著者
平野 京子 新村 紀子 安田 和正 朝倉 みどり 木下 茂美
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.602-608, 1983-08-01 (Released:2012-03-21)
参考文献数
19
被引用文献数
4 3

ハトムギはわが国では古くより疣贅に対し単独漢方薬として広く民間に用いられてきたが, その成分や薬理学的, 免疫学的作用機作に関しての記載は乏しい。今回われわれの教室ではin vitroの実験にてハトムギの各種細胞に対する傷害活性が, いわゆるヨクイニン(種子)よりもその外皮(種皮と果皮, とくに種皮)の方がより強いことを実証した(第1報, 第2報)。そこで臨床的治験として, 外皮を集めこれを熱水抽出して遠心沈澱しその上清を処理して注射用液とし, 沈渣を外用剤として尋常疣贅と扁平疣贅に対する治療を試みた。注射は週1回0.1∼0.3ml皮内に, 外用は1日数回塗布した。その治療成績の結果は, 尋常疣贅では, 注射法より外用剤の塗布の方がよい成績を得, さらに注射と異常に過角化した角質をメスで削除して外用剤を塗布した例の方がより良い結果が得られた。扁平疣贅は, 外用剤塗布のみにて治療を行つたところ, 治癒または有効で無効例はなく, 良い成績であつた。すなわち, ウイルス性疣贅の治療には, ハトムギ果実の外皮による外用剤使用によりかなりの効果が期待出来るものと思われた。その作成法, 治験対象, 結果について述べ, 考察を加えた。
著者
小倉 晃 恩田 裕一 小松 義隆
出版者
石川県農林総合研究センター林業試験場
雑誌
石川県農林総合研究センター林業試験場研究報告 = Bulletin of the Ishikawa Agriculture and Forestry Research Center Forestry Experiment Station (ISSN:21874840)
巻号頁・発行日
no.44, pp.1-17, 2012-04

石川県では平成19年度から「いしかわ森林環境税」を導入し、水源地域を中心に手入れ不足人工林の強度間伐を行い、森林の公益的機能の確保に努めている。そこで、強度間伐による森林の水源涵養機能の回復効果について調査を実施した。調査対象林は石川県内のスギ、アテ(ヒノキアスナロ)人工林で、このうち間伐実施前、強度間伐実施後、目標林(下層植生が豊かで健全な森林)の合計42箇所で、振動ノズル型散水装置を使用して、地表流量や地表流中の土砂濃度を測定した。調査の結果、間伐実施前の手入れ不足人工林の浸透能は、強度間伐をすることによって高まり、流出水中の土砂濃度も減少することがわかった。
著者
山崎 せつ子 鎌倉 矩子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.434-444, 2000-10-15

要旨:障害児の親であることを受容した親の適応過程は有用な情報を提供する.今回,自閉症児の親であることを受け入れた母親から,その過程の生活物語(子が6歳に至るまで)を聴取し,育児によせる思いの変遷と変遷を促した要因を検討した.その結果,この母親の思いは不安,闘争,運命への順応,障害の理解と究明への欲求,最適環境の追求,自己肯定と変遷したことがわかった.これらはDrotarらが示した先天奇形児の親の心理適応と大筋は一致したが,この母親の独自性をも示すものであった.思いの変遷を促した要因の中で,日常的出来事,母親自身の内発的力は特徴的だと思われた.一個人の詳細を知ることの意義が示されたと考える.
著者
小倉 晃 高橋 大輔
出版者
石川県林業試験場
雑誌
石川県林業試験場研究報告 (ISSN:03888150)
巻号頁・発行日
no.38, pp.27-32, 2006-03

石川県鹿島郡中能登町石動山県有林で、ヒノキアスナロ(以下、アテ)人工林の表土浸食の実態および表土浸食防止機能の評価方法開発を行った結果、間伐手遅れのアテ林分では、下層植生が消滅、林床被覆物・表土の流出が起こり、4.6-11.7/ha/yr流出していると推測された。また、立木密度と傾斜からアテ人工林における年間浸食量の予測方法を確立した。さらに、USLE式におけるアテの作物管理係数が明らかになったが、林小班単位でのUSLE式による表土浸食防止機能評価はさらなる検討が必要であった。
著者
倉橋 弘 柿沼 進
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.167-200, 2015
被引用文献数
3

日本産のニクバエ全種の検索表を作成するために,ニクバエの標本を再検討したところ,新たに本州(千葉県)より採集されたニクバエが新属新種であることがわかったので,パペニクバエ属キサラズニクバエPapesarcophaga kisarazuensis Gen. nov., sp. nov.として記載した.日本昆虫目録(倉橋,2014)には36属119種が記録されているが,その後に2種ワタナベギングチヤドリニクバエOebalia pseudopedicella Kurahashi & Kakinuma, 2014とタテヤマギングチヤドリニクバエO. pseudoharpax Kurahashi & Kakinuma, 2014が記載されたので,キサラズニクバエを含めると日本産ニクバエは122種となった.ニクバエは外形がよく似ており,特に,ニクバエ亜科のニクバエでは,これまで,主に雄の外部生殖器の形態が種の分類に使われてきたが,外形でも出来るだけ属や種が検索できるように試みて,122種の検索表を作製した.チェックリストは著者らの調べた標本に基づいて作製し標本のデ-タも付した.属の数については亜属からもとの属位にもどしたものもあり43属となった.
著者
倉田 智子 阿部 康二
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.126, no.2, pp.155-157, 2014-08-01 (Released:2014-09-01)
参考文献数
4
著者
木村 宏樹 元田 英一 鈴木 康雄 金井 章 吉倉 孝則 種田 裕也
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.225-232, 2010 (Released:2016-04-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

前十字靱帯(ACL)再建術術後の大腿四頭筋筋力訓練の一つにレッグプレス運動がある.本研究では,レッグプレス運 動において,姿勢の違いがACL にかかる負荷である脛骨引き出し力や筋張力に与える影響について考察した.矢状面から動作計測を行い,下肢関節角度と足部に作用する反力から筋骨格モデルを用いて脛骨引き出し力や筋張力を推定した.11 種の姿勢について検討した結果,脛骨へは常に後方引き出し力が作用しACL 再建術術後の大腿四頭筋筋力訓練としてレッグプレス運動は安全であること,体幹を屈曲させることでより大きな後方引き出し力が作用しより安全に行えることが示唆された.
著者
曽田 武史 遠藤 弘樹 矢倉 千昭 荻野 和秀 萩野 浩 辻井 洋一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.A0809, 2004

【目的】筋硬結などの筋病変は関節可動域制限や感覚障害のみならず,障害部位の冷え,発汗異常などの自律神経機能障害も複雑に絡んでいることが多い。マイオセラピーはMyoVib(マイオセラピー研究所)の振動刺激により,これらの障害を改善する治療方法として開発,考案された治療技術である。本研究では,健康成人を対象にMyoVibの振動刺激が自律神経機能に及ぼす影響について検討した。<BR>【対象】循環器障害の既往のない健常な成人6名(男性3名,女性3名)で,平均年齢は20.2±1.9歳であった。すべての対象者に対して研究主旨と内容を説明し,同意を得た上で研究を実施した。<BR>【方法】対象者は腹臥位となり,呼吸数を15回/分に維持させ,第2胸椎から第5胸椎レベルの多裂筋に振動刺激を20分間実施した。MyoVibは振幅3mm、周波数30Hzのものを使用した。心電計はLifeCorder-8(日本光電)を用い,CM5で記録した。記録は実施前,実施中,実施直後,実施終了10分後,実施終了20分後に3分間ずつ記録した。分析方法は心電図波形をBIMUTAS II (キッセイコムテック)でサンプリング周波数200HzにてA/D変換し,3分間の心拍から定常な128拍を分析対象に平均RR間隔,標準偏差,心拍変動係数(CVRR)の算出と周波数解析を行った。スペクトル解析ではRR間隔を平均RR間隔で再サンプリングし,スプライン補間にて連続関数を得た。解析方法は高速フーリエ変換を用い,得られたスペクトルから低周波成分(LF)および高周波成分(HF)のパワースペクトルを求めた。このパワースペクトルから,LF/HFを求め,LF/HFを交感神経活動,HFを副交感神経活動の指標とした。統計処理は実施前を基準に,実施中,実施直後,実施終了10分後,実施終了20分後の平均RR間隔,CVRR,LF/HF,HFの変化をWilcoxon signed rank testで行った。<BR>【結果】実施前と比較し,平均RR間隔は,実施中および実施終了20分後に有意な減少(p<0.05)が認められた。CVRRは実施中と実施終了10分後に有意な減少(p<0.05)が認められた。LF/HFは実施直後に有意な低下(p<0.05)が認められ,その後増加する傾向がみられた。HFは実施後および実施終了10分後に有意な低下(p<0.05)が認められた。<BR>【考察】CVRRでは実施中および実施終了10分後に有意に減少していることや,実施直後にLF/HF,HFがともに有意に低下していることから,MyoVibによる振動刺激は,交感および副交感神経の双方の活動を抑制する傾向がみられた。今後は対照群を設け,実施中,実施後の自律神経活動の変化についてさらに検討していく必要がある。
著者
廣瀬 智也 小倉 裕司 竹川 良介 松本 寿健 大西 光雄 鍬方 安行 嶋津 岳士
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.933-940, 2013-11-15 (Released:2014-01-07)
参考文献数
23

【背景】自転車事故は小児期外傷の要因であるが,小児の自転車ハンドルによる直接外力の危険性は一般的に知られていない。【目的】小児自転車ハンドル外傷の特徴を明らかにすること。【方法と対象】2000年1月1日から2011年12月31日に当センターに来院した自転車関連外傷(15歳以下)を検討し,ハンドル先端により受傷した群(ハンドル外傷群)とそれ以外の自転車乗車中事故例(非ハンドル外傷群)に分けて比較検討した。【結果】ハンドル外傷群9例,非ハンドル外傷群46例。ハンドル外傷群は男児7例,女児2例,平均年齢8.6±3.4歳,平均ISS 8.8±5.3,ICU滞在日数7.4±4.6日,生命予後は全例良好であった。受傷部位は頸部1例(気管損傷:1例),胸部1例(胸部打撲のみ:1例),腹部7例(肝損傷:3例,膵損傷:1例,後腹膜出血:1例,腎損傷:1例,膀胱・腹壁損傷:1例)であった。治療は緊急手術治療1例,待機手術治療1例,緊急TAE1例,保存的治療6例であった。ハンドル外傷群は,非ハンドル外傷群と比べると年齢,性別,ISS,ICU滞在日数,転帰に有意差はなかった。腹部AISスコアはハンドル外傷群で有意に高く,頭部AISスコアは非ハンドル外傷群で有意に高かった。搬送経緯では,現場からの直接救急搬送は非ハンドル外傷群で,転院搬送はハンドル外傷群で有意に多かった。【考察】自転車ハンドル外傷は外力がハンドルの先端に集中するため,外見以上に重篤な深在性内臓損傷を伴うことが多いが,受傷機転などから過小評価されるケースがしばしばある。自転車ハンドル外傷の予防としては,自転車ハンドル先端の形状を工夫する,腹部への防護服を装着するなどが挙げられる。【結語】小児自転車ハンドル外傷は深部臓器の損傷を伴いやすく,初療における慎重な診断が求められる。
著者
間形 文彦 藤村 明子 亀石 久美子 加藤 俊介 板倉 陽一郎
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2019-DPS-180, no.3, pp.1-8, 2019-09-12

「パーソナルデータは新しい石油」 といわれ,その利活用がユーザや社会に利便性と新たな価値を提供している.その一方で,本人の意思に反する利活用をした事業者が法的制裁を受け,社会的な批判を浴びる事例も後を絶たない.事業者は個人情報の利用目的を特定し,通知又は公表若しくは同意を得てその目的の範囲内で取扱うことはもちろん,その目的と取扱いをユーザにより分かりやすく説明する責任がますます求められる傾向にある.同じユーザに対して複数のサービスを展開する事業者の場合,サービスごとに個人情報の利用目的を次々と定めることが多い.その場合,業務と利用目的の対応関係は複雑となりがちで,複数サービスの提供を受けるユーザは自分の個人情報が何の目的で利用されるのか把握するのは容易でない.他方,事業者にとっても複数の業務において利用目的を逸脱せずに個人情報を扱えるか正しく判断することは困難となる.そこで,数多くの外延を列挙して定義する従来の利用目的の特定方法に代わり,ユーザの意思決定に重要な契約履行上の必要性と利用行為の方向性の 2 つの軸による内包的枠組みを用いて利用目的を分類する方法を提案し,その枠組みを適用した事例を紹介する.
著者
渡邉 遥輔 山口 大輔 倉光 君郎
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.3, 2019-09-18

スマートコントラクトはブロックチェーン技術に基づいたプラットフォーム上で実行される分散型アプリケーションである.スマートコントラクトでは,資産のやり取りや権利の譲渡といった契約事項をプログラムとして実装でき,ブロックチェーン上で安全に実行できる.スマートコントラクトの開発言語としてSolidityと呼ばれるJavaScript風プログラミング言語がよく用いられる.しかし,Solidityは契約事項の可読性が低く,契約内容の理解が困難という課題がある.本発表では,より自然な日本語でスマートコントラクトを記述可能なプログラミング言語Nicoを提案する.Nicoの設計と実装を述べ,スマートコントラクトの記述をNicoで行う効果について考察を行う.
著者
湯沢 質幸 沼本 克明 小倉 肇 清水 史 二戸 麻砂彦 岡島 昭浩 佐々木 勇 肥爪 周二 蒋 垂東
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

成果の中心は次の4点にまとめられる。(1) 既に実験的に研究開発し終えた、日本漢字音データベース(大字音表)の根幹となるソフト及びデータについて、それが実用に十分耐えうるかどうかを実践形式を取り入れて検証したこと。(2)((1)を踏まえて)実用に耐えうるソフトの完成度を高めるとともに、それにのっとって日本漢字音研究における基礎中の基礎となる韻鏡データを実用に耐えうるまでに再構築し、一定の完成度に達したデータベースを作成したこと。(3) 将来における大字音表の発展・拡充を目指した基礎的な調査、研究作業を行うことができたこと。すなわち、近い将来における大字音表への複数資料の字音データ掲載を目指して一部資料について日本漢字音の整理を行えたこと。また、同様に、日本漢字音資料の発掘や調査、及び研究を行えたこと。(4) 国内外の漢字音研究者の研究の便宜を図って、実用に耐えうる『韻鏡』データを載せた日本漢字音データベースをインターネット上に公開したこと。
著者
菅原 拓也 荒井 浩一 倉本 敬二 東海林 徹 浅倉 聖岳 白石 正
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.678-686, 2016-10-10 (Released:2017-10-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1

We previously reported that insoluble particulate matter formed during the mixing of injectable drugs. We considered that the contamination derived from the disposable injection syringe used for the mixture as one of the causes. Therefore, in the present study, we evaluated the amount of insoluble particulate matter caused by using a 50-mL syringe of each manufacturer, using syringes of various capacities and number of piston times (suction and expulsion) of the syringe. Furthermore, we were able to identify the components of the insoluble particulate matter that formed. As a result, we found that a lot of insoluble particulate matter was expelled from the 50-mL syringes of each manufacturer that increased with the capacity of the syringe and the number of piston times. In addition, we found that the insoluble particulate matter was from the silicone oil coating on the inner surfaces of the syringes.
著者
倉谷 徹
出版者
日本循環制御医学会
雑誌
循環制御 (ISSN:03891844)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.171-178, 2015 (Released:2016-01-21)
参考文献数
10

大動脈弁狭窄症に対する治療は、四半世紀の間、人工弁置換術がgold standard となっていた。その成績は十分に満足できる早期及び遠隔成績を得ていたが、高齢者やhigh risk 患者において、手術困難もしくは不可能とされていた患者が多数存在すると言われている。そこで、2002 年より経カテーテル的大動脈弁植え込み術(transcatheter aortic valve implantation, TAVI)が臨床導入され、これまでに約10 万例以上の症例にこの手術が施行された。本邦では、2009 年に我々が第一例目を施行し、2013 年10 月よりEdward SAPIEN XT が市販されるようになった。その後2000 例以上の症例が安全に施行されている。ただ体格の小さい日本人特有の解剖学的制限があり、今後新たなる基準を独自に構築する必要があると同時に、日本人に適した新しいデバイスの早急な導入を各会社とも検討の必要がある。