著者
古谷 豊
出版者
The Japanease Society for the History of Economic Thought
雑誌
経済学史研究 (ISSN:18803164)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.1-17, 2007-12-25 (Released:2010-08-05)
参考文献数
17

Much ink has been spent over the last few decades on James Steuart's theory on banks. Critics are united in the view that his ‘banks upon mortgage’ is an idea of central importance in Steuart's theory on banks. They propose that insofar as Steuart argued against bank lending upon mercantile credit because it is precarious, his concept of bank credit upon mortgage must be regarded as a representative pillar of his theory. This understanding has also supported the claim that Steuart's theory on banks is outmoded in the sense that it gives little or no allowance for banks providing mercantile credit.If we consider Steuart's theory on banks within his whole chain of arguments, that interpretation is open to question. Steuart's principles of political economy, including his theory on banks, are built within a historical structure. He denies bank credit based on mercantile credit, only when the society is in the infancy of trade. In his theory on banks, he posited three classifications: ‘banks upon private credit’ (i.e. upon mortgage), ‘banks upon mercantile credit, ’ and ‘banks upon public credit, ’ each with a different role in the development of the economy.Considered in this perspective, the significance of Steuart's theory on banks lies in that the principles on which bank credit is based extend according to the development of trade and industry and to the policy of statesmen. His theory of banks must be regarded as a part of his arguments on providing money in proportion to the circulation.
著者
古賀 純子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

申請者の研究はベルクソン哲学を音楽との関わりについて考察するものである。これまでに(1)20世紀の作曲理論をベルクソン哲学の観点から解釈すること、(2)ベルクソンの哲学理論を演奏という具体的な芸術活動の場に置き直す、という二つの方向で研究を行ってきた。平成18年度は、上記二つの方向性をふまえながら、20世紀音楽とそれ以前の古典音楽の時間構造をより詳細に分析する研究を行った。音楽作品は通常、拍節構造とメロディという二重の時間構造を持つ。ある種の現代音楽は規則的な反復に基づく古典音楽の拍節構造を「音楽的時間を不当に束縛している」と考える。しかしベルクソンの時間概念に照らすと、古典的拍節は「自由」で「創造的」な持続(dur□e)の時間構造と矛盾しない。音楽家は規則的な拍子に従いつつも、厳密に均等な時間配分で演奏するわけではなく・現実的にはそれらを伸縮させつつ独自の旋律形体を創造する。ベルクソン哲学から導き出される創造的時間の本質は、数的計測と不規則に合致しつつ、創造的主体が自らの選択によって旋律形体を形作るプロセスに存在すると考えられる。このようなベルクソン的時間論から見た場合、規則的拍節を持たない20世紀音楽、および伝統的な東洋音楽の時間構造はどのように解釈されるだろうか。申請者は以上のような問題意識のもと、これまで行ってきたオリヴィエ・メシアン、ジョン・ケージの研究に引き続き・ピエール・ブーレーズ、ヤニス・クセナキスの音楽作品の分析に着手している。この研究のため、18年9月、ひと月間パリに滞在し、ジョルジュ・ポンピドゥーセンター付属の公共情報図書館および国立近代美術館資料室で文献・資料の調査を行い、執筆中の博士論文に有用な情報を収集した。
著者
古澤 之裕
出版者
富山県立大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

無細胞系のHDAC阻害試験から、酪酸によるヒストン修飾の亢進は、おもに Class I HDACを介したものであり、Class II HDAC阻害に対する寄与はほぼないものと推測された。酪酸は時系列的にTregマーカーであるFoxp3を優先的に誘導する事がわかり、主にClass I HDACの中でも、HDAC1およびHDAC3に対する阻害を介して、Foxp3を誘導している可能性が高いと考えられた。
著者
萬 秀憲 江口 泰輝 砂川 満 河本 知二 古元 嘉昭
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.89-94, 1986 (Released:2010-08-06)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Artificial CO2-bath was prepared with a tablet (50g): made from sodium bicarbonate and succinic acid, putting simply in plain water bath tub of 100-200 litre at 40C.The effect of artificial CO2-bath was studied in relation to the change in blood lactic acid which is thought to be indicative of the physical fatigue.It has been clearly demonstrated experimentally using rats that the blood lactic acid after exercise is significantly reduced as compared both to a plain and an artificial Na2 SO4-NaHCO3 bathing.A favorable effect of the artificial CO2-bath was also confirmed clinically by a relief from the stiff pain following maximal abdominal muscle exercise.
著者
古島 大資
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.130-137, 2015-07-31 (Released:2017-12-28)

近年,初交年齢の低下やそれに伴った10代の妊娠,人工妊娠中絶の増加が危惧されている。高校生時期における性行動は,友人,家族,学校,メディア等からの性情報に影響を受けており,とりわけインターネットはその影響力が大きいと言われている。昨今の急速な携帯電話の普及により,高校生が日常的にインターネットを通じた性情報へのアクセスや,通話やメールによる性に関する情報交換を行っている可能性が推測される。本研究の目的は,高校生における性行動と携帯電話使用との関連について明らかにすることである。平成26年7月に高校1校を対象として無記名質問紙調査を実施し回答の得られた400人(男子学生305人,女子学生95人)を解析した。性行為経験率は男子学生70人(23.1%),女子学生17人(18.7%)であった。性行為経験の有無別に分け多重ロジスティック回帰分析によりオッズ比(95%信頼区間)を算出したところ,携帯電話の所有開始時期が小学校時期であった場合は,所有開始時期が高校生であった場合と比べ7.19倍(2.27-23.88),1日平均10分以上の通話時間であった場合,10分未満と比べ7.04倍(2.16-26.60),メールの送受信回数が1日50回以上であった場合,50回未満と比べ5.00倍(2.57-10.09),インターネットを利用した性情報の検索・閲覧の経験がある場合は,ない場合と比べ3.91倍(1.97-8.13)と高くなる傾向がみられた。高校生の性行動には携帯電話使用が関連する可能性が明らかになり,携帯電話の適切な使用方法と有害なインターネット情報へのアクセス制限(フィルタリング)等を働きかけていく必要性が示唆された。
著者
古川 真宏
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.85, 2018 (Released:2019-06-01)

Alfred Kubin (1877-1959) was once called “dream artist” on the art journal Kunstblatt in 1903. In fact, dream was a subject of importance for him; he made several drawings, and wrote a novel and some essays with the theme of dream, such as Traumland I and II (1922), 2 bands of picture books consisting of lithographs capturing what he saw in his dreams, and his famous novel Die andere Seite (1909). However, he came to take a negative attitude toward dream after 1922, instead, his main interest seems to have been shifted to memory. Taking notice of such a change of his position, this paper investigates Kubin’s thinking of dream and memory, and how he applied his understanding of them to his work. Also, I would compare his methodology and psychoanalysis in terms of the concepts “secondary revision” and “screen memory” in order to clarify the uniqueness of Kubin’s image composition. In conclusion, his change of interest from dream to memory is not a break with his previous way of creation but rather a continuous development, which was resulted from the internalization of the mechanism of dream. In brief, he took advantage of the unconscious psychic mechanism of memory to generate new visual images.
著者
岡本 慎司 森本 昌宏 森本 充男 前川 紀雅 森本 悦司 古賀 義久
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.570-575, 2006 (Released:2006-10-25)
参考文献数
10

進行がんに対する治療法の進歩による患者の延命に伴い, 痛みを訴える患者が増加していると推察される. このような患者は痛みのコントロールが困難であるとして当科に紹介されることが多く, これらの痛みに対しては神経ブロック療法の併用を積極的に行っている. 特に骨転移による痛みは医療用麻薬のみでコントロールすることは不可能であり, 持続硬膜外ブロックを選択することが多い. さらに, 当科では在宅での管理を積極的に行っており, 硬膜外持続注入用アクセスを用い, 21名で良好な除痛効果を確認している. がん性疼痛患者に対しては, 医療用麻薬一辺倒ではなく適切な時期に適切な神経ブロック療法を行うべきであり, 在宅での管理にあたっては, 硬膜外持続注入用アクセス植え込みを積極的に施行すべきと思われる.
著者
藤田 奈比古
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.46-66, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
34

映画監督内田吐夢(1898-1970)は歌舞伎および浄瑠璃を原作とした時代劇映画を4本手がけ、それらは「古典芸能四部作」として知られている。本論文は、その一作目であり近松門左衛門の浄瑠璃を原作とする『暴れん坊街道』(1957年)を取り上げ、企画の成立過程と作品分析を行う。第1節では、まず敗戦後、民族主義的な言説を背景に左派的な近松の読み直しと、近松作品の映画化が進んだことについて概観する。そして内田吐夢が敗戦後満州(中国東北部)滞在において伝統芸能への郷愁を核に民族意識を変化させたことを明らかにし、左派映画人を交えて『暴れん坊街道』の企画が練られた過程を複数の台本の検討を通して論じる。第2節では、当時国文学および歴史学の分野で盛んになった封建制批判の観点からの近松解釈に沿うようにして、本作における登場人物の身分の剥奪が、自己同一性と深く関わる「名前」の与奪によって描かれ、身分の異なる者たちが街道という空間で出会い、関係しあうことを論じる。第3節では、原作の見せ場である「重の井子別れ」を含む二つの愁嘆場が、メロドラマ的な要素に満たされ、感情の抑圧と情動の爆発を伴いながら、感情的な同一化よりもむしろ人物たちの置かれた状況への知覚に観客を向けるものとして演出されていることを明らかにする。
著者
古江 和久 古江 増隆
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.7, pp.1645-1652, 2020

<p>アトピー性皮膚炎では,Th2サイトカインの顕著な発現が認められる.加えてIL-17産生細胞の浸潤も報告されているが,その意義については未解明の部分が多い.本稿では,CCR6を発現するIL-17産生細胞の遊走因子であるCCL20産生に対する「搔破」の影響を<i>In vitro</i>表皮細胞搔破モデルを用いて検討した.表皮細胞シートを搔破するとCCL20産生放出が特異的に誘導されること,及びその産生量はIL-4,IL-13による影響を受けないことが明らかとなった.これらの結果から,IL-17産生細胞浸潤は「搔破」に伴う2次的な現象で,Th2サイトカインの影響下で起こっているわけではない可能性が示唆された.</p>
著者
大阿久 達郎 山田 展久 池田 佳奈美 山根 慧己 竹村 圭祐 堀田 祐馬 世古口 悟 磯崎 豊 長尾 泰孝 小山田 裕一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.1, pp.72-77, 2020-01-10 (Released:2020-01-15)
参考文献数
15

症例は76歳男性.粘血便を主訴に受診し,下部消化管内視鏡検査および便汁鏡検でアメーバ性大腸炎と診断した.メトロニダゾール静注開始24時間後より手袋靴下型の感覚低下が出現し,投与開始2日後からは足部の疼痛が出現した.同薬中止により徐々に症状は改善し3カ月後には消失した.長期間投与で発症するとされてきたメトロニダゾールによる末梢神経障害が投与開始後早期に発症したまれな症例であり,報告する.
著者
本房 昭三 古賀 哲也 山野 龍文 占部 治邦
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.152-158, 1985-09-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

スポロトリコーシスと黒色真菌感染症の治療現況を報告するとともに, これらの疾患にたいする抗真菌剤の適応について述べた. スポロトリコーシスの治療としてはヨウ化カリウム (KI) の投与あるいは温熱療法が一般的であり, また使用さるべき治療法である. Flucytosine (5-FC) とケトコナゾールは数例において有効であったと報告されており, KIあるいは温熱療法が奏効しない場合には有用であるかも知れない. 黒色真菌感染症の治療としては, 病変が皮膚に限局され, かつ広範囲でない場合には外科的切除が first choice である. 現時点で黒色真菌感染症にもっとも有効な薬剤は5-FCであり, リンパ節転移などの内臓病変を有する場合, 広範囲の病変を有する場合には5-FC, あるいは5-FCとアムホテリシンB点滴静注の併用が推奨される.KIの作用機序についても検討を行なったが, KI投与後血中にヨウ素 (I2) を検出することは出来なかった. しかしヨウ化物イオン (I-) は30~60ppmの濃度に達した. In vitro の実験ではKI(1×10-4M)+H2O2(5×10-5M)+peroxidase, KI+H2O2+Fe++の条件下で Sporothrix schenckii の酵母形は5分後に完全に殺菌された. KI+I2(5×10-6M) の条件下でも5分後にはほぼ完全な殺菌効果がみられた. KI+H2O2 の条件下では120分後に完全な殺菌効果が認められた.また3×10-4MのKIと5×10-5MのH2O2の存在下では2×10-6M程度のI2が産生された. これらの結果から, peroxidase-iodide-H2O2 system, iron-H2O2-iodide system に加えてKIから酸化されて生じたI2が直接殺菌作用を示すためにスポロトリコーシスにおいてKIが特異的に奏効するのではないかと考えた.
著者
庫元 瑠美 戸田 浩之 佐古 かおり 西出 久美
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成27年度大会(大阪)学術講演論文集 第8巻 性能検証・実態調査 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.9-12, 2015 (Released:2017-11-15)

ソルベントクラックは、エンジニアプラスチックといわれる硬い樹脂に有機溶媒が作用することでクラックが生じる現象である。あるホテルで、室内ユニットのドレンアップホースに破損が生じた。この破損は、ソルベントクラックが生じた為と推察された。樹脂に含まれる可塑剤の移行性について分析する公定法はない。そこで、シリコンウエハに樹脂を圧着し、シリコンウエハに移行した成分をFT-IRで検出する方法を試みた。