著者
斎藤 勇哉 Peter A. Wijeratne 鎌形 康司 Christina Andica 内田 航 明石 俊昭 和田 昭彦 堀 正明 青木 茂樹
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
日本磁気共鳴医学会雑誌 (ISSN:09149457)
巻号頁・発行日
pp.2023-1790, (Released:2023-05-25)
参考文献数
28

Corticobasal syndrome (CBS) and progressive supranuclear palsy (PSP) are sporadic atypical parkinsonian disorders associated with 4-repeat tauopathies. These neurodegenerative conditions closely overlap in their clinical information, pathology, and genetic risk factors ; therefore, it is difficult to accurately diagnose CBS and PSP. Recently, an unsupervised machine-learning technique, called Subtype and Stage Inference (SuStaIn), has been proposed to reveal the data-driven disease phenotypes with distinct temporal progression patterns from widely available cross-sectional data. To clarify the differences in the temporal white matter (WM) degeneration patterns between CBS and PSP, this study applied SuStaIn for fractional anisotropy (FA) in regional WM, which was sensitive to WM degeneration, based on cross-sectional brain diffusion MRI (dMRI) data. We obtained dMRI data from 15 healthy controls, 26 patients with CBS, and 25 patients with PSP. FA was calculated after fitting the diffusion tensor model to the corrected dMRI data for susceptibility and eddy-current induced geometric distortions and inter-volume subject motion. SuStaIn was applied to the cross-sectional regional WM tract FAs to identify both the disease subtypes and their trajectories with distinct WM degeneration patterns. To assess the performance of SuStaIn, the classification accuracy and sensitivity for CBS and PSP were calculated. SuStaIn revealed that the CBS degeneration started from the fornix and stria terminalis (FSTs) and corpus callosum (CC), followed by the posterior corona radiata (PCR), posterior thalamic radiation (PTR), and cerebral peduncle (CP), and subsequently extended to the cingulum. Finally, it reached the superior cerebral peduncle (SCP) and corticospinal tract (CST). In contrast, the PSP degeneration started from the SCP and cingulum, followed by the CST, and subsequently extended to the FST and CC. Eventually, it reached the PCR, PTR, and CP. Accordingly, SuStaIn classified CBS and PSP with 0.863 accuracy (sensitivity : CBS, 0.885 ; PSP, 0.840). The results suggested the utility of SuStaIn for classifying patients with CBS and PSP and identifying temporal WM degeneration patterns in patients with CBS and PSP.
著者
和田 邦子
出版者
口腔病学会
雑誌
口腔病学会雑誌 (ISSN:03009149)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.518-540, 1992 (Released:2010-10-27)
参考文献数
31
被引用文献数
3 2

The purpose of this research was to evaluate the clinical acceptability of various impression thechniques by comparing the dimensional accuracy of their working casts. An original metallic model was designed for this experiment. It has reference points to overlap and compare the master model and the working casts for measuring their dimensional accuracy under the same condition. The amount of distortion in each area of the working casts was examined by the measuring points within the model. The master model simulated an abutment for a full veneer crown with undercuts between the adjacent teeth. It was planned so that the amount of undercuts and distances between the adjacent teeth could be changed. As a result, a small distortion of the working casts due to the undercuts was observed by the technique using an individual tooth tray and polysulfide rubber base impression material. There was no significant dimensional change in the working casts made with silicone rubber base material. For the working casts made by hydrocolloid-alginate combination technique, the dimensional change was greater and distortion was observed in the abutment cast when the undercuts of the adjacent teeth were great. However, the distortion was less when the undercuts were small.
著者
和田 正平
出版者
国立民族学博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

東北地方においてイタコ、カミサマ、ゴミソなどと呼ばれる民間巫者を介して施行されている冥婚習俗の実態調査を行なった。まず金木町川倉地蔵堂、木造町弘法寺では、夭折した不幸な男女を供養する目的で、1955年頃から死霊結婚を具象する花嫁花婿人形の奉納が始まり、1970年代後半からその数が急増していることが判明した。これは、一般に言われているように冥界結婚が日本列島から消滅したのではなく、東北地方の一部では、むしろ新しい習俗として蘇生したことを意味している。おそらく、巫者の口寄せが人形製作者の商業主義とむすびついたと推察されるが、中牧弘允(民博助教授)の指摘するとおり、東北地方における深刻な農村の嫁不足に対応して、こうした冥婚習俗の施行が盛んになったと解釈されるのである。同様に、山形県山寺立石寺でも掲額されている死後結婚の絵、写真、肖像画、肖像写真は、現代風俗に合せた花嫁花婿人形に変りつつある。また、天童市鈴立山若松寺では、死者の彼岸での幸福な結婚を祈願して、婚礼場面を描いた絵馬が奉納されている。この種の絵馬は、この地方では「むかさり絵馬」と呼ばれ、古い風習として存続していた、「むかさり絵馬」の奉納者は山形県北部と宮城県の在住者が圧倒的に多いが、東京方面から奉納された絵馬も散見され、裾野の広いことが分る。通常、冥界結婚は民間巫者の口寄せ、すなわち、死者の結婚したいという烈しく切ない声を伝えることによって親兄弟等が死霊の怨念を除去するために施行されるが、最近では、病や事故で早世した未婚の子どもを不憫におもう親心から自主的に行なう事例が多くなってきた。東北地方の冥婚習俗はまだ調査を開始したばかりで、資料の整理も不十分であるが、民間巫者によって奉納物に変化があらわれても決して消滅しないものと考えられる。
著者
和田 清 森 誠一 遠藤 協一 藤井 孝文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.397-402, 2016 (Released:2022-04-01)
参考文献数
10

This study has analyzed factors for recovery of the fishway by cluster analysis and main component analysis using check-sheet data of fishway in Gifu prefecture. Directionality to connect with a repair method of construction using the result was examined. It is pointed out that the function of the fishway decreases, when the item of the damage of the structure, stream route, step of the flow, partial scour in a riverbed are one. In Ono fishway of the Yoshida River, the need of continuous flow quantity monitoring to connect it with the life cycle of fish was shown. All the fishways that an evaluation of the Yoshida River has worse are erosion control dams. The function of the fishway decreases by complex factors such as the sedimentation of riverbed material and the drifting wood. It is clarified that the function of Futamate fishway was restored by simple repair, and the improvement of the maintenance system.
著者
前濱 智子 林田 晃寛 久米 輝善 和田 希美 渡邉 望 根石 陽二 川元 隆弘 豊田 英嗣 大倉 宏之 吉田 清
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement3, pp.121-126, 2008-07-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
7

症例は61歳,男性.1997年から全身性強皮症と診断され,加療されていた.膠原病性肺高血圧症が急速に進行し,2006年から在宅酸素療法およびボセンタンを導入された.2007年6月,自宅で突然心肺停止となった.家人による心臓マッサージを受け,救急隊が装着した自動体外式除細動器(AED)にて心室細動が確認され,除細動2回目で心肺停止から約25分後に自己心拍の再開を認めた.来院時GCS:1-1-1で除脳姿勢を呈していたが,軽度低体温療法を行った結果,若干の記憶障害が残るものの,意識はほぼ清明となるまで回復した.原因検索の際の冠動脈造影検査にて虚血性心疾患は否定されたため,全身性強皮症の心病変による心室細動であったと診断し,植込み型除細動器を植え込み,約1カ月後に退院した.今回われわれは,強皮症による心筋障害が原因と思われる心室細動をきたし,AEDにて蘇生された貴重な症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
著者
和田 一雄
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.117-127, 2020 (Released:2020-02-14)
参考文献数
56
被引用文献数
2

日本哺乳類学会の前身の一つである哺乳類研究グループは,1958年からネズミ研究グループに参加した大学院生や助手を含んだ若者達に端を発して1963年に結成され,自由に発想し,そして相互批判することによって発展した.同グループは,第二次世界大戦後,特に1958年以降,各時期の日本社会における社会的,政治的事象の影響を受けながら,ネズミ研究グループの諸先輩による助言や忠告を得て力を蓄えた.哺乳類研究グループでは,毎年行われたシンポジュウム,自由集会,動物相の記載,入門書作成関係の議論などを通して哺乳類の系統進化についての活発な議論が行われた.そして,1983年に行った日中哺乳類シンポジュウムを通して日本と中国の研究者相互の交流発展をもたらした.1980年代には会員が激増し,同グループに求める期待が多様化し,意見もさまざまに変化した.学会運営上の実務的な理由で哺乳類研究グループを日本哺乳動物学会と合併させるべきだという意見が先行し,1987年に日本哺乳類学会に合併・吸収されたが,それでも哺乳類研究グループの特徴が消失したわけではない.それ故ここでは同グループの創立や成長の過程を吟味し,それ故ここでは日本哺乳類学会の中で役立つ可能性を有する特徴はないかを検討した.
著者
三浦 美佐 吉澤 亮 大和田 滋 平山 暁 伊藤 修 上月 正博 前波 輝彦
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.221-226, 2021-02-18 (Released:2021-04-14)
参考文献数
14

維持透析 (HD)患者は時間的制約,体調不良,易疲労性などにより不活動下に置かれ,合併症の増悪,サルコペニア・フレイルという悪循環に陥りやすい.本邦の多くの透析施設において,患者に軽負担で実施可能な電動エルゴメーターが採用されているが,その身体機能に与える影響を負荷量可変型エルゴメーターと比較検討した報告は少ない.そこで,本研究の目的を,外来透析患者に対する透析中の12週間の運動を,電動エルゴメーターと負荷量可変型エルゴメーターで比較検討することとした.週3回HDを行っている歩行可能な平均年齢71.5±1.6歳の患者15名を,負荷量可変型エルゴメーター (Tex)群8名と電動式エルゴメーター (Elex)群7名に振り分け,透析中の運動を各人の身体能力に応じ,週3回,12週間実施した.介入後にTex群のみが,下肢筋力,運動耐容能が有意に増加した.よって,運動様式により異なる影響があることが示唆された.
著者
佐野 友彦 和田 浩史
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.822-829, 2019-12-05 (Released:2020-05-15)
参考文献数
35

われわれの身のまわりには,大小さまざまな棒(rod)や板(plate)状のものがあふれている.これらは薄い構造または細長い構造と総称される.ロープ,植物のつる,パスタ,海底ケーブル,リボン,ピンポン球,卵の殻などはその一例である.薄い構造の特徴は,その「しなやかさ」にある.薄い板は小さな力によって容易に大きく曲がりねじれる.ここでは,幾何学と力学が密接に結びついている.力学分野はG. Galileiの材料力学の研究にはじまり,今日では完成された学問分野という印象がある.しかし,デジタル加工技術の急速な発展と普及によって,力学は魅力的な最先端分野として現代に甦った.今日,力学の研究では,負のポアソン比をもつメタマテリアルをはじめとして,新しい概念が次々に生み出されている.とくに,座屈不安定性のように,構造のもつ対称性が破れる過程を「機能の発現」とみなす考え方が浸透しつつある.薄い構造はお互いに力を及ぼしあうことで新たな機能を生み出す.植物のつるは風に飛ばされないように棒に巻きつき,外科医は糸を結んで傷を縫合する.これらの過程では摩擦が重要な役割を果たすため,従来の境界値問題とは異なる趣きがある.曲がった板のかたちは境界条件によって決まるが,摩擦の作用のもとでの安定性を考えるには,かたちをあらかじめ決めておく必要がある.つまり,通常の境界値問題とは異なり,「かたちと境界条件が同時に決まる」問題を扱わねばならない.われわれは理論,実験,数値計算を総合的に駆使してこの問題にアプローチし,摩擦によるかたちの安定性を議論する枠組みを提案している.薄い構造が示す動力学の代表例は「飛び移り座屈」(スナップ座屈)とよばれる転移現象である.飛び移り座屈は,食虫植物であるハエトリグサがすばやく虫を捕らえるときのような,植物が俊敏に動くための仕組みとしても注目を集めている.スナップは,薄板を両手でたわませ,そのたわんだ方向を逆転させることで容易に再現することができる.われわれは,板やリボンをあらかじめ幾何学的に拘束し,境界条件を変化させることで起こる飛び移り座屈の性質を明らかにした.細長いリボンを手にとり,これをその長軸が半円を描くように拘束する.両端を同じ向きにねじると,あるねじり角度でリボンの表と裏が反転しスナップする.さまざまな硬さや厚さのリボンを使ってこの現象を再現してみると,操作の単純さに反して,じつに豊かな現象が内在していることがわかる.薄い構造が示すしなやかなふるまいは,フックの法則(線形弾性論)と剛体回転(幾何学)によって記述される.しかし,同じ材質と寸法でも境界条件によってとりうる形は全く異なる.さらに,棒状のものは結んだり編んだりすることで,板状のものは折ったり切ったりすることで,それらの単純な構造に驚くべき多彩な機能をもたせることができる.身近なかたちのしなやかさについて考察することは,いっけん複雑にみえる生物力学現象をよりよく理解したり,それらにインスパイアされた生体規範材料をデザインすることにも繋がる.手元にあるケーブルや紙切れを曲げたりねじったりしてみると,まだ見ぬ構造のしなやかさに出会うことができるかもしれない.
著者
甲斐 慎一朗 和田 健太郎 堀口 良太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.I_963-I_971, 2023 (Released:2023-05-12)
参考文献数
21

本研究は,高速道路サグ部における Capacity Drop (CD)現象を内生的に表現可能かつ操作性が高いミクロシミュレーションの開発を目的として,IDM+ (Intelligent Driver Model+)をベースとした 2 つの追従モデルを分析する.1 つは,近年の CD の理論に基づく安全車間時間を地点によって変化させるモデルであり,もう 1 つは,勾配項を追加する従来型のモデルである.具体的には,これらのモデルについて,CD 現象が発生するか否かを,モデルパラメータを網羅的に変化させたシミュレーション実験により検証する.そして,適切にパラメータを選べば,どちらのモデルにおいても CD 現象が再現できることを示す.
著者
金崎 圭吾 和田 健太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.I_911-I_918, 2023 (Released:2023-05-12)
参考文献数
20

本研究は,高速道路サグ・トンネル部における Capacity Drop (CD) 現象を内生的に記述する連続体交通流モデルに基づく待ち行列モデルを構築し,渋滞発生確率の特性を解析する.構築するモデルは,CD 現象の考慮に加え,到着需要のゆらぎと交通容量のゆらぎを区別して 2 段階で渋滞発生確率を記述するものである.それぞれの段階についてモンテカルロ・シミュレーションを行い,(i) CD 現象は渋滞発生確率の分布をより需要が低い範囲にシフトさせること,(ii) 渋滞発生確率の分布形状を主に決めるのは交通容量のゆらぎであること,を示す.
著者
和田 健太郎 岩見 悠太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.I_899-I_909, 2023 (Released:2023-05-12)
参考文献数
26

本稿は,都市における通勤ラッシュに関わる時間集積の経済・不経済にテレワークが与える影響を分析する.具体的には,時間集積の経済・不経済を扱う Takayama1) の通勤均衡モデルをテレワーク(特に在宅勤務)を含むモデルへと拡張し,その均衡状態と社会的最適状態を理論的・数値的に分析する.そして,(i) テレワークの普及は始業時刻の集積を引き起こす(時差出勤と整合しない)こと,(ii) テレワーク導入により各企業・個人の生産性が向上する状況では社会全体の厚生が導入前より低下しうること,を明らかにする.
著者
河村 和徳 三船 毅 篠澤 和久 堤 英敬 小川 芳樹 窪 俊一 善教 将大 湯淺 墾道 菊地 朗 和田 裕一 坂田 邦子 長野 明子 岡田 陽介 小林 哲郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東日本大震災では多くの被災者が生じ、彼らの多くは政治弱者となった。本研究は、彼らの視点から電子民主主義の可能性について検討を行った。とりわけ、彼らの投票参加を容易にする電子投票・インターネット投票について注目した。福島県民意識調査の結果から、回答者の多くは電子投票・インターネット投票に肯定的であることが明らかとなった。しかし、選管事務局職員は、こうしたICTを活用した取り組みに難色を示す傾向が見られた。ICTを利用した投票参加システムを整備するにあたっては、彼らが持つ懸念を払拭する必要があることが肝要であり、財源の担保に加えシステムの信頼を高める努力が必要であることが明らかになった。
著者
和田 一成 臼井 伸之介 篠原 一光 神田 幸治 中村 隆宏 村上 幸史 太刀掛 俊之 山田 尚子
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.1-12, 2012-02-10 (Released:2013-09-25)
参考文献数
15
被引用文献数
3

実験では,実験参加者(44名)が知覚判断課題を行うたびに常に試行数を確認するように言われ,半分の参加者には確認を省略すると10個の追加課題が課されるリスクが,もう半分には,省略により1個の追加課題が課されるリスクがあることが教示された。全8ブロック中4ブロックにおいて,半分の試行で試行数のメッセージが5秒遅れ(コスト大条件),残りの4ブロックでは半分の試行で2秒遅れた(コスト小条件)。実験参加者は,遅れて出るメッセージを確認しなくても次の試行に進むことができ,この行動を違反行動とした。結果は,コスト小条件よりもコスト大条件で確認の省略が多かった。この結果は,ルール違反における課題遂行コストの強い効果を示している。(表2,図7)
著者
滝本 多恵 和田 由美子
出版者
九州ルーテル学院大学人文学部心理臨床学科
雑誌
心理・教育・福祉研究:紀要論文集
巻号頁・発行日
no.22, pp.37-51, 2023-03-31

精神科看護師における幸福感とワーク・ライフ・バランス(WLB)の関係について検討するために,精神科看護師81名を対象に無記名のweb 調査を実施した。協調的幸福感の得点には,性別やその他の属性による有意差は見られなかった。協調的幸福感の得点を目的変数,WLBの5つの下位尺度の得点を説明変数とするステップワイズ法による重回帰分析を属性別に実施した結果,性別の分析では,男性では「仕事のやりがい・職場の支援」のみが,女性では「家庭での過ごし方・家庭の支援」「仕事 のやりがい・職場の支援」の両方が正の説明変数として選択された。また,同居の子の有無では,いずれも「家庭での過ごし方・家庭の支援」が正の説明変数として選択され,同居の子なしの者では2つ目の変数として「仕事のやりがい・職場の支援」が,同居の子ありの者では「時間の調整」が選択された。精神科看護師の幸福感にWLBが正の影響を与えていたことから,属性差および属性差の背景を踏まえた適切なWLBの支援策をとることにより,精神科看護師の幸福感が向上する可能性が示唆された。