著者
田辺 晶代 内原 正樹 成瀬 光栄
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.105-109, 2022 (Released:2022-08-29)
参考文献数
14

PPGLに対する治療の第一選択は腫瘍摘出であり,薬物治療は術前治療あるいは切除不能性に対する慢性治療として施行される。PPGLの診断が確定したら速やかにα受容体遮断薬を開始し,頻脈に対してβ受容体遮断薬を併用する。交感神経受容体遮断薬で十分な治療効果が得られない症例にはメチロシンを併用する。PPGLの根治治療は未だ存在せず,治療目標はカテコールアミン過剰症状のコントロール,無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の延長である。手術困難例では抗腫瘍治療として化学療法,対症療法としてαβ受容体遮断薬やメチロシンの内服が行われる。海外ではチロシンキナーゼ阻害薬,Mammalian target of rapamycin(mTOR)阻害薬,免疫チェックポイント阻害薬が試みられている。
著者
田井村 明博 管原 正志
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では暑熱寒冷暴露時の体温調節反応パターンから「環境温度変化に対する調節能力」を解析・評価することが目的であった.局所寒冷負荷実験の皮膚温の反応パターンから分類することで、より詳細な個人差の分析が可能であること、さらに温度感覚との関連性から、温度変化に対して温度感覚の変化が遅い場合、冷感覚の感受性に関して劣るということが推察された。また、運動鍛錬者の方が耐寒性に優れ、運動様式別に耐寒性を検討した結果、耐寒性に大きな差は見られなかったが、浸漬部を使う種目の鍛錬者は皮膚温が下がっても温度感覚はあまり下がらないことから、冷刺激による侵害刺激にも慣れていることが推測された。
著者
星原 徳子 岡 真由美 河原 正明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.229-235, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
24

【目的】麻痺性斜視における融像の異常な状態(融像状態)別の視能訓練成績を分析し、家庭訓練を中心とした視能訓練方法を検討した。【対象および方法】対象は、視能訓練を施行した麻痺性斜視58例で、年齢は30~87歳であった。融像状態は、潜伏融像、部分融像、狭い融像野に分類した。視能訓練は、衝動性眼球運動訓練、輻湊訓練、fusion lock training、プリズム療法を行った。治癒度は4段階とし、治癒度Ⅰは融像野が30°以上とした。【結果】融像状態は、潜伏融像27例、部分融像27例、狭い融像野14例であった。治癒度Ⅰの獲得が高率であったのは部分融像21例(78%)と狭い融像野11例(79%)であった。潜伏融像は治癒度Ⅰの獲得が低率であった。治癒度Ⅰを獲得できた狭い融像野では、プリズム療法が高率であった。全ての融像野で衝動性眼球運動訓練の実施率が高く、狭い融像野と部分融像においては衝動性眼球運動訓練とfusion lock trainingの組み合わせが多かった。【結論】家庭訓練は、融像野が存在する場合にはプリズム装用下で衝動性眼球運動訓練とfusion lock trainingを組み合わせ、潜伏融像では衝動性眼球運動訓練が有用であった。
著者
水原 正亨
出版者
滋賀大学経済学会
雑誌
彦根論叢
巻号頁・発行日
no.第164・165号・人文科学特集第30号合併, pp.241-254, 1973-11
著者
難波 義郎 保野 健治郎 室崎 益輝 北後 明彦 藤原 正弘 粕谷 明博 松岡 秀男
出版者
Japan Association for Fire Science and Engineering
雑誌
日本火災学会論文集 (ISSN:05460794)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.57-66, 2005 (Released:2011-03-16)
参考文献数
5

神戸市消防局は,平常時の火災で消火栓の機能(水量・水圧)を評価するため,昭和61年6月9日に「消防ポンプ自動車の連成圧力調査」(神戸市星和台2丁目で放水実験)を行っている。この実際の街区における上水道管網での放水実験より,配水管の口径,放水消火栓数の条件に応じた放水量と水圧の関係を解析した。(オンラインのみ掲載)
著者
関 優子 清水 立矢 藍原 正憲 山口 玲 相島 薫 好本 裕平 安藤 雅 須藤 高行 対馬 義人
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
pp.oa.2021-0018, (Released:2021-09-17)
参考文献数
13

【目的】血管内治療のアクセスルートとなる大動脈弓部の形態がアプローチ時間に与える影響を検討する.評価に際して,単純 CT の 2D 画像から,造影 3DCTA と同等の大動脈弓部の情報を取得できるか検討する.【方法】2017 年から 2019 年に大腿動脈経由で脳血管内治療を施行した連続症例のうち,大動脈弓部を含む CTA を行った 65 名を対象とした.目的血管と大動脈弓(頂部もしくは下縁)のなす角度,大動脈弓頂部から目的血管分岐までの距離を 2D 画像および 3D 画像で計測し,年齢,性別,穿刺部位,アプローチ時間(穿刺時刻からガイディングカテーテル留置後の目的血管造影までの時間),治療方法,疾患名,検査時間,治療部位との関連を後方視的に検討した.【結果】アプローチ時間は平均 24 分であった.2D と 3D の計測では,大動脈弓下縁と分岐血管の角度(r=0.721)と大動脈弓頂部からの距離(r=0.858)で強い相関を認めた.2D 計測にてアプローチ時間と大動脈弓頂部から分岐までの距離においては正の相関を認めた(r=0.478).また,大動脈弓と目的血管分岐がなす角度には負の相関(r=−0.197)を認め,大動脈弓下縁との分岐角(r=−0.298)がより相関が強かった.【結論】2D での簡便な計測でも,3D と同等の情報を得ることができる.大動脈弓頂部から目的血管分岐までの距離が長い,または目的血管と大動脈弓下縁のなす角度が鋭角なほどアプローチ時間は長くなる.
著者
木村 学 堤 浩之 早坂 康隆 鈴木 康弘 瀬野 徹三 嶋本 利彦 渡辺 満久 榊原 正幸
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

極東ロシアから日本列島に至る地域は被害地震が多発する地域である。近年これらの地震は北米・ユーラシア両プレート間の収束運動もしくはその他のいくつかのマイクロプレートが関与したプレート境界でのもの、ととらえられるようになった。相次ぐ被害地震にもかかわらず、ネオテクトニクスに関する研究はこれまで政治的・地理的・気候的制約があって進んでいない。そこで新年度に続き、極東ロシア、特にサハリン島北部地域の総合的なネオテクトニクス調査研究を実施した。具体的に以下の研究を行った。1. 航空写真による変動地形、活断層解析。特にサハリン島、中〜南部に分布、発達する活断層について変位のセンス及び変位置について解析した。2. 変動地形活断層の現地調査。特に中部及び南部サハリン。3. 地質学的調査。航空写真によって明らかになった活断層の累積変位、変位速度を明らかにするために現地で活断層露頭や、樹木成長の記録を調査した。サハリン変動帯最北部のシュミット半島にて、中生代来のオフィオライト、及び変形した堆積岩及びスレート帯について、構造解析を実施した。その結果、第三紀後期に北東南西方向の圧縮を受けて、地質体は激しく変形していることが明らかとなった。この変形様式は現在進行中の地殻変動と調和的である。従って、サハリン北部の地殻変動は第三紀以降、右横ずれの同じセンスのもが累積していることが明らかとなった。
著者
上山 さぎり 若原 正明 鴫原 孝佳 駒田 匡史 野尻 昌利 山田 宜伸
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.240-245, 2022 (Released:2022-02-11)
参考文献数
13

風切音の透過経路ではドアガラスの寄与が大きい.このガラス透過音は,従来,板厚増やアコースティックガラスの設定等で低減されてきたが,質量・コストが増加する対策である.そこで本研究では,ガラスランの減衰に着目し,ガラスとのインピーダンスマッチングを活用してガラス透過音を低コストで低減する方法を提案する.
著者
馬嶋 健一郎 藤原 正則 和田 亮一 村木 洋介 光島 徹
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.120-129, 2018 (Released:2018-03-17)
参考文献数
32

便潜血検査(fecal occult blood test:FOBT)陽性者に施行した大腸CT検査の診断精度を全大腸内視鏡検査を標準として検証した。当施設の任意型検診において, FOBT陽性者に対し同日に大腸CT検査と全大腸内視鏡検査を施行した120名を対象とした。前処置法は3%となるようにガストログラフイン®を混合したニフレック®液を使用した。大腸CT検査における患者ごとの感度, 特異度は, 6mm以上の病変で感度85.7%(30/35), 特異度95.3%(81/85), 10mm以上の病変で感度100%(17/17), 特異度98.1%(101/103)であった。FOBT陽性者に対する精密検査として大腸CT検査の精度は良好であり, 精検法となり得ると考えられる。
著者
阿蘇 司 原 正憲 藤原 進 平野 祥之
出版者
富山高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、量子化学・分子動力学計算による知見を組み込んだDNA損傷の確率的計算モデル開発を目的としている。今年度は、(1)開発シミュレーションソフトウェアでの間接作用の影響を評価するためのラジカル発生と、その拡散・再結合相互作用の評価、(2)空間クラスタリング法を用いたDNA損傷の確率モデル検証、(3) 分子動力学計算を用いたDNA分子置換に起因する分子構造変化の影響評価、(4)ガンマ線照射による重水中DNA分子の水素置換評価実験を解析するための量子科学計算の導入を実施した。以下に概要を示す。(1) 間接作用では、ラジカル発生からその拡散・再結合を追跡して時間的な空間分布を計算してDNA分子の空間形状との対応によりDNA損傷の有無を判断する。計算アルゴリズムは試作したが、計算時間が長く精密な計算を行うことが容易ではないことがわかった。現在、文献調査等を通じてアルゴリズムの改良に着手している。(2) 空間スラスタリング法を利用して、直接作用と間接作用の両方を考慮したDNA損傷が評価できる状況にある。このソフトウェアを用いて、多様な条件でのシミュレーションを行なっている。また、(1)のシミュレーション開発のアルゴリズム改良に際しての参考に用いている。(3) DNA分子置換が生じた後に、DNA損傷に至る過程を分子動力学計算で評価を行なっている。また、トリチウム水の水分子がDNA分子構造にアクセスする様子を調べるために、水分子とDNA分子構造を入力した分子動力学計算によって、確率的なアクセス頻度を計算できる状況となっている。(4) 重水へのガンマ線照射により、DNA分子構造の水素が重水素に置換する可能性を調査している。ガンマ線照射実験で得られた赤外線吸収スペクトルを量子化学計算により解析して、置換反応の有無を評価している。
著者
山崎 浩司 木原 雅子 木原 正博
出版者
日本エイズ学会
雑誌
日本エイズ学会誌 (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.121-130, 2005

目的: 若者に対するエイズ予防介入プロジェクトの一環として, 地方A県の女子高校生が, なぜ性交渉時にコンドームを使わないようになってしまうのかを質的研究法を用いて分析する.<BR>対象と方法: A県の女子高校生41名に対し, フォーカス・グループ・インタビューを8グループ実施した. 対象者として, 交際相手を有すると思われる友人同士6名前後を, スノーボール・サンプリングによりリクルートした. 分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを使った.<BR>結果: 対象者は「治る性病より直らない妊娠」をより心配しているにも係わらず, 実際のコンドーム「使用は相手次第」であり, 結果的に膣内・膣外射精を繰り返し, それでも簡単には妊娠しないことを経験的に学習して「独自の避妊意識」を形成し, コンドーム不使用を定着させていた. また, 交際相手が社会人の場合は「妊娠してもかまわない」と考えたり, コンドーム購入を恥ずかしさ等による「購入阻害」要因により回避したり, 不快経験から「コンドーム嫌悪」に陥ったりして, 不使用に至っていた. さらに, 対象者が仮にSTDに関心を抱いても, 入手できる「予防学的情報の不足」から, コンドームを使わない「独自の予防認識」を形成し, やはり不使用に終っていた.<BR>結論: コンドーム不使用における相互作用プロセスを含む若者の多様な性文化の把握なしでは, 包括的なエイズ予防法を開発しがたい可能性が示唆された.
著者
川原 正広 現代行動科学会誌編集委員会
出版者
現代行動科学会
雑誌
現代行動科学会誌 (ISSN:13418599)
巻号頁・発行日
no.22, pp.1-8, 2006

我々は仕事の期日が迫っているときや人との待ち合わせに遅れそうな時、"時間がない"や"時間が足りない"といった時間的プレッシャーを感じることがよくある。このような時間的なプレッシャーは時間的切迫感と呼ばれる。Winnubst(1988)はこの時間的切迫感を時間に対する不安の典型的な現象の一つであるとし、時間的不安と呼んでいる。生和・内田(1991)は、時間不安があらゆる不安に共通した不安であり、その傾向が強い人は時間に追い立てられ、落ち着きのない生活態度を余儀なくされると述べている。時間の経過が不安の対象となる原因は、時間と課題の難易度が結びつくことによる情報処理量に対する時間的制約感と考えられている(生和・内田,1991)。また折原(1998)は、時間のイメージや時間的評価が時間不安と深く関連することや、不安感覚が個人の時間的評価や時間イメージによって大きく異なることを指摘している。 さて時間的切迫感を主な特徴とする時間不安は、ストレスやタイプA行動パターン、強迫神経症など精神的健康や精神障害との関連が多く検討されている。たとえばAbraham(1965)は金銭的強迫態度と時間に対する強迫態度の関連について検討を行ない、強迫神経症者の多くにお金と時間に対する強迫的態度が認められることを指摘している。またFriedman & Rosenman(1974)は、タイプA行動パターンを有する人の最も顕著な特徴として時間的切迫感をあげている。 またその一方で時間不安、タイプA行動パターンは、個人の失敗傾向との関連についての検討もいくつか行われている。Fletcher, McGeorge, Flin, Glavin & Maran(2002)は、ストレスフルな状態や、時間的に切迫した状態の中で発生する問題が能力の限界を超えたとき、状況の中に潜む潜在的なエラーと結びつき、安全についての意図しない結果につながると述べている。また、Wallace, Kass & Stanny(2002)は、失敗傾向とタイプA行動パターンの関連について、認知的失敗の傾向を測定するCognitive Failures Questionnaire(CFQ ; Broadbent, Activity Survey(JAS ; Zyzanski & Jenkins,1970)を用いて検討を行い、双方の間に関連性があること見出している。さらにRothroch & Kirlik(2003)は、熟練した作業者が、時間的に切迫した状況で、まれに起こる予測できない事象に適応することができず、エラーを起こす可能性があると指摘している。このような知見を考慮すると個人の時間不安やタイプA行動パターンと失敗傾向の間には何らかの関連が推測される。しかしHobbs(2001)は、時間的切迫感と失敗行動の関連について、物忘れなど記憶に関するエラーである「ラプス」や、適用するルールやルールの適用の仕方を知らないことによって生じる「知識ベースのミステイク」と関連すると考えられるが、その実証的な検証は全く行われていないと述べている。またWallace et al.(2002)も、認知的失敗とタイプA行動パターンの関連は今日まであまり深く検討されていないと述べている。HobbsやWallace et al.の知見は、時間的切迫感やタイプA行動パターンと失敗傾向の関連についての検討が不十分であることを指摘しているものと考えられ、双方の関連についてはさらなる実証的な検討が必要と言えるであろう。そこで、本研究では時間不安、タイプA行動パターン、失敗傾向に関する質問紙調査を用い、双方の関連性について検討を行った。