著者
佐原 久美子 福井 誠 坂本 治美 土井 登紀子 吉岡 昌美 岡本 好史 松本 侯 松山 美和 河野 文昭 日野出 大輔
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.106-114, 2022 (Released:2022-05-15)
参考文献数
25

本研究の目的は,口腔状態と後期高齢者の要介護状態や死亡など健康への悪影響の発生との関連を調べることである.対象者295名は,後期高齢者歯科健診プログラムに参加した75歳の徳島市の住民である.各対象者から得られたアンケート調査と歯科健診結果をベースラインデータとして使用し,さらに要介護状態または死亡(要介護等)の発生状況を縦断的分析のアウトカムとして口腔状態との関連性について調べた. ベースライン時で要介護状態であった20名を除いて,275名の対象者を5年間追跡した結果,18.9%にその後の要介護等発生が認められた.Kaplan-Meier分析により「固いものが食べにくくなった」「中程度/多量のプラーク・食渣の沈着」「現在歯数20歯未満」の項目該当者は非該当者と比較して,要介護等の累積発生率が有意に増加した.Cox比例ハザード分析により「固いものが食べにくくなった」「中程度/多量のプラーク・食渣の沈着」「義歯等の使用ができていない」「CPI = 2(深い歯周ポケット)」は,要介護等発生と有意に関連していることが明らかとなった. これらの結果は,「固いものが食べにくくなった」というオーラルフレイルに関連する症状が,後期高齢者の要介護等発生の予測因子となりうることを示唆している.また,口腔衛生状態不良,歯周状態の不良および義歯不使用は,高齢者の健康への悪影響と関連がある.
著者
萩原 久美子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.62-78, 2017-03-10 (Released:2019-04-15)
参考文献数
39
被引用文献数
1

福祉国家の展開過程において公共セクターは女性をよりよい雇用へと結びつけ,ジェンダー平等を促進する役割を果たしてきた。しかし,緊縮財政政策と世界的な景気後退によって女性の多い社会サービス分野の再編が進んでおり,公共セクターとジェンダー平等との関係は変化しようとしている。本稿では供給主体の多元化と市場化政策によって再編された日本の保育分野に着目し,公共セクターが政策実行者としても雇用者としてもケアワークの労働力編成に対するジェンダー変革的機能を弱化させ,ジェンダー不平等を拡大させていると主張する。第一に,保育士の社会的経済的評価の低下は2000年代以降に顕在化したものであり,公共セクターの保育サービス供給を縮小させる過程で公務員保育士の集団的交渉力を弱化させつつ保育士をコストとして削減対象としていったことを論じる。第二に,大阪市の保育士給料表を事例として公共セクターが積極的にジェンダー格差を拡大していったことを明らかにする。
著者
萩原 久美子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策学会誌 (ISSN:24331384)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.209-230, 2006-03-31 (Released:2018-04-01)

There has been much discussion regarding the measures required to disseminate child-care leave or family leave in the workplace, and correct gender disparities found in its application. However, "corporate climate," which has been pointed out as a barrier to said objectives, has not been analyzed with sufficient attention given to the dynamics that constitute it in the workplace. More importantly, it is a fact that the multi-layered gender issue that is both institutionally and historically embedded in child-care leave in Japan has yet to be scrutinized. This paper describes the bargaining process of the child-care leave contract negotiated by the Japan Telecommunications Workers' Union (in 1965), representing the initial case of child-care leave in Japan. This momentous case has not been studied independently, even though it is referred to as the pioneering work-family challenge. Thus, with little known about its actual process, the background of this contract is perceived simply as a response to the needs of working women who numbers rapidly increased in 1960s. This perception is based only on the domestic gender division of labor. With the main focus being on the forepart of the process or earlier discussions within the union, and with attention given to the gender dynamics among members of the workplace, this paper presents the following arguments. First, the concept and design of policy were devised from the idea of job security for telephone operators as a measure taken by the labor side to counter restructuring and technological innovations. Secondly, what constituted "family responsibilities" arose from motherhood ideology based on the modern family model that proliferated in the 1960s. Accordingly, the issue of leave itself has developed to include gender constraints within its application.
著者
伊木 亜子 菊地 和美 田中 ゆかり 土屋 律子 木下 教子 坂本 恵 佐藤 恵 菅原 久美子 畑井 朝子 藤本 真奈美 宮崎 早花 村上 知子 山口 敦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本調理科学会特別研究(平成24~25年度「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」)の資料とすることを目的として,昭和30~40年頃までに北海道に定着した家庭・郷土料理に関する書誌情報の調査および聞き書き調査を実施した。これらの調査から得られたおやつ・間食について,主材料や調理操作を分析し地域性を検討したので報告する。<br />【方法】調査は,北海道を道央・道南・道北・道東の4地域に区分し,平成25年4月~26年12月に実施した。<br />【結果】北海道全域で特産のじゃがいもを使った「いも団子」「いも餅」が多く,調理法や食べ方も多様である。また各地にデンプン工場があったため,「でんぷん焼き」や煮豆を加えた「でんぷん団子」もみられる。かぼちゃも各地でつくられ,「かぼちゃ団子」など利用が多い。穀類の利用も各地にみられるが,道南には特に古くから伝わる伝統の菓子が多く,米粉を利用した「こうれん」や「べこ餅」がある。その他では,雑穀のそば・キビなども,まんじゅうや餅に利用されている。全般的に,いもやかぼちゃ・豆類などの農産物,穀類の利用が多く,調理法は,煮る・蒸す・焼くなどが多い。<br />また北海道らしく,干した鱈・鮭(トバ)・かすべ・鰊・数の子など海産物が道北海岸やその他内陸においてもおやつになっている。自家栽培の果物ばかりでなく自生していた桑・野イチゴ・こくわ,胆振地方特産のハスカップも生や加工して利用している。牛乳を用いたおやつは,酪農が盛んな帯広を中心とする道東で,自家製の「牛乳豆腐」や「ヨーグルト」などあるが他での利用は少なく,酪農品を早くからとりいれた札幌で若干みられる。以上より,北海道のおやつ・間食は,各地の産物をうまく利用した地域性があることを確認した。
著者
原 久美子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

唾液腺マッサージの唾液分泌機能への効果を明らかにすることを目的に, 若年者と高齢者を対象とし, 唾液腺マッサージ直後の効果(短期効果)を調べ, 高齢者を対象に, 長期間, 唾液腺マッサージを行うことの効果(長期効果)について検討を行った。その結果, 若年者, 高齢者ともに短期効果が示唆され, 特に, 安静時唾液量の少ない者に有効であった。また, 高齢者においての長期間の唾液腺マッサージは, 安静時唾液量の維持および口渇感の改善に有効であった。2年間の研究により, 若年者, 高齢者に対する唾液腺マッサージによる唾液腺機能の賦活が示唆され, 唾液腺マッサージが口腔健康維持に役立つ可能性が示された。
著者
梅原 久美子
出版者
宗教哲学会
雑誌
宗教哲学研究 (ISSN:02897105)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.51-64, 1992 (Released:2018-03-21)

Augustine interpreted Genesis, 2, 2-3 from various angles in his “De genesi ad litteram.” The process of the interpretation is so complicated that we cannot grasp his intention at a glance. This article intends to clarify the relation between allegorical meaning and literal meanings of God’s rest. At first, Augustine interpreted God’s rest in a perfect allegorical way, that is, man’s eschatological rest in God. Secondly, his efforts are concentrated on literal meanings, namely, God’s government over creatures and God’s eternal beatitude. But in the course of investigation about literal meanings, Augustine made references to several allegorical meanings. It seems a little strange. How can we grasp his intention? The clue to the solution of this problem is in the relation between allegorical meanings and literal meanings. Augustine’s allegorical interpretation includes typological interpretation. Typological interpretation of the Old Testament is based upon historical meanings, and at the same time, it guides men to future meanings, which are realized or promised in the New Testament. The allegorical interpretation of God’s rest is also a typological interpretation. Therefore, it is based upon historical, literal meanings on the one side, and it can signify future, eschatological meanings on the other side. Conclusion: Augustine’s manifold interpretations of God’s rest are divided into three levels of meaning. The deepest level is God’s eternal beatitude, and on this deepest level of meaning, man can understand creation as God’s gracious works. Out of this gracious work develops God’s government over creatures as Conservation in general, but especially, over man as God’s consideration for man’s salvation, that is soteriological level of meaning. The aim of this consideration is man’s ultimate rest in God, that is, eschatological level of meaning. God’s will, which is found in creation as God’s gracious work, penetrates into every level of meaning. In this way, Augustine’s interpretations of God’s rest are extended to soteriological and eschatological dimensions.
著者
菅原 久美子 和泉 眞喜子 宮下 ひろみ 中村 恵子 會田 久仁子 村上 知子 菊地 和美 北山 育子 真野 由紀子 松本 祥子 大野 智子 高橋 秀子 齋藤 寛子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.129, 2010

【目的】米利用の地域性および米消費減少の要因を探るために、東北・北海道地方における米の摂取・調理状況に関する調査を実施し、前報<SUP>1)</SUP>では米の嗜好、摂取頻度、米に対する意識等について報告した。本研究では、米飯と代表的な米料理の摂取・調理状況について、東北・北海道地方における特徴と地域性について比較検討した。【方法】前報<SUP>1)</SUP>、同様である。<BR>【結果】三食とも米飯を摂取する割合は、全体で46.6%であるが、各県・道別にみると山形県71.4%、北海道29.9%となり、一日の米飯回数には地域差がみられた。山形県では黒米、宮城県では五穀米の使用が多い特徴がある。また無洗米の使用経験は各県道ともに多く、認知度や利便性等が広く浸透していることが窺われた。残りご飯は炒飯、雑炊としての利用が最多であるが、焼きおにぎりへの利用には地域差がみられた。おにぎりの具材はいずれも鮭、梅干しが上位であるが、たらこは秋田・青森県、こんぶは青森・岩手・宮城県、かつおぶしは北海道で多かった。炊き込みご飯、混ぜご飯、ちらし寿司を作る割合は各々88.4%、75.7%、62.6%であり、炊き込みご飯は秋田県、混ぜご飯は福島県、ちらし寿司は岩手県で作る割合が多く、いずれの米料理も、具の調理状況と盛りつけ時の具の飾り方には地域的特徴がみられた。具材を種類別にみると、炊き込みご飯では山形県のいも類(しらたき、こんにゃく)ときのこ類、北海道の藻類(ひじき、海苔)と魚介類(ほたて貝、ほっき貝)、混ぜご飯では宮城県の鮭の出現率が高く、地域の特産物が多く利用されている状況が窺われた。<SUP>1)</SUP>日本調理科学会平成21年度大会研究発表要旨集、p.47(2009)
著者
藤崎 春代 木原 久美子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.133-145, 2005-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
37
被引用文献数
2 1

本論文は, 統合保育への支援の一貫として企画・運営した研修実践を, 協働による互恵性をキーワードとして分析した。研修実践は実践報告と実践交流から成り立つが, 報告準備段階から保育者と相談員 (心理の専門家) の協働作業が始まり, 一連の協働を通して, 次のようなふりかえりと互恵的な学びが行われることが分かった。第1は, 準備段階で, 相談員が保育者の保育意図や悩みに注目してその明確化を求めることにより, 保育者は保育意図や転換点をふりかえった。そのふりかえりを複数の立場の保育者間で行うことにより, 保育者は自分の立場に特化した専門性を意識化した。相談員も巡回相談活動が保育にどのように活かされたかを学んだ。第2は, 実践報告をテキストとした実践交流により, 異なる園の保育者同士の間でふりかえりの重要性への気づきがなされ, ふりかえりのモデル伝達がなされた。この保育者のふりかえり作業に立ち会うことにより, 心理の専門家をはじめ他専門家も保育者との連携を模索することを促された。最後に, 心理の専門家の研修への貢献を, 相談員としての側面と心理学研究者としての側面との2側面から考察した。
著者
今井 一郎 原 久美子 有馬 和美 福室 智美 田中 博 菅谷 睦
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E1676, 2008

【はじめに】<BR> 臨床現場において脳卒中患者から標準型2輪自転車(以下自転車)に乗りたいという希望をよく聞く.2年前に実施したアンケート調査から,脳卒中発症後自転車を利用しなくなった人の約7割が自転車に乗りたいと回答し,自転車乗車のアプローチの必要性を認識できた.今回は健常者と脳卒中患者に自転車動作の観察と体力テストを行い自転車動作の機能を検討した.<BR>【対象】<BR> 普段自転車に乗車している健常成人23名(男性7名,女性16名,平均年齢44.9歳)と,脳卒中の既往があり屋外歩行自立の 3名(症例A:74歳男性,右小脳梗塞,Br.stage左右上肢手指下肢全て6,症例B:81歳女性,多発性脳梗塞,Br.stage左上肢手指下肢全て5,症例C:74歳男性,右脳梗塞,Br.stage左上下肢3手指5)とした.対象者には本研究について説明し同意を得た.<BR>【方法】<BR> 自転車動作は,走る(ふらつきを観察)・止まる(目標物の手前で止まる,笛の合図で止まる)・曲がる(ふくらみを観察),体力テストは握力・上体起こし・長座体前屈・開眼片足立ち(最高120秒)・10m障害物歩行・6分間歩行を実施した.症例BとCは自転車乗車前に前提動作として,スタンドをしてペダルを回す・片足での床面支持・外乱に対してブレーキ維持を実施した.<BR>【結果】<BR> 前提動作で症例Cは全て不可能であったため体力テストのみ実施した.自転車動作の観察では,健常者12名と症例Aで走行時ふらつきがみられた.症例Bは走行時ふらつきの観察まではペダルに両足を乗せることができなかったが,以降の止まるからはペダルを回すことが可能となった.止まるは健常者・症例共,目標物手前で止まることができ,笛の合図では健常者・症例共,同様の停止距離であった.曲がるは症例A・Bにふくらみがみられた.体力テストでは,症例全員が6分間歩行,症例B,Cは上体起こし,Cは10m障害物歩行が困難であった.実施できた項目も健常者と比べ低下していた.健常者の自転車動作と体力テストの関係では,開眼片足立ち120秒可能者の割合が,走行時ふらつきのあった群で41.7%,ふらつきのなかった群で100%となった.<BR>【考察】<BR>関根らは高齢者に10日間1日2回片足立位訓練を行い片足立位時間の延長と自転車運転動作の向上を報告し,自転車動作についてのバランス感覚の重要性を指摘している.今回は片足立位時間と自転車走行時のふらつきに関係がみられた.これらのことから片足立位バランスと自転車動作に関係があると考えられる.症例Cは重度の左上下肢の随意性低下と感覚障害があり,それが前提動作を困難にしたと推察され,自転車動作には四肢の分離運動機能や協調運動機能が重要と考えられる.小村はBr.stage上下肢4の脳卒中患者が3輪自転車のペダルを改良し乗車していると報告しており,症例Cも同様の方法による乗車の検討が考えられる.また症例Bは途中から走行が可能となったことから,練習での乗車能力の改善が示唆された.
著者
今井 一郎 原 久美子 赤岡 麻里 八森 敦史 石川 秀太 右田 正澄 宮島 奈々 菅谷 睦 田中 博
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EbPI2406-EbPI2406, 2011

【目的】臨床現場において,脳卒中患者から標準型2輪自転車(以下自転車)に乗りたいという希望をよく聞く.第43回学術大会では症例数3名で自転車動作を検討した.今回は症例を増やし,脳卒中患者の自転車動作の観察とStroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)を実施し,自転車動作に必要な身体機能を検討した.<BR>【方法】対象は,脳卒中の既往があり,発症前に自転車に乗ることができ,移乗動作自立の患者AからHの8名(男女4名ずつ,平均67.75歳,発症病月平均45.5ヶ月)と,週1回以上自転車に乗っている50歳以上の健常者9名(男性4名女性5名,平均65.56歳)とした. 方法は,脳卒中患者のSIASと自転車動作の観察を行なった.自転車前提動作(以下前提動作)は,1)スタンドをしてペダルを回す.2)ペダルに足を載せた状態から片足での床面支持,3)外乱に対してブレーキ維持とした.1)から3)すべて可能であれば,走る(10m自由な速度で走行し,タイム計測と,40cm以上のふらつきを観察)・止まる(10m走行後,目標物手前で停止の可否,笛の合図からの停止距離)・曲がる(外側に膨らまないように走行.1カーブ5箇所の床に40cm幅に貼ってある印で軌跡を確認.印を内側から1点2点とし,カーブ5箇所の合計点を算出)の自転車動作を行なった.健常者は自転車動作のみ実施した.<BR>【説明と同意】ヘルシンキ宣言に沿い,対象者には事前に書面で研究内容を説明し同意を得た.<BR>【結果】脳卒中患者のSIASは,上肢の項目では,患者Aは22点(運動9点,筋緊張5点,感覚5点,非麻痺側握力3点),以下同様に,B22(10,4,6,2),C19(8,4,5,2),D19(8,3,6,2),E23(10,5,6,2),F21(10,4,4,3),G17(6,4,5,2),H14(3,2,6,3)となった.下肢は,患者Aは26点(運動15点,筋緊張5点,感覚6点),同様に,B25(15,4,6),C26(15,6,5),D26(15,5,6),E22(12,4,6),F23(15,4,4),G17(8,4,5),H15(7,3,5)となった.前提動作は,ABCDは1)から3)すべて可能,EFGは1)3)は可能,2)は不可,Hは1)から3)すべて不可となった.自転車動作は健常者と前提動作すべて可能であったABCDで実施した.走るのタイム計測では,健常者平均5.75±0.96秒,脳卒中患者平均8.37±1.54秒で有意差(P<0.01)がみられ,ふらつきは健常者1名以外は40cm以上のふらつきがみられた.目標物手前で止まるでは,A以外は停止可能であった.笛の合図で止まるでは,停止距離が健常者平均143.78±34.83cm,脳卒中患者平均124.0±70.03cmで有意差はなかった.曲がるでは健常者平均25.56±3.28点,脳卒中患者平均35.25±5.25点で有意差(P<0.01)がみられた.<BR>【考察】前提動作では,2)が可能の患者は不可能の患者と比べて,SIAS下肢の得点が高い傾向にあった.また,SIAS上下肢とも最も得点の低いHは前提動作すべて不可能であった.僅かでも運動機能障害,感覚障害,筋緊張異常があると,前提動作の2)が困難となり安全な自転車動作ができなくなると考えられる.自転車動作では,走行時のふらつきにおいて40cm幅でも健常者のほとんどが不可能であった為,脳卒中患者も評価できなかった.目標物手前で止まるでは,Aはできる限り目標物の近くで止まるように意識したため接触した.自転車は速度が速いほど停止距離は長くなる.走るのタイム計測では健常者が脳卒中患者と比較しタイムが速かった.また笛の合図からの停止距離は差がなかった.これは,脳卒中患者の前提動作では問題がなかった僅かな上下肢の機能障害と,発症後自転車に乗車していない為,自転車乗車の感覚が健常者と比較して十分ではなかったことが,走行スピード低下やブレーキの遅れに繋がったと考えられる.それにより,脳卒中患者のスピード低下の為の停止距離の短縮と,ブレーキの遅れによる停止距離の延長が,健常者の停止距離と同等になったと考えられる.自転車は曲がるとき遠心力と重力を均衡させる為,曲がる方向に車体を傾ける必要がある.脳卒中患者は下肢の機能障害やスピード低下の為,車体を傾けることができずカーブで外側に膨らむと考えられる.以上により脳卒中患者の自転車動作には,非常に高い分離運動機能や協調機能,巧緻運動機能が重要である.また自転車乗車の感覚については,練習の有無による自転車動作の検討が今後必要と考えられる.<BR>【理学療法学研究としての意義】この研究は,自転車動作での基礎的運動機能と応用動作における差異や連携を明らかにし,理学療法学としての運動機能面の評価が深まると考える.
著者
土屋 律子 坂本 恵 鐘ヶ江 あゆ美 菊地 和美 木下 教子 坂本 佳菜子 佐藤 恵 菅原 久美子 田中 ゆかり 庭 亜子 畑井 朝子 藤本 真奈美 宮崎 早花 村上 知子 村田 まり子 山口 敦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】日本調理科学会特別研究(平成24~25年度)「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の先行研究・資料とすることを目的に昭和30~40年頃までに北海道に定着してきた家庭・郷土料理に関する書誌情報を収集した。地域を道央、道南、道北、道東に分け、北海道のみの記載、地域の特定のないものは、「北海道」としてまとめた。今回は、これらの資料に記載されている料理の地域性、主材料、調理操作について検討したので報告する。【方法】書誌収集は、平成25年3月~12月に実施した。収集された資料は62冊、料理数は1066件であった。料理の主材料を日本食品標準成分表2010年に基づき分類、調理操作は調理方法の記載、および明らかに推定できる操作を加え分類し検討した。【結果】料理数は、道東が多く全体の30.2%(322件)、道南23.5%、道央13.3%、道北10.2%であった。「北海道」は242件で、地域の記載がない28件を含めた。主材料を見ると、魚介類が37.9%と魚種、調理法も多く、中では鮭、鰊、いかの利用が多い。鯨、ごっこ、サメの利用もみられた。次いで野菜類(14.6%)、穀類(13.4%)、いも類(12.6%)と北海道の特産物の利用が多い。地域別では道南、道央は魚介類、道北は野菜類、道東はいも、野菜類の利用が多い。穀類は道央(29.6%)が多く道南、道北と続き、道東は6.4%と少ない。調理操作では、「煮る」が31.4%と最も多く、次いで「漬ける」(18.0%)、「焼く」(10.9%)、「和える」(7.2%)の順であった。「煮る」では、鰊の三平汁、鮭の石狩鍋、「漬ける」では、鰊、ほっけの飯ずし、いかの粕漬け、松前漬けなど、「焼く」では、いか焼きやいももち、ジンギスカンなどがあげられていた。地元の食材を多種多様に調理・加工し、利用している様子を窺い知ることができた。
著者
菊地 和美 菅原 久美子 木下 教子 酒向 史代 坂本 恵 高橋 セツ子 土屋 律子 芳賀 みづえ 藤本 真奈美 村上 知子 村田 まり子 山口 敦子 山塙 圭子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】年中行事や通過儀礼を行うハレの日には、食事も日常とは区別され、各家庭や地域で独自の習慣がみられている。食生活が多様化する中、地域における年中行事や伝統食を大切にし、次の世代への継承にむけた取り組みが推進されるようになってきた。そこで、本研究は北海道の行事食と儀礼食について、親子間(学生とその親)からみた認知状況や摂食状況などの実態把握を行い、地域性を明らかにすることを目的として検討した。【方法】調査は日本調理科学会特別研究(平成21~23年度)に基づき、北海道に居住する親181名と子181名(計362名)を対象として、調査時期は平成21年12月~22年8月に実施した。データは単純集計および親子間によってクロス集計を行い、χ2検定により分析した。【結果】親子間で認知・経験が一致する回答は、行事食が74.0%、儀礼食は49.8%であった。行事食と儀礼食を認知している割合は親が子よりも多く、親子間で有意差がみられたのは盂蘭盆、お七夜、百日祝い、初誕生、厄払いであった(p<0.01)。行事食と儀礼食の経験がある割合も親が子よりも多く、有意差がみられたのは春分の日、端午の節句、盂蘭盆、土用の丑、お月見、秋分の日、出産祝い、お七夜、百日祝い、初誕生、成人式、結納、婚礼、厄払い、長寿であった(p<0.01)。北海道の正月料理のうち、親子間で「現在、家庭で作る」という回答が一致していたのは、たこ刺身が7組(親子間一致なし12組)、くじら汁が2組(親子間一致なし3組)、いずしが2組(親子間一致なし2組)であった。今後はさらに、北海道における特徴的な行事食・儀礼食の親子間による伝承を検討する必要性が示唆された。
著者
佐々木 大祐 関 二郎 宮前 陽一 黄 基旭 永沼 章 神吉 将之 西原 久美子 平本 昌志 由利 正利 梅野 仁美 森口 聡 見鳥 光 廣田 里香
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.39, pp.P-17, 2012

腎乳頭部壊死(RPN; Renal Papillary Necrosis)は糖尿病や,鎮痛剤・抗癌剤等の服用等によって生じる腎障害の一つであり,薬剤の開発や臨床的使用に支障を来すことがある。しかしこれまでヒトにおいてRPNの発生初期から鋭敏に変動するバイオマーカー(BM)は知られていない。そこで我々は,トキシコプロテオミクス(TPx)及びトキシコゲノミクス(TGx)の技術を利用してRPNを検出するための新規BMを探索した。<br> 2-bromoethylamine hydrobromideによるRPNモデルラットを作製し,その尿をTPx解析に,剖検後摘出した片腎の乳頭部をTGx解析に用いた。もう一方の片腎では病理組織学的検査を実施し,各BM候補と比較検証した。更に腎臓内障害特異性確認のため,puromycinやcisplatin等で糸球体或いは近位尿細管を障害させたモデルラットでの結果と比較した。<br> RPNモデルラットのTPx解析の結果,急性期炎症性蛋白質を複数含む計94種の蛋白BM候補が得られた。TGx解析の結果,アポトーシスシグナルやIL-1シグナルの活性化,酸化ストレスの亢進等をうかがわせる遺伝子群の変化が認められた。特にfibrinogenとC3はTPx解析及びTGx解析から共に検出されたため,これらはRPNと関連した着目すべきBMと考えられた。しかし障害部位特異性検討の結果,尿中のfibrinogenとC3は近位尿細管障害でも増加することが判明した。よって,fibrinogen及びC3はRPNを検出することは可能であるもののRPN特異的ではなく,近位尿細管の障害をも検出するBMであり,これら急性期炎症性蛋白質の増加は腎臓内障害部位における炎症関連シグナルの活性化に起因するものと考えられた。<br> 現在,RPNを特異的かつ鋭敏に検出するBMを残りの92候補から見出すべく,各候補に対する検討を実施中である。