- 著者
-
喜屋武 享
高倉 実
- 出版者
- 日本健康教育学会
- 雑誌
- 日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.3, pp.229-245, 2019-08-31 (Released:2019-08-31)
- 参考文献数
- 53
目的:教科学習中の学習を伴う身体活動介入(active lesson program,以下,ALP)の質を評価し,介入による身体活動,体格,健康指標,学業への有効性に関するエビデンスを更新すること.方法:2015年4月から2018年8月に公刊された学術論文を5つの電子データベース(ERIC, PubMed, Science Direct, Cochrane Library, EMBASE)より選定した.選択基準は1)身体活動と学習内容の双方が含まれた授業であること,2)身体活動量,体格,体力要素,学業成績,学習行動促進要因を介入効果指標としていること,3)ランダム化比較試験,準実験デザイン研究,前後比較研究のいずれかであること,4)5歳~18歳の児童生徒が対象であること,5)介入期間が少なくとも1週間以上であること.学習内容が含まれない身体活動小休止,複合的な介入の一部として実施されたALP,特異的な集団(肥満児や障がい児)を対象とした研究は除外した.研究のバイアスリスクは,the Cochrane Collaboration “risk of bias” assessment toolを用いて評価した.結果:10研究が採択・除外基準に適合した.そのうち,6研究は身体活動と学業の双方を,3研究は学業のみを,1研究は身体活動のみを評価した.10研究のうち2研究は,ALPと有酸素運動による小休止を比較したのに対し,その他は身体活動を伴わない授業を対照群として設定していた.全ての研究でALP後の身体活動量の増加を認めた.身体活動を伴わない学習と比較した場合,ALPの標準学力テストに対する積極的効果を示した研究は2研究あったが,その他の研究は群間の差を示さなかった.学習行動促進要因の1つである課題従事行動を評価した4研究が,ALPの積極的効果を示した.バイアスリスクは低程度から高程度であった.結論:研究デザインの質は改善しているものの,バイアスリスクは高い.総じてALPは学力を阻害することなく身体活動を促進させることのできるプログラムであるといえるものの,健康指標への有効性について言及するためには更なる検討が必要である.