著者
吉本 昌郎 信田 聡
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.91-139, 2001

トドマツ水食いについて,製材途中,製材後の供試木について観察をおこなった。水食い材は節,樹脂条,入り皮など,なんらかの欠点とともに現れることが多かった。これから,石井ら17)の指摘しているように,水食い材では節,樹脂条,入り皮など,なんらかの欠点がもとで無機塩類や有機酸が集積し浸透圧が上昇することで含水率が高くなっているということが考えられた。特に,樹脂条が節に近い年輪界に多く生じ,そのような個所で水食い材の発生が顕著であった。このことから,風や雪,択伐の際に枝にかかる応力により年輪の夏材部と春材部の間に沿って破壊によるずれが生じ,そのような個所に樹脂条が形成される際に無機塩類や有機酸の集積がおこり,浸透圧が上昇するのではないかと推測した。トドマツの気乾試験体,生材試験体についてJIS Z 2101-1994に準拠した,曲げ試験を行い,曲げ強さ,曲げ比例限度,曲げヤング係数が水食いの存非により影響を受けるか否かについて調べた。結果は気乾試験体では曲げ強さ,曲げ比例限度,曲げヤング係数といった値は非水食い試験体の方が大きい傾向があったが,統計的な差は存在しなかった。生材試験体では曲げ強さ,曲げ比例限度,曲げヤング係数といった値は全体的に著しく減少しており,水食い試験体と非水食い試験体の比較では気乾試験体とは逆に,水食い試験体の方が大きい傾向があった。しかし,これにも統計的な差は存在しなかった。トドマツの気乾試験体,生材試験体についてJIS Z 2101-1994に従った,縦圧縮試験を行い縦圧縮強さが水食いの存非により影響を受けるか否かについて調べた。結果は,統計的に有意な差は存在しなかった。トドマツの気乾試験体,生材試験体についてJIS Z 2101-1994に従った,せん断試験を行いせん断強さが水食いの存非により影響を受けるか否かについて調べた。結果は,統計的に有意な差は存在しなかった。水食い材,非水食い試験体の間に強度の有意差が存在しなかったということは,水食い材であっても,乾燥に十分気をつければ,非水食い材と同様の使用が可能であることを示唆している。現在の状況では水食い材は製材用とはならず,パルプ用としてチップとなるのが普通である。一部の製材工場では水食い材からでも構造用材ではないが,建築用材として土留め板などを採材しているところもあるが,あくまで一部の工場でしかない。今回,水食い材は,非水食い材に比べ,強度の低下が存在しないか,存在したとしても小さいものであることがわかった。したがって水食い材は構造用材などとして有効な利用を目指すことができる。
著者
原田 利宣 石田 智子 吉本 富士市
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.61-68, 2002
参考文献数
8
被引用文献数
2

自動車インテリア評価に関する既存研究例には,写真や2次元CG,実車を用いて評価したものが多い。写真や2次元CGは室内空間という臨場感に欠け,実車は精度が高くリアルだが,意図した形態要素を含んでいるとは限らない。そこで,本研究では立体感,スケール感を再現できるVRシステムを用いてより精度の高いデザイン評価を行うことにより,インスツルメントパネルを構成する形態要素と印象との関係を明確化することを目的とした。まず,既存車39車種のインパネを計測し,プロポーション,面構造,曲線(面)の3つの視点から分析を行った。それによりインパネ形状に影響を与える形態要素を抽出し,それらを用いて実験計画法によるVRモデルの作成を行った。次に,作成したVRモデルを10語の評価用語を用いて評価実験し,主効果を求め,分散分析,t検定を用いてどの形態要素がどのような印象に影響するのか調査した。その結果,各評価用語に対し影響すると考えられる形態要素が抽出された。
著者
前野 深 中田 節也 吉本 充宏 嶋野 岳人 Zaennudin Akhmad Prambada Oktory
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

スメル火山はインドネシアの中でも最も活動的な火山の一つであるが,噴火履歴については不明な点が多く,活動が活発化した際の推移予測のための基礎データは十分に揃っていない。近年では5-7年毎に比較的規模の大きな火砕流を伴う噴火が発生しているが,過去には噴煙柱を形成する大規模な噴火も発生している。また1884年以降,大規模なラハールが少なくとも5回発生しており,このうち1909年噴火では東方35 kmに位置するルマジャン市が甚大な災害を被った経緯もあり,周辺地域では火山災害も懸念される。本研究では地質学的・岩石学的解析,年代測定,文献調査をもとにスメル火山の噴火履歴および噴火様式・推移の特徴を明らかにし,噴火推移予測のための事象系統樹を作成することを目的としている。スメル火山の主に南東から南西麓,北麓で行った地質調査の結果,山頂または山腹からの比較的規模の大きな爆発的噴火に由来する降下火砕堆積物と火砕流堆積物が複数存在することやそれらの発生年代が明らかになった。11世紀以降現在までは山頂からの安山岩質マグマによる噴火が主体で,このうち15-16世紀頃の活動では南西側に厚い降下スコリアを堆積させ,一連の活動により発生した火砕流がこの地域の遺跡を埋没させた。この時期の堆積物の層序構築には,13世紀のリンジャニ火山噴火に伴う広域テフラも年代指標として重要な役割を果たしている。一方,山腹噴火を示す地形や堆積物が多数存在するが,これらは3-11世紀頃の玄武岩質マグマによる活動によるもので,溶岩流出に続いて爆発的噴火へ移行し山腹でも火砕丘を形成する活動があったことがわかった。またこの時期には山体北側の火砕丘や溶岩流の活動もあったと考えられる。3世紀以前には安山岩質マグマによる爆発的噴火が山頂から発生した。山頂噴火は少なくとも過去およそ2000年間は安山岩質マグマに限られる。このようにスメル火山の活動は,19世紀以前には現在の活動を大きく上回る規模の噴火が繰り返し発生したこと,山腹噴火が噴火様式の重要な一形態であること,安山岩質マグマ(SiO2 56-61 wt.%)と玄武岩質マグマ(SiO2 46-53 wt.%)のバイモーダルな活動により特徴付けられることなどが明らかになった。一方,山体形状や火口地形,溶岩流/ドームの規模の把握は,火砕流の規模やその流下方向を推定する上で重要であるため,衛星画像やドローンによる画像・映像をもとに現在の山体地形の特徴や火口状況を把握し,また過去の火口位置とその移動方向や開口方向の変化についても整理を進めている。噴火事象系統樹は,近年の山頂での繰り返し噴火に加えて,地質学的解析から明らかにした過去の大規模噴火や火口形状や位置についても考慮したものにする必要がある。
著者
吉本 亮子 末松 智子 三野 幸人
出版者
徳島県立工業技術センター企画情報課
巻号頁・発行日
pp.21-25, 2017 (Released:2017-09-04)

タチウオを原料とする魚醤油製造において,酵素剤を用いることによる呈味性への影響について評価を行った。その結果,数種の酵素剤を使用することにより,アラニン,アスパラギン酸,グルタミン酸,グリシンといった旨味や甘味を呈する遊離アミノ酸が増加し,さらに麹を使用することにより糖や有機酸の増加も確認された。味に関して他社製品との比較を行った結果,魚醤油の欠点として敬遠されがちなトリメチルアミン含有量が非常に少ないこと,旨味の先味が強いこと,国外産より旨味コクが弱いことが明らかとなり,あっさりとした旨味のある魚醤油として差別化できることを確認した。
著者
小切間 美保 岸田 友里 岡本 梢 長束 美紗希 掃部 美咲 吉本 優子 大月 晃子 小川 麗 八竹 美輝
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.276-285, 2021-10-01 (Released:2021-11-24)
参考文献数
13

【目的】小学生の「調理経験」が「自尊感情」,「食事観」に影響し,これらを介して「教科に対する関心」に影響するという既報の因果関係モデルを用いて再現性を検討した。【方法】調査項目と対象校は既報に同じとし,小学5年生を対象に2017年と2018年の2回調査を行った。481名の結果を用いて,質問項目の分類ごとに探索的因子分析,既報モデルを用いた共分散構造分析を行い再検証した。そして,調査年別2群の多母集団同時分析により再現性の検討を行った。【結果】探索的因子分析の結果,「調理経験」は6因子,「自尊感情」4因子,「食事観」1因子,「教科に対する関心」2因子を得た。共分散構造分析の結果,モデルの適合度はGFI=0.977,AGFI=0.956,RMSEA=0.037と良好であった。「調理経験」は「食事観」と「自尊感情」へ有意なパス係数0.74,0.83(p<0.001)を示し,「自尊感情」は「教科に対する関心」へ有意なパス係数0.75(p<0.001)を示した。多母集団同時分析の結果,因子間のパス係数に両群間で有意差はなく,因果関係モデルに差がないと判断した。【結論】「調理経験」が「自尊感情」に影響し,「教科に対する関心」に影響するというモデルの再現性が認められた。一方,既報と異なり,「調理経験」と「教科に対する関心」については,「食事観」の媒介的影響は低いと考えられた。
著者
高木 佐恵子 松田 憲幸 曽我 真人 瀧 寛和 志磨 隆 吉本 富士市
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.386-396, 2003 (Released:2004-02-29)
参考文献数
17
被引用文献数
3

絵画は,心を豊かにするための重要な研究テーマの一つである.これまで,絵画に関する多くの研究では,実際の画材を再現するような機能を提供するばかりで,ユーザが描いた絵を評価し,アドバイスを与えるようなものはなかった.そこで,我々は,初心者のための基礎的な鉛筆デッサンの学習支援システムを提案する.提案システムは,モチーフに関するデータとユーザが鉛筆で画用紙に描いたデッサンの画像を入力とし,ユーザへのアドバイスを出力とする.提案システムでは,次の四つの機能により,処理が行われる:モチーフの特徴解析,デッサンの特徴解析,誤りの同定,アドバイスの生成と提示.提案システムの有効性を確かめるため,扱う対象を基礎的なモチーフに対する主要なアドバイスに限定したプロトタイプシステムを開発し,実験を行った.その結果,提案システムの有効性が確かめられた.
著者
R. J. D. TILLEY J. N. ELIOT 吉本 浩
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.153-180, 2002-06-20 (Released:2017-08-10)
参考文献数
27

シジミチョウ科47種とシジミタテハ科7種について,緑,青,紫といった光沢を発する鱗粉の微細構造を調べた.構造色による虹様光沢には,Urania(ツバメガ)型とMorpho(モルフォチョウ)型が知られる.調べたシジミチョウのほとんどは,鱗粉表層部の多重層によるUrania型であったが,予期せぬことに,Lycaeninae(シジミチョウ亜科)のAphnaeini(キマダラルリツバメ族)と,Eumaeini(カラスシジミ族)の中のDeudorigina(トラフシジミ亜族)とHypolycaeninaのいくつかの種でMorpho型が観察された,シジミチョウ科のUrania型は,Eliot(1973)によって"pepper-pot"(胡椒入れ)型と名付けられたように,多重層に多かれ少なかれ穴の開いたやや複雑な微細構造を示すものが大部分であった.一方,シジミチョウ科のMorpho型は,鱗粉表面の縦隆起(ridge)の側面に生じる縦溝(flute)の作用によるもので(Morpho(flute)型),縦隆起側面のscuteによるシジミタテハ科,タテハチョウ科,シロチョウ科,アゲハチョウ科の,Morpho(scute)型とは全く異なっていた.系統や分類の分野では,鱗粉の形態は従来あまり用いられて来なかった.これは,類似した型のものが複数の科にまたがって現われるからである.しかし,シジミチョウ科の光沢鱗のほとんどが,蝶の他の科では見られないUrania(pepper-pot)型であることや,今回見つかったMorpho型がflute型であることは重要と考えられる.Morpho(flute)型は,例外的にアカエリトリバネアゲハの翅表の緑色鱗と裏面の青色鱗に認められる以外は,シジミチョウ科に特徴的と思われる.また,シジミタテハ科では,シジミチョウ科に現われる様々な型のどの1つも見られず,特に構造色鱗はタテハチョウ科で報告されているものと同じであった.シジミタテハ科については,従来,シジミチョウ科の1亜科として他のシジミチョウと姉妹群を成すという考えや,シジミチョウ科の姉妹群となる独立した科,またはタテハチョウ科の姉妹群となる科とする意見が提出されてきた.今回の観察は,シジミタテハ科とタテハチョウ科を姉妹群とする見解を支援する新しい情報を提供する.シジミチョウ科の中で,どちらの型の鱗粉が最初に獲得されたかを解くには,南米のシジミチョウ科を考慮する必要がある.南米は,北米経由のアンデス産のいくつかのPolyommatina(ヒメシジミ亜族)を別とすれば,亜族Eumaeinaのみが分布する.シジミチョウ科の起源は白亜期初期におけるローラシアのユーラシア域と信じられるが,ゴンドワナ大陸のアフリカ/南米陸塊へのシジミチョウ科の侵入は"ジブラルタル・ルート"であったろうとされ,白亜期中期前後の2つの大陸の分離時期には祖先的Eumaeiniのみが存在したとするのが論理的である(そうでなければ,今の南米にはEumaeini以外のシジミチョウ科も分布する筈である).亜族EumaeinaではUrania型の鱗粉のみが見られることから,シジミチョウ科の構造色鱗の起源はUrania型で,Morpho型は2つの大陸の分離後アフリカで進化したと推測できる.Urania型が先に現われたとする根拠は,それがPoritiinae(キララシジミ亜科)に見られることにもある.一般にシジミチョウ科の初期の分岐は,Poritiinae,Miletinae(アシナガシジミ亜科),Curetinae(ウラギンシジミ亜科)へと続く枝からのシジミチョウ亜科の分離を導いたと考えられるので,Urania型鱗粉はこの非常に早い段階で既に存在していたと推定される.Morpho(flute)型を有する3つのグループの内,亜族DeudoriginaとHypolycaeninaは,♂交尾器や翅脈から見て互いに近縁であり,また亜族Eumaeinaとも近縁である.DeudoriginaとHypolycaeninaはアフリカに分布の中心があり,恐らくインド大陸がアジアに衝突した後,東洋区や旧北区の東南縁に広がった.これは,.Morpho(flute)型がアフリカ大陸の分離後にアフリカで生じた考えをうまく説明できる.問題は残る1つのAphnaeini族である.この族はシジミチョウ亜科で最も早く分岐したグループと考えられ,ローラシアからゴンドワナ大陸に最初に入ったシジミチョウと考えられるが,そうであれば,この族が南米に産しないことは説明しづらい.この族の祖先が森林地域に適応できなかったというのがその説明になるかも知れないが,いずれにせよ,Aphnaeini族でのMorpho(flute)型の獲得は独自に起こったと考えるのが最もありうるように思われる.Morpho(flute)型鱗粉は,未分化(undifferentiated)鱗とUrania型鱗粉から別々に生じたように思われる.細部で高度に改変されたUrania型からの変形はやや想定しづらいかも知れないが,Chliaria属やSiderus属のいくつかの種では明らかに中間的な鱗粉が観察され,その変形過程の説明を可能とする.恐らく,多重層が単層になることで鱗粉表面の縦隆起(ridge)が高くなり,直立した縦溝(flute)も顕著となる.次いで単一の"pepper-pot"層も失われ,縦隆起の間隔が狭まるとともに,縦溝の傾斜が起き,最終的には鱗粉の表層下面と平行になるところまで傾斜が進んだと考えられる.
著者
吉本 武雄 小川 三郎 宇田川 隆敏 沼田 智
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.259-268, 1989-05-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
23
被引用文献数
8 10

Etofenprox is a new synthetic insecticide discovered and developed by Mitsui Toatsu Chemicals, Inc. In 1979 we began searching for a compound with insecticidal activity, comparable to existing pyrethroids, but with low toxicity to fish as to be used in paddy fields. While examining a new active substance after repeatedly testing a number of hypotheses and ideas, we found a lead skeleton that has ether linkage within the molecule, not ester linkage as in the case of existing pyrethroids. Then we tried to optimize the insecticidal activity around the lead skeleton, and as a result, 2-(4-ethoxyphenyl)-2-methylpropyl 3-phenoxybenzyl ether (etofenprox) was selected as a candidate for development. It is now registered for agricultural use in Japan and some countries in Southeast Asia. Etofenprox is a compound composed of carbon, hydrogen and oxygen only, and effective as a contact and stomach poison against many kinds of insect pests in crops, animals and public health fields. Etofenprox has several favourable properties compared with conventional insecticides: It is low in acute mammalia toxicity and fish toxicity, high in compatibility with other pesticides, causes no skin and eye irritation, has a small impact on natural enemies, no phytotoxicity, no cross-resistance to carbamates and organophosphorous insecticides, no BPH resurgence.
著者
前田 紀夫 磯部 由香 平島 円 吉本 敏子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.56, 2011

<B>目的:</B>現在実践されている中学校の調理実習では、習得すべき技能・技術が明確に位置づけられておらず、献立構成や指導方法において個々の生徒の技能・技術の習得という視点が欠けている(河村、埼玉大学紀要、2009)。本研究では調理実習を通して身につけるべき力を「1人で調理できる技能・技術」であると定義し、生徒の個々の技能・技術の定着に主眼を置いた授業展開を提案することを目的とした。これまでに調理に必要な技能・技術を盛り込んだ献立3種(A:鰯のかば焼き・青菜のお浸し、B:ホワイトシチュー・ブラマンジェ、C:スパゲッティミートソース・トマトサラダ)と、新しい調理実習の指導方法として、「1限2品3まわり調理法」(3人1組になり、1限で2品の料理を2人が1品ずつ調理し、1人が観察者となって2人をサポートする方法)を報告した。本報では前回の報告で提案した献立と指導方法を用い、授業を実践することにより調理技能・技術習得に対する1人で調理することの効果について検討した。<BR><B>方法:</B>三重県内のA中学校の1年生(全3クラス)を対象に、2010年の4月~10月にかけて3つの献立を用いて調理実習を行った。1人で調理することの効果を比較するため、「1限2品3まわり調理法」だけでなく「1限1品調理法」(班で役割を分担して1限で1品を作るという方法)と「2限2品調理法」(班で役割を分担して2限で2品を作るという方法)を加え、各クラス異なる指導方法で調理実習を行った。各クラスの人数は24~25名であった。効果を検討するため、小学校での調理操作の経験等を問う事前アンケートを最初の授業に行った。また調理実習実施の前後には、リンゴの皮むきを実技テストとして行い廃棄率を計算した。さらに学期末には、筆記テストや事後アンケートを行った。有意差検定にはt検定やχ&sup2;検定を用いた。<BR><B>結果:</B>本報では2010年の1学期に行った献立Aおよび献立Bの調理実習実施前後での指導方法による調理技能・技術習得の差について検討した。事前アンケートにより生徒の調理技能・技術について調べたところ、22%の生徒が小学校で「調理実習において習得すべき技能・技術」の経験がないとわかった。調理実習前の調理経験にはいずれのクラスにおいても差がなかった。実技テストでは廃棄率の変化により検討したが、「1限2品3まわり調理法」を行ったクラスにおいて調理実習前後で廃棄率が下がっており、包丁の技能・技術の向上がわずかに見られた(<I>p</I> < 0.1)。事後アンケートにおいて「1限2品3まわり調理法」を用いたクラスは「1限1品調理法」や「2限2品調理法」を用いたクラスよりも調理操作の自信度の高いことがわかった(<I>p</I> < 0.05)。また、調理実習でとりあげた献立を家で作ってみたいと答えた生徒の割合は「1限2品3まわり調理法」が最も多かった。筆記テストでは、「ホワイトシチューの材料の切り方で正しい組み合わせを選びなさい」という設問に対して「1限2品3まわり調理法」の生徒は「1限1品調理法」や「2限2品調理法」より正解率が高かった(<I>p</I> < 0.05)。献立においては煮込み料理である「ホワイトシチュー」は時間がかかるため、1限の調理実習には適しておらず、2限の調理実習に相応しいことがわかった。また、「1限2品3まわり調理法」は「2限2品調理法」や「1限1品調理法」よりも多くの授業時数を要した。今後は、献立ごとに「2限2品調理法」や「1限1品調理法」を取り入れつつも、1人で調理する場面をできる限り増やす工夫が必要である。また、各献立においても1人で調理させることで習得させたい技能・技術に焦点を当て、実技テスト等も行うことで、個々の調理技能・技術習得や向上につなげていくことが課題である。
著者
吉本 早苗
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.75-84, 2017-09-30 (Released:2017-12-07)
参考文献数
74

Time-varying patterns such as flickering lights can cause discomfort and induce seizures in photosensitive observers. An understanding of the temporal characteristics of visual discomfort is therefore important from both scientific and practical viewpoints. The purpose of this paper is to review existing studies on the impact of temporal characteristics on discomfort. Two related factors have been suggested as predictors of discomfort caused by time-varying patterns: (1) excessive contrast energy at the medium temporal frequencies to which the visual system is generally most sensitive, and (2) temporal deviations from the natural (1/f ) statistical characteristic. These effects mirror the visual discomfort caused by spatial patterns, in some ways but not all. The interaction between spatial and temporal parameters needs to be investigated to clarify the factors underlying visual discomfort.
著者
吉本 尚
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.943-945, 2013-11-15

はじめに アルコール問題に対する対応をプライマリ・ケア医が行うことで,問題の早期発見が可能となる.これは,アルコール依存症(以下,依存症)の予防や早期回復のみならず,アルコールに関連する身体的・心理的・社会的問題を減らす意味でも,医療者・医療機関の疲弊の軽減,医療費の増大を軽減させるという視点からも,非常に重要な取り組みである. 近年,特に依存症になる以前の,「危険な飲酒」の段階から介入を行うことが効果的と言われており,各国で対策が進められている.本稿ではアルコール問題のスクリーニング,介入,適切な紹介・連携を効果的に行う枠組みであるSBIRT(Screening, Brief Intervention, Referral to Treatment,略称:エスバート)に関して述べる.
著者
川上 貴代 岸本 (重信) 妙子 平松 智子 佐藤 ゆかり 田淵 真愉美 我如古 菜月 吉本 優子 久野 一恵 沖田 千代
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.196-203, 2021-08-01 (Released:2021-10-02)
参考文献数
20

【目的】様々な文化・宗教背景をもつ対象への栄養支援活動や対応のための知識習得や態度をもつことは重要である。本研究では管理栄養士養成課程学生での国際活動への志向の把握と管理栄養士のコンピテンシーとの関連により,国際活動への志向が高い学生の特徴を検討した。【方法】関東・関西・中国・九州の5大学の管理栄養士養成課程学生489名を対象に自記式質問調査票を配布し,399名から有効回答を得た(有効回答率81.6%)。国際活動への志向は10項目4段階で測定し,下位の因子合計得点を算出して用いた。コンピテンシー得点,国際交流経験等との関連を検討した。【結果】国際活動への志向について探索的因子分析を行ったところ,7項目2因子が抽出され因子寄与率は62.3%となり,「基本的知識への志向」と「実践への志向」と命名した。同じ学習段階である3年生を対象にクラスター解析を行ったところ,国際活動への志向は4つのクラスターに類型され,2つの因子得点の高低により特徴を示した。基本的知識への志向および専門実践への志向のいずれも高い群では他の群よりコンピテンシー得点,外国語の学習意欲や外国人への態度は有意に高値だった。【結論】国際活動に関する知識および実践への志向得点の高い管理栄養士養成課程の3年生は,コンピテンシー得点も高く国際交流経験や外国人に接する態度も肯定的であった。
著者
吉本誠也 高野茂 岡田義広
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.219-220, 2013-03-06

本研究では複数台Kinectボーン情報を組み合わせることによって単一のKinectでなし得なかった高精度モーションキャプチャシステムを構築する。複数台Kinectを用いる場合、KinectのRGB画像、深度画像より全てのKinectのボーンの信頼度を定義し、その信頼度の高いボーンを組み合わせることによって一つのモーションデータを生成する必要がある。今回筆者はKinectのボーン情報に加えて過去情報、制約条件を組み合わせたボーン情報信頼度評価指標を導入したモーションデータ生成システムを紹介する。
著者
吉本 秀之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.372-375, 2017

<p>アリストテレスの四元素説(火は,水,土,空気とならび四元素の1つであった),パラケルスス派の三原質(エン,スイギン,イオウの3つのうち,イオウは可燃性を担う原質と位置づけられていた)という17世紀までの元素説・原質説の基本をまず紹介しよう。そして,こうした背景に対し,ベッヒャーとシュタールのフロギストン説は,一体何であったのかを解説しよう。</p>