著者
山本 幹枝 和田 健二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.547-552, 2018-10-25 (Released:2018-12-11)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

わが国のみならず世界的に認知症者数が増加し,社会経済的な問題となっている.2015年の全世界認知症者数は4,680万人と推定され,2050年には1億3,150万人にのぼることが予測されている.欧州や北米では認知症有病率は低下しているものの,アジアやアフリカなど特に低中所得国での増加が顕著である.わが国では,2012年時点での65歳以上高齢者における認知症有病率は15%(462万人)と推計されている.とくに80歳以降に多く人口の高齢化や生存率の改善を反映していると考えられる.超高齢化社会においては認知症の診断が難しい場合も多く,繰り返し正確な疫学調査が必要である.また,認知症による社会的負担の軽減のためにも,治療法や予防法の確立に向けて世界的に一層の取り組みが進むことが期待される.
著者
對馬 佑樹 三上 誠 飯田 圭一郎 和田 尚子 齋藤 百合子 漆舘 聡志
出版者
一般社団法人 日本熱傷学会
雑誌
熱傷 (ISSN:0285113X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.138-143, 2023-09-15 (Released:2023-09-15)
参考文献数
13

【背景】本邦におけるサウナ熱傷の症例集積研究の報告は, われわれが渉猟しえた限りはない. われわれが経験したサウナ熱傷の臨床的特徴について報告する. 【対象】2012年から2021年までの10年間で, 当科を受診した熱傷患者346例のうち, サウナ熱傷患者5例を対象とした. 年齢, 性別, 受傷から初診までの日数, 受傷機転, 受傷部位, 受傷原因, 熱傷面積, 初診時の熱傷深度, 手術の有無, 入院期間, 転帰について調査した. 【結果】対象者の年齢は64~76歳 (平均71±4歳) であり, 5例すべてが意識消失に伴う受傷であった. 死亡した1例以外は経時的に熱傷深度が深達化し, 手術を要した. 【考察】サウナ浴中は脱水と脳血流量の減少により意識消失をきたしやすい. サウナ熱傷にはcontact burnとhot air sauna burns (HASBs) があり, 手術を要する可能性が高い. そのため, サウナ利用者への注意喚起と適切な補水の励行を推奨すべきである.
著者
西村 康 和田 晴吾 斎藤 正徳 中条 利一郎 鈴木 努 道家 達將 稲田 孝司
出版者
奈良国立文化財研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

重点領域研究『遺跡探査』では、地下に埋没している遺跡・遺構のみならず、地上に遺存する文化財も含めて、それらが包含する歴史情報をもれなく収集するための、格段に進歩した遺跡探査専用の装置と方法を開発することを目的とした。目的を達成するためには、理工学の研究者と考古学を中心とする人文学研究者とが緊密な連携のもとに、共同研究をすることが必須である。そこで、総括班では装置の設計段階、遺跡の実際での実験的測定、応用測定において、両分野の研究者が検討あるいは共同作業をするための環境設定を優先事項として考え、研究会議などの機会を数多く設定してきた。研究では、1)地中レーダー探査、2)電気探査、3)磁気探査、4)超音波探査においてぞぞれ装置と方法を開発、5)化学・光学探査では熱履歴を特定する手法を考案した。一方、遺跡の実際における探査では、1)被熱の遺構を特定する手法として、磁気探査、帯磁率測定、磁化率測定を組み合わせる方法を開発、2)石造構造物を対象とする場合には、地中レーダー探査、電気探査、VLF探査の方法を用いれば、遺構が推定可能なことを実証、3)土層判別探査(含:金属有機物探査)では、パルス(チャープ)レーダー探査、FM-CWレーダー探査、電気探査と電磁誘導探査の方法を応用すれば、有効な成果が得られることを実証した。なお、総括班では研究の進行に伴う成果の公表を逐次発表するために、公開シンポジウムを開催、ニュースレターを刊行してきた。また、研究成果を世界にアピールすること、正当な評価を得ることを目的に、平成9年9月には伊勢市において『第2回国際遺跡探査学会』を開催したところである。
著者
鐘ケ江 光 Igor Massahiro de SOUZA SUGUIURA 佐々木 恭子 大塚 美加 濱野 剛久 田代 連太郎 Mario Augusto ONO 和田 新平 Eiko NAKAGAWA ITANO Md. Amzad HOSSAIN 佐野 文子 植田 啓一
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.107-114, 2023-09-01 (Released:2023-11-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

Paracoccidioides cetiiを原因菌とするクジラ型パラコクシジオイデス症 (英名:paracoccidioidomycosis ceti) は,小型鯨類を宿主とし,皮膚の慢性肉芽腫性病巣を特徴とする人獣共通真菌症である。今回,臨床症状を示すものの従来法では確定診断に至らなかったバンドウイルカ(Tursiops truncatus) とオキゴンドウ (Pseudorca crassidens) の皮膚病変生検組織由来DNAより,原因菌の特異的遺伝子であるgp43をPCRとLAMPの組み合わせにより検出し,確定診断を得た。なお,オキゴンドウ症例は世界初の確定診断例である。
著者
井上 建 小坂 浩隆 岡崎 玲子 飯田 直子 磯部 昌憲 稲田 修士 岡田 あゆみ 岡本 百合 香山 雪彦 河合 啓介 河野 次郎 菊地 裕絵 木村 大 越野 由紀 小林 聡幸 清水 真理子 庄司 保子 髙倉 修 高宮 静男 竹林 淳和 林田 麻衣子 樋口 文宏 細木 瑞穂 水田 桂子 米良 貴嗣 山内 常生 山崎 允宏 和田 良久 北島 翼 大谷 良子 永田 利彦 作田 亮一
出版者
日本摂食障害学会
雑誌
日本摂食障害学会雑誌 (ISSN:24360139)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.3-12, 2023-10-05 (Released:2023-10-05)
参考文献数
19

COVID-19パンデミック下,摂⾷障害患者における社会からの孤立,受診控え,症状の悪化,さらに新規患者の増加などが報告された。そこで我々は,2019,2020,2021年の神経性やせ症(Anorexia Nervosa: AN)および回避/制限性食物摂取障害(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder: ARFID)の新規患者数,入院患者数,性別,年齢層,COVID-19の影響の有無について,国内で摂食障害を専門的に診療している医療機関に対して調査を依頼した。すべての項目に回答のあった28施設の結果について集計・解析した。ANの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は400人,266人,2020年は480人,300人,2021年は610人,309人であった。一方,ARFIDの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は70人,15人,2020年は97人,22人,2021年は112人,17人であった。AN,ARFIDともに2019年と比較して2020年,2021年は新規患者数,入院患者数ともに増加し,これは10代でより顕著であった。さらにANにおいては20代の患者も増加していた。COVID-19 パンデミック下にARFID 患者数の増加が示されたことは重要な知見であると考えた。
著者
君和田 友美 林 俊哲 白根 礼造 冨永 悌二
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.414-418, 2022 (Released:2023-01-30)
参考文献数
12

右中頭蓋窩くも膜のう胞破裂後に硬膜下血腫/水腫を来し,けいれん重積型(二相性)急性脳症に類似の病態であるinfantile traumatic brain injury with a biphasic clinical course and late reduced diffusion(TBIRD)を併発した1乳児例を報告した.新生児/乳幼児急性硬膜下血腫後に脳腫脹を来す一因として,我々脳神経外科医はTBIRDを十分理解しておく必要がある.
著者
河村 隼太 赤木 暢浩 角 紀行 和田 健希 武本 悠希 小東 千里 齋藤 誠二
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.223-229, 2023-10-15 (Released:2023-11-03)
参考文献数
25

本研究は,重心位置の異なるウォーキングシューズの着用が成人男性の歩容に与える影響を明らかにすることを目的とした.成人男性19名に対して重心位置の異なる靴(つま先重心,中央重心,踵重心)を着用させ9 mの歩行路を歩行させた.そして,フットクリアランス,床反力,下肢関節角度,下肢関節モーメントを算出した.その結果,荷重応答期の膝関節モーメントは踵重心がつま先重心と中央重心より有意に小さかった.荷重応答期の鉛直床反力(床反力鉛直ピーク1)は中央重心と踵重心がつま先重心より有意に小さかった.また,遊脚初期の膝関節角度と遊脚中期の股関節角度は中央重心がつま先重心より有意に小さかった.以上のことから,つま先重心では遊脚期前半において,クリアランスを確保するために膝関節と股関節の屈曲を増大させる必要があることが示唆された.また,踵重心では荷重応答期において,ヒールロッカー機能が安定的に発揮されることが示唆された.
著者
和田 崇
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.43-57, 2021-03-30 (Released:2022-03-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1

本研究は,徳島県阿南市における野球のまち推進事業を例に,スポーツまちづくりがもたらす社会経済効果を明らかにし,スポーツが地域活性化に果たす役割を検討した.その結果,野球のまち推進事業は,観光振興効果や経済波及効果については規模や範囲は限定的であるものの,新たなまちづくり手法の定着や知名度向上効果,イベント参加者数の増加などでは,阿南市に一定の社会経済効果をもたらしていることが確認された.また,アクターごとの事業に対する認識と事業への関与をみると,阿南市では野球関係者や市民,企業が自治体からの働きかけにより,あるいは自ら申し出て事業に関与しており,それぞれが楽しさや満足感を感じたり,社会的ネットワークを広げたりするなどの効果を得ている.事業への主体的な関与が一部の者に限られたり,野球という特定競技をまちづくりの手段とすることへの疑問やトップレベルの試合を観戦する機会が乏しいことへの不満をもつ者も散見されたりするが,野球というこれまで着目しなかった地域資源を核に活動の環を広げてきたことは評価できる.今後,より多くの住民が野球を阿南市の地域資源と認め,全市的な参加・協働体制を構築することが期待される.
著者
和田 一郎
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.368-388, 1971 (Released:2010-07-23)
参考文献数
91

A morphological study of the colliculus seminalis has been made by means of retrograde urethrography in 654 cases, including 107 normal cases, 160 cases of benign prostatic hypertrophy, 22 cases of prostatic cancer, 47 cases of prostatism, 107 cases of seminal vesiculitis and prostatitis, 67 cases of neurogenic bladder, 45 cases of urethral stricture, 36 cases of male sterility, 17 cases of nervous urgency and 46 cases of enuresis. In addition. 80 other different cases have been subjected to a comparative study utilizing radiographic and endoscopic examination.Radiographic pictures of the colliculus seminalis were classified into 7 types (Type I: club-shaped, Type II: tadpole-shaped, Type III: spindle-shaped, Type IV: belt-shaped, Type V: egg-shaped, Type VI: negative contour, Type VII: irregular deformation).In normal cases, Type I was observed in 58%, Type II 24.3%, Type III, IV and V of a few percent. Type VI was observed in about 50% of benign prostatic hypertrophy and prostatic cancer. Type VII was frequently observed in prostatic cancer, in 13.6%, and followed by vesiculitis, prostatitis and neurogenic bladder.The radiographic size of the colliculus seminalis was determined by the transverse diameter. By statistical analysis, above 6mm of the transverse diameter was indicated as an enlargement of the colliculus seminalis. In patients with seminal vesiculitis, prostatitis and male sterility, the transverse diameter showed a significantly larger size than normal cases with a wide distribution. This enlargement would be due to the inflammation or congestion of the colliculus seminalis. Moreover, radiographic pictures of the colliculus seminalis were unable to confirm by endoscopic observation.The first 5 types based on the radiographic study were considered to be formed by the difference in prominence of the colliculus seminalis and urethral crista to the lumen of the urethra.To obtain clear picture of the prostatic urethra, the author prefer to use the contrast medium with a low viscosity, and if high viscous contrast medium was used, diminishing the oblique angle of the body against the X-ray beam would be necessary.
著者
藤原 美子 瓦谷 英人 藤井 智津子 和田 和美 岡田 世佳 久保 卓也 赤羽 たけみ 簗瀬 公嗣 仲川 喜之
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.487-496, 2023-10-01 (Released:2023-10-12)
参考文献数
15

2019年から肝炎医療コーディネーター(肝Co)活動による肝炎ウイルス陽性者の拾い上げを開始した.2019年から2021年までは肝炎ウイルス(HBV,HCV)陽性者に対して検査依頼医へ電子カルテのアラート機能を用いたメッセージ記載による専門医への受診勧奨が主な取り組みであった.しかし,検査結果を伝えられていないHCV陽性者は2019年の52.5%(32/61)から2021年は26.7%(12/45)と減少したものの,0%とならず新たな対策が必要と考えた.2022年に多職種で構成された「肝炎対策チーム」を立ち上げ,肝炎ウイルス陽性者確認後の流れを明確にした「フローチャート」を作成し拾い上げ活動を強化した.その結果,HCV陽性者に検査結果が伝わっていない症例は,2022年には5.3%(3/57)と著減した.「フローチャート」を軸とした肝Co活動は,多職種連携により効果的に機能したと考える.
著者
吉田 善紀 小林 裕介 和田 一範
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.61A, pp.532-543, 2015 (Released:2015-05-22)

In this research, we proposed the power storage device by energy harvesting from the bridge vibration, for the monitoring system to detect the bridge and predict a tendency toward deterioration of the bridge. We made the prototype monitoring system charging system and verified the operations at the existing bridge. This prototype system demonstrated to measure displacement and temperature at fixed intervals, and the dynamic response of the bridge to passing trains by using only power generated from the bridge vibration.