、 それが育児の協同にどうかかわっているかを検討した。 対象者は乳幼児を育てる366組の夫婦である。 主な結果は、 (1) 父親の労働時間が長い場合、 子どもの身体的な世話の頻度が少ない。 (2) 夫婦間コミュニケーションがよいと、 父親は子どものしつけ、 遊びの行動を多くする。 (3) 父母の自尊心は育児への肯定感と相関があるが、 母親の就業形態による自尊心に顕著な違いはみられない。 (4) 心理的ストレスは有職母親の方が父親より高いが、 仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーは父親の方が高く、 家庭内のミクロのジェンダー・ポリティックスの可能性が示唆された。 (2012年 9月28日受稿)"
著者
進藤 浩子 深澤 光晴 飯嶋 哲也 高野 伸一 門倉 信 高橋 英 横田 雄大 廣瀬 純穂 佐藤 公 榎本 信幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.2389-2398, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
22

【目的】ベンゾジアゼピンを用いた従来のERCP鎮静ではしばしば脱抑制による体動を認める.安定した鎮静を得られる方法としてドロペリドール,フェンタニル,ケタミンを用いた静脈麻酔による鎮静法の安全性と有効性を評価した.【方法】対象はERCPの鎮静にミダゾラムとペンタゾシンを用いた従来法群42例とドロペリドール,フェンタニル,ケタミン(DFK法)群17例.評価項目は鎮静関連偶発症および鎮静効果とした.【結果】SpO2 90%未満を認めた症例は従来法で4例(10%),DFK法で1例(6%)と有意差は認めなかった.体動により処置継続に支障があった症例は従来法で8例(19%),DFK法で0例とDFK法で良好な鎮静効果を得られる傾向を認めた(p=0.09).鎮静困難ハイリスク症例である飲酒習慣を有する21例では,鎮静不良となる症例はDFK群で有意に少なかった(従来法 50% vs DFK法 0%,p=0.02).【結論】DFK法は従来法と比較して同等な安全性で施行可能であった.飲酒習慣を有する症例ではDKF法の方が有効な鎮静が得られた.
著者
赤林 伸一 坂口 淳 佐藤 久遠 浅間 英樹
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.11, no.22, pp.315-318, 2005-12-20 (Released:2017-04-14)
参考文献数
3
被引用文献数
4 3

The purpose of paper is to develop the simplified measurement technique of the coefficient of performance (COP) for the household air-conditioner. Furthermore, using the developed COP measurement technique, we measured COP of air-conditioner in five residences. We compared the result of a simple measuring method and a detailed measuring method, and the simple measuring method checked validity.
著者
三宅 恵介 松井 崇 佐藤 武尊 横山 喬之 竹澤 稔裕 川端 健司 秋本 啓之
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.19-27, 2014

The All-Japan Judo Championships (AJJC) is an open-weight tournament for determining the best judoka in Japan. The AJJC has been held under the Kodokan Judo Refereeing Rules (KDK Rules) since 1951. In 2011, the All-Japan Judo Federation (AJJF) introduced the International Judo Federation Refereeing Rules (IJF Rules), which were formulated to facilitate more dynamic judo (increased wins by <i>ippon</i>, decreased wins by judges' decisions, and decreased <i>mate</i>-time). Although the IJF Rules has facilitated dynamic judo in international competitions, their effects on the competition contents in the AJJC are still unknown. Here, we aimed to clarify whether the introduction of the IJF Rules facilitated dynamic judo in the AJJC.<BR>The 221 judo matches in the AJJC from 2008 to 2013 were separated into two groups, the tournaments following the KDK Rules (2008-2010) and those following the IJF Rules (2011-2013). Their data were extracted from the AJJC records by<i> Judo</i>, the official Kodokan journal, and from the match videos recorded by the AJJF. We analyzed the proportions of winning contents (wins by <i>ippon</i> or superior performance), winning methods (points from techniques or penalties, or judges' decisions), techniques for getting points (<i>te-waza, koshi-waza, ashi-waza, sutemi-waza, </i>or<i> katame-waza</i>) and the <i>mate</i>-time for each match. A chi-square test and an independent <i>t</i>-test were used to perform statistical analyses, and for each test, statistical significance was assumed at <i>P</i> value < 0.05.<BR>For the winning methods of the IJF Rules' and the KDK Rules' tournaments, the proportion of points from techniques (60.4% vs. 53.6%) and points from penalties (23.4% vs. 15.5%) showed no differences, but the proportion of wins by judges' decisions in the IJF Rules' tournaments was significantly lower than in the KDK Rules' tournaments (16.2% vs. 30.9%) (P < 0.05). Furthermore, the <i>mate</i>-time in the IJF Rules' tournaments was significantly shorter than in the KDK Rules' tournaments (77 s vs. 105 s) (P < 0.01). However, the winning contents and techniques for obtaining points showed no differences between the IJF Rules' and the KDK Rules' tournaments.<BR>We confirmed for the first time that the IJF Rules did not affect the winning contents and techniques for getting points, but decreased the proportion of judges' decisions and <i>mate</i>-time in the AJJC. These findings suggest that the IJF Rules partially facilitated dynamic judo in the AJJC.
著者
加藤 公道 佐藤 良二
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.89-97, 1975 (Released:2007-07-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

白肉桃 (大久保および白鳳) を10°C, 15°C, 20°C, 25°C, 30°Cの各温度で追熟し, 呼吸量, エチレン排出量, 硬度, はく皮性, 糖分, 食味などを調査して, モモの追熟生理を検討した.1. 大久保の20°Cでは, 25°Cよりエチレン排出量が速く増加してピークも高く, 呼吸量もピークに早く達し, はく皮も早く可能になつたが, 軟化は25°Cもほぼ同様に進んだ. 20°C, 25°Cでは, 呼吸のピークの2~3日後にエチレン排出量がピークに達し, その後急速に減少した. 呼吸のピーク時の熟度は20°Cが適熟, 25°Cは過熟であつた.2. 白鳳では1日後のエチレン排出量が大久保より多く, 軟化は速く進んだ. 25°Cでは, 20°Cより呼吸量が早くピークに達し, 軟化も速く進んだが, エチレン排出量は20°Cもほぼ同様に増加した.3. 10°C, 15°Cでは, 呼吸量, エチレン排出量がゆるやかに増加し, 軟化は穏やかに進み, はく皮性の進行もかなり遅れた. 大久保の10°C, 15°Cではエチレン排出量, 軟化, はく皮性が25°Cとほぼ同じ状態まで達したが, 10°Cではフレーバーが劣つた. 大久保の15°Cでは, 呼吸のピーク時からエチレン排出量が減少するまでの期間が, 25°Cと異なり長かつた. 適熟に達するまでの追熟期間は, 25°Cと比べて, 10°Cでは約3倍, 15°Cは約2倍であつた.4. 30°Cではエチレン排出量が抑制されて, 減少する傾向が認められた. 呼吸量の増加はほとんど認められなかつたが, 軟化は白鳳では25°Cと同様に速く, 大久保では2~3日後まで25°Cよりやや遅れたが, その後は速く進んだ.5. 30°Cでは還元糖は漸増した. 水溶性ペクチン含量は軟化の進行とともに増加し, 硬度と密接に関連した.6. 以上の結果から, 追熟温度は果肉の色, エチレン排出量, 軟化の速さなどに影響を及ぼし, エチレンは呼吸の climacteric, 軟化, はく皮性の進行などを促進した. 呼吸量, エチレン排出量, 軟化, はく皮性などは追熟中相互に関連しながら進んだが, これらの相互関係は品種, 追熟温度により影響を受けることが認められた.
著者
佐藤 崇徳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

学校教育でのGIS活用の普及を考えた場合,経費や操作技能の問題からフリーウェアなどの利用が現実的であり,インターネット上で提供される無料サービスの活用も一つの方策と考えられる。インターネット上での地図サービスは,量・質(機能)ともに充実してきている。いくつかの地図サービスでは,API(Application Program Interface)と呼ばれる,外部のウェブサイトから当該サービスを利用するためのプログラム上の規約を公開するようになった。これにより第三者が,自身のウェブサイトに地図サービスを組み込み,必要に応じて表示内容や機能をカスタマイズすることが可能になり,目的に合わせて独自の内容を盛り込んだ様々な地図がインターネット上に登場するようになっている。筆者はこれに注目し,インターネット地図APIを使って地理教育用の地図教材ウェブサイトの開発を行っている。その一部は既に報告済みであるが(佐藤 2011),その後の成果を本発表では報告したい。 民間企業が提供する一般的なインターネット地図は,道路地図のようなデザインが採用されており,地理教育において利用とするには不十分である場合も多い。一方,国土地理院の電子国土Webシステムでは,地形図に近い内容の地図画像が表示されるので,従来の地理教育において地形図の読図の学習として扱ってきた内容に対応し,その特徴を活かした活用法も考えられる。そうした観点から,先には電子国土Webシステムを用いて,地図画面上に任意の地点の情報(現地の景観写真など)を表示させる地図教材サイトを構築した。 それに対して,今回はGoogleマップのAPIをベースに,電子国土WebシステムVer.4で配信される地図画像を組み合わせての構築を試みた。電子国土Webシステム(Ver.3以前)は国土地理院が独自の仕様で開発を進めてきたもので,ユーザーが独自のコンテンツの用意する際の容易さなどの面で問題があった。これに対し,2011年に公開されたVer.4ではシステムが改められた結果,電子国土Webシステムから配信された地図を,他のソフトウェアで使用することが可能になった。そこで,代表的なインターネット地図として広く使われているGoogleマップのAPIを利用して,電子国土Webシステムの地図を表示させることにしたものである。これにより,Googleマップの使いやすい操作性や,APIの豊富な機能を活かして,教材としての利用に適したウェブサイトの構築が可能になった。 さらに,プログラムの部分と地図上に載せるデータの部分を分離し,データはテキストファイルとすることで,Excel等のソフトを使って簡単にデータが入力・編集できるようにした。プログラムに関するファイルとデータ入力用のテンプレートを近日中に公開する予定であり,コンピュータに関する高度な知識がなくとも,全国各地の地理教員などオリジナルの情報を持っている人が独自の教材サイトを作成し,公開できる仕組みを意図している。 本研究では地図投影法に関連する地図教材も作成した。ズームやスクロールが自由に行えるインターネット地図は,投影法としてメルカトル図法を採用していることが多い。これは技術的な事情によるものであるが,正積図法ではないメルカトル図法の世界地図を分布図などに用いるのは適当ではない。しかし,だからこそ,世界地図はひずみを持っていて,球面上をそのまま表したものではないということを生徒に学習させることは,情報リテラシーの面からも重要であるといえる。 Googleマップはメルカトル図法であるが,APIでは球面上での位置関係に適合するように図形(線など)を地図上に描くことができる。これを利用して,球面上での位置や世界地図に関する学習において役立つ地図教材の作成を試みた。教科書に掲載される地図は,メルカトル図法で東京とアメリカ西海岸を結ぶ大圏航路と等角航路が描かれたものや東京中心の正距方位図法など,定番のものに限られているが,今回作成した教材は,ごく簡単な操作で任意の2地点間の大圏航路と等角航路を描いたり,任意の地点を中心とした方位線と等距圏を描くことができ,さまざまな視点から球面上の世界をとらえることを支援するものである。