著者
山本 輝太郎 佐藤 広英
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.183-191, 2022-02-20 (Released:2022-03-15)
参考文献数
21

本研究ではオンライン掲示板でのコミュニケーションにおいて,ファシリテーション的介入が参加者に及ぼす影響を実験的に検討した.「深海には,絶滅したと思われている古代の生物の子孫がまだ生き残っている」「銀河系内には地球と同じような生命を持つ惑星が存在する」という科学的な内容に関連する二つのトピックを設定し,ファシリテーションの有無を条件として実験参加者に議論をさせた(ランダム化比較試験).ファシリテーター役は毎日,その日の議論を整理するなどの介入を行った.実験の結果,ファシリテーションありの掲示板ではなしの掲示板と比較して参加者の攻撃的なコメントや集団極性化が抑制され,批判的思考態度が向上した.オンライン掲示板におけるファシリテーションの有効性が示唆された.
著者
三神 彩子 三浦 理絵 喜多 記子 佐藤 久美 長尾 慶子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 61回大会(2009年)
巻号頁・発行日
pp.174, 2009 (Released:2009-09-02)

【目的】家庭部門でのエネルギー使用量増加が近年顕著であり,資源の有効活用および地球温暖化防止の観点から省エネルギー(以下省エネと表記)対策が重要課題となっている。 食生活分野での調理に適した道具の選択はエコ・クッキングの観点から重要な因子である。本研究では,幅広い料理法に対応できる中華鍋(鉄)の特性を活用し,省エネ,CO2削減効果をはかることを目的に,「炒める」「焼く」「揚げる」「蒸す」「煮る」の5操作法別に代表的な調理を実施し,他の鍋類との比較・検討をおこなった。 【方法】ガス積算流量計,熱電対温度計,温度計測記録器を使用し,加熱操作法別に,調理道具(中華鍋,西洋蒸し器,蒸籠,フライパン,揚げ鍋,グリル)ごとの調理時のガス・水使用量, 試料内部温度,仕上がりまでの加熱時間を測定し,さらにCO2排出量に換算した。 【結果】中華鍋は,その形状から火力を効率的に活用でき,熱伝導率が高く,「炒める」では,中華鍋の方がフライパン(鉄)と比較し約26%,フライパン(テフロン)とでは約56%の省エネ効果があった。「焼く」は,中華鍋の方がフライパン(鉄)と比べ約13%,フライパン(テフロン)とでは約47%の省エネ効果があった。「揚げる」は,グリルでも省エネ効果が認められたが,仕上がり(外観)を考慮すると中華鍋が適しており,揚げ鍋と比較し約15%の省エネ効果があった。「蒸す」では,中華鍋で蒸籠を使った場合と,西洋蒸し器使用とで比較すると,約19%の省エネ効果があった。「煮る」は,弱火・長時間加熱の煮込料理で中華鍋の省エネ効果はみられなかった。以上5項目中4項目の加熱操作の中華鍋使用の料理で13~56%の省エネ,CO2削減効果が確認できた。
著者
江村 隆起 古村 眞 渡辺 栄一郎 尾花 和子 佐藤 毅
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

無用の長物として扱われてきた虫垂は、安易に切除される傾向にあったが、虫垂の免疫学的な重要性が報告され、虫垂を失うリスクが知られるようになった。そこで、虫垂炎を予防し、虫垂を残していくことが重要である。近年、急性虫垂炎の虫垂内は、口腔内細菌であるフゾバクテリウム属菌が優勢であることが報告された。腸管内へ移行し難い口腔内細菌が、虫垂細菌叢で優性となる原因の究明が、虫垂炎の病態解明につながる可能性がある。そこで、口腔内細菌叢と虫垂炎の関連について検討し、口腔内環境改善による虫垂炎の予防法について検討する。
著者
佐藤 敬 上原 聡 福永 泰之
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.82(2002-DSM-026), pp.19-24, 2002-08-23

理工学系の大学・研究機関を集積した北九州学術研究都市では,キャンパス内に整備された情報ネットワークの一体的な管理運営を行っている.小稿では,学術研究都市におけるネットワーク構築と運用に関する先駆的な取り組みについて紹介する.また,その取り組みの一つであるコンピュータウイルス対策を通じて,これまでに明らかになったネットワークの問題点を述べるとともにその解決策を探る.最後に,本ネットワークの抱える課題について議論を行う.
著者
佐藤 純一
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1968, no.52, pp.107-109, 1968-01-31 (Released:2011-10-21)
参考文献数
5
著者
鈴木 恭平 佐藤 浩章
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.49-67, 2019 (Released:2019-06-07)
参考文献数
24

本研究では、地震波干渉法による共通仮想震源によるグリーン関数を用いた位相速度推定法の適用性を検討するために,若狭湾地域の16 地点で連続観測を実施し,相互相関関数のシグナルが大きい正側およびシグナルが小さい負側のそれぞれを用いた場合について,位相速度を推定しその結果を比較した。共通仮想震源から観測点への伝播に対応する側の相互相関関数のシグナルが明瞭な場合,共通仮想震源によるグリーン関数から安定して位相速度を推定することが可能であり,自然地震を用いた場合の位相速度とも調和的であった。一方,共通仮想震源からの伝播に対応する側の相互相関関数のシグナルが不明瞭な場合,位相速度の推定ができなかった。そこで,遅れ時間の正負を反転させた相互相関関数を共通仮想震源によるグリーン関数として用いた結果,良好に位相速度を推定できることがわかった。さらに,本研究のように相互相関関数が正負非対称となる場合には,シグナルが強くなる方向に観測点を配置することでも,位相速度推定が可能となることを示した。
著者
中村 清香 佐藤 浩昭
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.483-493, 2022-09-05 (Released:2022-10-05)
参考文献数
27

質量分析法はポリマーキャラクタリゼーションにおいて有力な手法であり,測定装置の高分解能化とともにますますその利用範囲が拡大している.その一方で,マススペクトルが複雑になるため解析が困難になるという課題があった.その課題に対し,著者らはマススペクトルを二次元プロットへと展開することで視覚的に成分分布を表現する「ケンドリックマスディフェクト(KMD)解析」を,実用的なポリマー分析へと初めて適用した.さらにKMD解析を工業製品として用いられる複雑な組成を持つポリマー材料の組成分析へと適用するために,KMDプロットの高分解能化を行った.あわせて,KMD解析に適用できる高強度のマススペクトルを,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOFMS)で観測するための,簡便な試料前処理法を開発した.さらにKMD解析の適用範囲をMALDIのみならず,他のイオン化法を用いたデータへも拡大した.このような成果により高分解能質量分析法を用いたポリマーキャラクタリゼーションが加速されると期待される.
著者
佐藤 大介
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.70, pp.220-234, 2019-04-01 (Released:2019-04-18)
参考文献数
11

Are we able to capture just the working consciousness by reflection? Several Husserl researchers to date have answered no to this question. This is serious for Husserl phenomenology. This is because Husserl phenomenology is an academic discipline to analyze the workings of consciousness, using reflection as the basic method. If it is impossible to capture just the working consciousness by reflection, the phenomenological approach will leave unknown the most crucial data. In this way, the problem of the discrepancy between the method and purpose of Husserl phenomenology has been repeatedly pointed out and widely shared in Husserl research since Klaus Held was first discussed. This problem is “the problem of reflection”. However, as some of the previous studies have acknowledged, Husserl himself does not explicitly address the problem of reflection. This seems strange. It is extremely natural to ask whether or not it is possible to capture just the working consciousness by reflection since it is the methodological core of Husserl phenomenology. So did Husserl adopt it as the basic method for phenomenology without carefully examining it? Given the fact that Husserl dealt with phenomenological methods thematically many times, that is hard to believe. Rather, I suppose that Husserl phenomenology has an argument that answers yes to the above question. In this paper, unlike many previous studies, I discuss Husserl’s early theory of time up to the early 1910’s, not the late theory of the 1930’s. Because there seems to be something overlooked or misunderstood in the opinion of the previous studies on Husserl’s early theory of time. They consider that just a working consciousness can be captured only by a subsequent reflection. However, Husserl insists that the working consciousness is captured by reflection now. In this case “now” is not a momentary “now”, but a “wide range” now.

1 0 0 0 日本の刀剣

著者
佐藤貫一 著
出版者
至文堂
巻号頁・発行日
1961
著者
佐藤 信吾
出版者
日本メディア学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.181-199, 2022-01-31 (Released:2022-03-29)
参考文献数
38

This paper clarifies the interaction between journalism and social authorities through commemoration to construct the war memory, focusing on the “memorial visit” conducted by Heisei Tennō and the social remembrance of the Battle of Manila. Heisei Tennō visited the Philippines in January 2016 as a final overseas destination in his lifelong journey to console the spirits of war victims.In conventional journalism theory, social authorities are perceived as powers enforcing the dominant memory frameworks through commemoration, while “forgotten” memories are invisible. Journalism stands on the same side as social authority and either reinforces these frameworks or opposes the authority’s stance and criticizes them. During the “memorial visit,” however, Heisei Tennō attempted to unearth the “forgotten” memory (the Battle of Manila), and his trip triggered a debate about Asian-Pacific war memory in Japanese society. Journalists also noticed the importance of this memory and reported it on a much larger extent than before. This situation shows that social authorities and journalism can interact with each other, and these interactions can excavate “forgotten” memories. In this paper, I analyze articles from the Asahi Shimbun, Yomiuri Shimbun, Nikkei Shimbun, and Manila Shimbun (local newspaper in Manila), and clarify the structure in which Japanese journalism became aware of the memory of the Battle of Manila through reports on the “memorial visit.” It becomes clear that the three Japanese newspapers had hardly reported on the Battle of Manila before the “memorial visit.” Moreover, the number of reports increased dramatically during the journey. In addition, I discuss the difficulty of the continuous recall of memories led by a one-time event (“memorial visit”) from the viewpoint of journalism routine theory (news value theory and August journalism in Japan).
著者
佐藤 稜 沢谷 洋平 柴 隆広 広瀬 環 佐藤 南 石坂 正大 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.673-677, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

〔目的〕要支援・軽度要介護高齢者における抑うつとサルコペニアの関係を明らかにすること.〔対象と方法〕通所リハビリテーション利用者,要支援1・要支援2・要介護1の65歳以上の高齢者79名,男性45名,女性34名を対象とした.抑うつの程度におけるサルコペニアの有病率と抑うつの程度における筋力,身体機能,骨格筋量の関係を検討した.〔結果〕男性のみ抑うつの程度とサルコペニアの有病率に有意な関連を認めた.また,男性は抑うつが強くなるに伴い骨格筋量の有意な低下が認められた.女性においては有意差が認められなかった.〔結語〕抑うつとサルコペニア間に,性差が存在し男性要支援・軽度要介護高齢者において抑うつとサルコペニアに関連があることが明らかとなった.
著者
合谷 祥一 村上 敦 佐藤 桂子 稲積 佐代子 山野 善正
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.679-684, 2000-09-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
11

疎水基であるトリテルペノイド基にカルボキシル基が結合したムクロジサポニン(SS)の界面活性,乳化性,クリーミング安定性およびゼータ電位に対するpHの影響を調べ,特にクリーミング安定性とゼータ電位についてSoyasaponin I (SI)によるエマルションと比較した.(1) 界面生成直後の界面張力は,pH 7以下でほぼ一定であり,pH 8以上で大きく増大し,pH 9で一定になった.界面生成3時間後では,pH 5以下で,界面に不溶性の膜が観察された.(2) SSはpH 6未満でそれ以上よりも低い乳化性を示した.(3) SSのエマルションのクリーミング安定性はpH 6以下で低くなり,乳化性と一致した傾向を示した.pH 7以上では,SIよりも平均粒径が低いにも関わらず,高い水相分離率を示した.(4) ゼータ電位は,pH 6から8にかけて増大し,pH 8.5以上でほぼ一定になった.また,どのpHにおいてもSIエマルションのゼータ電位よりも低い値を示した.
著者
佐藤 洋祐 松田 律史 民谷 健太郎 増井 伸高 松田 知倫 瀧 健治 丸藤 哲
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】我々はしばしば悪性症候群(NMS)に遭遇する。またICU-acquired weakness(ICU-AW)が知られているが、近位筋が侵され中枢神経に影響はない。今回我々はNMSに中枢神経を含む全身性の神経疾患を合併した一例を経験したので報告する。【臨床経過】60歳代男性。搬送3日前より四肢の脱力・感覚鈍麻を自覚、歩行困難・呂律障害も出現し当院搬送となった。既往症は双極性障害と脂質異常症で、内服薬は炭酸リチウム 600mg/日、クロチアゼパム 15mg/日、メコバラミン 1.5mg/日、フルニトラゼパム 2mg/日、ゾテピン 25mg/日。来院時現症:GCS E4V5M6, 瞳孔 4+/4+、RR 12/min、SpO2 98%(室内気)、HR 134bpm、BP 161/118mmHg、BT 36.8℃。頭部・胸腹部および脳神経(II-XII)に異常所見認めず、上下肢の脱力及びdermatomeに一致しない感覚鈍麻を認めた。頭部CT/MR、CXR、胸腹部CT、ECG及びUCGに特記所見は認めなかった。血液検査で軽度の白血球増多およびCRP高値を認めた。23年来のLi内服者で、血中Li濃度は低値だったが晩期リチウム中毒として入院加療を開始した。補液により感覚鈍麻は改善したが、四肢の脱力と、横隔膜の筋力低下を認めた。髄液検査では蛋白細胞解離を認めたが、原因は不詳であった。GBSやCIDPを考慮し各種検査を追加したが、オリゴクローナルバンドやGQ1b抗体、GM1抗体は陰性で、髄液HSV抗体は既感染パタンだった。血清IgG抗体は高値を示したが、IgG4は正常範囲に留まった。HIVは同意が得られず検査できなかった。第4病日に意識レベルの低下と頻脈を認め、第5病日に発熱、眼球の上転、著名な発汗をきたし、NMSを疑い診断基準を検討したが、CKの上昇や筋強剛は認めなかった。EEGでは群発波・鋭波を認めた。神経伝導速度検査で潜時の延長および振幅の低下を認め、末梢神経脱髄と判断し、最終的に振戦のないNMSと診断した。ステロイドパルス療法(mPSL 1000mg/day)を3日間施行し、意識状態および頻脈・血圧高値の改善を得た。脱力も改善した。しかし脳波異常および髄液検査異常を説明できず、精査を目的に第10病日に神経内科へ転院した。【結論】NMSに、末梢神経の脱髄性ポリニューロパチー、蛋白細胞解離および鋭波を伴う中枢神経が関与する病態の一例を経験した。ICU-AWを考慮したが横隔膜の筋力低下を伴っていた。本症例では中枢神経が侵されており、全身性疾患の一部であった可能性は否定できないが原因は不詳であった。
著者
佐藤 文隆
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.275-278, 2018-12-06 (Released:2019-01-08)

筆者は「元気な物理学」の時代(概略1955-65年)を経験したが,そこには計算機革命を主導するなど,「開かれた学問」のマインドに満ちていた。電子は素粒子であると同時にコンピュートする存在でもある。自然は人間の概念世界のなかに描かれるものである。力学の物理教育では実在とツールの関係の考察が必要であり,量子力学の解釈問題はこの点に関わっている。ツールは他の学問に波及する威力を持つ。