著者
前田 宜浩 笠原 稔
出版者
北海道大学大学院理学研究院自然史科学部門(地球物理学) = Department of Natural History Sciences (Geophysics), Graduate School of Science, Hokkaido University
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.219-230, 2009-03-15

On August 2, 2007, a shallow crustal earthquake occurred at west off Sakhalin Island, far eastern Russia. Moment magnitude (MW) of this earthquake determined by Global CMT is 6.2. This earthquake generated severe damage to habitants and buildings at Nevelsk city near the epicenter. Visible large uplift was reported along the coast, and tsunami was observed even though its small magnitude. Teleseismic broadband waveforms from IRIS show long-duration P-wave pulse; the duration is comparable to that of MW 6.8 event. Teleseismic data also show later phases at some stations. Seismic source model is estimated using teleseismic data by applying the waveform inversion method. The estimated source model is compared with those from two earthquakes occurring in Sakhalin. The 2007 event is characterized by the slow slip event. Spectral ratio based on broadband strong-motion data between the 2007 event and MW 5.6 event shows that smaller excitation of short-period seismic waves by the 2007 event than the MW 5.6 event. This feature is also confirmed by the analysis of teleseismic waveforms. Theoretical source spectral ratio based on the ω^[-2] source model using source parameters estimated from the waveform inversion well explains the observed spectral ratio. Seismic moment derived from waveform inversion is smaller than those derived from the crustal deformation and tsunami data. An aseismic slip is considered as a possible cause of this discrepancy.
著者
金山 尚裕 シャイナロン リンバラパス 成瀬 寛夫 山本 信博 藤城 卓 前原 佳代子 森田 泰嗣 寺尾 俊彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.477-482, 1992-04-01
被引用文献数
4

切迫早産において頚管に浸潤した顆粒球から放出される顆粒球エラスターゼ (エラスターゼ) が頚管の熟化, 開大に密接に関係することが知られている。エラスターゼのインヒビターであるウリナスタチン (UTI) の腟剤が切迫早産の治療に有効であるかを検討した。43例の切迫早産を4群に分類し次の治療法を行った。A群 (N=12): Ritodorine点滴, B群 (N=9): UTI (1,000U) 頚管内投与, C群 (N=14): Ritodorine点滴+UTI頚管内投与, D群 (N=8): Ritodorine点滴+UTI頚管内投与+全身抗生物質療法。これら4群のエラスターゼ値は治療前A群0.76±0.40μg/ml (Mean±SD), B群0.93±0.43μg/ml, C群0.85±0.40μg/ml, D群0.90±0.41μg/mlで各群間で有意差を認めなかった。治療開始後 (3日目から7日目) のエラスターゼ値はA群0.75±0.47μg/ml, B 群0.27±0.35μg/ml, C群0.27±0.33μg/ml, D群0.30±0.19μg/mlとなりB, C, D群は著明に下降した。子宮収縮の改善度を検討すると, 子宮収縮が30分に1回以下になるまでの時間は, A群65±66分, B群375±336分, C群70±64分, D群58±53分で, B群が有意 (p<0.05) に時間を要した。4日以上子宮収縮抑制が得られた時点で上記治療を中止した。その後の子宮収縮の再発率はA群58%, B群11%, C群14%, D群13%でA群の再発率が高かった。以上よりUTI腟剤の頚管内投与は頚管内エラスターゼ量を低下させ子宮収縮抑制の補助療法として極めて有用であることが判明した。
著者
田谷 修一郎 前原 吾朗 小島 治幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.328, pp.49-52, 2006-10-19
被引用文献数
1

視覚刺激呈示中の後頭部の血流変化を近赤外分光分析(NIRS)によって計測した.刺激は7.5Hzで明暗が反転する直径12度の放射状チェッカーパターンであり,視野全体,もしくは上下左右に4分割した視野に呈示された.1計測セッションでは15秒の刺激呈時と30秒の休息を5回繰り返し,この間の後頭部の血流変化を3cm間隔で正方形状に配置した4×4のプローブによって計測した.呈示視野条件別にそれぞれ2セッションの計測を行った結果,下半視野に刺激が呈示される場合にのみ,刺激呈時視野に対応した領野で酸化ヘモグロビン濃度の上昇と脱酸化ヘモグロビン濃度の減少が認められた.
著者
前田 英三 三宅 博 石原 愛也 武岡 洋治 河野 恭廣 谷口 武 和田 富吉
出版者
名古屋大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

イネについて、in vivoにおける受精胚の発達様式と、in vitroであるカルスの再分化過程を詳細に比較したが、in vitroでの不定胚形成は認められなかった。アブサイシン酸(ABA)や高濃度の糖はカルスの再分化を促進した。数種イネ科作物を異なった土壌水分条件下で生育させ、根の形態を比較した結果、乾燥条件下で皮層内厚壁組織の発達が顕著であった。+ABAやブラシノライドがイネ科作物やマメ科牧草の老化種子の発芽促進効果を持つことを明らかにした。熱量計を用いて種子の活性を迅速かつ非破壊的に判別する方法を開発した。高温・乾燥などの異常環境下で生育させたイネの生殖器官に現れる形態異常を明らかにし、ジベレリン(GA)とABAの関与を推察した。イネの花粉と葯内緒組織の発達過程を調べ、タペ-ト肥大が発生する際には、当初は小胞子の細胞も活性化することを明らかにした。リンゴの胚珠内胚培養、葯培養からの不定胚発生、葉カルスからの再分化について最適条件を明らかにした。またリンゴ台木マルバカイドウの胚珠内胚培養を行い、高蔗糖濃度の培地で胚の生長が起こり、GAを含む培地に移すことにより実生を得ることができた。イネカルスやダイズ懸濁培養からプロトプラストを分離し、電気的に融合させ、融合過程の微細構造を明らかにした。レ-ザ光による植物細胞への色素導入を行い、生細胞に色素が導入されていることを確認した。マツバボタンの緑色カルスにおける葉緑体のグラナ構造を観察し、カルス内に維管策鞘が分化するとそこではグラナ形成が抑制されることを明らかにした。シコクビエのジャイアントド-ムからの花芽形成に成功した。またジャイアントド-ムとバミュ-ダグラスの体細胞胚の微細構造を明らかにした。Nicotiana glutinosaのカルスより分化能を持つ細胞のみを分離して継代培養することに成功した。このカルス系統の組織構造と遊離アミノ酸含量の特徴を明らかにした。
著者
安藤 英由樹 飯塚 博幸 米村 朋子 前田 太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.34, pp.137-142, 2010-05-06

本稿では,パラサイト・ヒューマン・ネットワークを用いた五感情報通信によって安全安心応用を実現するために,光学共役な視覚共有システムを実現し,このシステムによって実時間支援,追体験学習の実現可能性を示す実験とその結果からパラメータの設計指針について報告する.
著者
前田 幹夫 松下 吉宏 野田 勉 原田 守夫 瀬藤 幸児 尾花 毅 改正 高章 清水 信作 井口 政昭
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.20, no.35, pp.31-36, 1996-06-20
被引用文献数
6

Through utilization tests or the 64QAM signal under tentative specifications, intensive works have been made to standardize digital broadcasting signal format over cable television systems. At first, we describe an indoor experiment on the adjacent interference between the 64QAM signal and 3 types of analog modulation signals so far being supposed to transmit through cable television facilities. Next, we describe field tests conducted at 2 operative facilities under allowable ranges of DU ratio.
著者
樋口 京一 森 政之 澤下 仁子 亀谷 富由樹 内木 宏延 前田 秀一郎
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アミロイドーシスとは蛋白質がアミロイド線維に異常凝集し、生体に傷害を与える疾患群である。アミロイド線維による伝播現象に注目して、合成ペプチドを用いた新たな線維形成解析システムと新規のアミロイドーシスモデルマウスの開発を行い、アミロイドーシスの発症機構や治療方法に関して体系的な解析を行った。その結果、1)糞や骨格筋を介した新たな伝播経路の発見、2)線維形成阻害ペプチド、熱ショック転写因子(HSF1)、アポリポプロテインA-I(apoA-I)等の治療ターゲットの発見、3)今後アミロイドーシス研究者が利用可能なモデルマウスの開発、などの成果を得た。
著者
前澤 裕之 山本 智 鵜澤 佳徳 長濱 智生 入交 芳久 山本 智 鵜澤 佳徳 長濱 智生 入交 芳久
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

大気中の酸素原子(OI)やOHラジカルは、オゾン層回復・破壊や地球温暖化、揮発性有機物質の消失過程について理解を深める上で鍵を握る成分である。我々はこれらのガス種の1.8-4THz帯スペクトル線のリモートセンシグを実現すべく、NbTiN超伝導細線を集積したホットエレクトロンボロメータミクサと呼ばれる次世代のヘテロダイン検出素子の改良・開発を行った。さらに、低振動のパルス管冷凍機を用いた冷却性能評価システムを開発し、これを実際に用いて、1.5THz帯でのHEBM素子の雑音性能、動作安定性を評価した。その結果、1600K以下の雑音温度(RF/LO結合効率とレンズ表面での反射を校正)を実現した。さらに、この最小雑音温度域には、中間周波(IF)出力(0.8-1.5GHz)の極大値が存在し、この場所において実用的な10秒以上の安定時間(アラン分散)を得られることが分かった。これは、電流電圧(局部発振波パワー)の揺らぎの影響がIF極大域では緩和されることを示唆する。我々のHEBM素子は特異な特徴をもつことが分かったが、これらは、本申請において安定・高信頼の冷却系・バイアス回路系などの評価システムをあわせて開発したことで、初めて得ることができた成果である。今後HEBMの1.8-4THz帯での高感度化・安定化を図り、測器搭載による実観測を目指す。
著者
前嶋 信次
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-37, 1959-04

一 突騎施可汗蘇禄二 蘇禄の全盛時代三 唐朝と蘇禄四 蘇禄の死五 黄姓と黑姓六 唐の對突騎施政策の一轉七 莫賀達干の運命八 唐軍の潰滅結語This chapter begins with the activities of Su Lu, Khaqan of Turgesh Turks. He engaged in successive battles for about sixteen years with the Arabs on one side and with the Chinese on the other. But, after he was murdered by Baga Tarkhan (Kursul) in 738, the Turgesh Turks splitted into two parties, Black (Kara) Turgesh and Yellow Turgesh. At first, the authorities of T'ang dynasty supported the yellow party, but afterwards changed their policy and helped the black party. The battle of the Talas between the Arabs under Abbasid Caliphate and the Chinese of T'ang occurred amid the Turgesh territory in 751 after the expedition of Chinese frontier general Kao Hsien-shih to Shash (present Tashkent in Tajik SSR). However, as to the reason why the Chinese gave such a chastisement on the king of Shash, the descriptions of Chinese historians do not coincide with those of Arab chroniclers. The Chinese sources say that general Kao punished severely the king of Shash because the latter neglected the duty as a subordinate state. Ibn al-Athir, Arab historian in the 13th century, stated that the king of Farghana came into conflict with the king of Shash, the former asked for aid to the Emperor of China who sent a large force to besiege the capital of Shash and that Abu Muslim dispatched one of his generals to rescue the besieged. In my opinion, both of these records, Chinese and Arab, are not sufficient to explain the real cause of the accident. I think that Kao Hsien-shih punished the king of Shash because the latter was the most fervent helper of Yellow Turgesh, while the policy of T'ang at that time was to support the other Black Turgesh.
著者
前嶋 信次
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.657-691, 1958

慶應義塾創立百年記念論文集はしがき一 二大勢力の接近二 西突厥故地の經營三 波斯の滅亡と吐火羅四 第三勢力としての吐蕃五 碎葉城の護り六 クタイバ・イブン・ムスリム七 フェルガーナの運命The battle at Talas in Central Asia, fought between the Chinese army of T'any dynasty and the Arab and Iranian troups of Abbassid Caliphate in 751 A.D., was not only significant from political and military standpoints, but it produced various interesting effects on the history of cultural intercourse between the West and the East. But the Chinese sources concerning this event are comparatively poor and the Arabic sources astonishingly scarce. The researches into the history of Heart of Asia in this period are admirably executed by E. Chavannes, W. Barthold, H.A.R. Gibl and other scholars. However, we cannot find any monograph which treats particularly this serious encounter. In my opinion, there still remain considerable parts to complement the studies of the predecessors. In this preliminary chapter, I wish to re-examine the relations and contacts between T'any dynasty and the Caliphate from the beginning to the day of Talas. As to the direct causes of the incident and the relating circumstances, I intend to publish my opinion shortly in the SHIGAKU, historical quarterly of Keio University.
著者
山本 光正 宇田川 武久 齋藤 努 三宅 宏司 保谷 徹 山本 光正 坂本 稔 PAULJACK Verhoeven 前川 佳遠理 高塚 秀治 村上 藤次郎 法華 三郎信房 法華 三郎栄喜 伊達 元成 服部 晃央
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

国内・国外に所蔵される銃砲に関する文献史料(炮術秘伝書)および実物資料(銃砲)の調査を行い、16世紀なかば鉄炮伝来から19世紀末の明治初年までの日本銃砲史が5期に区分できることを示し、またその技術的変遷を明らかにした。鉄炮銃身に使用されている素材である軟鉄を作るための精錬方法である大鍛冶はすでに技術伝承が途絶えていたが、文献記録にある各工程の意味を明らかにし、その再現に成功した。
著者
安藤 政志 堀田 政二 渋谷 久恵 前田 俊二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.467, pp.127-130, 2011-03-03
被引用文献数
1

本稿では,尤度ヒストゲラムと呼ばれる複数のセンサごとに求めた尤度を累積したヒストゲラムを特徴量とする記述子を提案し,これを用いてその日が正常に稼働した日(正常日)であるか,あるいは異常を起こした日(異常日)であるのかをSupport Vector Machine (SVM)でクラス分類する方法を提案する.このヒストグラムを求めるために,まずガウス関数を用いてセンサごと・時刻ごとのモデルを構築する.次に,各時刻でモデルごと(センサごと)に尤度を計算し,それらの累積値を投票数にもつヒストグラムを作成する.さらに,ヒストグラムを時間階層化(ピラミッド化)することで,異常検知の精度改善を試みる.これらの記述子を用いることで,one classの分類器以外の分類器による正常日,異常日の分類が可能となる.実際に稼働している精密機器のセンサデータを用いた実験により,提案手法の有効性を管理図と比較しながら検証する.
著者
前田 一也 唐山 英明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.155, pp.5-10, 2011-07-16
被引用文献数
1

本研究は,従来のBCIの欠点であったユーザの身体拘束の緩和のため,携行性を持たせたウェアラブルブレインコンピュータインタフェースシステムを開発するのが目的である.そのために本研究では脳情報のみを用いて撮影することができるBCIカメラシステムを試作し,その性能を検証した.実験はラーニングフェイズとテストフェイズから成り,ラーニングフェイズでは,被験者は直立状態で2種類の聴覚刺激を用いたオドボール課題を行い,被験者のP300を計測した。ラーニングフェイズで計測した脳波を教師データとして,テストフェイズで被験者は屋外においてBCIカメラシステムを使って対象物を撮影する課題を行った,実験の結果,すべての被験者が課題を達成した.
著者
前島 渉
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究で対象とした地層はインド、オリッサ州およびジャールカンド州の石炭-ペルム系タルチール累層、オリッサ州の白亜系アトガー累層、西南日本の新第三紀山陰-北陸区に属する糸生累層および国見累層である。このうちオリッサ州のタルチール累層、アトガー累層および国見累層で重要な成果を得た。タルチール累層の研究では、石炭紀末からペルム紀にかけてのゴンドワナ氷床の衰退と消滅の初期段階において急斜面性ファンデルタが形成され、その過程で氷河の崩壊や山間の氷河湖の決壊が頻繁におこり、高流速かつ浅水深の大規模なシート洪水流が頻発して、射流領域での堆積作用がおこったことが明らかとなった。このようなシート洪水流堆積物には反砂堆起源の中〜大規模な斜交層理がよく保存されている。アトガー累層については、上部扇状地堆積物中に認められる側方への連続性のよい塊状砂岩や弱く成層した礫まじり砂岩がシート洪水流堆積物であると考えられ、礫まじり砂岩の成層構造がシート洪水流内で常流と射流の両領域が繰り返すことによって形成されていったことを明らかにした。国見累層では、扇状地堆積物中の特に下部扇状地起源と考えられる地層に、反砂堆起源の斜交層理をともなう射流領域のシート洪水流堆積物がよく発達しており、河川流の作用よりはむしろシート洪水の作用の方が卓越したため射流領域の堆積物の地層への保存ポテンチャルが高くなったと考えられる。これは扇状地面の傾斜が交差点近傍で急変し、傾斜が一気に低下することによって河川流の運搬能が急速に衰えて粗粒砕屑物の堆積が一気に起こり、そのため河川チャネルが激しく分岐して浅化してついにはチャネルの形態をも失ってしまったためとみなされる。そのため洪水時には下部扇状地を広くおおうような高流速・浅水深の射流領域のシート洪水がひんぱんに発生したと考えられる。
著者
高野 忠 牧謙 一郎 相馬 央令子 千葉 茂生 前田 崇 藤原 顕 吉田 真吾
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.561-573, 2006 (Released:2010-06-18)
参考文献数
40

超高速な衝突や静的な圧力で物質を破壊する時,マイクロ波が発生することが見出された。本論文では,この現象を観測するための実験系,得られた内容・事実,そして物理探査に応用する可能性について述べる。この分野は多くの読者にこれまで余りなじみがないと思われ,かつ瞬発マイクロ波の受信・計測という特殊な技術を用いるので,全体的な記述に重きを置き詳細は省く。受信系では、まずマイクロ波信号を低雑音増幅器で増幅した後,観測する周波数にたいし十分高い標本化周波数でディジタル化して,データを取り込む。観測周波数としては,22GHz,2GHz,300MHz,1MHzを選んだ。データが多すぎて蓄積容量が足りない時は(22GHzと2GHz),ヘテロダイン受信で周波数を落としてからデータとする。 衝突実験における速度は最高約7km/secである。衝突標的の材料はアルミニウム,鉄などの金属,セラミック,煉瓦,ゴムなどを用いた。静的な圧力での破壊実験には,4種の岩石をコンプレッサで加圧した。得られたマイクロ波は,いずれの破壊モード・材料においても,断続的な極めて狭いパルス状である。岩石の静的圧力での破壊では,22GHzは硅石でのみ観測された。このようにして得られた波形は,パルス内でほぼ正弦波状なので,受信系を通して電力校正が可能である。その結果平均発生電力は2GHzにおいて,超高速衝突の実験で 2.7×10-5mW,静的圧力の実験で2.7×10-8mWであった。マイクロ波発生原因として原子あるいは分子間の結合が切れることが推定されるが,未だ確定するには至っていない。本現象は,次のような分野の物理探査に応用することを考えている。 (1)物質の性質探求:天体衝突現象,材料科学,宇宙デブリ問題 (2)地下構造の変動:岩石の破壊 (3)地震の探査