著者
上原 由美子
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.22, pp.9-27, 2019-03

「JF日本語教育スタンダード」(以下、JFスタンダード)1)は、国際交流基金によって2010年より公開されている、日本語教育のコースデザイン、授業設計、評価を考えるための枠組みである。公開から8年を経て、国内外の日本語教育の現場で活用が広まるにつれ、「具体的な活用方法が知りたい」「Can-doや評価など個別の内容についてもっと詳しく知りたい」「現場の課題解決につなげるにはどう使ったらいいか」など、具体的な要望や質問も多く聞かれるようになった。国際交流基金日本語国際センターでは、2018年に、JF スタンダードに関連する3つのウェブサイト(以下、サイト)のリニューアルを行った。リニューアルの目的の一つは、上述のような現場からの声を反映し、JF スタンダードに関する内容を充実させ、よりわかりやすく活用しやすいものとして提供できるようにすることであった。本稿では、はじめにJFスタンダードの概要と、JFスタンダードに関する現場での疑問や課題を紹介し、次にサイトのリニューアルにおける、JFスタンダードの活用促進を目的とした改善策について述べる。最後にJFスタンダードの活用事例として、スペインでの実践の報告を紹介し、そこから得られる示唆について考察する。
著者
砂原 由美 Yumi Sunahara
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.53-67, 2015-03

メキシコ人作家フアン・ルルフォ Juan Rulfo によって書かれた『ペドロ・パラモ』PedroPáramo(1955)は多様な解釈を可能にする文学テクストであり、現在までに多くの研究がおこなわれてきた。本稿ではノースロップ・フライが『批評の解剖』で提示した、主人公の行動能力やプロットに基づいた分類方法に依拠しながら、『ペドロ・パラモ』がどのような物語であるということができるのか、ジャンル論的考察を行った。『ペドロ・パラモ』を「ペドロ・パラモの物語」、「フアン・プレシアドの物語」、「スサナ・サン・フアンの物語」の三つの主要エピソードに絞り考察した結果、行動能力の高いペドロ・パラモは物語の中心から「疎外」され、行動能力の低いフアン・プレシアドやスサナ・サン・フアンは物語の中心に「受容」される、という結論に至り、権力の疎外とコマラの再生の物語を『ペドロ・パラモ』に見出すことができることを示した。
著者
福原 由美 塩崎 賢明 堀田 祐三子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.590, pp.95-102, 2005
参考文献数
16
被引用文献数
1

This study aims to describe the birth and to grasp the structure of Urban Pilot Project of the European Commission by investigating not only through documentary reference but also through the case study of Antwerp. From the results, UPP I has some characteristics as follows; 1) Any cities could apply for UPP I and be able to receive the subsidy directly. 2) Cities didn't need complicated process for UPP I 3) Innovative measures for urban regeneration and impinge on the formation of future urban policies. UPP I was very valuable source of revenue for these cities like Antwerp.
著者
藤原 由美 水島 章広 前野 隆司
出版者
日本創造学会
雑誌
日本創造学会論文誌 (ISSN:13492454)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.98-111, 2018 (Released:2018-04-01)

高等教育の場である大学や短期大学において、2011年度よりキャリア教育が義務付けられるなど、近年、キャリア教育が注目を浴びている。また、長らく続いていた経済不況による就職難のため、大学や短期大学などの高等教育機関では就職支援策を講じることが急務となり、サービス接遇にかかわる教育はキャリア教育の一環として広く実践されるようになった。一方、教育の場において相互評価が取り入れてられると共に、アクティブ・ラーニングの一環としてのグループワークに注目が集まっている。そこで本研究では、アクティブ・ラーニングによるWebカメラを用いた自己評価を特徴とするサービス接遇教育を開発・実践して、その評価をキャリア教育の視点から検証することを目的とした。本研究を通して、本科目が学生に高い満足度を与えていると、サービス接遇を身につけるために効果的であること、客観的視点に近い自己評価力が身に付くことによって、就職活動や就業してからの就業力育成に効果的であることがわかった。最後に今後の課題として、研究方法を精査する必要、研究の結果を一般化するためにサービス接遇行動の基準を確立させ、社会人にも適用するなど、けいぞくして調査を行う必要を挙げた。
著者
上原 由美 島田 美樹子 柳澤 和美 内山 和彦 竹内 茂 野際 英司 中里見 征央 鈴野 弘子 石田 裕
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.553-561, 2014 (Released:2014-09-28)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

慢性腎臓病の食事療法として, 病気の進行によりP・K・たんぱく質の制限が必要になる. 透析患者の高齢化も進み, 簡便で継続可能な食事療法が必要と考える. 一般的には栄養指導の際, P・K含有量を抑えた治療用米飯の利用を推奨するが, 自作米中心の地域においては, 高価な治療食の購入には至らないことが多い. そこで, 洗米条件を調整することによりP・K・たんぱく質の低減が可能か否かを検討した. また, 透析患者の米の使用実態を把握するためにアンケート調査を実施した. 洗米におけるPの洗出率は5回目までは回数ごとに有意差が認められ (p<0.05), Kおよびたんぱく質の洗出率は4回目まで有意差がみられた (p<0.05). したがって, 洗米回数5回まで低減効果が期待できることがわかった. 5回洗米までにPの洗出率は, 50.2±3.02%, Kは46.0±3.89%, たんぱく質は5.40±0.42%となった. 透析患者のアンケート結果では, 洗米回数は3~4回の回答者が多く, 水を取り換えるまでの洗米時間も10秒前後とP・Kの低減を目的とした洗米条件としては不十分であった. 洗米において, 1回20秒間, 水を換えて5回行うことによってP・Kの低減効果があることが認められた. この方法は, 食品の制限や量の調整など多くのストレスを抱えている患者にとって, 簡便で持続可能な食事管理の一手段となり得ると考えられた. さらに毎日行う洗米に際し, 「P・Kを除去する」という意識を持つことによって, 怠慢になりがちな日常の食事管理に対する意識の醸成もなされ, QOL向上の一助となると思われた.
著者
岡部 光 宮原 由美 山内 辰郎
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.24, pp.95-102, 1981-09-10

An extensive survey for the triterpenoid constituents of Momordica charantia L. has been carried out in this laboratory, and so far, five glycosides (momordicosides A-E) of cucurbit-5-ene derivatives were isolated from the seeds, and their structures were determined. They are unique cucurbitacins being highly oxygenated only in the side chain and having no oxygen function at C_<11>. This study concerns the structure elucidation of two bitter glycosides, momordicosides K and L, and four non-bitter glycosides, momordicosides F_1, F_2, G and I isolated from the fruits. The structure of F_1 was proposed as 3-O-β-D-glucopyranoside of 5,19-epoxy-25-methoxy-5β-cucurbita-6,23-dien-3β-ol on the basis of PMR, CMR and CD spectral data and chemical conversion into a cucurbit-5-ene derivative. G is the corresponding β-D-allopyranoside. F_2 and I are the C_<25>-OH derivatives corresponding to G and F_1, respectively. K and L were determined as 7-O-β-D-glucopyranosides of 19-oxo-25-methoxy-cucurbita-5,23-diene-3β, 7β-diol and its C_<25>-OH derivative, respectively, on the basis of spectral data and chemical correlation with F_1-aglycone. F_1, F_2, G and I are the first cucurbitacins having 5β-cucurbitane nucleus found in nature, and K and L are noted as the new cucurbitacins having C_9-aldehyde and 7-O-β-D-glucopyranosyl groups. Among momordicosides, G and F_2 are the first triterpenoid glycosides having D-allose as a component sugar.
著者
溝尾 良隆 菅原 由美子
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.300-315, 2000
被引用文献数
3 4

The purpose of this paper is to clarify how and why the conservation of Kurazukuri buildings increased the number of tourists and re-vitalized a shopping street in Kawagoe City, Saitama Prefecture.Kawagoe City is located about 30 Kilometers from the central part of Tokyo with a population in 1998 of 324, 879. Ichibangai Street was planned as an area for craftsmen and merchants about 300 years ago. Since then, Ichibangai Street continued to be the center of commerce in Kawagoe City. However, the center of commerce in Kawagoe moved to the south of the city in the early 1960s. This is mainly because Japanese National Railways and three private railways built terminals there, and supermarkets and department stores moved to or were newly-opened nearby. As a consequence, commercial activities in Ichibangai Street declined.Fortunately, a lot of Kurazukuri style warehouses, houses, and stores with their invaluable historical heritage remained as the original buildings. These buildings were constructed to make them fire-proof structures after the great fire of 1893. Following the advice of external architects, the local administration and the inhabitants have become deeply committed to the conservation of these buildings.The local administration took the following steps: 1) providing a subsidy for the restoration of buildings; 2) enforcing landscape regulations; 3) constructing small parks along the street; 4) laying a more attractive pavement; and 5) burying the electric power lines.Inhabitants of Ichibangai Street organized the Kura-No-Kai (Association of Kurazukuri buildings) for the re-vitalization of commerce and conservation of Kurazukuri buildings. One more important action by the inhabitants was to design the Machinami Kihan (Standards for House Conservation) which is applied in the case of house restoration.Today, many tourists visit Ichibangai Street with the number of people visiting Kawagoe amounting to 3.5 million persons per year. Visitors to the Kurazukuri Museum, for example, increased 3.6 times between 1982 and 1997. Tourists make up nearly 100per cent of the customers at shops in Kashiya Yokocho Street and tourists make up at least half of the customers at almost 40per cent of the shops in Ichibangai and Kanetsuki streets. Between 1975 and 1997, almost 60per cent of the shops changed their function, with restaurants and coffee shops for tourists especially increasing in number.A large increase in consumption by tourists has resulted and shops and bustling streets have been re-vitalized. It follows that the inhabitants gained in confidence to conserve the Kurazukuri buildings and to maintain a landscape featuring a row of well-conserved buildings.
著者
山田 幸男 大石 正夫 清水 美知子 小島 紀代子 岩原 由美子 石川 充英 渡辺 栄吉
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第10回日本ロービジョン学会学術総会
巻号頁・発行日
pp.80, 2009 (Released:2009-12-17)

【目的】視覚障害者は転倒しやすく、骨折の危険も大きいため、転倒・骨折予防は視覚障害者には極めて重要である。そのため外出を控える人も多いものと思われる。そこで、視覚障害者の転倒の頻度、運動量などについて検討した。【対象と方法】当院視覚障害リハビリ外来受診者81名に、転倒の不安、運動量、骨粗鬆症予防の有無などについてアンケート調査した。また、一部の人には骨密度、片足立ち時間などの測定も行った。【結果】視覚障害発症後、バランス感覚の低下(61.3%)、転倒回数(20.0%)や転倒の不安(66.7%)が増し、運動量は減少し(81.0%)、80.2%の人が運動不足と感じていた。片足立ちでは、ほとんどの人が11秒未満であった。 運動としては、外を歩く(58.0%)、自己流の体操(29.6%)、家の中を歩く(27.2%)、ストレッチ体操(24.7%)、階段の昇降(22.2%)などが上位を占めた。骨密度の減少を認める人が少なくないが、Vit.DやCaの摂取に気をつけている人はそれぞれ34.2%、51.9%に過ぎない。【考按】視覚障害者の転倒の不安は大きく、運動不足の解消、カルシウム摂取など食事に対する意識の向上、陽にあたること、などが必要と思われる。そこで我々のパソコン教室では棒を用いた体操や片足立ちなどを行ったところ、日常生活動作の向上を認めることが多くなった。
著者
江原 由美子 左古 輝人 鶴田 幸恵 林原 玲洋 須永 将史
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

学問の世界において生み出された概念である「ジェンダー」は,広く一般に使われる言葉として普及した.だが,その使用が政治的に批判されるようになると,「科学・社会・政治」が交錯し,相互に影響を与える状況が生じた.このような状況は,どのようなコミュニケーション齟齬を生み出したのだろうか.学問の世界における「ジェンダー」概念は,もともとかなり限定された文脈において創案されたものであるが,その文脈から切り離されることで,かえって広範な応用可能性を持つことになった.だが,その一方で,学問的であるか否かにかかわらず,「ジェンダー」概念の使用が批判されるという,複雑な政治的状況を招くことにもなったのである.
著者
安原 由美子
出版者
つくば国際大学東風小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

「研究の目的」4年生の説明文の読解学習に、学習者が自らの学びをメタ認知し、<鉛筆対話>を取り入れ学習者同士が学び合う授業を行った。そのことにより、学習者は教材に向き合い筆者とかたり合うことで批判的な読みを行い読解力が育成されることがわかった。そこで、低学年においても読解活動に<鉛筆対話>を取り入れることの有効性について実践研究を行う。「研究の方法」「書く」ことに抵抗がなくなってきたと思われる2年生を対象に研究を行った。5月の初期段階と2月に自身の担当学級と大阪とで行い比較検討を行った。その間も説明文学習においては、<鉛筆対話>を取り入れた実践を継続する。また、<鉛筆対話>を取り入れない指導も行い比較検討する。「研究の成果」2学年においても、「思い」を交流し合うことはできる。単に(わかったこと)を交流し合うのではなく、(わからないこと)も出し合うようにした。友だちとの考えの違いに気付かせるための方法としては有効である。また、説明文の読み取りの手順を意識化させることにより「説明文の書き方」に目が向くようになってきた。学年末には、「筆者の書き方の上手なところ」を発見し、自分の書き方に取り入れようとする様子も見られた。(こんなことも書いてほしいなあ・なんで書いていないのかなあ)などという教材文に対して積極的に関わるようになってきた。しかし、低学年の場合は「思考」が拡散する傾向があるため時間を制限し、指導者として学習者同士が話し合う論点を明確に示す必要がある。私立と公立の児童に大きな違いはないが、「書きなれている」という点では、私立の児童の方が量的に多く書ける傾向がある。今回茨城の指導者に説明文指導についてのアンケートを行った。前回の大阪・秋国と比較しても「説明文の指導法」に変化がなく、指導者として「力のつく」指導法を模索する姿が見えた。学年の発達段階にそった<鉛筆対話>を取り入れた実践を開発していきたい。
著者
江原 由美子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.51-66,111, 1979-06-30 (Released:2009-11-11)
被引用文献数
1

多元的リアリティ論は、A. Schutz以来社会学における重要な一課題となっている。だが、これまでの多元的リアリティ論においては、各リアリティ間の構造的連関や動態が論じられることは比較的少なかったように思われる。本稿では、リアリティの多元性を生むと思われる要因を三つ挙げ、その内の一つの意識状態の多様性に基く多元的リアリティの動態論を導く事を課題とする。三要因を分節したのは、これまでの多くの議論ではリアリティの多元性に関する異なった観点を同時に取り挙げてモデル構成していたので、各リアリティを系統的に抽出し得なかったのではないかと考えるからである。そして、この各リアリティを構成する為に、人間の精神発達過程 (特にピアジェとエリクソンの発達心理学) に着眼し、その発達段階から各リアリティを導く事を試みる。このようにして構成された各リアリティ間には、二つの軸による構造的連関が指摘できる。この連関に基き、動態的な多元的リアリティの一モデルを提出したい。