著者
赤澤 仁司 小川 真 曺 弘規 細川 清人 中原 晋 堀井 新 猪原 秀典
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.322-329, 2014

混合性喉頭麻痺とは,声帯麻痺に他の脳神経麻痺を合併したものであり,多彩な臨床症状を呈する。今回われわれは,頭部外傷の後,高度嚥下障害を発症した両側の混合性喉頭麻痺症例に対して手術的加療を行い,良好な結果を得たので報告する。症例は78歳男性。木から転落して頭部を打撲し,救急救命専門施設に搬送された。頭部CT検査において,くも膜下出血および右側頸静脈孔・舌下神経管周囲に骨折が認められた。全身状態および意識レベルの改善の後,失声・嚥下障害が判明した。嚥下障害の治療のため当科に紹介受診された。内視鏡検査下に,右声帯は傍正中位に,左声帯は中間位に完全固定していた。嚥下造影検査において,バリウム嚥下を試みるも嚥下反射は全く生じなかった。嚥下改善目的に両側輪状咽頭筋切断術・喉頭挙上術・気管喉頭分離術・喉頭閉鎖術を施行した。術後,肉の塊を除く多様な形態の食物が摂食可能となった。また後日プロテーゼを挿入して言語コミュニケーションが可能となった。以上より,複数の脳神経損傷に起因する咽喉頭の機能障害であっても,種々の機能外科的手術を適切に組み合わせることにより生活の質の改善が期待できると考えられた。
著者
花谷 浩 宮原 晋一 相原 嘉之 玉田 芳英 村上 隆
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.14, no.23, pp.105-114, 2007-05-20 (Released:2009-02-16)
参考文献数
5

奈良県明日香村にあるキトラ古墳は,高松塚と並ぶ大陸的な壁画古墳であり,慎重な調査と保護が進められてきた。壁画は剥離が進んでおり,石室内で現状保存することは不可能で,取り外しで保存処置を行うこととなった。その前段階の作業を兼ねて2004年に石室内の発掘を行い,石室構造の細部が判明し,最先端の技術を用いた豪華な副葬品が出土する等,多くの成果を上げた。墳丘は版築による二段築成の円墳で,石室の南側には墳丘を開削した墓道が付く。墓道床面に,閉塞石を搬入する時に使用した丸太を敷設したコロのレール痕跡(道板痕跡)を確認した。石室は,二上山産の溶結凝灰岩製の分厚い切石材を組み合わせて構築する。石材には朱の割付線が残っており,精巧な加工方法が推測できる。石室の内面は,閉塞石以外を組み立てたのち,目地を埋め,さらに全面に漆喰を塗り,壁画を描く。石室内の調査は,空調施設等を完備した仮設覆屋内で,壁画の保護に万全の措置をした上で発掘をした。石室内には,盗掘時に破壊された漆塗り木棺の漆片堆積層が一面に広がる。遺物は原位置に残らないと判断され,堆積層をブロックに切り分け,方位と位置を記録し,コンテナにそのまま入れて石室外に搬出した。出土遺物には,金銅製鐶座金具や銅製六花形釘隠といった木棺の金具,琥珀玉等の玉類,銀装大刀,鉄製刀装具,人骨および歯牙などがある。木棺の飾金具は高松塚古墳のものとは意匠に違いがある。また,象嵌のある刀装具は類例がなく,その象嵌技術も注目される。歯牙は咬耗の度合いが著しく,骨と歯は熟年ないしそれ以上の年齢の男性1体分と鑑定された。壁画は,歪みがきわめて少ない合成画像であるフォトマップ作成を行った。これは実測図に代わりえる高精度なものである。また,壁画取り外し作業の過程で十二支午像の壁画を確認した。墓道と石室の基本的なありかたは,他の終末期古墳とほほ同じである。コロのレール痕跡は高松塚古墳や石のカラト古墳にもあり,石室の石積みはマルコ山古墳に似るが相違点もある。底石の石室床面部分は周囲より一段高く削り出しており,石のカラト古墳と類似することがわかった。
著者
吉田 泉 駒田 敬則 森 穂波 安藤 勝信 安藤 康宏 草野 英二 大河原 晋 鈴木 正幸 古谷 裕章 飯村 修 小原 功裕 高田 大輔 梶谷 雅春 田部井 薫 NIKKNAVI研究会
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.909-917, 2010-11-28
被引用文献数
1

われわれは,透析患者の除水による循環血液量の変化をモニターする機器(Blood Volume Monitoring system:BVM)を日機装社(静岡)と共同開発し,多施設共同研究において臨床的にドライウエイト(DW)が適正と判断された患者の循環血液量の変化(BV%)の予想範囲を設定し,すでに報告した(Ther. Apher. Dial. in press).本論文では,その予想範囲が適正な除水量設定に有用か否かを検討した.維持透析を行っている9施設の144名を対象とし,採血日を含む3回の透析日に,BVM搭載装置を用いて透析を行った.DWが適正と判断された患者のBV%予想範囲は,上限ライン:BV%/BW%後=-0.437t-0.005 下限ライン:BV%/BW%後=-0.245ln(t)-0.645t-0.810.BV%は循環血液量変化率,BW%後は透析による除水量の前体重に対する比率,tは透析時間(h).今回の検討では,DW適正の可否を問わずに144例を抽出し,430データを集積した.プロトコール違反の94データを除外した336データを解析対象症例とした.各施設の判断によりDW適正と判断された230データで,BVMでも適正と判断された適正合致率は167データ(72.6%)であった.臨床的にDWを上げる必要があると判断された45データで,BVMでもDWを上げる必要があると判断されたのは10データ,逆に臨床的にDWを下げる必要があると判断された61データで,BVMでも下げる必要があると判断されたのは37データであった.その結果,BVMによる判定と臨床的判定の適合率は63.7%であった.不適合の原因としては,バスキュラーアクセスの再循環率(VARR),体位変換,体重増加量が1.0kg以下などであった.PWI(Plasma water index)による判定との適正合致率は71.6%で,適合率は58.0%であった.hANPによる判定との適正合致率は68.8%で,適合率は48.7%であった.循環血液量のモニターは,透析患者の除水設定管理の一助になり,われわれが設定したBV%予想範囲は臨床的にも妥当性が高いと考えられた.
著者
黄 暁芬 宇野 隆夫 吉井 秀夫 河野 一隆 上原 雅文 米田 穣 河野 一隆 諫早 直人 宮原 晋吾 臼井 正 張 在明 塔 拉 魏 堅 王 曉〓
出版者
東亜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は4年間にわたり、対象調査地のフィールドを通して考古学、歴史学、地理情報システムや年代測定法などの学際的研究を展開していた。主な成果は下記3点にまとめられる。1.漢魏帝都と郡県城址の構造プランとその象徴性1)帝都建設における理念空間の完成:漢帝都長安の建設プランは、南山子午谷口から嵯峨郷五方基壇まで南北軸線全長75kmに及ぶ。それが渭水を中心として都城・陵墓との生・死空間が南北正方位に対置し、天と地・自然山川と記念的建造物の対象性をベースにおき、漢帝国支配の正統と神聖を表象したシンボルであり、東アジア古代都城の成立にも多大な影響を与えていた。2)郡県城址の調査と復元:華北、内蒙古における戦国・秦漢期の郡県城址が計26ヵ所を調査、測量した。GPS・GIS解析によって各遺跡の方位と構造プランを解明し、中央帝都建設に対して地方郡県都市の特色を初めて把握した。一辺500~600四方の城郭都市がほとんどで、北方位を重視するが、真北からの偏角は1度~7度あり、帝都建設ほどの精度がない。その偏角の大小は、中央勢力との関係緊密度に影響されるように見て取れる。城外には正方位重視の墳墓が造営されたことも判明し、帝都長安の都市計画を模倣したものと考える。3)北方国境線遺跡の探求:内蒙古の陰山南麓一帯の調査では、城塞、長城、烽火台の併存が発見した。一辺40-50四方の城塞は城門1つ、石積みの城壁が幅3-5、頑丈な防御施設で、それに長城と烽火台は近接に築かれ、戦国秦漢期の北方軍事施設として完備されたことが判明した。2.秦直道の調査と研究1)秦直道の真相究明:紀元前212年建造された秦帝国の南北幹線道路-秦直道は歴史上、深い謎に包まれ、長い間不明なままであった。近年、秦直道の発掘調査や日中連携調査によって、秦直道の真相がようやく解き明かされてきている。山岳高地の作道、版築土の舗装道路の道幅は平均30m、道の沿線に壮観な皇室の行宮や防御に備えた関所、駅舎施設が付設された。それは高度な土木技術と巨大な権力組織によって創り出された「帝国の道」である。2)古代ローマ道との比較:ローマ道は礫石や砂石の作道が主で、道幅4の石畳みの舗装道が特徴的である。帝国領域間の軍事、交通運輸道として発達し、商用道路の兼用を含む実用性の優れた古代ハイウェーである。3.チベット吐蕃王墓の調査と実測チベットの吐蕃王国を象徴する巨大墳墓の4大分布地点で実地調査とGPS測量を行った。その結果、時期の異なる巨大方墳・円墳を特徴とした吐蕃王室・貴族大墓の構造配置と分布を総合的に把握し、吐蕃大墓の立地方位と景観の特色などの検証が初めて実施した。
著者
高島 雅弘 趙 大鵬 柳原 健太郎 福井 潔 福永 茂 原 晋介 北山 研一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.742-750, 2006-05-01
被引用文献数
40

本論文では,IEEE802.15.4を用いたセンサネットワークにおいて,実環境における無線伝搬特性を確率モデル化し,そのモデルを用いた最ゆう法によりノードの位置を推定する手法を提案する.また,室内での実測から得られた確率モデルを用いたシミュレーション及び位置推定実験による性能評価を行い,提案手法が室内でのマンロケーション管理に有効であることを示す.
著者
池田 研介 清水 寧 中田 俊隆 篠原 晋 山田 弘明
出版者
立命館大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

<高速拡散過程の研究:>本年度は力の性質がはっきりしているアルカリハライド(AH)クラスターの高速混晶化過程の研究に一応のメドをつけた。AHクラスターでは表面空孔配列が異なる構造異性体に加え、体積内で空孔をもつ構造異性体(高位の異性体)がクラスターでは比較的低いエネルギーをもって安定に存在する。これらの異性体を巡る遍歴現象が動的に発生する。特に高位の異性体を巡る過程で混晶化が誘発される事が判明した。混入の活性化エネルギーが評価され1eV程度である事が分かった。この値はバルク中の拡散過程の2eVに比べその半分程度である。常温では混入速度が少なくとも$10^{12}$倍程度高速化する事が分かった。我々が関心をもつ、メソタイムスケールダイナミクスの観点からすると活性化エネルギーを与える、遷移状態とそれを乗り越える力学過程の解明が今後の大きな課題である。同時にanion-cation半径が顕著に異なるNaIの様なクラスターでは<動的ガラス状態>が現れる事が判明した。一方、数十個程度の超微小AHクラスターでは平衡状態であるにも拘わらず温度勾配があらわれる事。それが角運動量の保存の為である事も判明した。<カオス的トンネル効果の研究:>単純で且つトンネル効果をモデル化できる系としてHenon系をトンネルイオン化の基礎モデルに据えトンネルイオン化過程をカオスが理想的状態になく混合相空間として回転領域と混在する場合に解明してゆく作業がかなり進行した。重要な結果はトンネル効果に主要な寄与をもたらすLaputa chainに階層構造が存在し、しかも高次のchain構造が混合相空間でのカオス的トンネル効果に本質的役割を果たす事が解明された事である。理想的なカオス的トンネル効果では高次構造は効かず、低次構造のみでトンネルが良く近似できた事と大いに異なる。高次構造の役割は回転領域がカオス領域に占める割合に比べ相対的におおきくなる程重要になってくると考えられる。なお、本研究課題に対し、2005年8月25日-9月1日立命館大学に於いて国際研究集会{bf Complexified Dynamics, Tunnelling and Chaos}を挙行した。
著者
菅沼 明 笠原 晋 牛 和夫
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1007-1016, 1996-06-15
被引用文献数
3

日本語文章は単語単位に分割して書かれないために これを機械処理するには まず形態素解析などの文法処理を行うのが普通である.しかし 文法処理を行っても 解が一意に定まらなかったり 解析時間がかかったりする問題がある.そのため 我々は 字面だけの情報で接続助詞「が」や否定表現 受身形などの候補を抽出する方法を構築し それを応用して日本語文章推〓支援ツール『推〓』を開発している.本論文では 簡単な表を利用した字面解析手法を用いて日本語文章中にある活用語の活用形を推定する方法(「活用チェック法」と呼ぶ)について述べる.活用語を語幹と語尾に分け それぞれについて表を設ける.文を後ろから前に遡る方向にスキャンしながら まず語尾の表と比較を行う.その後 語幹の表との比較を行う.語幹に関しては最後の1文字しか評価しない.活用チェック法で使用する表の大きさは32KB程度で これを主記憶に載せたとしても 記憶域を圧迫するものではない.そのため 主記憶容量が小さな計算機であっても主記憶に載せることが可能である.従来の字面抽出法と比較するために 接続助詞「が」と否定表現の抽出に活用チェック法を適用し 抽出精度を比較した.その結果 従来の字面抽出法に比べて適合率が約10%向上した.再現率は100%を保っている.さらに 活用チェック法を使用した抽出法は 従来の抽出法と比較して 抽出に要する時間はほとんど変わらない.Japanese documents are usually analyzed with the grammatical analysis like the morphological analysis. Since this analysis requires much time, we constructed an extraction method with only textual information for the passive voice, the negative expressions, the conjunctive particle "GA," and so on. And we are developing a system of writing tools SUIKOU with the textual analysis method. This paper describes a method to estimate the conjugation of Japanese verbs and adjectives with a textual analysis. We prepare two kinds of tables for a conjugational part and a non-conjugational part of Japanese verbs and adjectives. This method analyzes a Japanese document from tail to head of a sentence with these tables. Using the method, we construct a new extraction method for the conjunctive particle "GA" and the negative expressions. This extraction method guarantees to extract all requested items, but it may extract some unrequested items. The precision of the new extracting method for the conjunctive particle "GA" is above 98%, and is improved by 7% in comparison with that of old one, although the new method is able to extract the conjunctive particle "GA" as fast as old one.
著者
安在 大祐 原 晋介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J91-B, no.6, pp.666-676, 2008-06-01

センサネットワークでの重要なアプリケーションの一つにセンサノードの位置推定やトラッキングがある.センサネットワークにおける位置推定法として受信信号電力による位置推定法が提案されているが,マルチパスフェージングの影響を強く受ける実環境ではその位置推定精度は低いといった問題がある.そこで,本論文は,従来の受信信号電力を用いた位置最ゆう推定法の推定精度を向上させ,更に,同時にノードの方向も推定する複数送信アンテナを用いた位置・方向推定法を提案する.また,様々な室内での実験による性能評価を行い,本提案法が実環境において有効であることを示す.